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R 7- 7-12(土):マンション法第59条に基づく競売請求を認めた地裁判決紹介
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○「マンション法59条競売に民執法63条は適用されないとした高裁決定紹介」の続きで、マンション法第59条1項に基づく競売請求をめた令和5年8月9日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○本件マンションの本件管理組合の管理者である原告が、区分所有者である被告に対し、本件管理規約に定める管理費等に係る被告による長期滞納管理費等元金169万8706円及び遅延損害金70万6661円の合計240万5367円について、区分所有法59条1項に規定する要件に該当するとして、同条項に基づき、被告の区分所有権及び敷地利用権の競売を求めました。

○被告による管理費等の滞納行為は、同法57条1項に規定する行為をした場合に該当し、また、当該行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいともいえ、被告の区分所有権及び敷地利用権には、根抵当権が設定されたところ、根抵当権の元本が確定し、一部弁済を原因として根抵当権が一部移転していること、担保不動産競売開始決定がされて差押えがされたものの、取消決定がされたことが認められ、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当するなどとして、請求を認容し


*********************************************

主   文
1 原告は、被告が所有する別紙1物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は、別紙1物件目録「一棟の建物の表示」欄記載の建物(以下「本件マンション」という。)の管理組合(以下「本件管理組合」という。)の管理者である原告が、本件マンションの区分所有者である被告に対し、本件マンションの管理規約(以下「本件管理規約」という。)に定める管理費等に係る被告による長期滞納について、同法59条1項に規定する要件に該当するとして、同条項に基づき、本件マンションに係る被告の区分所有権及び敷地利用権の競売を求める事案である。

第3 当事者の主張
1 原告の主張

 別紙「請求の原因」記載のとおり

2 被告の主張
 原告が本件マンションの管理者であること、被告が別紙物件目録1記載の建物を取得したこと、被告が管理費の支払義務等を負っていたこと、令和2年11月19日に不動産競売開始決定がされたこと、被告の商業登記後上に解散して代表清算人が選任される等の記載があることは認める。その余の事実については、不知。

第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲1から3まで及び9)及び弁論の全趣旨によれば、別紙請求の原因1及び2の各事実のほか、本件管理組合の収入は1億6257万7303円であるのに対し、支出は1億6107万4607円であるとの事実を認めることができる。そうすると、このような被告による管理費等の滞納行為は、区分所有法57条1項に規定する区分所有者が第六条第一項に規定する行為(建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同利益に反する行為)をした場合に該当するといえ、また、当該行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいともいえる。

2 証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、本件マンションに係る被告の区分所有権及び敷地利用権については、平成5年12月17日に根抵当権が設定されているところ、平成29年12月11日に根抵当権の元本が確定し、平成30年3月23日の一部弁済(弁済額4582万0683円)を原因として根抵当権が一部移転していること、令和2年11月19日に担保不動産競売開始決定がされて差押えがされたものの、令和3年8月4日に取消決定がされたことが認められる。これらの事情等によれば、本件については、「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当するというべきである。

3 証拠(甲7及び8)及び弁論の全趣旨によれば、別紙請求の原因5及び6の各事実を認めることができる。そうすると、本件は、区分所有法59条1項及び2項に規定する集会の決議に基づく訴えであって、同決議に際しては同条2項において準用する弁明する機会も与えられており、同条に規定する要件に該当するというべきである。

4 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部
裁判官 谷地伸之

(別紙1)物件目録

     (中略)

(別紙2)請求の原因
1 当事者

(1)原告は、別紙物件目録記載の一棟の建物(甲1)であるa(以下「本件マンション」という。)の区分所有者らが本件マンション及びその敷地並びに付属施設の管理を行うために、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に基づいて設立した管理組合(権利能力なき社団)(以下「本管理組合」という。)の管理者である(甲2)。

(2)被告は、平成5年12月17日、別紙物件目録記載の建物であるa××××号室(以下「本件建物」という。)の区分所有権を取得し、現在に至るまでこれを所有している(甲1)。

2 被告が区分所有者の共同の利益に反する行為をしたこと
(1)管理費等の支払義務
 被告は、平成5年12月17日、本件建物の区分所有権を取得したため、管理規約(以下、単に「規約」という。)第25条1項1号及び2号、第30条2項及び3項、第31条2項及び3項に基づき、管理費、修繕積立金、給湯暖房基本料、給湯使用料、暖房費、水道使用料(以下「管理費等」という。)の支払義務を負う(甲2)。

(2)被告による管理費等の滞納
 被告は、平成28年9月分から管理費等を滞納していたため、本件管理組合は被告に対し、令和元年12月11日に管理費等の請求訴訟を提起した。そして、令和2年3月4日、同訴訟の認容判決が出ている(甲3)。しかし、被告は、その後の管理費等の支払も履行していない。
 そのため、被告の滞納額は、令和4年7月6日現在、管理費等元金169万8706円及び遅延損害金70万6661円の合計240万5367円に増加している(別紙「滞納管理費等内訳書」参照)。

(3)以上のような、長期にわたり、かつ多額にのぼる被告の管理費等の滞納は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法59条1項、57条1項、6条1項)に該当する。

3 区分所有者の生活上の障害が著しいこと
 管理費等は、マンションの維持管理費に充てられるものであり、マンションの維持管理等に必要不可欠なものである。しかし、前述2(2)に述べたとおり、被告は、長期にわたり、多額の管理費等を滞納しているのみならず、後述4(1)に述べる被告の対応のとおり、今後発生する管理費等を完済しようという意思が認められず、今後も被告の管理費等の不払額は増大することが予想される。

 本件管理組合の予算は、直近の収支状況を見ると、収入としては1億6257万7303円あるのに対し、支出としては1億6107万4607円の支出をしており、剰余金は150万2696円しか生じていない(甲9管理費収支表参照)。また、直近の収入の内、剰余金の原資になっているのは、他の区分所有者の管理費等の滞納の回収の際に回収した遅延損害金での収入である(甲9 収支明細書参照)。

そのため、このような遅延損害金の収入がなければ剰余金はほとんど生じないような予算状況であることは明らかである。そのため、240万5367円もの滞納をしている被告が今後も本件居室を所有し続けると、収支状況はマイナスになる可能性が高く、マイナスとなった場合は、他の区分所有者が被告の負担分を補填し続けるか、それとも、本件マンションの管理・修繕の質を落とす等の措置をとらざるを得ないこととなり、区分所有者の生活上の障害が著しいといえる(区分所有法59条1項)。

4 他の方法によっては滞納管理費の回収が困難であること
     (中略)

5 総会決議
 本件マンションの区分所有者らは、令和4年3月26日の棟総会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数をもって、本件区分所有権及び敷地利用権について、区分所有法59条による競売請求訴訟を提起することを決議した(甲7)。

6 弁明の機会の付与
 原告は、上記決議に先立ち、被告に弁明の機会を与えるために、弁明の機会の付与を行った(甲8)。

7 結語
 以上の事実によれば、被告の管理費等の滞納は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法59条1項、57条1項、6条1項)に該当し、これにより「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」(同法59条1項)な状態が生じていることは明らかといえる。
 よって、原告は、被告を除く他の本件マンションの区分所有者全員のために、区分所有法59条に基づき、被告の有する本件区分所有権及び敷地利用権について競売を請求する。

以上:3,761文字
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R 7- 7-11(金):マンション法59条競売に民執法63条は適用されないとした高裁決定紹介
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○「滞納管理費約170万円でのマンション競売請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、建物の区分所有等に関する法律(マンション法)59条1項に基づく競売については、民事執行法63条は適用されないとされた平成16年5月20日東京高裁決定(判タ1210号170頁)全文を紹介します。

○本件建物の管理組合の理事長である抗告人が、専有部分の建物に対する区分所有法59条1項に基づき競売請求を認容した確定判決を債務名義とし、同判決の被告(本件建物の共有者2名)を相手方として本件建物の競売開始決定を得たところ、原審が本件建物の最低売却価額で手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権合計を弁済して余剰を生ずる見込みがないとして競売手続を取消す旨の決定をしました。

○そこでこれを不服として抗告人が抗告した事案において、東京高裁は区分所有法59条に基づく競売においては建物の最低売却価額で手続費用を弁済することすらできないと認められる場合でない限り、売却を実施したとしても民事執行法63条の趣旨(無益執行の禁止及び優先債権者の保護)に反するものではないところ、本件では最低売却価額で手続費用を弁済することができないとは認められないとして、原決定を取消しました。原決定はマンション法59条の趣旨の理解が不十分でした。

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主   文
原判決を取り消す。

理   由
1 本件抗告の趣旨

 主文と同旨。

2 事案の概要
 本件は,原決定別紙物件目録記載の一棟の建物(サンピア鎌ヶ谷)の管理組合の理事長(建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)上の管理者)である抗告人が,同目録記載の専有部分の建物(区分所有権及び敷地利用権。以下「本件建物」という。)に対する区分所有法59条1項に基づく競売請求を認容した確定判決(千葉地方裁判所松戸支部平成14年(ワ)第1128号同15年2月5日判決)を債務名義とし,同判決の被告(本件建物の共有者2名全員)を相手方として,民事執行法195条に基づき,本件建物に対する競売を申し立て(同支部平成15年(ケ)第169号),平成15年4月28日に競売開始決定を得たところ,原審が,本件建物の最低売却価額418万円で手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権合計2788万円(見込額)を弁済して剰余を生ずる見込みがないとして,その旨を抗告人に通知した上で,同年8月20日,民事執行法63条2項により,本件建物に対する競売の手続を取り消す旨のいわゆる無剰余取消決定(原決定)をしたため,抗告人が,上記競売は区分所有法59条に基づくものであり,これに民事執行法63条の剰余主義の規定は適用されないと主張して,原決定の取消しを求めた事案である。

3 判断
(1)民事執行法63条の規定は,差押債権者に配当されるべき余剰がなく,差押債権者が競売によって配当を受けることができないにもかかわらず,無益な競売がされ,あるいは差押債権者の債権に優先する債権の債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要されるというような不当な結果を避け,ひいては執行裁判所をして無意味な競売手続から解放させる趣旨のものと解される(最高裁判所昭和43年7月9日第三小法廷判決・裁判集民事91号639頁(ただし,同法施行前の民事訴訟法656条に関するもの)参照)。

(2)ところで,区分所有法59条1項による建物の区分所有権及び敷地利用権(以下,敷地利用権を含む意味で単に「区分所有権」という。)に対する競売請求は,区分所有者が同法6条1項の規定に違反して建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合等において,他の方法によっては当該行為による区分所有者の共同生活上の著しい障害を除去してその共同生活の維持を図ることが困難であるときは,他の区分所有者において当該区分所有者の区分所有権を剥奪することができるものとし,そのための具体的な手段として認められたものである。

 このような同法59条の規定の趣旨からすれば,同条に基づく競売は,当該区分所有者の区分所有権を売却することによって当該区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的とし,競売の申立人に対する配当を全く予定していないものであるから,同条に基づく競売においては,そもそも,配当を受けるべき差押債権者が存在せず,競売の申立人に配当されるべき余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はないものというべきである。

その一方で,同条が当該区分所有者から区分所有権を剥奪するための厳格な要件を定め,訴えをもって競売を請求すべきものとしていることからすれば,そのような厳格な要件を満たすものとして競売請求を認容した確定判決が存在する以上,同条に基づく競売においては,売却を実施して,当該区分所有者からの区分所有権の剥奪という目的を実現する必要性があるというべきであるから,不動産の最低売却価額で執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)及び担保権者等の優先債権(もっとも,競売の申立人との関係においては,上記のとおり,そもそも配当における優先関係が問題とならない。)を弁済して剰余を生ずる見込みがない場合(民事執行法63条1項)であっても,区分所有法59条に基づく競売をもって無益ないし無意味なものということはできない(もっとも,売却代金によって手続費用を賄うことすらできない場合には,その不足分は,少なくとも競売の手続上は,上記目的の実現を図ろうとする競売の申立人において負担すべきものである。)。

 そうであるとすると,民事執行法63条の規定の趣旨を踏まえても,なお,上記のような区分所有法59条の規定の趣旨にかんがみると,同条に基づく競売については,民事執行法63条1項の剰余を生ずる見込みがない場合であっても,競売手続を実施することができ,その場合も,競売手続の円滑な実施及びその後の売却不動産(建物の区分所有権)をめぐる権利関係の簡明化ないし安定化,ひいては買受人の地位の安定化の観点から,同法59条1項(いわゆる消除主義)が適用され,当該建物の区分所有権の上に存する担保権が売却によって消滅するものと解するのが相当である。

 もっとも,その場合は,一方で,優先債権を有する者,特に,担保権を有する債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要されるという事態が生じ得る。
 しかしながら,区分所有者は,区分所有法6条1項により,建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない義務を負っているものであり,区分所有者がこの義務に違反した場合には,これに対する措置の一つとして,同法59条により,当該区分所有者の区分所有権に対する競売請求が認められているのであるから,区分所有者の権利である区分所有権は,そもそも,同条による競売請求を受ける可能性を内在した権利というべきであり,区分所有権を目的とする担保権は,このような内在的制約を受けた権利を目的とするものというべきである。

したがって,同条に基づく競売によって,当該担保権を有する債権者がその意に反した時期に,その投資の不十分な回収を強要される事態が生じたとしても,それは,上記のような区分所有権の内在的制約が現実化した結果にすぎず,当該債権者に不測の不利益を与えるものではなく,不当な結果ともいえないものというべきである。

 これに対し,民事執行法63条1項の剰余を生ずる見込みがない場合には区分所有法59条に基づく競売を実施することができないとすると,同法6条1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活上の維持を図ることが困難であるとして,確定判決をもって,当該行為に係る区分所有者の区分所有権に対する競売請求が認められているにもかかわらず,そのような事態が放置される結果となり,そのような事態の解消は,専ら,当該区分所有者の意思か,あるいは担保権者が適当と認める時期での担保権の実行にゆだねられることとなるが,このようなことは,余りに区分所有者全体の利益を害するものであって,同法59条の規定の趣旨を没却するものであるといわざるを得ない(なお,同条に基づく競売に民事執行法63条が適用されるとすると,剰余を生ずる見込みがない場合には,同条2項に定める申出及び保証の提供により,競売の手続を続行することができるが,区分所有法59条に基づく競売の場合には,これは現実的ではなく,このことを考慮に入れても,なお,上記の判断を左右するものではない。)。

(3)以上の次第で,区分所有法59条に基づく競売においては,建物(区分所有権)の最低売却価額で手続費用を弁済することすらできないと認められる場合でない限り,売却を実施したとしても上記(1)の民事執行法63条の規定の趣旨(無益執行の禁止及び優先債権者の保護)に反するものではなく,むしろ売却を実施する必要性があるというべきであるから,同条は適用されない(換言すれば,手続費用との関係でのみ同条が適用される)ものと解するのが相当である(なお,最低売却価額で手続費用を弁済する見込みがない場合であっても,競売の申立人がその不足分を負担すれば,なお,競売は実施すべきものと解される。)。

 なお,民事執行法195条は,民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による旨規定し、これによれば,区分所有法59条に基づく競売についても,民事執行法188条,63条がそのまま適用されるようにも読めるが,上記換価のための競売には種々のものがあるにもかかわらず,その一つ一つについて民事執行法が個別の規定を置かず,同法195条において担保権の実行としての競売の例による旨だけを規定していることからすれば,むしろ,上記換価のための競売については担保権の実行としての競売に関する個々の規定の適用関係について,その趣旨や性質に応じた合理的な解釈を許容しているものとみることができるから,区分所有法59条に基づく競売について,その趣旨等に照らし,上記のとおり手続費用との関係でのみ民事執行法63条が適用されるものと解することは,同法195条に反するものではないというべきである。

(4)そこで,これを本件についてみると,本件建物の最低売却価額418万円で手続費用(見込額)を弁済することができないとは認められず,本件建物に対する競売に民事執行法63条は適用されないというべきであるから,それにもかかわらず同条2項により上記競売の手続を取消した原決定は不当である。

(5)よって,原決定を取り消すこととし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 横山匡輝 裁判官 佐藤公美 裁判官 萩本修)
以上:4,523文字
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R 7- 7-10(木):錯誤に基づく相続放棄申述取消の申述が可能な期間についての覚書
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○被相続人に多額の借金があったと思って家庭裁判所に相続放棄の申述をして受理されましたが、しばらく経って借金は無かったことが判明し、相続放棄の申述をなかったことにして、相続人になることはできませんかとの質問を受けました。最近になって遠隔地に被相続人の名義の不動産が残っていることが判明し、この不動産について相続人として他の相続人と遺産分割協議をしたいとのことです。以下の民法第919条の問題です。なお、説例は考えやすいようにアレンジしています。

第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。
2 前項の規定は、第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3 前項の取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
4 第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


○相続放棄の申述が受理されるとその人は最初から相続人ではなかったとみなされる効果が生じますが、その効果は確定的ではありません。例えば被相続人の債権者が相続放棄は無効として相続債権請求をして相続放棄の効果を争うことができます。しかし相続放棄申述者自身が、相続放棄を撤回することはできません。これを認めると身分関係が不安定になるからです。それでも質問者の場合のように相続放棄をすることに錯誤があった場合や他人に欺されて相続放棄をした場合は、民法919条2項で、取消の主張は可能です。

○この取消の主張は、再度家庭裁判所に申述しなければ効果が生じませんので、質問者のように新たに発見された不動産について相続人として遺産分割協議に参加するには家庭裁判所の相続放棄取消申述証明書が必要になります。その質問者に新たな財産が発見されたのは相続放棄申述をしてから何年後ですかと聞いたら10数年経っていますとのことでした。そうすると前記民法第919条3項によって時効によって相続放棄の取消を主張できません。残念ながら新たな財産について相続人としての権利を主張できないとの結論になります。

○ここでさらに質問者から他の相続人は、私を相続人として遺産分割協議に参加させると言っているのですがそれでもダメですかとの質問を受けました。新たに発見された財産が不動産の場合は、質問者が相続を原因とする登記することは法務局が認めないと思われ、登記原因は贈与等になり、価値があれば贈与税が課税されるおそれがありますとの回答になりました。これに対しさらになんとか相続登記をして、贈与税を回避する巧い方法はありませんかと重ねて質問され、登記の専門家は司法書士で、税務の専門家は税理士なので、そちらに相談して下さいと逃げを打ちました(^^;)。
以上:1,221文字
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R 7- 7- 9(水):1回の不貞行為に慰謝料120万円の支払を命じた地裁判決紹介
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○原告が、夫Cと被告の不貞行為により精神的苦痛を受けたとして、被告に対し不法行為に基づき、慰謝料等合計330万円等の支払を求めました。被告は、Cとホテルに同宿した事実は認めるも性的関係はなかったと主張しました。

○これに対し、本件宿泊当時、Cと被告が既に相当親密な関係にあったことを推認させるものであるところ、そのような関係にある成人男女が、あえてホテルの同じ部屋に宿泊していることからすれば、性的行為が行われたとみるのが自然として、1回の不貞行為を認め、慰謝料120万円・弁護士費用12万円合計132万円の支払を命じた令和6年1月23日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○「15年間の密接な関係継続に慰謝料150万円を認めた地裁判決紹介」のように15年間の密接な関係に慰謝料150万円を認める判例もあれば、本件のように認定できる不貞行為1回で120万円もの慰謝料支払を認める判例もあり、不貞慰謝料金額は裁判官によって相当差があります。

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主   文
1 被告は、原告に対し、132万円及びこれに対する令和4年1月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し、その4を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和4年1月24日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、夫と被告の不貞行為により精神的苦痛を受けた旨を主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等合計330万円及びこれに対する令和4年1月24日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。)
(1)原告(昭和50年○○月○○日生まれ)は、平成21年11月22日、古美術店を営むC(昭和24年○月○○日生まれ。以下「C」という。)と婚姻した。原告とCの間には、3人の子(平成24年○月生まれの長男、平成28年○月生まれの長女、平成31年○月生まれの二女)がいる。(甲6)
(2)被告とCは、令和4年1月24日、「a」(以下「本件ホテル」という。)において、同じ部屋で宿泊した(以下「本件宿泊」という。)。
(3)原告は、令和4年7月7日頃、東京家庭裁判所に対し、Cを相手方とする夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てた(甲5)。

3 争点及び当事者の主張の骨子

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件宿泊の際の不貞行為の有無)について

(1)Cは、30年来の知人である被告に対し、カニを食べに行こうなどと言って宿泊を前提とした旅行の約束をした上で、本件ホテルの部屋を一室だけ予約した(被告本人2、5頁、証人C 9頁。Cは第三者に予約をお願いしたかもしれないとも述べるが、当初から被告と同じ部屋で宿泊するつもりであったことは認めている。)。また、被告も、別の部屋を希望したりすることもなく、Cと同じ部屋に泊まることを受け容れている(被告本人9頁)。

 これらの事実は、本件宿泊当時、Cと被告が既に相当親密な関係にあったことを推認させるものであるところ、そのような関係にある成人男女が、あえてホテルの同じ部屋に宿泊していることからすれば、性的行為が行われたとみるのが自然である。

(2)被告は、Cとはプライベートな事情まで深く話すような間柄ではないなどと主張し、それまで二人きりで食事に行った経験すらなかったなどと述べる(乙7、被告本人8頁。Cも同旨〔証人C 1、8、9頁〕。)。しかしながら、そのような浅い関係性しかなかった被告を、いきなり宿泊を伴う旅行に誘うこと自体、相当不自然・不合理であるところ、その理由に関する明確な説明はない(証人C 9頁)。また、この誘いに乗り、同部屋での宿泊を受け容れた被告自身の態度とも整合しない。

 被告は、宿泊した部屋は広くてプライバシーが保たれていたから性的行為には及んでいないなどとも主張して、同旨を述べる(被告本人4頁。Cも同旨〔証人C 2頁〕。)が、これを裏付けるに足りる的確な証拠ないし事情も見当たらない。
 したがって、性的行為を否定する被告やCの供述はいずれも信用できないものといえ、これらを根拠とする被告の主張は採用できない。

(3)以上によれば、本件宿泊の際、被告とCの間には性的行為(不貞行為)があったと認めることが相当である(以下「本件不法行為」という。)。

2 争点2(被告の故意過失の有無)について
(1)前記1(1)のとおり、本件宿泊当時、被告とCは相当親密な関係にあったことが推認できる上、Cは、自身の古美術店の常連客には原告と婚姻している事実を明らかにしていたことがうかがわれるから(甲2)、被告においても、C本人や共通する友人を通じて、当該事実を認識していた可能性は高いといえる。前記1(2)のとおり、本件宿泊に関する被告やCの供述は信用性に乏しいものであり、この点からも、被告において、Cと性的関係を持つことが不貞行為に当たることを認識していたことが疑われる。
 もっとも、上記各事情を総合しても、被告において、Cが既婚者であることを認識していたとまではいえないところ、他にこの点を認めるに足りる的確な証拠ないし事情は見当たらない。

(2)被告は、Cの婚姻関係の有無を全く確認していない旨を述べるところ(被告本人8、9頁)、Cが過去に婚姻していた事実や子どもがいた事実を認識していたこと(乙7)からすれば、Cと性的関係を持つに当たり、適宜の方法で婚姻関係の有無等を確認することが期待されていたといえ、それは極めて容易に行うことができた。被告は、その程度の慎重さを欠いてCとの性的行為に至ったものであるから、本件不法行為に関し、過失が認められる。

3 争点3(婚姻関係破綻の抗弁の当否)について
(1)原告が平成31年○月○○日にCに送信した電子メール(乙1。以下「本件メール」という。)には、Cの日々の言動に対する強烈な不満や怒りが綴られていた。原告は、本件メールにおいて、Cに対し、感情をコントロールして、すぐに怒鳴ったりしないようにすることを強く求め、これができず、話し合う気持ちもないのであれば、「ほんとに不本意ですけど、セックスレスの仮面夫婦として、同居しましょう。」〔乙1の1・26枚目〕などと綴っており、同年10月1日には別居を始めた(別居先は原告の現在の住所地である。)。これらの事情は、原告とCの婚姻関係が危機的な状況にあったことをうかがわせるものである。

 他方で、原告は、本件メールの送信後にCが態度を改めたため、危機的な状況は回避された旨を述べており(原告本人18、19頁)、これに沿う内容のCとのやり取りや写真も存在する(甲8、9)。実際、本件メールが送信されて以降、同様の内容の電子メールは送られていない(証人C 11頁)。また、原告が別居を始めたのは、子ども達が通うインターナショナルスクールへの通学の利便性等を考えてのことであり(原告本人2、3頁)、別居先の賃貸借契約を締結したのはCであって、別居後も双方の住居を行き来したり家族旅行をしたりしていたこと(甲8、9、乙2、原告本人17頁)を踏まえれば、Cとの仲が険悪になったことが別居の直接的な理由であったとまでは認め難い。原告は、別居先から離れたインターナショナルスクール(乙3)に子ども達が通うようになった後も、別居を解消していないが、引越し費用の節約等の合理的な理由が存在したと認められ(甲7、原告本人17、18頁)、婚姻関係の破綻を推認させる事情とはいえない。

(2)これらの事情を踏まえれば、本件宿泊当時、原告とCの婚姻関係が破綻していたとは認めるに足りないというべきであるから(なお、被告は、原告が令和3年頃には別の男性と交際していた旨を主張し、Cも同旨を述べるが〔証人C 4、5頁〕、本件全証拠に照らしても、これを裏付ける的確な証拠ないし事情は見当たらないから、同主張は採用できない。)、被告の婚姻関係破綻の抗弁は採用できない。

4 争点4(損害額等)について
 本件不法行為に至るまでの間、原告とCの婚姻期間は約12年間に及んでおり、3人の未成年の子がいた。婚姻期間中、夫婦関係に大きな亀裂が生じたこともあったが、前記3で述べたとおり、良好であるとはいえないまでも、少なくとも本件不法行為の頃まで危機的な状況が継続していたとはいえないところ、本件不法行為を契機として、原告とCの婚姻関係は破綻するに至ったことが認められる(原告本人8、9頁、前提事実(3))。

 以上の事情に加えて、本件不法行為以前からCと被告は相当親密な関係にあったとみられるものの、認定できる不貞行為は1回にとどまることなど、本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額を120万円と認めることが相当である。また、本件不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額の損害としては、12万円を認めることが相当である。

5 結論
(1)前記1ないし4で認定説示したとおり、原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、132万円及びこれに対する不法行為日(令和4年1月24日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を請求することができる。

(2)よって、原告の請求は、主文記載の限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部 裁判官 小西俊輔

以上:4,035文字
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R 7- 7- 8(火):15年間の密接な関係継続に慰謝料150万円を認めた地裁判決紹介
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○原告妻が、離婚調停中の夫Cと、平成18年頃から15,16年以上の期間、肉体関係を伴う交際を継続しているとして慰謝料500万円、調査費用68万2000円弁護士費用等合計618万2000円を請求する訴えを提起し、被告は、Cとの不貞行為を否認しました。

○これに対し、平成18年頃から被告とCは親密な関係になり、令和3年頃まで不貞行為があったとして、被告に対し調査費用も含めた慰謝料150万円と弁護士費用15万円の合計165万円の損害賠償支払を命じた令和6年3月27日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○Cは令和2年には原告妻と別居し、令和3年に至り、離婚調停を申し立てており、原告と夫Cとの婚姻関係は完全に破綻状態にあり、判決は、被告が、訴訟に至り不貞行為を否認し、原告の精神的苦痛を増加させ、被告が不貞行為を認めない態度から、証拠収集のために探偵に依頼しており、その費用全額が損害額とまでは認め難いとしながら、Cが令和3年10月に離婚調停申立をして、原告とCのおよそ30年にわたる婚姻関係が破綻の危機に瀕している等本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為による慰謝料額は150万円が相当としました。

*********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、165万円及びこれに対する令和4年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを15分し、その4を被告の負担として、その余は原告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、618万2000円及びこれに対する令和4年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、原告が、被告が原告の夫と不貞行為を重ねたことにより、精神的損害等の損害を被ったとして、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害額合計618万2000円及びこれに対する不法行為以後の日である令和4年12月11日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記がない事実は争いがない。)
(1)原告とC(以下「C」という。)は、平成4年に婚姻した夫婦であり、平成7年に長女を、平成10年に二女をもうけた(甲1)。
(2)被告とCは、令和2年5月27日、「a」というネットカフェ(以下「本件ネットカフェ」という。)にチェックインし、共に××××号室(以下「本件部屋」という。)に入室して滞在した(甲3)。
(3)Cは、令和2年12月28日、原告と共に住んでいた自宅を出て、以降、原告との別居を続けている。
(4)原告は、令和3年7月11日、被告の自宅を訪問し(以下「本件訪問」という。)、被告との間で、被告とCとの関係等について会話をした。
(5)Cは、令和3年10月20日付けで、横浜家庭裁判所に対し、原告を相手方として、夫婦関係等調整調停(離婚)を申し立てた(以下「本件調停」という。甲2)。

3 争点及び当事者の主張
(1)本件の争点は、〔1〕被告とCが不貞行為を行ったか(争点1)及び〔2〕損害及び額(争点2)である。
(2)争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙のとおりである。なお、別紙で用いた略語は本文においても用いる。

第3 当裁判所の判断
 当裁判所は、被告とCが不貞行為を行ったと認められ、これによる損害額は165万円と認めるべきであるから、原告の請求は同金額の限度で理由があり、一部認容すべきものと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 認定事実
 前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被告とCは、遅くとも平成18年頃には、それぞれの職場の仲間同士のグループ合計8名程度で、年に1、2回程度、飲み会をしたり、買い物をしたりする仲となった。その後、被告とCは、二人だけで食事などをするようになった。(甲12、乙2、3、証人C、被告本人)

(2)
ア 被告は、令和2年5月27日午前9時4分頃、自宅の最寄り駅であるb駅から電車に乗ってc駅へ移動し、午前9時42分頃、同駅で被告と合流した。そして、被告とCは、二人でコンビニのイートインスペースで談笑した後、午前10時22分頃、被告が元々予約していた美容室に一緒に入店した。
 なお、被告とCは、同日、同じショルダーバッグを肩に掛けており、同種類の靴及びジーパンを身に着けていた。また、Cは、被告が同日の午前中に美容室の予約が入っていることを聞かされたにもかかわらず、同日に二人で会う約束をし、美容室に一緒に行くことにした。
(以上につき、甲3、8、11、証人C、被告本人)

イ 被告とCは、同日午後0時25分頃に上記美容室から出て、c駅付近を歩いて回ったのであるが、その際、両名は手をつないで歩くこともあった。その後、被告とCは、電車でd駅に移動し、午後1時47分頃に中華料理店に入って昼食をとった。(甲3)

ウ 被告とCは、同日午後2時22分頃、上記料理店から出て、α付近を歩いて回ったのであるが、その際、両名は手をつないで歩くこともあった。その後、被告とCは、複数のお店に入ったあと、電車でe駅に移動し、同日午後3時45分頃、本件ネットカフェのフロントでチェックインをし、同日午後3時49分頃、全室防音の完全個室である共用(女性優先)フロアにある本件部屋に二人で入室した。(甲3)

エ 被告とCは、同日午後6時29分頃、本件ネットカフェを出て、ドラッグストアー2店と居酒屋に入店し、午後9時30分頃、電車でe駅からf駅まで移動し、同駅で別れた(甲3)。

(3)被告は、令和3年7月11日の原告による本件訪問の際、原告から「ダブル不倫になりますよね?」と問われたのに対して「うん。」と、原告のことをどんなふうに考えていたのかを問われたのに対して「私はいつも悪いなと思ってましたよ。」と、「一番最後に会ったのはいつとかですか?」と問われたのに対して「そうですね。先月?」、「そうですかね。うん。」などと、それぞれ回答した(甲8、11)。

(4)Cは、平成18年7月8日に被告名義のクレジットカードで購入したメンズシャツ1点及びレディスカットソー1点並びに平成19年7月14日に同クレジットカードで購入したメンズシャツ1点のレシートを所持していた(甲12)。

2 争点1(被告とCが不貞行為を行ったか)について
(1)検討
 被告とCがグループ同士で知り合ったのが平成18年頃であること(前記1(1))、Cが同年に被告名義のクレジットカードで購入したレシートを所持していること及び購入した物の中には女性用の衣服が含まれていること(以上につき、前記1(4))からすると、被告とCは、グループ同士で知り合った後、程なくして二人で買い物に行き、Cが被告に対して衣服をプレゼントする関係となっていたことがうかがわれるところである。

 また、Cは、被告に美容室という予定があることを知りながら、会う日を別日にすることも、美容室終了予定時間後に待ち合わせをすることもせず、被告と共に美容室に行く決断をし(前記1(2)ア)、e駅からだと自身の最寄り駅であるb駅とは反対方向のf駅までわざわざ被告を送っている(前記1(2)ア、エ)ところ、Cのこれらの行動は、二人が単なる相談相手や飲み友達であることを超えて、長く一緒にいたいと思う関係であることを示すものといえる。

 さらに、二人は、おそろいのショルダーバッグ、靴及びジーパンを身に着けるといういわゆるペアルックで街を出歩き(前記1(2)ア)、時には手をつないでいた(前記1(2)イ、ウ)のであり、これらの事実からも二人が親密な関係にあったことが優に推認できる。

 そして、被告は、本件訪問の際に原告から被告とCとの関係がダブル不倫である旨を問われたのに対して、認める旨の返答をしている(前記1(3))。

 以上の事実を踏まえると、被告とCとは、平成18年頃から親密な関係にあったものと認めることができる。そして、これによれば、被告とCが防音の完全個室である本件個室に入室した事実(前記1(2)ウ)から、被告とCが不貞行為を行ったと認めることができる。

(2)被告の主張等について
ア 被告は、Cから、コロナ禍で手に入りにくいマスク等を東京に買いに行くので付き合ってほしいと誘われて出かけることになり、実際にマスク等を購入したが、Cの物件探しの関係でパソコンを使用する必要が生じ、本件個室に入室したにすぎず、不貞行為は行っていない旨の主張及び供述をし、Cもこれに沿う供述をする。
 しかし、マスク等を一緒に買いに行くだけであれば、被告の美容室にCが一緒に行く必要性がないことは前記(1)に説示したとおりであり、また、Cの用事のために本件個室に入室したのであれば、被告が一緒に本件個室に入る必要性もないことから、被告の上記主張及び供述並びにCの上記供述は到底信用することができない。

イ 被告は、Cと手を取り合っていると思われる状態となったのは、被告が受けた事故により足の神経を痛め、一時的に補助が必要となることがあるためである旨の主張及び供述をし、Cもこれに沿う供述をする。

 しかし、調査報告書(甲3)において、終日、Cと被告の行動を調査していた探偵において、被告が痛がる様子が特に確認されていない上、同探偵は、被告とCとが手をつなぐ様子について「親密な様子で」(甲3〔27頁〕)と表現しているのであって、このことからも、被告が足を痛がったことを契機としてCが補助するために手を引いたとは考え難い。さらに、被告とCとが手をつないでいる様子を写した写真(甲
3〔27、44頁〕)からも、単に二人が横並びで手をつないで歩いていることが認められるのみで、Cが足の痛みやしびれを訴える被告の補助をしていることはうかがわれない。
 よって、被告の上記主張及び供述並びにCの上記供述を採用することはできない。

ウ 被告は、本件訪問の際の被告の言動は、原告の突然の訪問や様子に恐怖を覚え、適当なあいづちをうったものである旨の主張をし、同主張に沿う供述をする。
 しかし、被告は、本件訪問の際、原告から、Cと15、6年付き合っていたかを問われたのに対して「私はそんなに付き合ってない」と、娘達へのプレゼントであるタオルをCと一緒に選んでいないかを問われたのに対して「はあ?何の話か全然分からないけど。」と、肉体関係がずっと続いていたということを認めるかと問われたのに対して「それはないと思いますけどね。」と、それぞれ明確に否定しているのであり(以上につき、甲8、11)、迎合的な回答に終始していたとは認められないことから、被告の上記主張及び供述を採用することはできない。

3 争点2(損害及び額)について
(1)慰謝料(調査費用を含む) 150万円
 不貞行為の始期自体は必ずしも明確ではないものの、被告とCとが平成18年頃に知り合った後、程なくして二人で買い物に出かけるなど親密な関係にあったことは前記2(1)で認定説示したとおりである。また、前記認定事実によれば、被告とCとは、少なくとも令和3年6月までは会っていたことが認められる(前記1(3))のであって、全期間にわたって不貞関係にあったといえるかはともかく、少なくとも親密な関係であった期間が相当程度長期にわたるものといえる。

 また、被告は、本件訴訟前の本件訪問の際には、被告とCとが不倫の関係であったことを問われたのに対して認める旨の回答をしていた(前記1(3))にもかかわらず、本件訴訟では不貞行為自体を争っており、このことも原告の精神的苦痛を増加させるものといえる。

 さらに、上記のとおり、被告が不貞行為を認めない態度をとっていることからすると、原告としては証拠収集に迫られることとなるところ、素人である原告による証拠収集には限界があることから、探偵に依頼することも無理からぬところである。他方で、不貞行為の立証に当たって、必ずしも探偵による調査が必須というわけでないことから、その費用全額が損害額とまでは認め難い。よって、探偵による調査が必要となった事情を含めて慰謝料額を算定することが相当である。

 以上のほか、Cが令和3年10月に本件調停を申し立てるなど、原告とCのおよそ30年にわたる婚姻関係が破綻の危機に瀕することとなったこと(前記前提事実(1)、(5))、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為による慰謝料額は150万円と認めるのが相当である。

(2)弁護士費用 15万円
 上記(1)のとおりの本件事案の性質及び内容、その他諸般の事情を考慮すると、被告とCとの不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用は、上記(1)の慰謝料額の1割に相当する15万円と認めるのが相当である。

(3)損害額合計 165万円

第4 結論
 以上によれば、原告の請求は、主文掲記の範囲で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第26部
裁判官 安部利幸
以上:5,471文字
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R 7- 7- 7(月):映画”F1(R)エフワン”を観て-苛酷な自動車レースを実体験と錯覚
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○令和7年7月6日(日)は、TOHOシネマズ6番アイマックスシアターで今話題の映画「F1(R)エフワン」を鑑賞してきました。今話題の映画だけあって6番アイマックスシアターの7割方は観客で埋まっていました。映画コムでは、「かつて世界にその名をとどろかせた伝説的なカリスマF1(R)ドライバーのソニーは、最下位に沈むF1(R)チーム「エイペックス」の代表であり、かつてのチームメイトでもあるルーベンの誘いを受け、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである新人ドライバーのジョシュアやチームメンバーは困惑し、たびたび衝突を繰り返すが、次第にソニーの圧倒的な才能と実力に導かれていく。ソニーはチームとともに過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵を相手に命懸けで頂点を目指していく。」と解説されています。

○自動車レースの映画は、「映画”フォードvsフェラーリ ”試写会を観て-圧巻のレースシーン」と「映画”グランツーリスモ”を観て-感激・感動の嵐でネタバレ」に記載したル・マン24時間耐久レースの映画鑑賞以来、三本目です。自動車レースF1は、名前は知っていましたが、中身は全く知りませんでした。

○ネット検索するとF1レースとは、「正式名称はFormula1:フォーミュラワンで、世界各地を転戦し、年間を通じて獲得した合計ポイントを競うシリーズ。 それぞれのレースはF1日本グランプリのように「F1◯◯グランプリ」という名で呼ばれます。参加するのは1チームにつき2人のドライバーで、合計10チーム20人です。各レースで優勝や上位入賞の表彰は行われますが、それに加えて1位は25点、2位は18点など、順位に応じた ポイントも獲得。」と解説されています。この映画を観て、初めて知りました(^^;)。

映画「F1(R)エフワン」は、このF1レースの仕組みを知らないまま鑑賞したため良く理解出来ないストーリー展開もありましたが、映画「トップガン マーヴェリック」を製作したジョセフ・コシンスキー監督が、「世界中の観客がコース上にいるように、そしてドライバーズシートに座っているように感じさせる」ことを目指したとのことで、兎に角、凄い体験ができる映画でした。これまで観た2本のル・マン24時間耐久レースの映像を遙かに超える迫力で、本当に苛酷な自動車レースを実体験している錯覚に陥る映画で大満足でした。ラスト3周の迫力は言葉では表現できません。

○この映画をより楽しむには映画コムで「【「トップガン マーヴェリック」を観た人類に贈る】“胸アツ”再び!そして、映画体験を“別の次元”へ…トップガン製作陣×ブラッド・ピットが地上で限界超え【“あの体験”を更新する“超体感”が待っている!】」の特集を事前に読んでおくべきでした。鑑賞後に読み正にその通りと思いましたが、事前に読まなかったのが悔しいところでした。

映画『F1®/エフワン』US版予告 |2025年6月27日(金)公開

以上:1,228文字
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R 7- 7- 6(日):映画”モービウス”を観て-映像は見応えがあります
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○令和7年7月5日(土)は、最近購入した4KUHDソフトで2022(令和4)年製作映画「モービウス」を鑑賞しました。映画コムでは、「スパイダーマンの敵役として登場するマーベルコミックのキャラクター、モービウスを主人公に描いたダークアクション。血に飢えたバンパイアと人々の命を救う医師という2つの顔を持つ主人公マイケル・モービウスを、オスカー俳優のジャレッド・レトが演じる。」と説明されています。

○4KUHDソフトで2,3年前の新しい映画を鑑賞するのは久しぶりですが、この時期の4KUHDソフトの映像は流石になめらかで且つクッキリして目に心地よいものです。綺麗な映像を観るのが好きな私には映像を観るだけで気持ちが良くなります。映画レビューでの評価点は低い映画で余り期待しないで鑑賞したのですが、マーベルコミック映画としてまずまず楽しめる映画でした。

○幼いころから血液の難病を患っていた天才医師のマイケル・モービウスは、吸血コウモリの血清を投与するという危険な治療法を自らの肉体を実験台にして試し、その結果、マイケルの肉体は激変し、超人的なスピードや飛行能力、周囲の状況を察知するレーダー能力が身につくが、代償として血に対する渇望に苦しむこととなります。変身前の極端にやせ細っていた身体が、変身後は筋骨隆々の身体に変化しますが、同じ俳優とは到底思えず、どちらかがCG映像かと思いました。しかし、マイケルを演じたジャレッド・レト氏は、「激やせ激太り自由自在!大変身を遂げたハリウッドスターBEST3」の3位に選ばれたということで1人で演じたのかもしれません。

○同じ血液の病気を患っていた親友のマイロが勝手に同じ血清を自分で投与して変身して超人能力を獲得して最後はマイケルと闘うことになるのが辛いところですが、その闘いの映像もCGですが、大変クオリティーの高く見応えのあるものでした。

『モービウス』予告3 2022年 全国の映画館で公開

以上:810文字
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R 7- 7- 5(土):Google検索サービス逮捕情報3000万円慰謝料請求棄却地裁判決紹介
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○情報公開の国アメリカでは、LOCALcrimenewsと言うサイトで逮捕情報が公開されています。そのホームページのトップページをグーグル翻訳で日本語訳した表現は以下の通りです。
ローカル犯罪ニュースへようこそ
カリフォルニア州の逮捕ニュースのリーディングソース

ローカル犯罪ニュースは、カリフォルニア州の逮捕ニュースに特化した情報源です。カリフォルニア州全域に記者を配置し、逮捕ニュースを収集・毎日配信しています。この逮捕ニュースは、一般の方への情報提供を目的としています。私たちは、近隣監視団体やクライムストッパーズと提携し、各団体が各都市や近隣地域で発生している逮捕情報を常に把握できるよう努めています。

まずは、上記のフォームを使って逮捕情報を検索してください。利用規約をお読みください。
○日本の感覚では、無罪の推定が働いているはずの逮捕の事実を公表するのは問題と思います。日本でこんなサイトが現れたら掲載された人から人権侵害等を理由に損害賠償請求が起こるのでと思うのですが、流石、アメリカは情報公開の国です。裁判での証人尋問がネットでライブ放送されているのを見たことがあります。

○日本では、被告が開発運用するインターネット上の情報検索サービスを利用して原告Aの氏名を条件として検索すると原告Aの逮捕歴に関する記載のあるサイトの表題及びURL(「検索結果」)が表示されることにつき、原告Aが、検索結果の表示によって名誉が侵害され、精神的苦痛を受けたなどとして、被告Google社に対し3000万円の慰謝料請求をした事案があります。

○これに対し、検索結果自体により原告Aが逮捕された事実が摘示されているとは認められず、検索結果により原告Aの名誉権が侵害されているとは認められないなどとして、原告らの請求を棄却した令和6年1月29日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

*******************************************

主   文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は、原告Aに対し、3000万円及びこれに対する令和4年10月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告会社に対し、6000万円及びこれに対する令和4年10月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
3 被告は、日本向けグーグル検索サービスにおいて、別紙検索結果目録に係る検索結果を削除せよ。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 原告Aは、平成29年に会社法違反の被疑事実で逮捕勾留されたものの、のちに無罪判決が確定した。被告が開発運用するインターネット上の情報検索サービスを利用して原告Aの氏名を条件として検索すると、別紙検索結果目録記載の表題及びURL(以下、併せて「本件検索結果」という。)が表示されるところ、これは、原告Aの上記逮捕歴に関する記載のあるサイトのものである。

 本件は、原告Aが、本件検索結果の表示によって名誉が侵害され、精神的苦痛を受けたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、3000万円及びこれに対する訴状送達の日である令和4年10月5日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を、原告Aが代表取締役を務めていた原告会社が、被告に対し、本件検索結果の表示によって信用が毀損されたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、6000万円及びこれに対する訴状送達の日である令和4年10月5日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに、原告Aが、被告に対し、人格権としての名誉権に基づき、本件検索結果の削除を求める事案である。

2 前提事実

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点〔1〕について

(1)
ア 検索サービスによる検索結果の提供により社会的評価を低下させるか否かについては、新聞記事等の報道の場合(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)と同様に、一般の読者(閲覧者)の普通の注意と読み方(閲覧の仕方)を基準として判断すべきである。

イ 前記前提事実のとおり、本件検索結果の表題には総会屋が逮捕された旨の記載があるものの、そこには原告Aの氏名等は表示されていない。そうすると、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準とすれば、本件検索結果が原告Aの氏名を条件として検索した結果であるからといって、これが原告Aが逮捕された事実を示すものと受け止めるとは認められない。

ウ 原告らは、本件元サイトに原告Aが逮捕された事実が記載されていることをもって,本件検索結果が原告Aが逮捕された事実を摘示するものであると主張する。
 しかし、URLに元サイトのハイパーリンクが付されていることを考慮しても、元サイトに記載されている表現行為を行ったのは検索サービス事業者ではなく、検索結果の表示は、あくまでURL等の情報を提供する行為にとどまるから、検索サービス事業者の表現行為が直ちに元サイトの内容にまで及んでいるということはできない。そして、本件検索結果の表示には原告らを特定する記載が一切なく、まして、検索結果に表示された「総会屋」は、本件元サイトによれば原告Aとは別の人物であることが明らかであるから、本件元サイトに原告Aが逮捕された事実の記載があるからといって、それを根拠として原告Aが逮捕された事実が本件検索結果によって摘示されているとは解されない。


 なお、原告が指摘する平成29年決定はプライバシーに基づき検索結果の削除請求をした事案に関するものであり、検索サービス事業者が検索結果を表示する行為が名誉毀損に該当するか否かが問題とされている本件とは異なる。
 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

(2)以上からすれば、本件検索結果の表示によって原告らの社会的評価が低下したとはいえないから、被告が本件検索結果を表示し続けている行為が不法行為に当たるとは認められない。
 したがって、争点〔2〕について判断するまでもなく、原告らの損害賠償請求は理由がないことに帰する。

2 争点〔3〕について
(1)原告Aは、人格権としての名誉権に基づく本件検索結果の削除の可否についても平成29年決定の判断枠組みが妥当し、本件では原告Aが逮捕された事実を公表されない法的利益が優越するから、削除請求が認められるべきであると主張する。

(2)しかし、本件の削除請求の対象は本件検索結果であるところ、これは検索サービス事業者である被告自身による表現行為との側面を有するものであり、検索サービス事業者による検索結果が削除を余儀なくされるということは、検索サービス事業者の表現行為に対する制約に当たるものといえる。また、検索サービス事業者による検索結果の提供は、現代社会における情報流通の基盤として重要な役割を果たしている。

したがって、名誉権に基づく検索結果の削除の可否については、原則として、検索結果自体について名誉毀損該当性、すなわち社会的評価の低下が認められるか否かを検討すべきであり、特段の事情のない限り、URL等の情報に基づく更に操作した結果としての元サイトの内容を考慮して削除請求の当否を判断すべきものとは解されない。なお、平成29年決定は、プライバシーに基づく検索結果の削除請求についてのものであって、名誉権侵害が問題とされている本件には適切でない。

 そして、前記1で判示したとおり、本件検索結果自体により原告Aが逮捕された事実が摘示されているとは認められず、本件検索結果により原告Aの名誉権が侵害されているとは認められない。
 したがって、本件検索結果の削除請求も理由がない。


第4 結論
 以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判長裁判官 池原桃子 裁判官 池田幸司 裁判官 北澤陸

以上:3,314文字
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R 7- 7- 4(金):滞納管理費約170万円でのマンション競売請求を棄却した地裁判決紹介
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○顧問先のマンション管理組合から滞納管理費の回収相談を受けていますが、財産としては対象のマンション居室しかないことが判明しています。そのマンション居室に競売申立をして、滞納管理費を回収できるか相談されています。しかし、区分建物所有法(マンション法)8条で「前条第1項に規定する債権(※滞納管理費を含む)は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」と規定されており、滞納管理費は競落人に請求できるためマンション競売代金からは回収できません。マンション競落人は滞納管理費を債務引受し、その金額を差し引いた競売代金で競落しているからです。

○マンションの競売については、マンション法第59条に次のように規定されています。
第59条(区分所有権の競売の請求)
 第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。


○上記の通り、マンショの方59条に基づく競売は、
①区分所有者の共同利益に反する行為によって区分所有者の共同生活上の
障害が著しいこと、
②他の方法では共同生活の維持が困難であること
の要件が必要で、管理組合は競売申立する場合、先ず「競売を申し立てることができる」との裁判所の許可を求める訴えを提起しなければなりません。

○どの程度の金額まで滞納管理費額が大きくなれば上記要件を満たすかですが、マンションの管理組合である原告が、マンションの管理費等を滞納し約170万円に達した被告に対し、建物区分所有法59条に基づき、被告の有するマンションの区分所有権等の競売許可の請求しました。

○これに対し、長期間にわたる管理費の滞納を謝罪し、経済状況が好転したことから本件管理費等の分割弁済による和解を希望する被告の態度からすれば、和解の中で本件管理費等を回収する途を模索することも考えられるから、原告には、競売申立て以外に本件管理費等を回収する途がないことが明らかとはいえないというべきであり、同法59条1項所定の要件を充足すると認めることはできないとして、請求を棄却した平成18年6月27日東京地裁判決(判時1961号65頁)関連部分を紹介します。

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主   文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。

事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨

(1)原告は、被告の有する別紙物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権について競売を申し立てることができる。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨

第二 当事者の主張
一 請求原因

(1)原告は区分所有建物である別紙物件目録における一棟の建物の表示欄記載の建物(以下「AR」という。)の区分所有者が建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体として「建物の区分所有等に関する法律」(以下「建物区分所有法」という。)によって設立された管理組合である。

(2)被告は、別紙物件目録記載の区分所有権及び敷地利用権(以下「本件区分所有権等」という。)を有するAR109号室の区分所有者である。

(3)被告は平成12年11月分から、管理費、修繕積立金、専用庭使用料及び駐車場利用料(以下、これらを併せて「本件管理費等」という。)を滞納した。

(4)被告はその後も本件管理費等を滞納し続けたので、原告は東京簡易裁判所に対し、平成12年11月分から平成15年4月分までの本件管理費等の滞納分として金105万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めて、支払督促の申立てをし(平成15年(ロ)第54225号)、平成15年5月6日、同裁判所よりこれを容認する支払督促が発せられた。この支払督促正本は、同年8月26日に被告に送達されたが、法定期間内に被告は異議の申立てをしなかったため、原告の申立てにより仮執行宣言が発せられ、この仮執行宣言付支払督促(以下「本件支払督促」という。)は確定した。

(5)被告は更にその後も滞納している本件管理費等を支払わず、現在でも、AR109号室を占有使用している。そして、本件管理費等の滞納額は下記のとおり、平成18年1月末日現在で、金169万5000円に達している。

     (中略)

理   由
一 請求原因(1)ないし(4)及び(6)の各事実は当事者間に争いがなく、これらの事実に(証拠省略)を総合すれば、次の各事実が認められる。
(1)被告は平成12年11月分から本件管理費等の滞納をしており、その滞納額は、平成18年1月末日現在で、合計169万5000円に達している。また、原告は被告に対し、平成15年に支払督促の申立てをし、これを認容する支払督促が発せられたが、これに対して被告は異議の申立てをしなかったため、仮執行宣言が発せられ、本件支払督促が確定した。

(2)そして、原告は、本件支払督促に基づき被告の銀行預金口座がある第三債務者株式会社三井住友銀行葛西支店の預金に対する債権差押命令を申し立て、平成15年11月21日に差押命令を取得したが、預金残高が0円であったため、本件管理費等を回収できなかった。

(3)また、本件区分所有権等には、被告を債務者として住宅金融公庫とさくら信用保証株式会社を権利者とする抵当権(債権額合計金1710万円)及び東日本総合信用株式会社を権利者とする根抵当権(債権総額1320万円)が設定されており、原告が強制競売を申し立てても、同手続は無剰余により取消しとなることが見込まれる状態である。そこで、原告は、上記抵当権者に対し、被告が抵当権者に対する借入金の返済を遅滞し期限の利益を喪失している場合には、抵当権を実行するよう催告したが、結局、抵当権者からは競売の申立てはなされなかった。

(4)さらに、被告を除くARの区分所有者は、規約の定めに従い、平成18年2月5日の臨時総会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数をもって、被告の有する本件区分所有権等について競売を請求することを決議した。これに先立ち、原告が被告に対し、通常の総会開催通知のほか、内容証明による通知も行ったが、被告は総会に出席することもなく、何らの弁明も行わなかったために、原告は本件訴訟を提起するに至った。

二 以上の認定事実によれば、請求原因(5)及び(7)ないし(9)並びに(11)の各事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
 また、弁論の全趣旨によれば、被告は、本件訴訟において、これまでは経済的に厳しい状況であったので、長期にわたり管理費等を滞納してしまったが、状況がやや好転したことから、今後は分割弁済によりこれまでの滞納した管理費等を支払いたいので、和解を希望する旨述べたところ、原告はこれに応じなかった。

三 次に、上記認定事実を前提に、被告について、建物区分所有法6条1項所定の、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為(以下「共同利益背反行為」という。)があり、これによって同法59条1項所定の、共同生活上の著しい障害が生じ、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保及びその他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるといえるか否か(請求原因(10))について検討する。

(1)まず、被告の行為が、同法六条1項所定の共同利益背反行為に当たるかについて判断するに、上記認定事実によれば、被告は本件管理費等を滞納しており、その額は約170万円と多額であり、かつ平成12年11月分から少なくとも平成18年1月末までの約5年半という長期にわたり滞納を継続している上、この間、原告からなされた支払請求に対し被告は全く応じていない。

 マンション等の共同住宅では、通常、自己の居室だけではなく、他の区分所有者と共同使用する設備や施設等が存在し、かかる共同使用施設等を維持管理していくことは区分所有者の共同の利益のために必要不可欠である。管理費等は、その維持管理のために必要となるものであり、その負担は、区分所有者の最低限の義務であるということができる。

 したがって、一部の区分所有者が管理費等の支払をしない場合、その区分所有者は他の区分所有者の負担で共同使用施設等を利用することになる。このような事態は他の区分所有者の迷惑となることは明白であり、区分所有者の間で不公平感が生じ、管理費等の支払を拒む者が他にも現れることが予測され、最終的には、マンション等共同住宅全体の維持管理が困難となるものと考えられる。

 このような観点からすれば、長期かつ多額の管理費等の滞納は、同法6条1項所定の共同利益背反行為に当たるということができ、被告の上記認定の滞納はこれに該当するものと認められる。そして、被告も認めるとおり、これによって、同法59条1項所定の、共同生活上の著しい障害が生じているといえる。

(2)そこで、次に、同法59条1項所定の、共同生活上の著しい障害が生じ、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるといえるか否かについて検討する。

 まず、本件管理費等の滞納が「障害」に当たる場合、これを「除去」するためには、滞納した管理費等を回収することが必要となる。そして、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」との要件については、同法59条が行為者の区分所有権を剥奪し、区分所有関係から終局的に排除するものであることからすれば、上記要件に該当するか否かについては厳格に解すべきであり,滞納した管理費等の回収は、本来は同法7条の先取特権の行使によるべきであって、同法59条1項の上記要件を満たすためには、同法7条における先取特権の実行やその他被告の財産に対する強制執行によっても滞納管理費等の回収を図ることができず、もはや同条の競売による以外に回収の途がないことが明らかな場合に限るものと解するのが相当である。

 上記一認定の事実によると、原告は被告に対して本件管理費等の支払を求めたが被告はこれに応じず、また、原告は本件支払督促に基づき債権差押命令を得たものの、差押債権である預金債権の残高がなかったため奏功せず、さらに、先取特権の実行ないし本件区分所有権等に対する強制執行は、元本合計約3000万円の抵当権及び根抵当権の存在により無剰余により取消しとなることが見込まれる状態であるといえる。

 しかしながら、被告に対する債権回収の方策として、預金債権以外の債権執行の余地がないかについては明らかとはいえず、未だ本来の債権回収の方途が尽きたとまでは認められない。さらに、被告は、本件訴訟の第2回口頭弁論期日に出頭し、陳述した準備書面において、長期間にわたる管理費の滞納を謝罪するとともに、経済状況が好転したことから本件管理費等の分割弁済による和解を希望する旨の態度を示しているのであって、このような被告の態度からすれば、原告が和解案として、まず被告に対して分割弁済の実績を示すことを要求するなどして、和解の中で本件管理費等を回収する途を模索することも考えられるところ、原告は被告の和解の希望を拒否して、同法59条1項による競売の途を選んだといえる。

 このような状況からすれば、本件において、原告には、同法59条1項による競売申立て以外に本件管理費等を回収する途がないことが明らかとはいえないというべきであり、同条項所定の上記要件を充足すると認めることはできない。
 したがって、原告の主張は採用することができない。


四 以上によれば、原告の請求には理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 荒井勉)

別紙 物件目録(省略)
以上:4,997文字
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R 7- 7- 3(木):後遺障害等級12級で労働能力喪失率25%を認めた地裁判決紹介
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○交通事故で、後遺障害等級11級標準労働能力喪失率20%を認定されましたが、これまでしていた立ち仕事ができなくなり、且つ、60歳を越えた高齢のため実質仕事を失った方の損害賠償請求を依頼され、後遺障害等級標準労働能力よりも高い労働能力喪失を認めた裁判例を探しています。

○受傷により右膝関節に12級12号標準労働能力喪失率14%の後遺障害を残したタクシー運転手兼非鉄金属業の被害者(男・症状固定時59歳)の、後遺障害による逸失利益について、8年間にわたり25パーセントの労働能力喪失を認めた平成6年9月27日東京地裁判決(交通事故民事裁判例集27巻5号1301頁)関連部分を紹介します。

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主   文
一 被告は、原告に対し、金1094万4016円及びこれに対する平成2年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 原告の請求

一 被告は、原告に対し、金2564万3502円及びこれに対する平成2年6月26日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用の被告の負担及び仮執行宣言

第二 事案の概要
一 本件は、市街地における信号により交通整理の行われていない交差点において普通乗用車と軽四輪貨物自動車の衝突があり、普通乗用車の運転者が傷害を受けたことから、軽四輪貨物自動車の運転者を相手にその人損について賠償を求めた事案である。

二 争いのない事実

     (中略)

三 本件の争点

     (中略)

(3)逸失利益
 原告は、本件事故のため、右膝関節に12級の後遺障害を残したが、同関節障害のためアクセルを踏み込む動作や重量のある物の運搬に支障を来たし、前記いずれの職種についても、労働能力が50パーセント喪失した。また、原告の症状固定時の年齢は59歳であるから就労可能年数は、67歳までの8年間である。

     (中略)

第三 争点に対する判断
一 原告の損害額について


     (中略)

3 逸失利益   882万0025円
(1)タクシー運転手としての逸失利益
 原告は、本件事故のため、右膝関節に12級の後遺障害を残したが、同関節障害のためアクセルを踏み込む動作に支障を来たし、長時間の運転ができず、また、重量のある物の運搬に重大な支障を来たしている。このため、タクシー運転手としての業務遂行は不可能となつたが、甲15、19、原告本人によれば、本件事故がなければ、64歳までは太陽自動車の正勤の乗務員として、65歳からは嘱託の乗務員として正勤の乗務員と同一の給与のベースで、それぞれタクシーの運転手の業務を継続することができたことが認められる。

そして、現在は太陽自動車で車庫の管理の仕事を行い、月給22、3万円の賃金を得るに止まること、原告がタクシー運転手としての業務を継続するとしても、歩合給の率が高い右業務の賃金体系に照らせば、加齢とともに収入が減ることが予想されることを斟酌すると、平成元年度の給与を基礎とすれば本件事故により労働能力が25パーセント喪失したものと認めるのが相当である。


また、原告の症状固定時の年齢は59歳であるところ、右事情に鑑みれば、就労可能年数を67歳までの8年間とし、ライプニツツ方式により中間利息を控除するのが適当であり、右逸失利益は882万0025円となる。
 計算 535万4394×0.25×6.589=882万0025

(2)非鉄金属業の逸失利益
 前認定のとおり、非鉄金属業では、収益の基礎とすべき平成元年度でも専従者控除をすると34万2721円の赤字となつており、逸失利益の基礎とすべき利益が不明であつて、右労働能力喪失によりどの程度の利益を逸失したかを認定することができないので、非鉄金属業による逸失利益は独立の損害としては認めずに、慰謝料算定に当たつての斟酌事由として考慮することとする。

     (中略)

第四 結論
 以上の次第であるから、原告の本件請求は、被告に対し、金1094万4016円及びこれに対する本件事故の日である平成2年6月26日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。
裁判官 南敏文
以上:1,859文字
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R 7- 7- 2(水):2025年07月01日発行第392号”弁護士のドレッサー”
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○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年7月1日発行第392号「弁護士のドレッサー」をお届けします。

○イギリス舞台劇「ドレッサー」なんて全く知りませんでしたが、映画「ドレッサー」もあるのですね。「ドレッサーというのは、楽屋で役者の衣装管理その他の雑用をする人」も初めて知りました。「ドレッサー」という言葉からは、ドレスを作る人くらいしか思いつきませんでした(^^;)。

○確かに「ドレッサー」的立場の方は報われないことが多いですね。ただ義理の親の介護に努めた嫁の立場は、令和元年7月相続法改正で相続人に対し「特別寄与料」の請求が認められ、少しは考慮されるようになりました。しかし、私の事務所では相続の相談はあってもこの特別寄与料の相談はまだ1件もありません。

○大山先生の言われる「人の気持ちに寄り添う解決」は、弁護士としては、ホントに重要な心構えと思います。小松弁護士は、ホントに私の気持ちに寄り添って尽くしてくれたと、お客様に思われるような弁護活動をしてきたかと振り返ると忸怩たる思いになるのが辛いところです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のドレッサー

「ドレッサー」は、50年近く前の、イギリスの演劇です。日本でも三谷幸喜が演出したりと、相当数上演されています。第二次世界大戦下、ロンドン郊外のシェイクスピア劇団が「リア王」を上演しようとします。しかし、主役のリア王を演じる老優は、空襲など戦時下の心労などでボケてきて、どこかに行ってしまう。「リア王」の芝居自体、老いてボケが入った王様が、嵐の荒野をさすらう話ですよね。2つの芝居の内容がリンクしているわけです。ドレッサーというのは、楽屋で役者の衣装管理その他の雑用をする人です。この芝居のドレッサーは、老優と友達でもあり、冗談を言ったり励ましたりもしていました。そして、老優の失踪後、多くの劇団員たちが公演開催を諦めかける中、ドレッサーだけは皆を鼓舞して最終的に公演を成功させるという話です。

この辺の奮闘がとても面白くて、劇の見せ場になっています。ボケていた老優も、ひとたび舞台に立つと、名演技を見せてくれました。これで終わればとても良い話なんですが、名作演劇ともなるとそうはいきません。もう一波乱あります。リア王の舞台が終わり、拍手喝さいを浴びた老優は、自分を支えてくれた人たちの名前を挙げて感謝の気持ちを表します。しかしそこには、誰よりも老優を思い奮闘したドレッサーの名前は出てこなかったのです。ドレッサーも別に感謝されたくて行動したわけでもないでしょう。誰よりも活躍したのに、特に感謝されることなく、誰にも知られず去っていくなんて、すごくカッコいいのかもしれません。「ドレッサー」の芝居の最後で、主人公が何を思っていたのかなど、議論が分かれそうです。

とは言いましても、私を始め一般的な「俗物」なら、自分の頑張りを無視されたら、やはり面白くないですよね。そういえば、やり手の占い師は、お客様の手相を見ながら、次のように言うそうです。「これまで人一番苦労して活躍してきましたね。それなのに誰にも分ってもらえない。本当に辛かったでしょう」 こういわれるとお客さんは、「本当によく当たる占い師だ!」と喜ぶんだそうです。わ。私なんか、毎日通っちゃいそうです。。。 考えてみると、近年話題になっている「妻からの熟年離婚」なんか、長年夫から認めてもらえなかった「ドレッサー」からの愛想尽くしかもしれません。「恋人とは舞台を共にし、妻とは楽屋を共にする」なんて言葉があるそうです。長年、夫の仕事を楽屋で支えてきた妻に対して、表舞台で感謝の気持ちを表明しない夫は沢山いそうです。わ、私も気を付けます。

政治家の秘書なんかも、こういうことあるそうです。秘書の仕事も、選挙対策、陳情対応、政策立案その他、すごく忙しいそうです。議員を励まして、選挙を勝ち抜かないといけません。それなのに、感謝の気持ちを表明されるどころか、「バカ!」「ハゲ!」などと秘書を罵倒していた女性議員が居ましたよね。こういうのはさすがに酷いですよね。こういった「縁の下の力持ち」は、法律の世界でも評価して欲しいと思います。でも、ドレッサーのような人が、現代日本の法律で正当に評価されるかというと、かなり難しいのです。「特に法的義務が無いのに勝手にやったんだろう」ということで、十分な評価はされないことが、日本をはじめほとんどの国の法律です。

例えば、夫と死別後の妻が、義両親の面倒を見続けるなんてことがあります。義両親が特に遺言を作って、お嫁さんへの感謝の言葉と共に財産を残せばよいのですが、そうしないケースが多い。こういう場合、お嫁さんが何も受け取ることができないというのが、現状の法律の世界です。ただ、お嫁さんにしても、劇のドレッサーにしても、お金が欲しくて頑張ったわけでもないでしょう。一言で良いので自分の頑張りを認めてくれて、感謝の言葉が欲しかったはずです。裁判制度の中でもお金による解決だけではなく、人の気持ちに寄り添う解決ができればよいと思ったのでした。

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◇ 弁護士より一言

結婚式で、両親に感謝の言葉を述べるなんて演出がありますよね。あれって、本当に恥ずかしいだろうと若いころから思っていました。実際、自分の結婚式でもしませんでした。でも、今になって思うと、感謝の言葉を送るのは良いことに思えます。そうは言っても「家で楽しそうにくらしている子供達が結婚する日なんてくるのだろうか?」と不安になったのです。。。

以上:2,392文字
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R 7- 7- 1(火):映画”ドールハウス”を観て-残念ながら途中で興ざめ・ネタバレ
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恐れ入りますが、本ページは、会員限定です。

以上:21文字
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