○原告が、自身の配偶者Cと被告との不貞行為によって精神的苦痛を受けたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料500万円・弁護士費用50万円と遅延損害金の支払を求めました。
○被告は代理人弁護士を通じて不貞行為を認め、謝罪の意を示すとともに、慰謝料として100万円を支払う旨を伝えましたが、これを不服として提訴しました。
○これに対し、本件不貞行為に至るまでの間、原告と訴外Cの婚姻関係は、約13年間に及んでいたこと、本件不貞行為の当時、原告と訴外Cとの間には、未成年の子が2名いたこと(うち1名は未就学児)、本件不貞行為発覚後、訴外Cが子らを連れて原告と別居するに至り、婚姻関係は危機に瀕していることがうかがわれること、本件不貞行為は、約2年間にもわたって継続的に行われたものであることなど、本件に現れた一切の事情を考慮して、慰謝料200万円の支払と認めた令和6年10月22日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。
○原告は、本件不貞行為がコロナ禍に行われたことをもって慰謝料の増額事由として主張したようにも解されるが、実害はなく、原告の不安感をもって、慰謝料を増額すべきとはいえないとしました。
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主 文
1 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和6年1月28日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その4を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和6年1月28日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
原告は、自身の配偶者と被告との不貞行為によって精神的苦痛を受けたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等550万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(令和6年1月28日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
2 前提事実
(1)原告は、平成18年11月22日にC(以下「C」という。)と婚姻し、平成20年○○月○○日に長女Dを、平成29年○月○日に二女Eをそれぞれもうけた(甲1)。
(2)被告は、勤務先であるa協会で同協会に勤務するCと知合い、Cが既婚者であることを知りながら、少なくとも令和元年9月頃から令和3年9月頃までの間、Cとの間で、新宿歌舞伎町のラブホテル等において、継続的に不貞行為に及んだ(以下「本件不貞行為」という。当事者間に争いがない事実)。
(3)本件不貞行為発覚後の令和3年11月、Cは、子らを連れて自宅を出て原告と別居した(甲8、弁論の全趣旨)。
(4)その後、Cは、東京家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てたが、令和5年7月に同調停は不成立により終了した(弁論の全趣旨)。
(5)原告は、原告訴訟代理人を通じて被告に対し、令和5年8月31日付け内容証明郵便(同年9月2日配達)により、本件不貞行為の慰謝料として500万円の支払を求める旨通知した(甲3の1、2)。
(6)被告は、被告訴訟代理人を通じて令和5年9月28日付け文書にて、本件不貞行為を認め、謝罪の意を示すとともに、慰謝料として100万円を支払う旨を伝えた(甲4)。
3 本件の争点は、損害額であり、これに関する当事者の主張は次のとおりである。
(1)原告の主張
本件不貞行為により、原告の平穏な婚姻生活は破壊され、甚大な精神的苦痛を被った。その精神的苦痛を慰謝する額としては500万円をくだらない。
また、原告は、弁護士に委任して本件訴えを提起せざるを得なかったから、弁護士費用のうち50万円が本件不貞行為と相当因果関係のある損害である。
(2)被告の認否
否認し、争う。被告は、令和元年8月頃、Cから原告とは家庭内別居状態である等聞いており、原告と被告との婚姻関係の破綻の原因には、本件不貞行為のみならず、原告のCに対するモラルハラスメントがあった。
第3 当裁判所の判断
1 前提事実によれば、本件不貞行為に至るまでの間、原告とCの婚姻関係は、約13年間に及んでいたこと、本件不貞行為の当時、原告とCとの間には、未成年の子が2名いたこと(うち1名は、未就学児であったこと)、本件不貞行為発覚後、Cが子らを連れて原告と別居するに至り、離婚は成立していないものの、婚姻関係は危機に瀕していることがうかがわれること、本件不貞行為は、約2年間にもわたって継続的に行われたものであることが認められる。
そうすると、被告が被告訴訟代理人を通じて本件不貞行為の事実を認め、謝罪の上、一定額の慰謝料の支払を申し出るなどしていることを踏まえても、本件に現れた一切の事情を考慮すれば、被告が原告に支払うべき慰謝料の額については、200万円をもって相当とする。
なお、原告は、本件不貞行為がコロナ禍に行われたことをもって慰謝料の増額事由として主張しているようにも解されるが、本件不貞行為の行われた時期がコロナ禍にあったことによる実害が生じた事実はうかがわれず、原告の不安感をもって、慰謝料を増額すべきとはいえない。他方、被告は、本件不貞行為の開始前の令和元年8月頃の時点において、既に原告とCは家庭内別居状態であり、原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為のみならず、原告のCに対するモラルハラスメントによって破綻したものであると主張し、これに沿う陳述(乙1)をするが、これを裏付ける客観的な証拠は全く提出されておらず、同陳述の内容もCからの伝聞にとどまっており、同主張を認めるに足りる的確な証拠とはいえない。そのほか、一件記録を精査しても、本件不貞行為開始時において、すでに原告とCの婚姻関係が原告のモラルハラスメントによって破綻の危機に瀕していたことを認めるに足りる証拠はない。
2 以上に述べたところを踏まえれば、本件不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用は、20万円と認めるのが相当である。
第4 結論
よって、原告の請求は主文掲記の限度で理由があるから、その限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第25部 裁判官 鈴木優香子
以上:2,639文字
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