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R 2- 7- 3(金):面会交流として手紙の送付等間接交流のみを認めた家裁審判紹介
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○「面会交流として子のメールアドレス・LINEID通知を認めた高裁決定紹介」の続きで、その原審平成31年2月26日さいたま家裁審判(判時2442号65頁)関連部分を紹介します。

○離婚後の非親権者父である申立人が,親権者母である相手方に対し,子である利害関係参加人らとの面会交流を認める旨の和解離婚時の和解条項がありましたが、未成年者らは、申立人との面会を拒否する気持ちが強固になり、直接面会交流ができなくなりました。

○そこで申立人父は、未成年者らが相手方母から一方的な情報のみを聞かされ続けて片親疎外の状態に陥ったからであるなどと主張し,利害関係参加人らとの直接交流を求めましたが、さいたま家裁は,利害関係参加人らの手続代理人も選任して意向調査等を行った上,相応の年齢に達している利害関係参加人らの拒否の意思が強固であることなどから、直接交流を認める和解条項を変更し,手紙の送付等の間接交流のみを認めました。

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主   文
1 当事者間の東京家庭裁判所平成25年(家イ)第5525号ないし同第5527号面会交流調停申立事件において平成26年11月17日に成立した調停の調停条項並びに当事者間のさいたま家庭裁判所平成27年(家ホ)第101号離婚等請求事件において平成28年1月28日に成立した和解の和解条項中第12項及び第13項を次のとおり変更する。
2 相手方は、申立人が長男、二男及び三男に宛てて手紙を送付することを妨げてはならない。
3 相手方は、申立人に対し、長男、二男及び三男がそれぞれ高校を卒業するまでの間、各学期の終了時において、長男、二男及び三男の各成績表を送付しなければならない。
4 相手方は、申立人に対し、長男、二男及び三男がそれぞれ高校を卒業するまでの間、可能な限り、長男、二男及び三男の近況を撮影した写真を送付しなければならない。
5 手続費用のうち長男、二男及び三男の手続代理人の報酬は申立人の負担とし、その余は各自の負担とする。

理   由
第1 事案の概要

 本件は、離婚した元夫婦間において、申立人が、当事者間の子である長男、二男及び三男(以下「未成年者ら」という。)と申立人との面会交流について定める審判を求める事案である。

 なお、申立人と相手方との間では、さいたま家庭裁判所平成27年(家ホ)第101号離婚等請求事件(以下「離婚訴訟事件」という。)において平成28年1月28日に申立人及び相手方が離婚し、未成年者らの親権者を相手方(母)と定める旨の和解(以下「本件和解」という。)が成立し、その和解条項には、申立人と未成年者らとの間の面会交流について、別紙「離婚訴訟事件における和解条項(面会交流関係部分抜粋)」記載のとおりの条項(以下「本件和解条項」という。)が設けられており(本件和解条項においては、申立人が「被告」と、相手方が「原告」と、未成年者らが「子ら」と表記されている。)、本件申立ては、本件和解条項の変更を求めるものと解される。

第2 当裁判所の判断
1 事実の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(1)当事者等

ア 申立人(昭和42年×月×日生の男性)及び相手方(昭和46年×月×日生の女性)は、平成11年×月×日に婚姻し、その間に長男(平成12年×月×日生)、二男(平成15年×月×日生)及び三男(平成17年×月×日生)の3子をもうけた。

イ 申立人及び相手方は、いずれも医師であり、申立人は、平成18年9月から、実家で経営する病院で産婦人科医として医療行為を行っている。

(2)別居・離婚に至る経緯(離婚訴訟事件の記録)
ア 申立人は、平成12年頃、友人宅において、深酒の上、相手方を突き飛ばしたことがあった。

イ 相手方は、平成15年3月当時、二男を妊娠中であったが、その頃、長男(当時3歳)が申立人のかばんを開けて遊んでいるときに性風俗店の女性の名刺を発見し、相手方は、このことをきっかけに、申立人を追及したところ、相手方は、性風俗店の利用を認めた。相手方は、この出来事を受け、長男を連れて実家に帰ったが、その後、申立人が謝罪し、二度としない旨の書面を作成したため、相手方は、申立人を許すこととし、二男を出産した後の平成16年1月に自宅に戻った。

         (中略)

(3)面会交流の実施状況等(平成29年9月14日付け調査報告書)
ア 申立人は、本件別居後の平成25年7月2日頃、相手方に対し、未成年者らとの面会交流を求める調停を申し立てた(東京家庭裁判所同年(家イ)第5525~5527号)。その後、同年11月に本件別居後初めての面会が実施され、その後も、おおむね1か月に1回の頻度で面会が実施されるようになり、平成26年11月17日、申立人が未成年者らと1か月に1回程度面会することを相手方が認め、その具体的な日時・場所・方法については子の福祉に配慮し当事者双方が事前に協議して定める旨の調停が成立した。同調停の成立後も、おおむね1か月に1回の頻度で面会が実施された。

         (中略)


オ 長男は、平成28年4月5日、申立人に対し、「前回の面会で僕はあなたのことを信用できなくなりました。もう面会はしたくありません。学校行事にも来ないでください。」とのメールを送信した。申立人は、同メールを受け、長男が上記のようなメールを送るわけがないと思い、相手方に対し、苦情を述べた長文のメールを送信した。

カ 平成28年4月25日、G内のレストランにおいて、面会が実施された(以下この面会を「平成28年4月の面会」という。)。未成年者らは、申立人に対し、もう面会はしたくない旨を繰り返し訴えたが、申立人は、平成28年3月の面会の際に申立人の実家に行くことになった理由や、未成年者らのために面会を実施すべきである旨などを述べ、未成年者らの意向を受け入れなかった。

キ 申立人は、平成28年11月2日、本件に先立つ調停の申立てをした(さいたま家庭裁判所同年(家イ)第2970~2972号。以下「本件調停」という。)が、平成30年7月5日、調停不成立となり、本件審判手続に移行した。

(4)未成年者らの面接結果等

         (中略)


2 前記認定の事実関係によれば,本件別居後に申立人との面会が開始された当初は、未成年者らがこれを積極的に拒否することはなく、1年以上の期間にわたり継続的に面会が実施され、平成28年1月28日に本件和解が成立したが、未成年者らは、面会を重ねるにつれ、申立人や申立人との面会に対する負の感情を増大させており、かかる状況の中で、平成28年3月の面会が実施され、その際、申立人が当初の約束や未成年者らの意思に反し未成年者らを申立人の実家に連れて行ったことなどから、未成年者らの申立人に対する信頼が崩壊し、未成年者らが申立人との面会を拒否するようになり、未成年者らはその後も繰り返し、直接的又は間接的に面会の拒否の意思を表示しているにもかかわらず、申立人が未成年者らの真意ではないなどとして未成年者らの意思を受入れないことから、未成年者らは、申立人との面会を拒否する気持ちを更に強固にしているものと認められる。
 
上記に述べたところによれば、本件においては、本件和解の成立後に、本件和解条項を変更すべき事情が生じているものといえ、本件和解条項を変更すべき必要性が認められる。


3 そこで、検討するに、次のとおりの理由から、本件和解条項を主文のとおり変更することが相当である。
(1)直接の面会について

ア 前記2のとおり、未成年者らは、現在、申立人との面会を強固に拒否している状況にあるところ、かかる状況の下で、未成年者らに申立人との面会を強いるとすれば、未成年者らの判断能力や人格を否定することになり、未成年者らの福祉に反する結果となってしまう。これに加え、未成年者らの年齢等に鑑みれば、申立人と未成年者らとの面会は、申立人や相手方の意思のみによって実現することが不可能というべきであって、現時点において、相手方に対し面会の実施義務を課すことは相当ではないというべきである。

イ よって、本件和解条項のうち直接の面会について定める第12項は、その効力を失わせることとするのが相当である。

ウ 申立人は、未成年者らが「片親疎外」の状態にあり、その状況から脱却させるために申立人との直接の面会を実施する必要がある旨を主張するが、上記のとおり、未成年者らが申立人との面会を強固に拒否している状況の下では、直接の面会を実施することは現実的に困難であるし、無理にこれを実施しようとすれば、子の福祉の観点から相当でないばかりか、未成年者らが申立人に対する拒否感を更に強めるだけの結果になり、逆効果となることが容易に予想されるから、申立人の主張は採用することができない。

(2)間接交流について
ア 相手方は、間接交流の方法として、成績表及び写真の送付を提案するところ、これらは申立人が未成年者らの状況を知る手段として有用であるから、これらの旨を定めておくのが相当である。

イ また、申立人が未成年者らの状況や意思・心情を十分に理解し、未成年者らの心情に寄り添う態度を示すことによって父子関係の改善を図り、将来的に直接の面会の実現を図ることが全く不可能であるとまではいえないところ、父子関係の改善を図る方法として、申立人が未成年者らの心情に応えた手紙やプレゼントを送付することは有用であるということができるから、これらの旨を定めておくのが相当である。

 なお、前記のとおり、二男及び三男は申立人との手紙の授受をも拒否している状態にあるが、受領した手紙を読むかどうかについては二男及び三男の意思に委ねれば足り、手紙の送付そのものを禁止するまでの必要はないというべきである。

ウ 申立人は、間接交流の方法として、メールやSNSを用いたメッセージの送信を主張するが、前記のとおり、未成年者らが申立人との面会を強固に拒否している状況の下では、未成年者らが申立人に連絡先を教えることに同意するものとは思えないし、未成年者らの意思に反して未成年者らの連絡先を申立人に伝えれば、未成年者らが申立人に対する拒否感を更に強めるだけの結果になり、逆効果となることが容易に予想されるところであるから、現時点でメールやSNSを用いたメッセージの送信による間接交流を行うことは相当でない。

(3)その他審判において定めるべき事項の検討
ア 前記2の経過に照らせば、未成年者らは時間の経過の中で徐々に申立人や申立人との面会に対する負の感情を増大させていったものであり、また、その原因についても様々な事情が複雑に絡み合っているものと推測されるところ、現時点においてその原因を明確にすることは極めて困難であるといわざるを得ない。なお、申立人は、申立人との面会を拒否するに至った具体的な理由が未成年者らから述べられていないと主張するが、上記に述べたところによれば、未成年者らが理由に具体的に表現できないこともやむを得ないというべきである。

イ そして、前記認定の事実関係によれば、上記の「様々な事情」の中には、
〔1〕未成年者らは本件別居・離婚の原因が申立人の側にあると認識していること、
〔2〕本件別居の前後やそれ以降における申立人の言動(別居の理由についての自己正当化、別居を防止するための未成年者らに対する執拗な働き掛け等)、
〔3〕未成年者らが相手方の下で生活をしたいとの意思を示したにもかかわらず、申立人がこれを未成年者らの真意として受け入れなかったこ
と等、申立人側の要因がいくつか考えられる反面、前記認定の事実関係によれば、相手方は本件別居の前後に、未成年者らに対し別居を決断するに至った原因を説明していることがうかがわれ、その時期等に照らせば、相手方の説明が申立人に対する負の感情を多分に含んだものになってしまっていた可能性は否定できず、未成年者らはその影響を一定程度受けているものとも考えられるところである。

 もっとも、離婚の成立から3年が経過しており、本件別居や離婚に関する相手方の感情は既に落ち着いているものと考えられることや、未成年者らが相応の年齢に成長していることに照らせば、現時点においては、未成年者らが相手方の言動から受ける影響は小さくなっているものと考えられる上、事実の調査の結果によっても、現時点においてもなお相手方が未成年者らに対し不当な言動を行っているような事情は何らうかがわれないから、相手方に対し、未成年者らに対する特定の言動を禁止すべき必要性は認められない。

ウ また、前記のとおり、将来的に直接の面会の実現を図ることが全く不可能であるとまではいえないところ、非監護親である申立人及び監護親である相手方は、いずれも直接の面会の再開に向けた努力を継続すべきであると、一般的・抽象的にはいうことができるが、申立人及び相手方が行うべき具体的な行為については様々なものが考えられる(例えば、申立人においては、過去における未成年者らと関わり方を振り返るべく、第三者による助言を受けること等が考えられるし、相手方においては、申立人が何らかの努力を行ったときに、そのことを未成年者らに対し的確に伝えること等が考えられる。)ところであって、申立人及び相手方が、それぞれ、その時々の状況に応じて、子の福祉を考慮・尊重しながら、何ができるのかを自ら考えるべきものであって、家庭裁判所が公権力を行使して、なすべき行為を具体的に特定し、義務付けることは相当でないというべきである。

エ 申立人は、未成年者らが申立人との面会を拒否するに至った原因が不明であり、これを解明した上で、面会交流についての定めを検討する必要があると主張するが、前判示のとおり、上記原因を完全に把握することは困難である上、上記のとおり、審判によって申立人及び相手方に直接の面会の再開に向けた特定の行為を義務付けることは相当でないから、仮に上記の原因が追究できたとしても、本審判における結論を左右しないといえ、申立人の主張は採用することができない。

(4)まとめ
ア 以上に述べたところによれば、本件和解条項のうちプレゼントの送付について定めた第14項は維持した上で、第12項及び第13項を主文第2項から第4項までのとおり変更することとするのが相当である。なお、申立人は、前記(1)から(3)までに取上げたほかにもるる主張するが、いずれも上記の判断を左右するものではない。

イ ところで、前記1(3)アの調停は、本件和解において面会交流についての合意がされたことにより、効力を失っているものとも考えられるところであるが、本件和解において上記調停の効力を失わせる旨が明示されていないため、本審判においては、本件和解条項の変更に加え、上記調停の調停条項も変更し、その効力を失わせる旨を明らかにしておくこととする。

4 以上の次第で、主文のとおり審判をする。なお、手続費用のうち未成年者ら手続代理人の報酬については、申立人の上申により手続代理人の選任に至ったことに照らし,申立人の負担とするのが相当であり、その余の手続費用については各自の負担とするのが相当である。
(裁判官 中嶋謙英)

別紙 離婚訴訟事件における和解条項(面会交流関係部分抜粋)
12 原告と被告は、子らの福祉の観点から被告が子らと自由に面会交流することに協力するものとし、少なくとも以下のとおり実施することを認める。なお、その具体的な日時、場所、方法等は、子らの福祉を尊重し、当事者間で協議して定める。 
(1)月1回程度の面会交流
(2)子らの春休み、夏休み、冬休み期間中を主として、子らと宿泊を伴う面会交流を年に3回程度
13 原告は、被告に対し、子らの福祉の観点から被告が子らと自由に、電話、メールその他の方法で直接連絡を取ることを認める。
14 原告は、被告に対し、子らの福祉の観点から被告が子らに自由に、誕生日、クリスマス、進学等の機会を含め過剰にわたらない範囲でプレゼントをすることを認める。
以上:6,592文字
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R 2- 7- 2(木):2020年07月01日発行第272号”弁護士の赤と白”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和2年7月1日発行第272号「弁護士の赤と白」をお届けします。

○ワインの「うんちく」の話しに、平成17年初めて日弁連業革委員会でサンフランシスコ視察旅行に行ったときのことを思い出しました。視察旅行合間にワイナリー巡りがあり、基本的に下戸で、当時はビール以外のお酒は飲めず、ワインも全く飲んでいなかった私は、ワイナリーの何たるかもよく知らずついて行きました。

○ところが私以外の同行者は、みな、大のワイン好きとのことで、ワインの「うんちく」を競い合います。しかし、ワインに全く興味がなかった私には、どうでも良いことばかりで、話しに付き合うのが大変でした。大山先生の今回の記事で、話し相手が興味を持つ話しをすることが大事で、弁護士業務ではお客様が知りたいと思っていることを的確に掴んで話すことを心がける必要性を実感しました。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の赤と白


今回はスタンダールかと思った人、外れです。「赤と白」というのは、丸谷才一のエッセーです。私は丸谷先生の文章が好きで、ずいぶんと影響を受けました。私も文章の中に「何々ですね」と「ね」をいれるのが好きですけど、これなんか丸谷先生のマネっこです。「ですます」調の文章に、ぽつんと「である」調の一文を入れるのもたまにやる。これまた丸谷大先生のマネなんです。

丸谷才一はエッセーの名手ですから、たくさんの面白い文章があるんですが、「赤と白」なんてとても好きでした。丸谷先生が、友達たちと、一流のフレンチレストランに行くことになったときの話です。ソムリエが出てきたときに、ワインの注文で恥をかかないようにと、みんなでワインの猛勉強を始めたわけです。各地のワインの特徴などしっかりと覚えて、ソムリエの話を聞きます。「当店のワインには、2種類あります」「ブルゴーニュかボルドーかといった程度の平凡な分類ではないだろう。どんな凄い話をするのか?」と、みんなで緊張して聞いていると、ソムリエが続けるんです。「赤と白です!」

考えてみますと、ワインほど「うんちく」の多い飲み物はないですね。大体、レストランでどんなワインか聞いても、全くわからないほど凄い。「酸味が利いたキリッとした味わいですが、フルーティーさも感じます。野性味もありますがそれほど強くはなく、飲み心地の良いテイストに仕上がっています」なんて言われると、「結局のところ、なんなんだよ!」と心の中で突っ込みを入れざるを得ないのです。もっとも最近知ったのですが、ソムリエになる試験に合格するためには、ワインを実際に飲む必要はほとんど無いそうです。ワインの「知識」を身につけ、「年を経たビロードの舌触り」とか「濡れた小犬の香り」みたいな「詩的な表現」をマスターすれば、一人前のソムリエになれるそうです。

ワインの場合、素人の人でも「うんちく」好きは沢山います。「レストランに行くと、思わずワインリストを読んじゃって、気が付くと30分は経っているんだ!」なんて言います。「凄いな」と素直に思う一方、「一緒にレストラン行きたくないな。。。」と警戒もするのです。こういう人って、プロ顔負けの知識を持ってたりするんですね。私も気が弱いところがあるもので、ついついリップサービスも兼ねて、「ワインについて教えてください」なんて言ってしまうんです。そうすると、本当に細かい、専門的なことを教えてくれます。でも、全体像が分からない中で、細かいところだけ説明されても、混乱するだけなんです。

そういう風に考えますと、丸谷才一のエッセーに出てきたソムリエは、凄い人のように思えます。ワインを2種類に単純化して、「赤と白」みたいに提示するのは、素人にとっては非常に分かり易いのです。丸谷先生は書いてませんが、恐らくその料理に一番合った、「赤と白」を勧めてくれたはずです。

そして、このことは、弁護士が法律についてお客様に説明するときにも当てはまると思うのです。弁護士の場合、お客様に対して「詩的な」説明をすることはないですね。「今回の訴状は、生まれたての小鹿のように、臆病なほど繊細な内容の中に、アラスカベヤーの荒々しさも感じさせる内容になっています」なんて説明は流石にしません!しかしながら、一般人では理解困難な、専門的で細かい説明を行ってしまうことはよくあるのです。赤か白かといった、とても分かり易い選択肢でありながら、お客様の状況に一番ぴったりとくる「赤と白」を提案する、そんな説明を心がけたいものです。

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◇ 弁護士より一言

ステイホームの期間にプロジェクターを買ったので、家族で映画「mission impossible」を見ました。トム・クルーズは私と同年齢だそうです。「かっこいいね。パパと同じ年なんて信じられない!」と妻が失礼なことを言います。娘が、「パパの方が凄いよ。日常の使い勝手が良いもん!高層ビルを登れてもしょうがないよね。」なんて言ってくれました。でもこれってフォローになっているのか、悩ましいのです。。。
以上:2,194文字
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R 2- 7- 1(水):面会交流として子のメールアドレス・LINEID通知を認めた高裁決定紹介
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○離婚後の非親権者父である抗告人が,親権者母である相手方に対し,子である利害関係参加人らとの面会交流を認める旨の和解離婚時の和解条項にもかかわらず面会交流が実現していないのは,利害関係参加人らが相手方から一方的な情報のみを聞かされ続けて片親疎外の状態に陥ったからであるなどと主張し,利害関係参加人らとの直接交流を求めました。

○原審平成31年2月26日さいたま家裁は,利害関係参加人らの手続代理人も選任して意向調査等を行った上,相応の年齢に達している利害関係参加人らの拒否の意思が強固であることなどから,上記和解条項を変更し,手紙の送付等の間接交流のみを認める審判をしました。

○これに対し、原審を基本的に維持しつつ,相手方から抗告人に対して利害関係参加人らの電子メールアドレスやLINEのIDを通知すべきことなどは認め,その限度で原審を変更した令和元年8月23日東京高裁決定(判時2442号61頁)を紹介します。

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主  文
1 原審判主文第3項ないし第5項を次のとおり変更する。
2 相手方は,抗告人に対し,二男及び三男がそれぞれ高校を卒業するまでの間,各学期の終了時において,二男及び三男の各成績表を送付しなければならない。
3 相手方は,抗告人に対し,二男及び三男がそれぞれ高校を卒業するまでの間,可能な限り,二男及び三男の近況を撮影した写真を送付しなければならない。
4 相手方は,抗告人に対し,長男,二男及び三男の電子メールのアドレス及びLINEのIDを通知するとともに,抗告人と未成年者らがこれらの通信手段を介して連絡を取り合うことを認めなければならない。
5 手続費用は,原審及び当審を通じて,長男,二男及び三男の手続代理人の報酬については抗告人の負担とし,その余は各自の負担とする。

理  由
 (以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原審判に同じ。)

第1 抗告の趣旨
1 原審判を取り消す。
2 当事者間の東京家庭裁判所平成25年(家イ)第5525号ないし第5527号面会交流調停申立事件において平成26年11月17日に成立した調停の調停条項並びに当事者間のさいたま家庭裁判所平成27年(家ホ)第101号離婚等請求事件において平成28年1月28日に成立した和解の和解条項中第12項及び第14項を別紙のとおり変更する。

第2 事案の概要
1 本件は,元夫婦である当事者間において,抗告人(父)が,未成年者らを養育している相手方(母)に対し,平成28年1月に成立した本件和解において,少なくとも月1回の面会交流が定められたにもかかわらず,相手方がこれを実行しないとして,未成年者らと面会交流をする時期,方法等について定めることを求めた事案である。
 原審は,平成31年2月26日,本件和解条項を変更して,間接的な面会交流にとどめる内容の審判をしたところ,抗告人がこれを不服として即時抗告をした。

2 抗告理由の要旨
(1) 抗告人と未成年者らの従前の父子関係は良好であって,三男は,別居の際には家族が離れ離れになるのは嫌だと言って泣く程であったにもかかわらず,別居後,相手方は,正当な理由もなく面会交流を拒否して,5か月もの間,抗告人と会わせようとせず,その後,未成年者らは,抗告人やその親族の自宅に行くことまでを嫌がるという不自然な態度を示すに至ったものである。

このような経緯からすると,未成年者らが抗告人に対する負の感情を増大させていったのは,面会交流を拒絶されている間,抗告人に非があるという一方的な情報のみを相手方から聞かされ続けたことに主たる原因があることは明らかであって,専門家の意見書にも指摘されているとおり,未成年者らは片親疎外の状態に陥ったというべきである。

(2) 平成28年3月の面会における抗告人の対応は,緊急手術のために病院に行かなければならなかったことによる緊急避難的な対応であって,父親として正当なものということができるし,そもそも祖父母の家に連れていかれただけで父親との信頼関係が崩壊するというのは社会通念に照らしてもあり得ない。そして,このことについて誤解した未成年者らが面会交流を嫌がったことから,抗告人は,平成28年4月の面会で,勉強が嫌だからと言って勉強をしないのは良くないといった具体例を示しつつ,面会交流の重要性を説いたにすぎない。

 原審判は,このような抗告人の対応を否定的に評価するとともに,未成年者らの心が抗告人から離れたという現状を単に追認する判断をしているが,面会交流の意義について未成年者らが誤った理解をしている以上,公権力が介入してでも,未成年者らに正しい理解を促すことが子の福祉に合致する。そして,監護親である相手方は,未成年者らが望んでいないと述べるばかりで,面会交流に応じるように何ら説得しようとしないのであるから,相手方に対しては,面会交流に関して適切な指導助言を行う義務を課すべきである。

(3) 未成年者ら手続代理人は,面会交流の実現に向けて未成年者らの説得を行おうとしない点で問題がある上,未成年者らの具体的な発言内容を明らかにしないから,抗告人として,どのように未成年者らと接していくべきかを検討することすらできないし,未成年者らの意向が適切に把握されているのかの疑問も生じる。

(4) 間接交流については,面会交流の専門家がSNSの大きな効用を認めており,一方的ではあっても,SNSでメッセージを送信し続けるだけでも意義があると述べているのであるから,手紙の送付だけではなく,SNSによる交流をも認めるべきであることを予備的に主張する。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,抗告人と未成年者らとの面会交流については,当面,間接交流にとどめるべきであり,交流の条件としては,本件和解条項14項及び原審判主文第2項のほか,本決定主文第2項ないし第4項のとおり定めるのが相当であると判断する。その理由は,以下のとおり補正し,後記2を追記するほかは,原審判「理由」第2の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。


         (中略)


(8) 11頁17行目末尾に行を改めて以下のとおり加える。
(5) 未成年者らの現在の状況
 未成年者らは全員,抗告人の強い希望で,抗告人の母校であるFの初等科ないし中等科に在学していたが,長男が外部進学を強く希望し,また,相手方と未成年者らがGに転居したこともあって,別居後,長男は私立H高校,二男はI中学校にそれぞれ入学し,また,三男は,J小学校に転校した。
 長男は,高校卒業後の平成31年4月,K大学に入学し,自宅から通学している。
 当審において,未成年者ら手続代理人が再度,未成年者らの意向確認を行ったが,全員,充実した学校生活を送っており,それぞれ学業等に忙しいので,今はそっとしてほしい旨の希望を述べており,抗告人との面会交流を拒否する姿勢に変化はない。」

(9) 12頁4行目の「本件においては,」の後に「未成年者らと抗告人の直接の面会を強行することは相当でなく,子らの福祉の観点から,より望ましい面会交流のあり方を検討することが必要な状況に至っているというべきであるから,本件和解に至る経緯やその後の実施状況等を勘案してもなお,現時点においては,」を,同5行目の「変更すべき事情が」の後に「新たに」をそれぞれ加え,同10行目の「前記2のとおり」の前に以下のとおり加え,同11行目の「あるところ,」を「ある。」と改める。

 「同居当時,抗告人と未成年者らとの親子関係に格別の問題がなく,また,平成28年3月の面会の出来事も,抗告人の行動の是非はともかく,それ自体が未成年者らとの面会交流を禁止・制限すべき事由に当たるものではない。したがって,客観的には,抗告人と未成年者らの面会交流の実施が子の福祉に反するものとは考えられないが,他方,未成年者らの年齢,能力等に鑑みると,面会交流の実施の可否を判断するに際して,その意向を十分尊重すべきであるところ,」

(10) 12頁21行目から22行目の「主張するが」を「主張し,臨床心理士作成の意見書(甲41,43)を提出するが,当該臨床心理士は,未成年者らと実際に面会したわけでもなく,自らの見解に基づき意見書を作成したにすぎない上,」と改める。

(11) 13頁8行目から9行目の「全く不可能であるとまではいえない」を「期待される」と改め,同16行目冒頭から23行目末尾までを以下のとおり改める。
「ウ 抗告人は,間接交流の方法として,電子メールやLINE等のSNSを用いたメッセージの送信を主張するのに対し,相手方は,これが相当でない旨主張する。

 確かに,前記のとおり,未成年者らは,抗告人との面会を強く拒否し,LINEでの連絡をも拒んでいるところではあるが,本来,可能な限り抗告人と未成年者らの交流の機会を確保することは,中長期的に見れば,子の福祉の観点からも望ましいことは論を俟たないし,また,そもそも本件においては,本件和解条項により直接の面会が認められており,抗告人と未成年者らの面会交流を禁止・制限すべき典型的な事由が存在するわけではないにもかかわらず,抗告人と未成年者らとの面会交流が,平成28年4月の面会以後,長らく途絶えているといった経緯が存在する。

そうすると,前述のとおり,直ちに直接の面会を再開するのは困難であるとしても,未成年者らとの関係修復を図るため,抗告人に対して,より簡便で効果的な連絡手段の利用を認める必要性が高いと考えられるし,それによる具体的な弊害が大きいわけでもない。

 したがって,未成年者らが抵抗感を感じるであろうことを十分考慮しても,電子メールやLINEを用いたメッセージの送受信による間接交流を認めるべきであり,そのために,相手方において,未成年者らのアドレス等の連絡先を抗告人に通知するのが相当である(もとより,抗告人においては,メッセージの送信によって,より未成年者らの反感を増すことのないよう,送信頻度やその内容については十分な配慮が求められる。)。

(12) 14頁1行目冒頭から3行目の「いわざるを得ない。」までを以下のとおり改め,同7行目の「前記認定の事実関係」から13行目の「考えられる反面,」までを削る。
 「 その原因については,例えば,抗告人が通常の家庭とは異なる呼称を未成年者らに用いさせていたことや,Fに通学させることへの強いこだわり,より根本的には,抗告人が未成年者らの気持ちを十分に理解しようとせず,自らの考えを未成年者らに押し付けて,言うことを聞かせようとする姿勢への反感ないし抵抗感等が影響しているものと推測できるものの,それ以外にも様々な事情が影響しているものと考えられる。」

(13) 15頁1行目から2行目の「全く不可能であるとまではいえない」を「期待される」と,同22行目から23行目の「主文第2項から第4項までのとおり変更する」を「変更し,間接交流について,①手紙の送付,②高校卒業時までの成績表及び写真の送付(なお,長男については,現時点では既に高校を卒業したので,その対象から除くこととする。),③電子メールやLINEによる連絡について定める」とそれぞれ改める。

2 抗告理由に鑑み,必要な限度で補足する。
(1) 抗告人は,前記第2の2(1)のとおり,抗告人と未成年者らの従前の関係は良好であったから,未成年者らが抗告人に対する負の感情を増大させていったのは,抗告人との面会交流を拒絶し,抗告人について一方的な情報を聞かせるといった相手方の行為に主たる原因がある旨主張する。

 しかし,別居直前の会話の録音内容(甲18の2,20の2)等を見ても,抗告人と未成年者らの関係に格別の問題がなかったという程度を超えて,良好な関係であったとまで認めることはできないし,引用に係る原審判「理由」第2の3(3)(補正後のもの)における説示のとおり,未成年者らが抗告人に対する抵抗感等を感じていた部分もあるというべきであって,実際,月1回の面会交流の際,未成年者らが楽しくなさそうな様子を示していたことは,抗告人自身も実感していたところである。

確かに,別居後,相手方が面会交流に否定的な姿勢を見せていた時期があるし,別居の原因について,抗告人に対して否定的な説明を未成年者らにしていた可能性も否定し得ないものの,その後,結果的には,1か月に1回の頻度で,抗告人と未成年者らとの面会交流が実施されていたのであるし,抗告人との面会交流を嫌がる未成年者らに対して,一応の説得を試みるなどしていたのであるから(引用に係る原審判「理由」第2の1(3)エ及びカ(補正後のもの)参照),抗告人に対する負の感情の主たる原因が,相手方による働きかけにあったとは認められない。

そして,その後,3年以上もの長期間が経過したことや,未成年者らの現在の年齢や判断能力にも照らすと,現時点においてもなお面会交流を拒絶する未成年者らの反応は,未成年者らの自発的な意思に基づくものと見るのが相当であって,相手方の影響を強く受けたものであるということはできない。
 よって,抗告人の上記主張は採用することができない。

(2) 抗告人は,前記第2の2(2)のとおり,平成28年3月の面会や平成28年4月の面会の際の抗告人の行動は正当なものであるし,面会交流の意義について未成年者らが誤った理解をしている以上,監護親である相手方において,適切な指導助言を行う義務を課すべきである旨主張する。

 しかし,抗告人の行動は,未成年者らにとって,自分たちをだまして実家に連れて行ったのではないかとの疑いを生じさせるものである上,その後,長時間にわたって自己の正当性を主張したことや,未成年者らの言い分に対して耳を傾けることなく,自らの考えを押し付けようとする面があったこと(なお,平成28年4月の面会の際には,「会えなくなったら,寂しくて自殺しちゃうかもしれないよ。自殺してほしい? 死んでほしいと思う?」等の不適切な発言もされていた。)等からすると,未成年者らが抗告人との面会交流に消極的になったのにも一応の理由があるというべきである。

そして,未成年者らの年齢や理解能力にも照らすと,面会交流の実施に際しては,未成年者らの意向を十分に尊重する必要があると考えられるし,その明確な意思に反して,直接の面会という負担の大きい面会交流を強制することも相当ではない。

確かに,上記のような抗告人の行動は,一般に面会交流を禁止・制限すべき事由に当たるとまで評価できないものであるが,一定程度の年齢・理解能力を有する未成年者らが面会交流を明確に拒否する意思を有している以上,監護親に対して,直接の面会の実施や,面会交流に前向きになるような説得を義務付けるのではなく,むしろ,抗告人の側で,手紙,メール,LINE等の方法を用いて,自らの思いを未成年者らに率直に伝えることによって,未成年者らの抵抗感等を和らげ信頼関係を構築するように努め,未成年者らの了解を得た上で,直接の面会の実施につなげていくべきものと考えられる。

 よって,抗告人の上記主張は採用することができない。

(3) 抗告人は,前記第2の2(3)のとおり,未成年者ら手続代理人の活動姿勢を問題視するが,未成年者らの手続代理人という立場に照らして,同人の手続活動に不当な点は見当たらないし,いずれにせよ,現時点においても,抗告人との面会交流を拒否する未成年者らの意思に変わりがないことに特段疑いを抱くべき事情は存在しないから,本件結論に影響を及ぼすものとはいえない(なお,未成年者ら手続代理人において,未成年者らに本決定の内容を告知・説明する際,裁判所は,抗告人と未成年者らとの直接交流が不要と判断したわけではなく,いずれ父親である抗告人との直接交流が再開されることが望ましいと期待したものである旨適切に伝えられるべきであることをあえて付言する。)。

第4 結論
 以上によれば,抗告人と未成年者らとの間接交流の具体的内容については,本件和解条項14項及び原審判主文第2項のほか,本決定主文第2項ないし第4項のとおり定めるのが相当であるところ,これと異なる原審判は相当でないから,上記のとおり変更することとし,主文のとおり決定する。
 東京高等裁判所第4民事部  (裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 今岡健 裁判官 橋爪信)
以上:6,750文字
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R 2- 6-30(火):歯科医が断言”食後30分以内に歯磨きをしてはいけない”記事紹介
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○「歯磨きは食後すぐが良いって本当?-との解説記事紹介」で、「普通の人はやはり、食べ物を餌にして酸を出すプラークや細菌を取り除くためにも、食後すぐの歯磨きが良いとのことです。」と紹介していました。

○ところが、以下の、江上一郎歯学博士の「歯科医が断言「食後30分以内に歯磨きをしてはいけない」」では、やはり、「食後の歯磨きはエナメル質を傷つける恐れがある」とのことで、「食後20~30分以内は磨く必要はない」とのことです。

○以下、江上一郎歯学博士の記事の備忘録です。
1 もっとも重要なのは「夜寝る前」
2 次に「起床後すぐ」
3 余裕があれば「食後30分後以降」も
食後20~30分以内は磨く必要はない-食後の歯磨きはエナメル質を傷つける恐れがある
「唾液は天然の歯磨き剤」食後は舌先で歯を磨け
食後は水で口をすすぎ、そのまま飲み込む
食後は「マイ歯間ブラシ」で食べかすを取り除く
むし歯や歯周病の多くは睡眠中に進行する
寝る直前と起床直後の丁寧な歯磨きは必須
歯磨きをしないで朝食をとると、食べ物の糖が、大量のネバネバに棲む細菌と結びつき、歯垢をどんどんつくる


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歯科医が断言「食後30分以内に歯磨きをしてはいけない」
うがい後の水は飲んだほうがいい
歯学博士 江上 一郎


むし歯や歯周病を防ぐには、いつ歯磨きをすればいいのか。歯科医の江上一郎氏は「多くの人に驚かれることだが、食後20~30分以内の歯磨きは避けた方がいい。食後はうがいをして、その水を飲み込むだけで十分だ」という——。

歯磨きには「ゴールデンタイム」がある
歯のケアについて患者さんから質問されることのうち、もっとも多いのは、「歯はいったいいつ磨けばいいのか」ということです。

逆にどうされているのかを聞いてみると、「食後すぐに毎日3回」「夕食後1回」「就寝前に1回」「食後3回+起床時と就寝前の1日5回」「毎食後に洗口液+磨くのは寝る前だけ」「食事前と後にもする」「口臭がするときだけ」「朝食後や外出前のみ」「痛いから磨かない」など、患者さんによってさまざまです。

実のところ、先述のプラークコントロールという目的と、食事と睡眠に関わる唾液の分泌と働き、それに伴う口の中の細菌の数の増減を考え合わせたタイミングがベストであり、結論から言って、私は次のように考えています。

1 もっとも重要なのは「夜寝る前」
2 次に「起床後すぐ」
3 余裕があれば「食後30分後以降」も


なぜこのタイミングがよいのかを、患者さんのケースとともに、磨くべきではない時間から順に説明しましょう

食後20~30分以内は磨く必要はない
患者さんの回答で多いのは、出勤や外出前の「朝食後」、次に「朝食後と夕食後すぐ」でした。しかし、これまでに述べたように、食後すぐから20~30分以内は唾液分泌も多く、口の中では歯の脱灰と再石灰化が行われているため、この間はとくに、歯磨き剤を使ってゴシゴシと磨くことは避けるほうがよいと考えています。

そのように告げると、「え、食後すぐではないの?」「学校で食後3分以内に3分間磨けと教えられたけど」と驚かれる方はとても多いのですが、歯科学的に口腔トラブルの研究が進んだいまでは、「食後すぐに磨く必要はない。食後すぐの歯磨きの場合、磨きかたによっては口腔の健康によくない場合がある」と考えられています。

その理由を簡潔に述べると、「唾液が1日のうちでもっとも多いのは、食事中と食後だから」です。先述のように刺激時唾液といって、唾液は、唾液腺が刺激されたときに分泌量が増えます。食事中と食後は、噛むことによって三大唾液腺と小唾液腺がいっせいに活発化し、唾液が急増するときです。くり返しますが、食後30分ぐらいの間までに、脱灰と再石灰化が起こって初期むし歯を修復します。

食後の歯磨きはエナメル質を傷つける恐れがある
食後すぐに歯磨き剤を使って歯磨きをすると、せっかく分泌された唾液を洗い流すことになります。歯の再石灰化、抗菌・殺菌や消臭作用をさまたげるのです。とくに、泡立ちの成分である発泡剤が含まれる歯磨き剤を使って強く磨くと、口の中をじゃぶじゃぶと洗濯するようなもので、唾液がごっそり流されることになります。

また、食後すぐは口の中が酸性に傾いているため、歯のエナメル質がやわらかくなっています。すぐに歯を強く磨くとエナメル質に傷がつきやすくなります。また、大人の歯の特徴として、根の部分は、エナメル質の保護がなくて象牙質が露出しているため、とくに傷がつきやすい状態です。

さらに、食後は口の中の細菌は食事とともに胃に流されて激減しているため、丁寧に磨く必要もありません。日ごろは意識しないかもしれませんが、食後の口の中を思い起こしてください。ネバネバしていないでしょう。乾燥も口臭もほとんど感じることはありません。これは、口の中がサラサラの唾液で満たされて細菌もあまり存在しない、良好な状態だからです。食後30分ぐらいはその状態が続きます。

「唾液は天然の歯磨き剤」食後は舌先で歯を磨け
食後すぐに歯を磨きたくなるのは、歯磨き剤に含まれる発泡剤や研磨剤、香料によって爽快感を得られるからではないでしょうか。

確かに、磨いた瞬間はすっきりするかもしれません。しかしそれは、歯磨き剤に含まれる薬剤成分の作用によるそのときだけの感覚です。爽快感を覚えてもらえるように配合されているのです。それによって、きれいに清掃されて口腔の健康を保っていると誤解しがちです。実際には、汚れや食物残渣(食べかす)が取り切れていないということが多々あります。

食後に歯を磨きたいときは、天然の歯磨き剤である唾液を活用してください。舌先を歯ブラシに見立てて、唾液で歯の表面を磨くようになぞりましょう。食後の歯の再石灰化にも大いに役に立ちます。口の中で多くの唾液が流れているほど、歯の表面が洗われて汚れも付着しにくくなるからです。これは食後でなくても「いつでもどこでもできる歯磨き法」です。本を読みながらでもできますので、いますぐ行ってみてください。

一方、空腹のときには口の中が乾燥してネバネバ感を覚え、口臭を自覚することがあるでしょう。この場合は唾液が不足して細菌が増えている状態です。食前に口の中のネバネバを感じたら、水を飲む、水で口をすすぐ、それができないときは、第二章の口腔トレのどれか行いやすい方法を状況によって選び、少しでも実践して唾液分泌を促してから食事をしてください。すると、唾液による嚥下機能が促進されます。

食後は水で口をすすぎ、そのまま飲み込む
では食後、歯間などにつまった食べかすはどうすればいいのでしょうか。

食べかすを取り除いて口臭も抑え、口からのどの粘膜を潤すことができるとっておきの方法があります。それは、「食後、ひとくち程度の分量の水を口に含み、縦に4~5回と横に4~5回、ぐちゅぐちゅとすすいでからゴクンと飲みこむ」ことです。その水を吐き出すのではありません。飲むことで、口臭予防と、のどの奥までの洗浄と保湿になります。

私はこれを「ぐちゅぐちゅゴクン」と名付けて推奨しています。

患者さんには、「お父さんがよくしていて、汚いなぁと家族で話していたのですが……」と驚かれることが多い方法です。しかし、お父さんが正解です。

いまの60歳以上の世代の若いころには、食後にお茶でぐちゅぐちゅして口を洗う習慣がありました。食後すぐは自分の食べたものが口の中に残っているだけで細菌もほとんどいないので、汚いことはまったくありません。災害の現場や避難所で節水を余儀なくされる場合にも、この水すすぎで飲みこむ方法は推奨されています。飲みこむためにも、洗口剤ではなく、水や白湯、お茶ですすぐことがコツとなります。

食後は「マイ歯間ブラシ」で食べかすを取り除く
その後に唾液を利用して、『すべての不調は口から始まる』で紹介している「舌回し体操」で歯の表面や歯ぐき、上あご、下あごをなぞってみてください。前述のように、唾液を歯磨き剤に、舌先を歯ブラシに見立てて、口の中を磨くイメージで行いましょう。

食後すぐのタイミングで実行しておきたいもうひとつのケアは、つまようじや歯間ブラシ、デンタルフロスなどで食べかすを取り除くことです。食べかすはまだ歯垢になっていないため、つまようじや歯間ブラシで容易に取り除くことができます。歯磨き剤を使わないので、唾液を洗い流すこともありません。

歯間や歯と歯ぐきの境目のブラックトライアングルにたまった食べかすを取り除くと、そこに唾液が流れてむし歯の自然修復作用である再石灰化に役立ちます。そのために、「マイ歯間ブラシ」を常に携帯するとよいでしょう。

食後すぐのタイミングでの口腔ケアには、「唾液で歯磨き+ぐちゅぐちゅゴクン+舌回し体操+歯間ブラシ」を行いましょう。2~3分でできます。

むし歯や歯周病の多くは睡眠中に進行する
唾液の分泌が1日のうちでもっとも増える時間は食事中と食後だと言いました。では唾液がもっとも減る時間帯とはいつでしょうか。

それは、「睡眠中」です。睡眠中は体の生理的活動が低下し、涙や胃腸の運動が鈍化、呼吸器系や脳も休息し、体から排出される液体すべてが減少します。唾液の分泌量は1日1~1.5Lと述べました。そのうち、安静時の分泌量は1時間あたりの平均が約19mlであるのに対して、睡眠時は平均2mlと激減します。これは大小の唾液腺の活動がとまるためと考えられています。

つまり、睡眠時は、唾液のすべての作用が期待できず、口の中は細菌が繁殖して急増します。このため、むし歯や歯周病の多くは睡眠中に進行するのです。そこで、夜寝る前に歯を磨いて、できるだけ歯垢を取り除いておくことがプラークコントロールにとって最重要になるわけです。夕食後は前述の唾液による口腔ケアをして、「寝る直前」に丁寧に磨いてください。

寝る直前と起床直後の丁寧な歯磨きは必須
次に、朝起きたときの口内の状態に注目しましょう。口の中が渇いてネバネバしているでしょう。年齢とともに自覚する人が増えますが、そのネバネバが細菌の増殖を示しています。起床してすぐは、口の中は細菌のかたまりでいっぱいなのです。

歯磨きをしないで朝食をとると、食べ物の糖が、大量のネバネバに棲む細菌と結びつき、歯垢をどんどんつくります。また、起床してすぐに水を飲むのもいいことではありません。口の中いっぱいの細菌をのどや体内に送ることになるからです。水を飲むのは歯磨きのあとにしましょう。

毎日、朝起きたらできるだけ時間を置かずに、歯磨きをしてください。それもいきなり歯ブラシを使わないで、まずは水で口を何度かすすぎましょう。ネバネバの細菌を少しでも口の中から追い出したあとに、歯磨きを丁寧に行います。すすぎをしないで歯ブラシを使うと、細菌をブラシで口の中いっぱいにかき回すことになります。

もし、面倒なときやしんどいときは、発泡剤やアルコールを含まない、殺菌性がある洗口剤ですすぎましょう。ただし、歯垢は歯間や歯と歯ぐきの境目に付着するので、洗口剤だけでは不十分な場合がほとんどです。できるだけ歯ブラシで磨いてください。

起床後すぐに歯を磨くことで、朝食時に細菌を体内に取り込む量は減り、糖尿病や誤嚥性肺炎など体と脳への悪影響の予防に直結します。歯磨き後に口腔トレを行ってから朝食をとると、唾液の分泌量が増えて食事中の咀嚼や消化、食後の再石灰化を促すことができます。

歯磨きのタイミングを1日の時系列で整理すると、「起床直後と睡眠直前の1日2回」は必須です。このときは時間をかけて丁寧に磨きましょう。仕事中や外出時は、「ぐちゅぐちゅゴクン」と、つまようじや歯間ブラシで食べかすのケアをします。

余裕があれば、食後20~30分を過ぎてから、軽く歯磨きをしましょう。この場合は1日に5回、歯磨きをすることになります。それが理想ではありますが、平日はなかなか難しいでしょう。

まずは「起床直後(朝食前)と睡眠直前は必ず磨く」ことを習慣にしてください。そのうえで、1日に数回の口腔トレを行うと、唾液の分泌促進とプラークコントロールが可能になります。
以上:4,988文字
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R 2- 6-29(月):映画”ランボー ラスト・ブラッド”を観て-従来シリーズとはちと異なる
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○令和2年6月28日(日)は、)、「TOHOシネマズ仙台」の8番シアターで、「ランボー ラスト・ブラッド」を観てきました。シルベスター・スタローンのランボーシリーズは、平成20年6月の「映画「ランボー最後の戦場」を観て」以来、12年ぶりです。シルベスター・スタローン氏も御年73歳のとのことです。

「TOHOシネマズ仙台」は、令和2年2月15日(土)の「映画”1917 命をかけた伝令”を観て-戦場没入体験できます」以来、4ヶ月ぶりです。ガラガラに空いているかと思って行きましたが、1席おきの席に6割方全客席の実質3割程度入っていたようです。両隣の席が空席の1席おきは、圧迫感がなく実に快適です。この体制がズッと続けば良いと思いました。

○私が「TOHOシネマズ仙台」で映画を鑑賞するのは殆ど6番シアター「IMAX®デジタルシアター」だけでした。ところがここ1年程、6番シアターのワイヤレス補聴システムが故障し、ヘッドホンを借りて使用しても音が聞こえない状態が続いていました。しかし、今回おそらく初めて8番シアターで鑑賞し、ヘッドホンを借りて使用したところ、音がハッキリ聞こえました。補聴システムが故障しているのは6番シアターだけのようです。

○難聴者にならないとその不便さは実感出来ないと思いますが、補聴器で聞く音と、生の自分の耳で聞く音は、質的に異なります。補聴器で聞く音は、いわば機械の音であり、何より、長時間、補聴器を通じて特に大音量を聞くとズッシリと疲れ、補聴器を外すとホッとします。裁判所では、裁判官の声を聞き漏らさないように耳かけ型強力補聴器をつけて行きますが、裁判が終わって事務所に帰ると直ぐにこの強力補聴器を外します。ズッシリ疲れが溜まっているからです。

○特に大音量を補聴器で聞くのは大変辛いものです。6番シアターでヘッドホンが使えない時は、やむを得ず補聴器で映画を鑑賞しますが、映画は時に大音量になり、補聴器での鑑賞は大変辛い状況となります。しかしヘッドホンの場合、自分の生の耳で聴きますので、大音量になってもさほど苦になりません。生の耳は、大音量を自然に抑制してくれるからです。人間の生の耳は、実に良く出来ていることは、補聴器を使用するとハッキリ判ります。

○というわけで、8番シアターでは、補聴器ではなく、ヘッドホンを利用して、自分の生の耳で「ランボー ラスト・ブラッド」を、大音量を苦にすることなく鑑賞できました。御年73歳のシルベスター・スタローン氏、裸は見せませんでしたが、肩幅や胸の厚みは相変わらずで、且つ、腹も出ておらず、歳を取っても身体トレーニングは継続しているようです。最終20分程度の戦闘シーンでは、鋭い身体の動きを見せてくれました。

○戦闘シーンの残酷さは、「ランボー最後の戦場」と同様でしたが、ランボーシリーズ復習のため前日6月27日(土)に10年ぶりにBDで「ランボー最後の戦場」を鑑賞し、残酷シーンに慣れていたせいか、さほど苦になりませんでした。人間、慣れとは恐ろしいものだと実感しました。戦闘シーンと言っても、今回は、正に「私闘」であり、現実の戦争の過酷さを見せてくれた「ランボー最後の戦場」と比べてなんか違うなと、違和感を感じました。
以上:1,332文字
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R 2- 6-28(日):”「不倫で番組降板」がアメリカではありえない訳”一部紹介
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○「複数の結果発生地がある場合の不法行為準拠法を判断した高裁判決紹介」の続きで、アメリカのニューヨーク州では、不倫相手に留まらず不倫した配偶者への慰謝料請求が認められない理由を説明した記事の紹介です。

○日本では、特に芸能人が不倫すると、サンドバッグの様に叩かれ、時に芸能人として再起不能にまで社会的制裁を受けます。最近は、美人妻をめとっているくせに数多くの不倫を、多目的トイレまで利用して重ねていたという人気お笑い芸人が、長く話題になっています。あれほどの美人を妻にしているのに不倫はけしからんと言う論調に、ビートたけし氏が、その論調はおかしいと正論を述べていました。美人妻を強調すると、美人妻でない場合は不倫しても良いのかとなり、それこそ差別だと言います。

○不倫を叩くのは、基本的には「妬み」ですが、とびきりの美人を妻にして、且つ、多くの女性と不倫を重ねることは、実は、男性ならば誰でもしてみたいことの典型です。しかし、多くの人はしたくても出来ないため、それを実現している男性に対する「妬み」はより強くなります。その意味で、美人を妻にした上で多くの不倫するのはけしからんと言う論調は全く自然です(^^)。

○この日本人の「妬み」根性について、アメリカと比較した記事を見つけましたので紹介します。猿渡由紀さんという方の「『不倫で番組降板』がアメリカではありえない訳」と言う以下の記事です。

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「不倫で番組降板」がアメリカではありえない訳
政治と芸能を「同価値に扱う日本人」の奇妙
猿渡 由紀 : L.A.在住映画ジャーナリスト

お笑いタレント渡部建さんの不倫が、あいかわらず日本のメディアを騒がせている。彼が謝罪会見をするのかしないのかにも、注目が集まっているようだ。

         (中略)


差別はダメでも「不倫」には寛容なアメリカ
今やったことであれ、大昔の失敗であれ、ハリウッドのタレントは差別発言をしてしまったら、絶対に公に謝罪をしなければならない。一方で不倫で謝罪会見をすることは、まずない。

世間もそれを求めていないし、不倫したタレントが映画やテレビから降板させられることもない。事実、ジュリア・ロバーツやブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ベン・アフレックなど、不倫経験があることで知られるスターは今も大活躍している。

なぜ差別をした俳優は即座に解雇され、不倫はお咎めなしなのか。ロサンゼルス在住の映画ジャーナリストのジル・プリングさんは、「結局のところ、ハリウッドにとって一番大事なのはお金だからでは」という。

「人種差別発言をした俳優が出る映画は、興行成績にすぐ影響します。でも、不倫はそうではありません。それは実績として証明されています」と、プリングさん。たしかに、たとえば黒人に向けての差別発言をした場合、黒人はもとより、ほかの有色人種やリベラル志向の白人は、その俳優の映画を観に行かないだろう。

実はその映画を観たいと思っていた人も、周囲の目を恐れてやめるかもしれない。その割合は相当なものだ。さらに問題の俳優を雇い続けることで、そのスタジオは人種差別者を擁護していることになり、ほかの作品までボイコットされてしまう危険がある。映画を作るのには多額のお金がかかるのに、そんなことになっては台無しだ。

では、なぜアメリカの観客は「不倫したスターを出すな」と怒らないのか。『MEG ザ・モンスター』『ヒステリア』などのプロデューサーのケネス・アチティさんは、「スターのセックスライフなんて、どうでもいいことだからですよ。LGBTの権利が広く受け入れられてきた今では、なおさらです」という。

それは納得だ。「文春砲」が現政権の汚い秘密を暴露するのと同じように、芸能人の私生活の秘密を明かす日本。影響力を持つ雑誌が「政治スキャンダル」と「芸能ゴシップ」という真逆のテーマを同程度に扱う結果、日本人の多くが両方に興味を持ち、同じ重みを持っている。

アメリカでは、政治スキャンダルや芸能ゴシップネを扱う媒体はまったく別で、そこにははっきりとした線がある。ゴシップ専門の雑誌やサイトにまるで興味がない人は、それらの“ニュース”を知らないし、知りたいとも思っていない。ゴシップの需要が十分あるかたわら、それらをいっさい読まない人もたくさんいるのだ。

また、アメリカ人にとって「しょせんはよその家の中のこと」という認識が強いのも関係しているだろう。不倫は当人たちの問題であり、ほかが立ち入る領域ではないという考え方だ。裁判所ですら立ち入らないのである。

アメリカでは離婚において「有責」という概念がなく、どちらが悪かったかは関係がない。すなわち、慰謝料も存在しない。ハリウッドスターが離婚で多額のお金を払ったというニュースは時々出るが、それは慰謝料ではなく、財産分与だ。不倫をしたのは向こうなのに、稼ぎが多いがゆえに不倫されたほうが財産を払うはめになるということも、しょっちゅう起こる。不条理な話だが、それこそ、ふたりの大人の間の問題である。

差別に怒るアメリカ人、不倫に騒ぐ日本人
人種差別発言は、世の中に悪影響を与える。みんなが良い方向に変えようと努力している今のような時代は、なおさらだ。そんな勢いに水を差し、時代を逆行させるような発言をしてしまったら、謝罪し、正さなければならない。差別の対象となる人々にも、傷つけたことをお詫びしなければいけない。

一方で不倫は外に迷惑をかけない。だからアメリカのスターは、「プライベートな話はお断り」と言えばすむ。雇う側も気にしない。前述のアチティさんも、「ある俳優が不倫をしたとわかったところで、キャスティングを変える必要は微塵も感じない」と言っている。

もちろん不倫は人として、いけないことだ。道徳的に間違っているし、身近な人、愛する子供を傷つける行為である。だが、それは本人が一生、肩に背負っていく個人的な罪。外部は決して、それを「裁く」権利をもたないのだ。
以上:2,479文字
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R 2- 6-27(土):複数の結果発生地がある場合の不法行為準拠法を判断した高裁判決紹介
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○「ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80a全文紹介」でニューヨーク州では「不貞行為により第三者が婚姻関係を侵害する不法行為(alienation of affection)を原因とする金銭的損害賠償請求権は廃止され,同州内で行われた当該行為を原因として州内及び州外で訴えを提起することが禁じられている」と説明していました。要するに日本国内では、彼方此方で、頻発し、弁護士収入の大きなタネになっているている不貞行為第三者責任追及訴訟は、ニューヨーク州では認められません。

○そのニューヨーク州で、日本人同士が不貞行為当事者となった事件で、日本人の妻が、夫の不貞行為相手方に損害賠償請求をしたところ、一審平成30年10月30日横浜地裁判決は、日本人妻としての権利侵害,婚姻共同生活平和維持の法的利益の侵害という結果発生地はニューヨーク州であり、準拠法は同州法となるので請求は認められないとしました。

○これに対し、不貞行為は日本帰国後も続いていたことを理由に日本法の適用を認めて損害賠償請求を認めた令和元年9月25日東京高裁判決(判タ1470号75頁)概要を紹介します。
事案概要は以下の通りです。

・妻であるXと夫であるY1は平成15年に婚姻、平成21年までに3人の子をもうけ、Y1は日本国内で公務員として勤務し,Xは専業主婦
・Y1は,約3年の予定で米国NY州に海外勤務となり,平成25年3月に家族全員でNY州に引っ越、
・平成25年10月頃にはY1の勤務先の同僚女性Y2(日本国籍・米国永住権あり)とY1との間の不貞関係がNY州で始まり,Y2は,Y1から,Y1の家族関係などを知らされた
・同年末にはY1がY2の住居で寝泊まりするのを常とするようになり,XはY1からY2がY1の子を懐妊したことを告げられ、平成26年9月にはY2がY1の子を出産
・平成27年にはXがY1を相手方としてNY州の裁判所に短期保護命令や養育費支払調停の申立
・Y1の米国勤務が平成27年12月に終了することが決まると,YらはYらの子と3人で日本で同居することを選択して日本国内での住居を確保
・Y1は,Xと子3名の日本国内での住居は確保せず,婚姻費用(生活費)の任意の送金も一切せず、Xと子3名は,Y1から悪意の遺棄を受けたような状態になり,帰国後は日本国内のXの実家に身を寄せた
・不貞行為の期間は,NY州が約2年3箇月,日本が約3年6箇月
・第1審判決は、第1審判決は,不法行為の準拠法を結果発生地法とし、複数の結果発生地がある場合については判断を示さず、XとY1との婚姻関係破綻の時期がNY州滞在中の平成27年8月であり,Xの妻としての権利侵害,婚姻共同生活平和維持の法的利益の侵害という結果発生地はNY州であるから,準拠法はNY州法であると判断し、Xの請求棄却


○Xが控訴し、控訴審令和元年9月25日東京高裁判決は、本件は,NY州と日本において行われた一連の一個の不法行為であり,複数の結果発生地がある場合であると判断し、複数の結果発生地がある場合における不法行為の準拠法は,最も重要な結果が発生した地の法であるし、日本法が適用されると判断しました。

○その上で,本件においては,
XとY1一家の夫婦共同生活は基本的には日本で営まれており米国勤務は一時的なものにすぎなかったこと,
不貞行為はNY州で終了せずに切れ目なく日本において継続されたこと,
Xと子ら3名はNY州では不十分ながらもY1から衣食住の提供を受けていたが,日本帰国時には悪意で遺棄されたも同然の扱いを受けたこと,
Y2は交際開始時にY1の家族関係や米国赴任の事情を知らされていたこと,
Y2も不貞行為をNY州で終了させずにY1及び子と同居して日本国内においても不貞行為を継続したこと,
XとY1の婚姻関係が不貞行為開始前に破綻していたことや離婚の約束があったことを認めるに足りる証拠はなく,Y2がY1の離婚の約束の説明を真に受けたことには過失があること
などの事情があり,不貞行為期間がNY州約2年3箇月,日本約3年6箇月であることなどを考慮して、Yらに330万円の支払を命じました。
以上:1,706文字
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R 2- 6-26(金):頚部神経根症と頚部脊髄症の症候による診断
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○現在、交通事故後の頚部の障害について、外傷性の神経根症か、頚髄症のいずれかであると主張している案件があり、NEWMOOK整形外科№6特集/頚椎症の「[4]頚部神経根症と頚部脊髄症の症候による診断」からの備忘録です。

・頚部神経根症ならびに頚部脊髄症は、いずれも頚椎の変性過程で、神経根と脊髄がそれぞれ圧迫されて生ずる症候群と定義され、両者にはそれぞれの病態に特徴的な症候がある

・神経根症
頚部痛で発症するのが殆ど。手足のしびれは遅れて生じることが多い
頚部痛とは、項部、肩甲上部、肩甲骨上角部、肩甲間部、肩甲骨部のいずれかの痛みを言う
指のしびれの部位が重要で、神経根症では片手にあるのが普通
しびれは、朝方に改善し、午後~夕方に強くなることが多い
初診時に頚部痛と頚部から上肢に放散する痛みがあれば神経根症と診断できる
スパーリング頚部圧迫テストが高率で陽性であり、神経学的異常所見が単一神経根の支配域に一致してみられる
神経根症における障害神経根の診断には、疼痛としびれの部位が神経学的所見に劣らず重要で、例えばC7神経根症では肩甲間部と上腕後側に痛みがあり、しびれは示あるいは中指で最も強い
一般に神経根症では会話中に頚椎の動きが少ない、頚をよく動かして症状を説明する患者は神経根症の可能性は少ない
頚椎を患側に側屈させ、同時に後屈させて頭部に下方への圧迫を加えると、頚部から肩、上肢、手に放散する疼痛が再現
筋力低下、腱反射低下、知覚障害が高率でみられる
C7神経根が罹患する頻度が最も高く、ついで、C6,C8,C5の順である。
肩甲上部の痛みは、C5あるいはC6神経根症であることが多く、同時に上腕・肘・前腕の橈骨側に痛みがあれば殆どC6神経根症
肩の三角筋部の痛みはC5、肩甲間部・肩甲骨部の痛みはC7あるいはC8神経根症、同時に上腕・肘後ろ側の痛みがあればC7、上腕・肘・前腕の尺骨側の痛みはC8
しびれ、pinprickでの知覚障害がどの指が最も強いかでの判断は、母指はC6、示指あるいは中指はC7、小指はC8とほぼ判断できる
筋力低下および腱反射異常では、
三角筋および上腕二頭筋に筋力低下があればC5あるいはC6、上腕三頭筋の筋力低下はC7、手内在筋筋力低下はC8、
上腕二頭筋腱反射低下はC5あるいはC6、上腕三頭筋腱反射低下はC7あるいはC8、
C5あるいはC6神経根症で三角筋の著しい筋力低下が長期化して肩関節に拘縮と痛みを併発することがある

・頚髄症
手指のしびれで発症することが最も多い。左右のいずれかに生じて、まもなく両側性となる例が多い。頚部痛での発症は皆無といってよい。
指のしびれの部位が重要で、脊髄症では両手にあるのが普通
しびれは常時あり、強さも殆ど変動しない
脊髄症では、症状が灰白質あるいは白質の障害の2種類に由来することの理解が重要
初期症状として頻度の高い手指のしびれが灰白質由来の症状、続いて手指のもつれ等の手指巧緻運動障害が現れる
白質由来の症状は、足の引きずり・もつれといった痙性歩行、排尿障害
頚椎を後屈させることで、手指さらには下肢のしびれを再現できる
脊髄症の重症例では痙性歩行がみられ、歩行に異常がなくても片脚起立ができないか不安定であることが多い
脊髄症は、C5-6椎間が罹患する頻度が最も高く、次いでC4-5、C3-4、C6-7
しびれの初発指が、橈骨側の指ないし全指で始まっていればC3-4椎間、
尺骨側2~4指が初発すれば殆どがC5-6椎間、小指が初発すればC6-7椎間例もあるが頻度は低い
腱反射異常・筋力低下・知覚障害
上腕三頭筋腱反射低下で85%、上腕三頭筋筋力低下で79%、尺骨側指(小指のみを除く)知覚障害で96%の確率でC5-6椎間が責任椎間板高位と推測
以上:1,536文字
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R 2- 6-25(木):頚椎神経根症について後遺障害等級第12級を認定した地裁判決紹介
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○乗用車を運転中の32歳男子会社員が乗用車に追突され頸椎捻挫等から多彩な症状の訴えで「安静と投薬等を真面目に行った結果筋力低下が起こった」、「治療の遷延に原告の側に帰責させるべき事情が窺われないこと等に照らせば、同判断は相当」であり、「原告の症状は、平成19年5月17日に固定したと認めるのが相当である」等、1802日後の症状固定及び残存する神経症状は、第4、5、6頚椎神経根症によるものであり、別表12級相当の後遺障害が残存したものと認められると認定した平成21年11月4日東京地裁判決(交民集42巻6号1456頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 被告は、原告に対し、金3273万7572円及びこれに対する平成14年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告は、原告に対し、3448万0443円及びこれに対する平成14年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
1 本件は、追突事故の被害者が、追突車の保有者に対し、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任に基づく損害賠償として、損害金及び事故日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めたという事案である。

2 前提事実(争いのない事実及び掲記証拠により認められる事実)


     (中略)


3争点
(1) 症状固定時期

ア 原告の主張
 適切な治療がなされなかったこと等も影響し、長期にわたり症状が改善されない状況が続いたばかりか、多彩な症状の蔓延を来していたが、平成19年から通院し始めたI病院で適切な治療やアドバイスを受けたことで症状が改善しそれなりの安定を示した平成19年5月17日が症状固定日である。

イ 被告の主張
 本件事故後3ヶ月か6ヶ月程度で症状固定状態となっていた。被告は、原告の強い希望に応じ平成15年11月30日まで治療費等の支払に応じていたが、いかに遅くとも同日より後ではあり得ない。

(2) 後遺障害の程度
ア 原告の主張
 原告に残存する神経症状は、第4、5、6頚椎神経根症によるものであり、自動車損害賠償法施行令別表(以下「別表」という。)第2の12級相当のものである。

イ 被告の主張
 原告に残存する症状は、他覚的所見を伴わない自覚症状のみであり、せいぜい別表第2の14級10号「局部に神経症状を残すもの」にとどまる。



     (中略)


第三 争点に対する判断
1 争点(1)(症状固定日)について

 原告は、本件事故による受傷後、「頚~後側頭部痛」、「左上肢しびれ」や「腰臀部痛」等を訴えていた(前提事実(2))ところ、H病院整形外科での平成16年12月3日の頚椎、胸椎、腰椎のMRI所見によれば、「第3、4、5、6頚椎高位軽度後方突出が見られ、脊柱管が圧排されています。特に第5、6頚椎高位では軸断画像でも脊柱管の狭窄が認められる。」とあること、I病院の戌田三郎医師は、明らかな脊柱管の狭窄や圧排は認められないとしつつも、脊椎第4、5、6間での不安定性を認めていること(前提事実)から、原告の訴えと上記所見とが神経学的に一致しており、原告の症状は、第4、5、6頚椎神経根症によるものと認められる。

 この点、甲山四郎医師は、原告の症状は、他覚的所見のない頚椎捻挫、腰椎捻挫であるから、長期治療を必要とする医学的根拠はないとして、事故後3ヶ月から6ヶ月程度で症状固定状態となっていた旨述べるが、前提が異なることになる。

 他方、原告の症状が第4、5、6頚椎神経根症によるものだとしても、症状固定まで約5年を要するというのは異常ともいえる。この点、I病院の戌田三郎医師は、原告が同病院を受診するに至るまで病状について十分な説明が行われず、多科間での連携もないため、原告の訴えに対して不安を煽る結果となった、症状の遷延や、頚部や腰痛の病状ばかりでなく、目まいなどの耳鼻科症状、消化器症状、精神科的症状の悪化等の多彩化は、漫然とした治療方針やその内容である安静と投薬等を真面目に行った結果筋力低下等が起こったためとしており、I病院での適切な治療の結果、症状の安定が得られたとして、平成19年5月17日をもって症状固定日と診断しているところ、A整形外科の丙川一郎医師は、平成18年2月24日作成の労働者災害補償保険診断書において、原告の症状が「一進一退」であったと判断しており、症状が改善、増悪を繰り返し安定していなかったことが窺われるばかりか、適切な治療を受ければ症状改善を図る余地があったこと、治療の遷延に原告の側に帰責させるべき事情が窺われないこと等に照らせば、同判断は相当であろう。
 よって、原告の症状は、平成19年5月17日に固定したと認めるのが相当である。

2 争点(2)(後遺障害の程度)について
 上記1のとおり、原告に残存する神経症状は、第4、5、6頚椎神経根症によるものであり、別表12級相当の後遺障害が残存したものと認められる。

3 争点(3)(損害の多寡)について
(1) 治療費 351万0511円
 証拠(略)によれば、平成14年6月10日から平成19年5月17日までの治療に要した費用が351万0511円であると認められ、同額は本件事故と相当因果関係のある損害である。

(2) 薬剤費 51万9060円
 証拠(略)によれば、薬剤費として51万9060円を要したことが認められ、同額は本件事故と相当因果関係のある損害である。

(3) 通院交通費 15万0046円
 証拠(略)、弁論の全趣旨によれば、通院交通費として15万0046円を要したことが認められ、同額は本件事故と相当因果関係のある損害である。

(4) 休業損害 3131万0710円
 基礎日額1万0855円は当事者間に争いがない。
 証拠(略)、原告本人によれば、原告は、本件事故当時、精密板金・試作板金の専門会社であるJ株式会社に勤務し、デジタルカメラの部品等、高精度のメカ部品の試作製造やISO9001認定取得の業務に従事していたこと、本件事故後の症状のため就労できない状態が続き、職場復帰の目処が立たないため平成18年7月29日付けで同社を退職せざるを得なかったこと、以後も就労できない状態が続き、平成21年8月からガソリンスタンドでのアルバイトを始めたことが認められる上、原告の状態については、証拠(略)によれば、A整形外科の丙川一郎医師は、労働者災害補償保険に対し、同医院への通院期間中(平成19年2月14日まで)の間、療養のため労働することができなかった旨の証明書を作成している上、前提事実のとおり、同医師、I病院の戌田三郎医師は、通院可能であるが就労できない状態であることを認めた労働者災害補償保険診断書を作成していることが認められる。
 以上によれば、原告は、症状固定日である平成19年5月17日まで就労不能であったと認められる。
 (日額1万0855円×1802日=1956万0710円)
 また、証拠(略)によれば、原告が健康な状態で勤務していれば、1175万円の賞与、臨時賞与を得られたと認められる。

(5) 後遺障害逸失利益 1228万9852円
 証拠(略)によれば、原告は、本件事故の前年である平成13年には、508万2997円の賃金を得ていたことが認められ、同額は、同年度の賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男子労働者、30~34歳の平均賃金(497万4600円)を上回っていたことや、事故当時、原告は32歳であったことを併せ考慮すると、逸失利益の基礎収入は、症状固定日の属する平成19年度の賃金セン サス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男子労働者、35~39歳の平均賃金である571万0500円とするのが相当である。
 労働能力喪失14%、67歳までの喪失期間30年(ライプニッツ係数15.3725)として計算すると、1228万9852円となる。

(6) 傷害慰謝料 170万円
 通院期間、原告の症状や期間中の精神的苦痛等、諸般の事情を総合考慮すれば、慰謝料として170万円を認めるのが相当である。

(7) 後遺障害慰謝料 290万円
 別表12級相当の後遺障害が残存しており、慰謝料として290万円を認めるのが相当である。

(8) 弁護士費用
 (1)~(7)の小計は、538万0179円から1175万5491円が支払われたことは当事者間に争いがなく、証拠(略)によれば、労働者災害補償保険から1003万7116円(休業補償832万4704円、障害一時金171万2412円)が支払われたこと、弁論の全趣旨によれば、自賠責保険から75万円が支払われたことが認められ(合計2254万2607円)、これらを損害元本に充当すると、2983万7572円となる。
 本件訴訟に至る経緯、審理経過、認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、290万円が相当である。

4 よって、原告の請求は、主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
  東京地方裁判所 裁判官 鈴木正弘

以上:3,880文字
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R 2- 6-24(水):長男の首を絞める等で別居した妻の婚姻費用分担請求却下高裁決定紹介
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○「長男の首を絞める等で別居した妻の婚姻費用分担請求認容家裁審判紹介」の続きで、その抗告審の平成31年1月31日東京高裁決定(判タ1471号33頁)全文を紹介します。

○妻である相手方が、夫である抗告人に対し、婚姻費用分担の調停を申し立てたが、不成立となり、審判に移行し、原審が、抗告人夫が相手方に対し、15万6454円を即時に支払い、当事者の離婚又は別居状態の解消までの間、毎月末日限り、1か月あたり1万6000円を支払うことを命ずる旨の審判をし、抗告人夫が、原審判を取り消し、相手方の本件申立てを却下する旨の決定を求めて抗告しました。

○これに対し、東京高裁は、抗告人夫と相手方妻の別居の直接の原因は本件暴力行為であるが、この本件暴力行為による別居の開始を契機として抗告人と相手方との婚姻関係が一挙に悪化し、別居の継続に伴って不和が深刻化しているとみられ、本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には、相手方妻の長男に対する暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのでるから、そのような相手方が、抗告人に対し、その生活水準を抗告人と同程度に保持することを求めて婚姻費用の分担を請求することは、信義に反し、又は権利の濫用として許されないとして、原審判を取り消し、相手方妻の申立てを却下しました。妥当な判断と思います。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 相手方の本件申立てを却下する。
3 手続費用は,第1,2審を通じ,相手方の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨等
1 抗告の趣旨

 主文同旨

2 抗告の理由
 本件抗告の理由は,
〔1〕相手方は,別居開始日である平成29年6月10日,に当事者間の長男C(以下「長男」という。)の首を絞め,抗告人を包丁で切りつけたものである上,それ以前から長男に対し,叩いたり,蹴ったりという虐待をしていたのであるから,別居の主な原因を作出した相手方の有責性は明らかであり,婚姻費用分担請求は信義則違反又は権利濫用として認められない,
〔2〕相手方は,抗告人と別居後も,抗告人が引き続き居住する住居に係る住宅ローンの返済として毎月24万6675円を支払い,更に相手方と長男が暮らす自宅の住居費として毎月18万6000円を支払っているのであるから,当該金額を婚姻費用から差し引くべきである
というものである。

3 相手方の主張
 相手方の主張の要旨は,
〔1〕平成29年6月10日における抗告人への包丁での切りつけについては,最初に暴行を行ったのは抗告人である、
〔2〕長男の首を絞めたことについては,記憶ははっきりしていないし,仮にこれをしていたとしても生命の危険のあるようなものではなかった,
〔3〕それ以前の長男に対する暴力は,長男に子育ての困難をもたらすような特徴的な行動傾向があったことに加え,抗告人にも,ほとんど長男の監護養育をしなかったという不適切な点があり,抗告人の主張は,10年に及ぶそれまでの抗告人,相手方,長男の家族関係の経緯を捨象したもので,極めて偏ったものといわざるを得ない,
〔4〕本件は,以前から別居を企図していた抗告人が同日のトラブルを契機として別居を敢行したものである,
〔5〕住宅ローンの支払は抗告人にとって資産形成の側面を有しており,抗告人が負担している住宅ローン支払額をそのまま住居費とみることは適切ではない
というものである。

第2 事案の概要
 本件は,妻である相手方が,夫である抗告人に対し,平成29年7月29日,東京家庭裁判所立川支部に婚姻費用分担の調停(平成29年(家イ)第2372号)を申し立てたが,平成30年3月23日不成立となり,審判に移行した事案である。 
 原審は,抗告人が相手方に対し,15万6454円を即時に支払い,平成30年10月から当事者の離婚又は別居状態の解消までの間,毎月末日限り,1か月当たり1万6000円を支払うことを命ずる旨の審判をした(原審判)。
 抗告人は,これを不服として,原審判を取消し,相手方の本件申立てを却下する旨の決定を求めて本件抗告を提起した。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判を取り消し,相手方の本件申立てを却下することが相当判断する。

 その理由は,次のとおりである。

2 認定事実
 認定事実は,次のとおり補正するほかは,原審判の「理由」中の「第2 認定事実」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(補正)
(1)原審判3頁7行目「続かなくなると,」と「長男を」の間に「長男が小学校に入学してからは週1回程度」を加える。
(2)原審判3頁8行目「なった。」の後に「相手方の長男に対する継続的な暴力のため,長男は心理的に深い傷を負い,相手方に対する恐怖を感じるようになった。」を加える。
(3)原審判4頁14行目「飛び出した。」の後に「抗告人は,そのような相手方の姿を見て,もう一緒に生活をすることはできないと考えた。」を加える。
(4)原審判5頁24行目「支払っている」の後に「が,相手方が鍵を取り付けて抗告人の立入りを拒んでいた」を加える。

3 婚姻費用分担義務の存否について
(1)夫婦は,互いに協力し扶助しなければならないところ(民法752条),別居した場合でも,他方に自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負う。夫婦の婚姻関係が破綻している場合においても,同様であるが,このような生活保持を求めて婚姻費用の分担を請求することが,当事者間の信義に反し,又は権利の濫用として許されない場合があると解される。

(2)本件において,抗告人と相手方が別居に至った経過は,前記認定事実のとおり,平成29年6月10日に,酔って帰宅した相手方が,長男に対し首を絞め,壁に押し付けて両肩をつかむなどの暴力をふるい,これを注意した抗告人ともみ合い,つかみ合いとなり,包丁を持ち出して抗告人に向けて振り回し,抗告人を負傷させるなどの行為(以下「本件暴力行為」という。)に及び,それを見た長男が玄関から裸足で飛び出したことから,抗告人が,自分と長男の生命,身体の危険を感じ,長男と共に家を出てホテルに宿泊した後,相手方と別居するに至ったというものである。長男は,同月12日,警察官に対し,これまで相手方から暴力をふるわれていたため,相手方とは暮らしたくないと述べ,D児童相談所に一時保護された。その後,自宅への立入りを巡って抗告人が相手方に対し,立入妨害禁止仮処分命令事件(東京地方裁判所立川支部平成30年(ヨ)第50号)を申し立て,相手方は離婚訴訟(東京家庭裁判所立川支部平成30年(家ホ)第182号)を提起するなどの状況となったものである。

 このような経過に照らすと,抗告人と相手方が別居するに至った直接の原因が本件暴力行為であることは明らかであり,抗告人と相手方との間においては,別居の開始以降,婚姻関係を巡る相当に激しい紛争が続いているということができるところ,前記認定事実によれば,抗告人と相手方の婚姻関係は,同居中から円満とはいえない状態であったことがうかがわれるが,別居に至るほどの亀裂が生じていたとは認められず,本件暴力行為が原因となって一挙に溝が深まり,別居の継続に伴って不和が深刻化したと認められる。

 相手方は,本件暴力行為の以前から,長男を叩く,蹴るなどしており,このような度重なる暴力によって長男の心身に大きな傷を負わせていたことがうかがわれ,その上に,酔余,生命に危険が生じかねない本件暴力行為に及んだものであって,相手方のこれらの暴力が長男に与えた心理的影響は相当に深刻であったとみられる。そして,児童相談所が,長男を相手方の監護下に置くことはできないとの判断の下に一時保護の措置をとり,抗告人は,相手方と別居して監護環境を整え,家庭裁判所により長男の監護者に定められ,その監護をすることとなったものである。このような経過を経て,長男は,相手方と暮らしたくないとの意思を明確に表しており,抗告人が相手方との別居を継続しているのは,本件暴力行為そのものに加え,このような長男の状況やその身の安全を慮ってのことでもあるということができる。

 以上によれば,抗告人と相手方の別居の直接の原因は本件暴力行為であるが,この本件暴力行為による別居の開始を契機として抗告人と相手方との婚姻関係が一挙に悪化し,別居の継続に伴って不和が深刻化しているとみられる。そして,本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には,相手方の長男に対する暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのであって,このことに鑑みれば,必ずしも相手方が抗告人に対して直接に婚姻関係を損ねるような行為に及んだものではない面があるが,別居と婚姻関係の深刻な悪化については,相手方の責任によるところが極めて大きいというべきである。

(3)翻って,相手方と抗告人の経済的状況をみると,前記認定事実のとおり,相手方は,栄養士及び調理師として稼働し,平成29年には330万円余りの年収があるところ,抗告人が住宅ローンの返済をしている住居に別居後も引き続き居住していることによって,抗告人の負担において住居費を免れており,相応の生活水準の生計を賄うに十分な状態にあるということができる。

他方,抗告人は,会社を経営し,平成29年には約900万円の収入があって,それ自体は相手方の収入よりかなり多いが,相手方が居住している住宅に係る住宅ローンとして月額約24万6000円を支払っており,さらに,別居後に住居を賃借し,長男の一時保護措置が解除された後に同住居において長男を養育しているが,その住居の賃料及び共益費(月額合計18万6000円),私立学校に通学する長男の学費(年額91万9700円)や学習塾の費用(月額約4万円)などを負担している。

(4)上記(3)のような相手方及び抗告人の経済的状況に照らせば,上記(2)のとおり別居及び婚姻関係の悪化について上記のような極めて大きな責任があると認められる相手方が,抗告人に対し,その生活水準を抗告人と同程度に保持することを求めて婚姻費用の分担を請求することは,信義に反し,又は権利の濫用として許されないというべきである。

(5)相手方は,10年間に及ぶそれまでの抗告人,相手方,子の家族関係の経緯を見るべきであると主張する。前記認定事実のとおり,相手方は,抗告人及び長男との同居中,小学校に在籍する長男の世話のほとんどを担う中で,長男の問題行動に悩み,注意しても一向に治まらなかったことから暴力に及んだのであるが,相当に鬱屈した精神状態であったことがうかがわれる。

他方,抗告人は,育児を相手方に任せ,平成25年秋頃から平成27年秋頃までの間,長男に話しかけることも,長男からの話しかけに応答することもしなくなり,相手方とも話をしない状態となっていたものであり,抗告人のこのような態度が相手方の鬱屈の一因であったと考えられ,この点においては,抗告人と相手方の婚姻関係が同居中から円満とはいえない状態となったことについて,抗告人にも相応の非があったというべきである。しかし,平成29年春頃までには,長男と抗告人が共に外出したり,抗告人と相手方もある程度の会話をしたりするようになっており,抗告人,相手方,長男の家族関係は一応修復されていたとみられ,抗告人の非といっても,本件暴力行為から別居に至る過程との関係では,相手方の責任と比較すればごく小さな比重のものにとどまるというべきである。したがって,上記の抗告人の態度は,前記(4)の判断を左右するものではない。

(6)なお,相手方は,抗告人が,平成29年6月10日より前から別居を準備していたと主張し,その根拠として,同年3月31日に抗告人が家族3人の生命共済を解約していたこと(甲21の1ないし3,22,乙18,19),同年6月16日付けで抗告人の依頼した弁護士が受任通知を送付し,子の監護者指定の審判事件や保全事件を申し立てる旨を知らせたこと(甲14)を挙げるが,そのような事情だけで,抗告人が平成29年6月10日よりも前から計画的に別居を準備していたとまでは認められない。

4 小括
 よって,その余の点について検討するまでもなく,相手方の抗告人に対する婚姻費用の請求は認められない。
 その他,当事者の主張に鑑み,本件記録を精査しても,上記認定判断を左右するに足りる的確な主張及び資料はない。

第4 結論
 以上のとおり,相手方の本件申立ては理由がなく,却下すべきであるから,これと結論を異にする原審判を取り消すこととして,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 白井幸夫 裁判官 高取真理子 裁判官 榎本光宏)
以上:5,248文字
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R 2- 6-23(火):長男の首を絞める等で別居した妻の婚姻費用分担請求認容家裁審判紹介
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○妻である申立人が、夫である相手方に対し、婚姻費用分担の調停を申し立てたが、不成立となり、審判に移行した事案で、申立人妻が長男の首を絞めたり、相手方に包丁で切りつけるなどしたことが別居の原因で、申立人は有責配偶者であるから、婚姻費用を請求するのは信義則違反又は権利濫用として却下されるべきであると相手方夫が主張しました。

○これについて、長男に対する申立人妻の行為が別居の直接の端緒であるとしても、家庭不和に陥った原因は申立人妻が専ら又は主として有責であるとまでいうことはできず、申立人が相手方に対して婚姻費用分担を求めるのが信義則違反であるとか権利濫用であるとまで断ずるのは相当でないとして、相手方に対し、15万6454円を即時に支払い、当事者の離婚又は別居状態の解消までの間、毎月末日限り、1か月当たり1万6000円を支払うことを命じた平成30年10月11日東京家裁立川支部審判(判例タイムズ1471号35頁)判断部分を紹介します。

○長男は,申立人妻(母)から首を絞められたことがあり、以前から申立人妻が酔っていると,長男は身の危険を感じることがあり、申立人妻とは暮らしたくないことなどを述べ、相手方夫が,子の監護者の指定を求めて審判事件及び保全処分事件を申し立て、長男は相手方夫(父)のもとで暮らすようになっている事情があり、抗告審では覆されています。抗告審決定は別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,15万6454円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,平成30年10月から離婚又は別居解消までの間,毎月末日限り,1万6000円を支払え。
3 手続費用は,各自の負担とする。


理   由
第1 申立ての趣旨

 相手方は,申立人に対し,婚姻費用として,毎月相当額を支払え。

第2 認定事実
 本件記録及び手続の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
1 申立人(昭和47年○月生)と相手方(昭和36年○月生)は,平成17年5月に婚姻し,長男(平成18年○月生)をもうけた。

2 平成25年3月,当事者双方は,E市内に住宅を購入して転居し,同年4月,長男は,私立のF小学校へ電車通学を始めた。
 長男の通う小学校では中学受験を目指す者が多かった。長男も,中学受験のために,小学校4年生に進級する前の平成28年3月ころから,週に3,4日は学習塾に通った。平成29年4月にはその学習塾を辞め,同年6月1日から,申立人が探したGという学習塾に通い始めた。

3 申立人は,長男の出生後は専業主婦で,育児・家事に従事していたが,長男の成長とともに,少しずつ働き始め,平成27年ころから,栄養士及び調理師として保育園に勤務するようになった。平成28年の給与収入は334万7796円で,平成29年の給与収入は333万7483円である。
 当事者双方の同居中は,申立人は,自己の収入を管理していたほか,相手方から月額25万円の生活費を受け取って,諸費用に充てていた。

4 相手方は,平成21年11月に1社,平成23年11月にもう1社を創業し,代表取締役を務めている。両社とも複数の収益不動産の管理・運用をその業務としている。
 相手方の確定申告書に基づく相手方の収入等は,次のとおりである。
                  平成28年分    平成29年分
収入金額 営業等        105万6056  211万1916
     不動産       2919万2183 2880万5622
     給与          55万0000   60万0000
所得金額 営業等       -407万5969  -46万2507
     不動産        828万3113  752万6951
     給与                0         0
     合計         420万7144  706万4444
社会保険料控除          20万4638   13万6365
課税される所得金額       297万9000  597万8000
専従者給与(控除)額の合計額  102万0000  102万0000
青色申告特別控除額        65万0000   65万0000

5 別居に関わる事情
(1)長男は,小学校生活への適応状況も概ね良好であったが,小学校に入学するころから,問題行動,例えば,大人に嘘をつく,友人の物を取って隠す,図書館の本を捨ててくる,学校からの連絡物などを外に放置して帰宅する,自宅から金を持ち出して菓子等を買うなどが見られるようになった。

 申立人は,長男に注意したり,担任教諭らに相談して,配布物や提出物を申立人が管理できるようにする方法を試みるなどしていたが,長男の問題行動は一向に治まらなかった。申立人は,長男に冷静に言い聞かせるように努めたが,根気が続かなくなると,長男を叩いたり蹴ったりしてしまうようになった。


         (中略)


(5)平成29年6月11日,E警察署生活安全課から相手方に電話があり,申立人が自宅に戻らない相手方や長男を心配している旨を伝え,長男の所在を尋ねてきた。相手方は,長男と一緒にいること,翌12日からはホテルから小学校に通わせること,12日にはE警察署に相談に行くことを伝えた。
 同月12日,申立人は,E警察署で事情聴取を受けた。

(6)平成29年6月12日,相手方は,E警察署生活安全課に相談に行き,児童相談所を紹介された。警察官が小学校を訪れ,長男に事情を聞いた。長男は,同月10日に申立人から首を絞められたこと,そのときの傷は,相手方が写真を撮っていること,申立人から首を絞められたのは初めてであるが,以前から申立人が酔っていると,長男は身の危険を感じることがあったこと,申立人とは暮らしたくないことなどを述べた。同日,D児童相談所(以下「児童相談所」という。)は,長男を一時保護した。

(7)平成29年7月3日,相手方は,子の監護者の指定を求めて審判事件及び保全処分事件を申し立てた。申立人は,一貫して,長男の首を締めたことは覚えていないと述べ,むしろ,相手方から何か分からない物で叩かれるなど暴力を振るわれたため,生命の危険を感じて,包丁を持ち出したと述べている。
 児童相談所は,同年8月25日付けで一時保護措置を解除し,長男は相手方のもとで暮らすようになった。
 同年11月17日付で,相手方を長男の監護者と指定する審判がされ,その後確定した。

6 相手方は,別居後,F小学校から徒歩15分程度の所に住まいを借りて,賃料を支払っているほか,自宅の住宅ローン(月額24万6675円)も支払を続けている。
 長男は,従前と同じ私立小学校に通っている。平成30年度の授業料等は,91万9700円(乙9)である。平成29年度の授業料等も同水準である。
 長男は,自宅に戻った後は学習塾のGは中断したままであったが,平成30年3月から,新たにGに通い始めた。相手方は,同年4月2日にスタート月謝として5184円を支払い,同年5月からの月謝として4万1472円(前月27日支払)を支払っている(乙10)。

7 申立人は,平成29年7月29日,本件審判に移行する前の調停事件(当庁平成29年(家イ)第2372号,以下「本件調停」という。)を申し立てた。本件調停は,平成30年3月23日,不成立で終了し,本件審判に移行した。

8 相手方は,申立人が単独で自宅に居住している一方で,相手方が住宅ローンを支払っていることから,申立人に対し,立入妨害禁止等仮処分命令事件(東京地方裁判所立川支部平成30年(ヨ)第50号)を申し立てた。当事者双方は,平成30年7月18日,相手方が一定の条件のもとで自宅に立ち入ることを認める和解を成立させ,相手方は上記申立てを取り下げた。
 申立人は,離婚訴訟(当庁平成30年(家ホ)第182号)を提起した。

9 本件調停申立時の平成29年7月以降,申立人が居住する自宅の光熱費で,相手方が負担したのは,別紙のとおりである(概算額の部分を含め,当事者双方が合意済みの金額である。)。

第3 判断
1 夫婦は,互いに協力し扶助しなければならないところ(民法752条),別居した場合でも,自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負う。
 相手方は,申立人が長男の首を絞めたり,相手方に包丁で切りつけるなどしたことが別居の原因で,申立人は有責配偶者であるから,婚姻費用を請求するのは信義則違反又は権利濫用として却下されるべきであると主張する。

 確かに,平成29年6月10日の出来事の発端は,申立人が酔って帰宅し,長男の首を絞めるなど暴力を振るったことであると認められる。同年3月31日に相手方が申立人,相手方及び長男を被共済者とする保険契約を解約していたこと(甲21の1ないし3,22,乙18,19)や,同年6月16日付で相手方の依頼した弁護士が受任通知を送付して,子の監護者指定の審判事件や保全事件を申し立てる旨を知らせたこと(甲14)が認められるが,それだけの事情によって,相手方が平成29年6月10日以前から計画的に別居を準備していたとまで認めることはできない。

 長男の首を絞めること自体が,いくら酔っていたとはいえ,生命に危険を及ぼしかねない重大な行為であることは否定できず,申立人の責任は軽視できない。しかしながら,申立人がそのような行為に至るについては,長男の問題行動に悩み,相手方に相談もできない状態で,一人鬱屈した精神状態であったことがうかがわれ,平成29年6月10日以前から,当事者双方の間で円満を欠く状態であったものと推察される。したがって,長男に対する申立人の行為が別居の直接の端緒であるとしても,家庭不和に陥った原因は申立人が専ら又は主として有責であるとまでいうことはできず,申立人が相手方に対して婚姻費用分担を求めるのが信義則違反であるとか権利濫用であるとまで断ずるのは相当でない。

2 そこで,本件調停の申し立てられた平成29年7月以降の婚姻費用について検討することとする。婚姻費用の分担額は,義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定して,義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし,これを,生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から,権利者の上記基礎収入を控除して,義務者が負担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式(判例タイムズ1111号285ページ以下参照。以下「標準算定方式」という。)に基づいて検討するのが相当である。

3 相手方の収入について
(1)申立人は,相手方が別件の子の監護者指定の事件において提出した陳述書(甲1ないし3)を総合すると,相手方は,経営する会社からの収入や家賃収入等で2000万円程度はあると述べているにもかかわらず,確定申告書の所得金額では,平成28年は420万7144円,平成29年は706万4444円と記載されていて,生活実態と著しく異なっているので,相手方の申述に基づく収入が根拠とされるべきであると主張する。

 しかしながら,自営業者等が収入という場合には,一般的には粗利益を指し,営業用の種々の経費などを考慮していない数値のことが多いので,陳述書の収入の説明と確定申告書が大きく異なるとしても,確定申告書の記載が信用できないと断定することはできない。

(2)相手方の収入は,平成29年分の確定申告書の所得金額597万8000円に,生命保険料控除(9万円),扶養控除(48万円),基礎控除(38万円),専従者給与(控除)102万円及び青色申告特別控除65万円を加算した859万8000円に,さらに,相手方の給与収入60万円を事業収入に換算した47万円を加算した906万8000円と把握するのが相当である。

4 申立人の収入は,平成29年の給与収入である333万7483円を用いることとする。生活費指数は,申立人と相手方は各100,長男は55とする。基礎収入割合は,給与所得者の場合,総収入の34パーセントないし42パーセントで,収入が多いほどその割合が低くなるので,申立人の場合,38パーセントとするのが相当である。自営業者の場合,基礎収入は総収入の47パーセントから52パーセントで,収入が多いほどその割合が低くなるので,相手方の場合,49パーセントとするのが相当である。そうすると,次のとおり,相手方が負担すべき婚姻費用額は,8万0965円と算定される。
333万7483×0.38=126万8243(1円未満切捨て。以下同様。)・・・ア
906万8000×0.49=444万3320・・・イ
(126万8243+444万3320)×100/(100+100+55)
=571万1563×100/255
=223万9828
223万9828-126万8243=97万1585(年額)・・・月額8万0965

5 算定結果を修正すべき事情の有無
(1)長男の私立小学校の学費
 標準算定方式では,公立の学校の教育費だけを考慮しているところ、本件では,別居の前後を通じて長男を私立小学校に通わせているから,その学費分は,別途考慮しなければならない。私立小学校の学費等(91万9700円)から標準算定方式において織り込み済みの公立小学校の学校教育費5万9153円を差し引いた86万0547円を,申立人と相手方の基礎収入(前記4のア・イ)の比率に応じて負担することとするのが相当であり,申立人の負担分は,次のとおり,月額1万5920円と算出される。
126万8244:444万3320=約22.2:77.8
86万0547×0.222=19万1041(年額)・・・月額1万5920

(2)長男の学習塾の費用
 長男の通う小学校の多くの者が中学受験をする中で,長男も,別居前から学習塾に通っていたのであるから,通塾再開について申立人の同意を得ていないとしても,その費用について,学費と同様に,申立人と相手方の基礎収入(前記4のア・イ)の比率に応じて負担することとするのが相当である。平成30年4月の支払分は4万6656円,同年5月以降は月額4万1472円であるから,申立人が負担すべき分は,同年4月については1万0357円,同年5月以降は9206円と算出される。 
4万6656×0.222=1万0357
4万1472×0.222=9206

(3)相手方による住宅ローンの支払
 相手方は,自己の住居の家賃のほかに,申立人が居住する自宅の住宅ローンを負担しているので,住居関係費用が加重になっている。住宅ローンは,資産形成の性格も有するので,その全額を婚姻費用額から差し引くのは相当ではないが,一定の範囲で申立人も居住関係費用を負担すべきである。

 申立人の負担額について,申立人は,申立人の収入に応じて標準算定方式で住居費用として組み込まれた金額(月額3万2590円,判例タイムズ1111号294ページ)を差し引くことを主張するが,相手方の住宅ローンの負担が月額24万6675円と多額であるから,そのうち4万円を申立人が負担することとするのが相当である。

(4)なお,相手方は,申立人が使用している自動車の任意保険料(年額5万7620円)を支払っているが,これは財産分与において検討すべきものとして,婚姻費用の算定では考慮しない。

6 前記3ないし5をまとめると,相手方の負担すべき婚姻費用は次のとおりである。
(1)平成29年7月から平成30年3月までは,2万5000円と定めるのが相当である。
8万0965-1万5920-4万0000=2万5045
(2)平成30年4月は,1万5000円と定めるのが相当である。
8万0965-1万5920-1万0357-4万0000=1万4688
(3)平成30年5月から離婚又は別居解消までは,1万6000円と定めるのが相当である。
8万0965-1万5920-9206-4万0000=1万5839

7 そうすると,相手方は,別紙のとおりの既払分があることから,平成29年7月から平成30年9月までの婚姻費用合計32万円から既払分合計16万3546円を差し引いた15万6454円を即座に支払い,同年10月から離婚又は別居解消までは,毎月1万6000円を支払うべきである。
 よって,主文のとおり審判する。

別紙〈省略〉
以上:6,848文字
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R 2- 6-22(月):脊髄小脳変成症の妻への婚姻破綻を否認し離婚請求棄却した高裁判決紹介
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○「脊髄小脳変成症の妻について婚姻破綻を認めて離婚認容した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審平成3年5月30日名古屋高裁判決(判時1398号75頁)全文を紹介します。

○原審判決は、今後、原被告が夫婦として暮らして行くことは困難であり、原被告間の婚姻を継続し難い重大な事由があるとあっさり婚姻破綻を認めて離婚請求を認容したのですが、控訴審判決は、子供との同居を願い、婚姻生活の継続を希望する控訴人の意思を考慮すると、本症に罹患し、日常生活の役に立たなくなったからという理由だけで、控訴人を妻の座から去らせようとし、しかも、入院はさせたものの、国の援助に頼るのみで、看病はおろか、入院生活の援助もせずに放置し、将来に亘る誠意ある支援態勢を示さず、被控訴人の希望する子供との交流さえ拒む、被控訴人の態度のみによって、婚姻が回復しがたいほど破綻していると認めることはできないとして、離婚請求を棄却しました。

○離婚請求を棄却したからと言ってこの冷たい夫が、妻と交流を復活させることがあり得ません。正に扶養的財産分与を厳しく認めて離婚は認めても良いのではと思うのですが、子供との面会すら禁止する夫の妻への冷たい仕打ちに対する懲罰として離婚請求を棄却しています。このような事案では妻の落ち度も相当強く主張・立証しないと有責主義傾向の強い高裁裁判官の婚姻破綻認定は得られないようです。

*******************************************

主   文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事   実
控訴代理人は、主文と同旨の判決を求め、
被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は、次に付加する外、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決三枚目裏4、5行目の「脊髄小脳変成症」を「脊髄小脳変性症」に改める)。
(被控訴代理人の陳述)
 控訴人が昭和62年2月ごろから罹患した難病は不治の病であって,身体の平衡が保てず、歩行不能、言語障害、視覚障害があり、妻として、母としての家事労働も全く不能であるから、このこと自体が婚姻を継続し難い重大な理由に該当する。離婚後、控訴人は国の保護を受け療養生活をするのが、今日の社会保障というものであろう。

(控訴代理人の陳述)
 控訴人には、離婚原因について何ら有責性がないばかりか、控訴人が身体に変調をきたすや、被控訴人は控訴人を病院に入れ、昭和62年6月初頃見舞いにきたのみで、入院費用も当初一か月金8000円ないし金1万円を負担しただけで、その後はすべて控訴人の親任せ、国任せであり、物心両面とも何ら誠意をみせていないが、このような被控訴人の態度は、正に治療に名を藉りた悪意の遺棄にも該当するものである。
(証拠関係)(省略)

理   由
一 (証拠省略)を総合すると、次の事実を認めることができる。
(1)被控訴人と控訴人は恋愛の末、昭和47年11月4日挙式し、同年12月5日婚姻届をした夫婦であるところ、二人の間には、昭和50年9月19日生の長男一郎、及び昭和53年11月30日生の長女春子がいる。
(2)被控訴人は婚姻後喫茶店を始めたので、控訴人もその手伝いをするようになった。
(3)昭和60年頃に、被控訴人が控訴人の動作の異常に気づくまでは、被控訴人は、控訴人の家事の仕方に多少の不満を抱いていたものの、比較的平穏な家庭生活を営んでいた。
(4)控訴人は、昭和62年2月頃DF市民病院で診察を受けたところ、脊髄小脳変性症と診断され、同年3月頃から同病院に入院し、現在に至っている。
(5)本症は、その原因として、ウィルス説や染色体異常説があるものの、因果関係が明確でないが、脊髄と小脳が主として変性するので、平衡感覚に失調をきたし、その結果、真っ直ぐ歩けない、階段を上手に上り下りできない、物を正しく運べない、物を持てない等の症状を呈し、言語障害もあるものの、知能障害はみられない。本症は、国の難病指定に該当する疾患であるため、治療費は全額無料である。
(6)控訴人は入院後、脊髄または小脳の変性を防ぐ注射を受け、脳の代謝や循環をよくする薬剤を投与されて、症状が軽快した時期もあったが、現在ではまた、歩行や階段の昇降に困難を覚え、言語障害も認められる。
(7)被控訴人は、控訴人の入院1回面会にきたきりで、入院の費用も昭和62年6月頃まで、1か月金8000円ないし金1万円を支弁したのみであり、将来控訴人のために支出しうるのは、1か月金2万円が限度であると言い放ち、子供に対しては、控訴人との面会を禁止している。
(8)控訴人は、被控訴人の冷たい仕打ちを嘆く一方、自己の落度に心当たりがないため、婚姻の継続を希望し、殊に子供との同居、あるいは面会、交流に執着している。

(9)仮に離婚ということになれば、控訴人の父Bf松夫が控訴人の世話をすることにならざるをえないが、同人には高齢の老人と重度身体障害者の妻がいるため、看護能力が十分でない。

以上の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

二 右認定事実によると、被控訴人と控訴人との婚姻生活における障害は、控訴人が本症に罹患したという一点にあるところ、なるほど、控訴人の現在の症状に照らせば、控訴人は家事をこなす能力に欠けており、周囲の者の理解ある援助がなければ、日常生活さえ支障をきたす状態にあるが、一方、知能障害は認められないから、夫婦間あるいは親子間における精神的交流は可能であり、子供との同居を願い、婚姻生活の継続を希望する控訴人の意思を考慮すると、本症に罹患し、日常生活の役に立たなくなったからという理由だけで、控訴人を妻の座から去らせようとし、しかも、入院はさせたものの、国の援助に頼るのみで、看病はおろか、入院生活の援助もせずに放置し、将来に亘る誠意ある支援態勢を示さず、被控訴人の希望する子供との交流さえ拒む、被控訴人の態度のみによって、婚姻が回復しがたいほど破綻していると認めることはできない。

また、控訴人の現在における症状からすれば、本症が、民法770条1項四号に定める、強度の精神病にも比肩しうる程度の疾患であるということもできない。

三 そうすると、被控訴人の控訴人に対する本訴請求は、離婚原因について立証がないことになるから、失当として排斥を免れない。
 よって、右と異なる原判決は不当であるから、これを取消して、被控訴人の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法96条前段、89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 水野祐一 裁判官 喜多村治雄) 裁判官瀬戸正義は転補につき、署名押印をすることができない。(裁判長裁判官 水野祐一)

以上:2,791文字
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