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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 3-10-21(木):この20数年間の弁護士新受事件数・平均売上等変遷雑感
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○このHPの大分類「弁護士」の中に中分類として「弁護士の収入」を作り、38頁ほど弁護士の収入に関係する記事を記載していましたが、平成27年6月3日付「弁護士の収入やばすぎ-データで検証!「弁護士は食えない」のウソ」以来、記載していませんでした。平成27年は60代半ば近く達しており、また、弁護士数激増で、弁護士の収入は、おそらく相当低下しているだろうと考え、余り興味がなくなった即ちどうでもよくなったからです(^^;)。

○昭和55年4月に弁護士業を開始し、令和3年で42年目に入っていますが、私自身の売上・申告所得等は詳細にデータベース化しています。28歳で弁護士になり、当初2年間は勤務弁護士で、30歳で独立しましたので、独立した30代から60代までの40年間10年毎の平均も出しています。40年近く前の弁護士になって数年後に、先輩弁護士から、一般に弁護士が一番稼げるのは50代から60代にかけてで60代に入ると下降線になると聞いていましたが、その通りでした。

○30代10年間平均年間売上を10とすると、おおよそですが、40代10年間は23、50代10年間は36と増えましたが、60代10年間27と下降しています。30代に比べるとピークの50代では36とおよそ3.6倍になっています。60代は、50代の36から27と下降線に入り、70代はさらに下降すると思われます(^^;)。弁護士の収入に関する記事にの中にはピーク時収入は、当初の数十倍に増えている方も多く、私の収入などホントにささやかなものです(^^;)。

○70代には弁護士は引退しようと思っていましたが、頭と身体は死ぬまで使い続けないと、頭は認知症・身体は介護即ち(寝たきり)老人になるとの、デイリー牧師ノートでの繰り返しの警告、さらに最後の7年ほど認知症で介護老人となった我が父親の姿から、頭を使い続けないと私自身認知症介護老人になることが確実と思い、弁護士業引退は踏みとどまっています。他に転業する仕事が見つかるまでは弁護士を続けようと気持が変わりました。現在転業する仕事を探していますが、なかなか見つかりそうにありません(^^;)。

○令和4年には日弁連会長選挙があり、候補者と思われる方々からのFAX通知が時折入るようになりました。少なくとも3人以上が候補者として名乗りを上げているようです。その中の1人のFAX通知に弁護士業界の取扱い事件数・平均売上の変遷等を示す一覧表が掲載されていましたが。以下の通りです。



○1992年は平成4年で私は40代初め、2020年は令和2年で60代末期ですが、弁護士数は1992年1.4万人から2020年4.2万人に3倍に増加しているところ、新受け事件数はさほど変化がないため、弁護士1人当たりの事件数は1992年8.8件から2020年3.2件半減以下になっています。当然収入も激減していると思いきや、所得中央値が1999(平成11)年1300万円が2019(令和元)年700万円と半分以下になっているところ、2013年600万円が2017年650万円と徐々に増加しているのが不思議なところです。

○その理由は、完全給料制以外の弁護士で、本来、確定申告をすべき者が、所得が少ないために確定申告をしないことが原因で、統計から除外され、その数は3000人以上かと思われ、そのため「所得1割増加」は、統計上の漏れが原因だと思いますとの解説もなされています。当事務所にも弁護士歴7年目に入った弁護士が居ます。私が7年目の時の仙台弁護士会会員数はおそらく140名程度だったものが、令和3年は470名程度に3倍以上に増えています。弁護士一人当たりのパイ(仕事)は相当減っており大変だろうなと思います。私も大変ですが(^^;)。
以上:1,547文字
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R 3-10-20(水):妻と別れて結婚すると約束した男への損害賠償請求棄却地裁判決紹介
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○「妻と別れて君と結婚するとの誓約書の効力1」に、「妻と別れて君と結婚する」と言う約束は基本的に無効であり、妻には離婚の申し入れもせず家庭を維持したまま他の女性にこのような安易な約束をする男は先ず信用に値しませんと記載していました。

○ゆくゆくは妻と離婚をし,原告と一緒になりたいと繰り返し述べられたため,被告との交際を開始し,以後,性交渉をするなどの関係を続けたが、被告は原告と結婚するつもりもないのに、原告と結婚をするつもりであると原告を欺罔し,性交渉を持つことだけを目的として交際を継続させたことについて、不法行為として300万円の慰謝料請求をしました。

○しかし、原告は,被告との交際当時,分別を弁えているはずの22歳の女性であり,被告に妻子がいることを知りつつ,自らの任意の判断により,あえて被告との交際を開始し,交際を継続しているのであるから,仮に被告が原告と性交渉を持つことだけを目的とし,原告に対して甘言を弄していたとしても,これをもって直ちに不法行為に当たるとすることはできないとして請求を棄却した令和元年10月18日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○この女性のような相談はたまにあります。たしかに妻帯者のくせに結婚をエサにして性関係だけ結ぶ男性は、世の中には山のようにいます。これについていちいち不法行為による損害賠償責任を認めたのでは、彼方此方で損害賠償請求だらけになります。裁判になると証拠のない言葉は、必ず言った覚えはないと弁解し、言った言わないの水掛け論は、裁判所はまず認めてくれません。妻帯者のくせに結婚をエサにするような男は信用に値せず、また、損害賠償請求もできないことをシッカリ自覚する必要があります。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求の趣旨

 被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成30年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は,妻子のある被告において,結婚をするつもりがあると原告を欺罔しつつ,性交渉を持つことだけを目的として原告と交際をしたと主張する原告が,被告に対し,不法行為に基づいて,慰謝料300万円及びこれに対する不法行為の後である平成30年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実
 以下の各事実は,当事者間に争いがない事実等であるか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。
(1)当事者
 原告は,平成6年○○月○○日生まれの女性である(記録上明らかな事実,当事者間に争いがない事実)。
 被告は,昭和61年○月○日生まれの男性であり,妻と子がいる(記録上明らかな事実,当事者間に争いがない事実)。

(2)原告と被告の交際
 原告と被告は,平成27年又は平成28年に同じ事業所で勤務をするようになって知り合い,平成29年9月末頃に性交渉に及び,以後,平成30年1月まで交際を継続した(当事者間に争いがない事実,甲1(2頁),乙3(2頁))。

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)被告による原告との交際の態様が不法行為に当たるか。
(原告の主張)
 原告は,被告から,平成29年9月末頃の性交渉後,配偶者との夫婦関係が破綻し,別居も間近であること,ゆくゆくは配偶者と離婚をし,原告と一緒になりたいと繰り返し述べられたため,被告との交際を開始し,以後,性交渉をするなどの関係を続けた。被告は,原告と結婚をするつもりであると原告を欺罔し,性交渉を持つことだけを目的として交際を継続させたものである。

(被告の主張)
 被告が原告に対し,殊更に被告との婚姻を期待させるような言動をした事実はない。被告が原告に対し,配偶者との婚姻生活の不満を述べたことはあったかもしれないが,それ故に原告の婚姻に対する期待が高まったとしても,同期待を法的に保護すべきとするだけの特別な事情はない。

(2)損害
(原告の主張)
 原告は,被告との交際関係を婚姻関係に発展させるべく真摯に被告と向き合ってきたが,被告の不法行為により精神的苦痛を受け,摂食障害,生理不順等の身体の異変を来すに至り,現在,仕事を休みながら投薬治療を続けている。このような原告の精神的苦痛及び身体的異変を慰謝するための額は,300万円を下らない。

(被告の主張)
 否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記第2の2の前提事実(以下「前提事実」という。),後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(1)原告は,平成27年又は平成28年,被告がリーダーを務めていた事業所に赴任することにより,被告と知り合った。原告は,被告に妻と子がいることを認識していた。(前提事実(2),甲1(2,3頁),原告本人(調書3~5頁),被告本人(調書1頁))

(2)原告と被告は,平成29年9月末頃,αにおいて,被告を含めた事業所の同僚,取引先会社の従業員らと飲食をした。原告は,同飲食の後,被告からラブホテルに行こうと誘われると,誘われるがまま,これに応じた。原告は,同ラブホテル内において,被告からの性交渉の求めに対し,いったんこれを断ったが,翌朝,これを受け入れ,被告と性交渉に及んだ。(当事者間に争いがない事実,甲1(2,3頁),乙3(1,2頁),原告本人(調書3,4,14~19,24,25頁),被告本人(調書2,4,12,13,19頁))

(3)原告と被告は,以後,2週間に1回程度の頻度で,一人暮らしをしている原告宅を被告が訪れ,性交渉をするなどし,交際を継続した。
 このような交際を続ける中,被告は,妻の生活態度について不満を述べ,妻と離婚をしたいと述べることもあり,原告において,被告との交際を続けるにつき被告の妻の存在を指摘することもあった。もっとも,原告は,平成30年12月頃になると,被告に対し,妻との離婚を求めるようになり,更に,被告との交際を被告の妻又は就業先に告げると述べるようになった。
(以上につき,当事者間に争いがない事実,甲1(4頁),甲3の2(1,5,8頁),甲4の2(2頁),甲5の2(1,2頁),乙3(2,3頁),原告本人(調書5,6,9,10,19~21,26頁),被告本人(調書5~8,14頁))

(4)被告は,平成30年1月,原告に対し,交際の解消を申入れ,結局,原告と被告の交際は終了した(甲1(4頁),乙3(2,3頁),被告本人(調書6,7,19頁))。

2 争点(1)(被告による原告との交際の態様が不法行為に当たるか。)について
 前記1の認定事実(以下「認定事実」という。)(1)及び(2)のとおり,原告は,勤務先の先輩であった被告に妻子がいることを認識しつつ,被告から誘われるままにラブホテルに赴き,被告と性交渉に及んだ上,認定事実(3)及び(4)のとおり,原告は,これを契機として,平成30年1月までの3か月程度の間,被告と交際を継続したところ,その中で,被告から,妻と離婚をしたいなどと言われ,そのことに期待を寄せていたことが認められる。

 しかし,認定事実(2)及び(3)で認定した,原告と被告の間で初めての性交渉に及んだ経緯,及びその後に開始され,3か月程度で解消された交際の推移をみても,これらの状況は,一般的な不貞関係に及ぶ男女の交際におけるそれと異なるところはなく,このような不貞関係を続ける中で被告から妻と離婚をしたいという発言があったからといって,同発言をそのまま信じるか否かは,被告との交際当時,分別を弁えているはずの22歳の女性であった原告(前提事実(1))の任意の判断によるべきものというほかない。

原告との交際中の被告による具体的な言動において,被告と交際を始めるか否か,交際を継続するか否かについての原告の合理的な判断を著しく困難とするような言動,すなわち,不貞関係を続ける当事者間においてなお社会的相当性を逸脱すると評価することができるような言動があったとは認められない。また,被告の言動により生じた原告の期待は,不貞関係を続ける上での主観的な期待にすぎず,その内容も,不貞の相手である被告の家庭の崩壊を期待するものにほかならないから,そのような期待をもって法的保護に値するということもできない。

 この点,原告は,被告から,平成29年9月末頃の性交渉の後,配偶者との夫婦関係が破綻し,別居も間近であること,ゆくゆくは配偶者と離婚をし,原告と一緒になりたいと繰り返し述べられたため,被告との交際を開始し,以後、性交渉をするなどの関係を続けたのであり,被告の行為は,原告と結婚をするつもりであると原告を欺罔し,性交渉を持つことだけを目的として交際を継続させたものであると主張する。

しかし,原告の陳述(甲1)及び供述(原告本人)をもってしても,被告が原告に対し,妻との婚姻関係が破綻した状況にあり,別居も間近であると述べた事実は認められないし,原告を騙したと評価することができるような具体的な言動も認められない。上述のとおり,原告は,被告との交際当時,分別を弁えているはずの22歳の女性であり,被告に妻子がいることを知りつつ,自らの任意の判断により,あえて被告との交際を開始し,交際を継続しているのであるから,仮に被告が原告と性交渉を持つことだけを目的とし,原告に対して甘言を弄していたとしても,これをもって直ちに不法行為に当たるとすることはできない。

 そうすると,原告との交際における被告の言動をもって,不法行為に当たるということはできない。
 

3 よって,原告の請求は,争点(2)(損害)について判断するまでもなく,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部 裁判官 松本真
以上:4,083文字
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R 3-10-19(火):遺留分減殺請求後遺言執行者預金全額払戻請求認容地裁判決紹介
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○亡Aの遺言執行者である原告が、銀行である被告に対し、亡A名義の普通預金の払戻し等を求めた事案において、請求を認容した令和元年11月15日東京地裁判決(金融法務事情2142号52頁)を紹介します。

○亡Aの相続人は、二男原告・三男D・四男Eでしたが、遺言で二男原告を遺言執行者に指定し、被告銀行預金を換価し、葬儀費用等一切の債務を控除した残額全てを二男原告と四男Eに各2分の1の割合で相続させるとしました。そこで相続財産のない三男Dが、原告及びEに対し、遺留分減殺請求権を行使する意思表示をしました。

○そのため被告銀行は、遺留分減殺請求権が行使された場合に遺言執行者が遺言を執行できるかについて判断しかね,二重払いの危険を回避するために払戻請求に応じなかったため遺言執行者の原告が被告銀行に対し、亡A名義の普通預金1742万5174円及びこれに対する払戻請求の日の翌日である平成30年9月11日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めたものです。

○令和元年11月15日東京地裁判決は、亡Aが本件遺言第5条により遺言執行者である原告に本件預金債権の払戻しを求めてこれを受領する権限を付与した部分は,Dが本件遺留分減殺請求をしたことによっても,何ら影響を受けるものではなく,原告は,本件遺言の遺言執行者として,単独で本件預金債権全額の払戻しを請求することができ、且つ、原告から本件預金債権の払戻請求を受けた平成30年9月10日に履行遅滞に陥り,その翌日である同月11日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務を負うとしました。

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主   文
1 被告は,原告に対し,1742万5174円及びこれに対する平成30年9月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は,亡A(以下「亡A」という。)の遺言執行者である原告が,銀行である被告に対し,亡A名義の普通預金1742万5174円及びこれに対する払戻請求の日の翌日である平成30年9月11日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実のほか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定することができる事実)
(1)亡Aは,平成28年12月27日,死亡した。亡Aの法定相続人は,二男である原告,三男であるD(以下「D」という。)及び四男であるE(以下「E」という。)の3人である。(争いのない事実,甲1,2の1ないし7)
(2)亡Aは,平成24年11月22日,下記の内容を含む公正証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。(甲4)
       記
第2条 亡Aは,第5条に指定の遺言執行者において,亡Aの有する次の金融資産を全て換価し,換価により得られた金銭から亡Aの葬儀,納骨等の費用,公租公課及び債務の一切を支払い,残りの全てを,原告及びEに各2分の1の割合にて相続させる。
[金融資産の表示]
(1)被告のF支店に預託等している預金等資産の全部
(2)その他の金融資産の全部
(3)手元現金の全部

第5条 亡Aは,本件遺言の執行者として,原告を指定する。ただし,本件遺言の発効以前に原告が死亡した場合は,Eを指定する。
2 亡Aは,前項の遺言執行者に対し,次の権限を与える。
(2)登記手続,亡Aの有する預貯金等の名義変更・解約・受領,貸金庫の開披・解約・内容物の取出し,その他の本件遺言を執行するために必要な一切の行為を行うこと。

(3)Dは,平成29年11月27日頃,原告及びEに対し,遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示(以下「本件遺留分減殺請求」という。)をした(甲16,17)。

(4)原告は,平成30年9月10日,銀行である被告のF支店を訪れ,本件遺言に係る公正証書等の関係書類を示して,被告に対し,亡Aが死亡時に同支店に開設していた同人名義の二口の普通預金口座(口座番号○○○○○○○号及び口座番号△△△△△△△号)に係る預金債権(以下「本件預金債権」という。)の払戻請求をした。同日時点の本件預金債権の額は,合計1742万5174円であった。(争いのない事実)

 原告が,上記払戻請求の際,本件遺留分減殺請求がされていることについて申告したところ,被告は,遺留分減殺請求権が行使された場合に遺言執行者が遺言を執行できるかについて判断しかねたことから,二重払いの危険を回避するために払戻請求に応じなかった。(争いのない事実,弁論の全趣旨)

2 争点及びこれに関する当事者の主張
 本件の争点は,遺言執行者である原告が単独で本件預金債権全額の払戻しを請求できるか(争点(1)),被告が遅延損害金の支払義務を負うか(争点(2))である。
 なお,亡Aの相続は,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の施行日(令和元年7月1日)より前に開始しているから,同法附則2条により,当該相続については,原則として,同法による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)の規定が適用される。

(1)争点(1)(遺言執行者である原告が単独で本件預金債権全額の払戻しを請求できるか)について
(原告の主張)
 原告は,本件遺言において,遺言執行者として本件預金債権の払戻しの権限が与えられているから,被告に対し,単独で全額の払戻しを請求できる。仮に本件遺留分減殺請求によって本件遺言が遺留分侵害の限度で無効になるとしても,被告が遺留分を侵害する具体的な額を主張立証していない以上,被告は全額を支払う義務がある。

 被告は,本件の第1回口頭弁論期日において,原告適格を争わない旨陳述しているから,その後に原告適格を争うことは,訴訟上の信義則に違反する。

(被告の主張)
 本件遺言は,本件遺留分減殺請求によってDの遺留分を侵害する限度で失効し,本件預金債権は,原告,E及びDの準共有に属することになる。原告は,Dに復帰した遺留分相当額につき遺言を執行する権限を有しないから,Dの同意を得ない限り(民法251条),単独で本件預金債権全額の払戻請求をすることはできない。本件遺言第5条2項は,遺留分減殺請求で遺言が失効することにより減殺請求者に帰属する預貯金についての遺言執行者の権限まで規定したものではない。

 原告には遺言執行者としての払戻権限がないから,原告適格がなく本件訴えは却下されるべきであり,そうでないとしても,本件請求は棄却されるべきである。

(2)争点(2)(被告が遅延損害金の支払義務を負うか)について
(原告の主張)
 本件遺言は,公正証書でもって,遺言執行者である原告が被告に対する本件預金債権全額の払戻請求権限を有することを明確にしているから,被告が,債権者不確知の状態にはないにもかかわらず,Dにより本件遺留分減殺請求がされた事実のみを根拠として,原告の払戻請求に応じなかったことは違法であって履行遅滞に陥っており,遅延損害金を支払う義務がある。

(被告の主張)
 金融機関が預金の払戻請求に応じないことが違法として履行遅滞に陥るのは,預金者を確認するための必要最小限の相当期間が経過した後である。金融機関は,かかる期間内であれば預金の払戻しを留保することができる。
 本件では,被告が可能な弁済供託を怠ったという事実はなく,上記の相当期間を経過していない。また,本件遺留分減殺請求の効果として本件預金債権が誰にどのように帰属しているのか不明確である中,二重払いの危険を負担して払戻しに応じることは,被告には過度な負担である。

 したがって,被告が原告の本件預金債権の払戻請求に応じなかったことは違法でないから,履行遅滞に陥っておらず,遅延損害金の支払義務はない。         (中略)

第3 争点に対する判断
1 争点(1)(遺言執行者である原告が単独で本件預金債権全額の払戻しを請求できるか)について

(1)本件遺言第2条は,亡Aの遺産である本件預金債権を含む金融資産については,遺言執行者が全て換価し,換価により得られた金銭から,亡Aの葬儀,納骨等の費用,公租公課及び債務の一切(以下「亡Aの債務等」という。)を支払って精算した上で,残金を原告及びEに各2分の1という指定の割合で配分することを定めたものであるところ(前提事実(2)),遺言執行者は,本来,その執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされており(改正前民法1012条1項),加えて,本件遺言においては,第5条により,亡Aの有する預貯金等の解約,受領を含め,本件遺言の執行のために必要な一切の行為を行う権限を,遺言執行者に明示的に与えている(前提事実(2))。そうすると,亡Aが死亡時に有していた,その遺産である本件預金債権については,本件遺言の遺言執行者に指定された原告が,本件遺言第2条に定められたとおり,亡Aの債務等の一切を支払って精算した後の残金を分配するため,本件遺言第5条により,被告に対し払戻しを求めてこれを受領する権限を有するものということができる。

(2)これに対し,被告は,本件遺言は,本件遺留分減殺請求によってDの遺留分を侵害する限度で失効し,本件預金債権は,原告,E及びDの準共有に属するから,遺言執行者である原告が単独で払戻請求をすることはできない旨主張する。

 しかし,仮に本件遺言第2条がDの遺留分を侵害するとしても,それは,金融資産の換価精算後の配分について亡Aが指定した配分割合の部分にすぎない。同条のうち,遺言執行者が本件預金債権を含む金融資産を換価して得られた金銭から亡Aの債務等を支払い精算した上で分配するという遺産分割の方法を定めた部分や,遺言執行者の権限を定めた本件遺言第5条2項は,Dの遺留分を侵害するものではないから,本件遺言のうちこれらの部分が,Dの本件遺留分減殺請求によって失効すると解することはできない。

 しかも,本件遺言第2条は,特定遺贈や特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言とは異なり,本件預金債権を含む金融資産を換価精算した後の残金を指定割合により分配させるという趣旨のもので,亡Aの死亡で生じた,法定相続人3人による本件預金債権の遺産共有状態それ自体には何らの変更を生じさせるものではない。

そうすると,本件遺言により本件預金債権が原告とEの準共有に属したが,本件遺留分減殺請求によってDに本件預金債権のうち遺留分相当額の持分が復帰し,原告,E及びDの準共有が生じることを前提として,当該Dの遺留分相当額について遺言執行者である原告の遺言執行権限を否定する被告の主張は,前提を欠くもので,失当といわざるを得ない。そして、遺産共有状態にある相続財産につき,遺言執行者が遺言執行に必要な行為をするための管理処分権を有することはいうまでもない(改正前民法1012条1項)。

(3)以上によれば,亡Aが本件遺言第5条により遺言執行者である原告に本件預金債権の払戻しを求めてこれを受領する権限を付与した部分は,Dが本件遺留分減殺請求をしたことによっても,何ら影響を受けるものではなく,原告は,本件遺言の遺言執行者として,単独で本件預金債権全額の払戻しを請求することができるというべきである。
 

2 争点(2)(被告が遅延損害金の支払義務を負うか)について
(1)原告は,平成30年9月10日,被告に対し,本件遺言に係る公正証書等の関係書類を示して,本件預金債権の払戻請求をしたのであるから(前提事実(4)),被告は,それにより履行遅滞に陥り,当該払戻請求を受けた日の翌日である同月11日から本件預金債権について遅延損害金の支払義務を負うというべきである(民法412条3項)。

(2)これに対し,被告は,金融機関が預金の払戻請求に応じないことが違法となるのは,預金者を確認するための必要最小限の相当の期間を経過した後であり,金融機関は,かかる期間内であれば預金の払戻しを留保することができ,本件では当該期間が経過していない旨主張する。

 しかし,民法419条3項は,金銭債務の債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない旨を定めているから(その趣旨は,利息相当額が不履行の期間において債権者に当然生じる損害であり,他方で,弁済しない債務者としても利息相当額の利益を上げる可能性があるから,不可抗力を抗弁としないことが公平としたものと解される。),当該債務者は,請求権限ある者からの請求に対して支払をしない場合には,遅滞がその責めに帰すべき事由によらないときであっても,その請求を受けた時から(同法412条3項),同法419条1項所定の損害賠償責任を負うことになるのであり,当該債務者が金融機関であれば,当然に,預金者を確認するための必要最小限の相当の期間を経過した後でなければ履行遅滞とならないということはできない。

しかも,本件において,原告は,被告に対し,遺言執行者として,亡Aの有する預貯金等の名義変更・解約・受領の権限を付与されたことが明記された本件遺言に係る公正証書をも示して本件預金債権の払戻請求をしたのであって(前提事実(4)),約款により払戻請求の際に提出や提示が必要とされている書類に不足があったとか,上記公正証書が無効であることが明らかであった等の事情も窺えない。

そうすると,被告において,本件遺留分減殺請求があったことを認識し二重払いの危険を避けるために原告の払戻請求を拒んだという事情があるからといって,それでもって,履行遅滞に陥らないということはできず,被告の上記主張は,採用することができない。


(3)以上によれば,被告は,原告から本件預金債権の払戻請求を受けた平成30年9月10日に履行遅滞に陥り,その翌日である同月11日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。

第4 結論
 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第10部 裁判長裁判官 徳岡治 裁判官 木地寿恵 裁判官 安陪遵哉

以上:5,841文字
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R 3-10-18(月):映画”DUNE/デューン 砂の惑星”を観て-映像は凄いが途中睡魔と戦う
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○令和3年10月17日(日)は夕方、「TOHOシネマズ仙台」の6番アイマックスシアターで、現在封切り上映中の話題の映画「DUNE/デューン 砂の惑星」を観てきました。西暦1万年代の未来の話しで、「宇宙を支配する力を持つ秘薬の生産地で、デューンと呼ばれる惑星を舞台に繰り広げられる覇権争いを描く」というSF映画です。

「TOHOシネマズ仙台」の6番アイマックスシアターでは、当初は、難聴者用補聴ヘッドホンが使えていたのですが、途中から音が出なくなり、それをスタッフに伝えると故障していると言われ続けていました。しかし、最近は、アイマックスシアターでは、補聴ヘッドホンは使えないシステムになったと言われており、残念ながら補聴器を利用して音を聞かなければなりません。補聴器では、大音量がきつくて、片耳だけの使用にしています。

○さてこの「DUNE/デューン 砂の惑星」、映像美が素晴らしいとの触れ込みで期待して鑑賞しました。確かに、砂漠での砂の広がり等鑑賞に値する映像美はありましたが、肝心のストーリーは、カタカナ用語の字幕が多く、ストーリーがなかなか飲み込めず、ストーリーの中に感情が入らず、退屈極まるもので、開始当初から飲んでいたビールの酔いが回る程に、睡魔が襲い、睡魔との戦いながら、途中で何度もウトウトして益々ストーリーが判らなくなり、結局、殆どハラハラ・ドキドキ・ワクワク感を得られないまま終了しました。

○この映画は、ストーリーを予習して、対立する2つの家系の用語もシッカリ覚えて観ないとストーリーについて行けないと感じました。

デューン 砂の惑星』予告編
以上:674文字
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R 3-10-17(日):2021年10月16日発行第303号”言い訳弁護士”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年10月16日発行第303号「言い訳弁護士」をお届けします。

○goo辞書によると、小言とは「細かいことをいちいち取り立ててしかること。また、その言葉。」、言い訳とは、「そうせざるをえなかった事情を説明して、了解を求めること。弁解。弁明。」と解説されています。確かに弁護士も、小言好きが多そうです。失敗を挽回しようと弁護士に相談しているのに、失敗を取り立てて叱る弁護士が、弁護士独占・寡占時代には多かったようで、私も反省が必要です。

○お客様にしてみれば、失敗について、巧い言い訳を相談するため、わざわざ相談料を支払って弁護士事務所を訪れたのに、そこで失敗について小言を聞かされたのではたまったものではありません。「何だってお金を払って、小言を言われないといけないんだ!」という、お客様の苦情を、シッカリ噛みしめます。


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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

言い訳弁護士


小言幸兵衛という落語があります。大家さんをしている幸兵衛さんは、小言が大好きなんですね。家を借りに来た人にも小言を言って追い返します。「子供がいると部屋を貸して貰えない」と心配して、「子供はいません!」なんて言おうものなら、「子は『子宝』というぐらいだ、そんな事を自慢する奴に店は貸せん」「女房が子供嫌いなら、オレがもっといいのを世話してやる!すっぱり別れて独り身になって引っ越してこい」なんて無茶苦茶を言うんです。

そんなわけで、なかなか部屋が埋まらない。まあ、江戸から昭和にかけては、大家さんの力が強かったから、こんな感じでもやっていけたんでしょう。もっとも、現代でもこんな大家さんいます。最近、賃借人の代理人として対応した大家さんは凄かった。最初からケンカ腰で、私にまで小言を言ってきます。さらには、「代理人の人品を見る必要があるので、当方の事務所まで来るように」なんて言われちゃいました。ううう。。。

もっとも、小言が好きなのは弁護士も同じです。「何だってお金を払って、小言を言われないといけないんだ!」という、お客様の苦情を何回も聞いたことがあります。刑事裁判の弁護人が、法廷で被告人にお説教するなんて、本当によくあったのです。検察官や裁判官に言われるのはまだしも、味方のはずの弁護士からもボロクソに言われたら、たまらない気持ちになるのもよく分かります。

小言幸兵衛の家族は、「小言」に対抗して「言い訳」が上手くなったのではないか、ということで書かれた小説が、星新一の「言い訳幸兵衛」です。この幸兵衛さんの「言い訳」は神業です。会社勤めしているのですが、毎日遅刻してきます。それでも、毎日素晴らしい言い訳をするので、全く問題になりません。幸兵衛さんは、言い訳の才能を見込まれて、潰れそうな会社の社長になります。社長だから、社内の人には言い訳する必要が無くなったことを残念に思いながら、やがて会社が倒産したときに、怒った債権者たちに言い訳することを楽しみにしているなんて話しでした。

ただ考えてみますと、言い訳幸兵衛は、問題が起きてから言い訳してます。しかし、今の社会では、問題が起きる前から言い訳する必要があるのではと思い至ったのです。少し前に関西の駅で、駅員さんに「パスモ使えますか?」と質問したことがあります。駅員さんは暫く考えてから、「チャージされていれば使えます」と答えたんです。な、何なんだ、その回答は。ただ、これなんか、クレーマーに悩まされてきた駅員さんの、防御策なのかもしれません。これまでに、「パスも使えます!」と答えたところ、チャージされていないパスモが使えないと、クレームを付けてきた人がいたんでしょう。冗談のように思えますが、こういうクレーマー、本当にいます。私が担当したのは、「車のナビに従って運転したら、崖から落ちたので弁償しろ」という人でした。落ちる前に気付けよ!

こういう時代ですと、弁護士も言い訳が上手くなります。弁護士の出す法的な「意見書」なんて、言い訳が8割占めてます。「意見書の通りにしたら損害が生じた」などと言われないために、前提事実や検討した証拠の標目など、これでもかと列挙して、「意見」が妥当する範囲を明確にしていきます。これは万が一のクレーム対策に必要な手間です。純粋に意見だけを出すなら、10分の1の手間と費用で対応可能なんです。今の時代、「小言弁護士」は論外でしょう。保身目的の「言い訳弁護士」も程々にしようと思う一方、お客様の為なら、幸兵衛さんに負けない「言い訳」の技を磨きたいと思うのです!

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◇ 弁護士より一言

ニュースレター13年も続けてますので、子供たちも小さい頃から読んでいます。娘からは、「一言」は面白いけど、本文は何が良いのか分からないなんて言われてました。でも、最近になって、「パパのニュースレターの面白さが分かってきた!」と褒められました。「分かんないのは勉強が足りない!」なんて「小言」も、「みんなに分かるように書くのは難しい」なんて「言い訳」も、言わなくて良かったと思うのです。
以上:2,199文字
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R 3-10-16(土):”厚生年金「平均14万円」だが、格差は大きい。老後まで続く。”紹介
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○「日本の年金制度の世界ランキングは相当低いようです」の続きです。「日本の年金額は世界各国の年金額の中でどの程度のランキングなのか興味を持ち、ネットで色々調べています。」と記載していました。世界の年金額との比較についてのデータは見つかりませんが、日本国内の年金について詳しく解説している「人生100年時代をどういきるか?」と言うサイトの「厚生年金「平均14万円」だが、格差は大きい。老後まで続く。」という解説記事を見つけました。以下、この記事の備忘録です。

○厚生年金の平均受給額は厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和元年度」によると次の通りです。
厚生年金保険(第1号)平均年金月額
男子:16万4770円
女子:10万3159円
男女平均額:14万4268円



○日本の公的年金制度は、
1階部分「国民年金」:日本に住む20歳以上60歳未満の全員に加入義務
2階部分「厚生年金」:公務員や会社員などが「国民年金」に上乗せして加入
の2階建てですが、2階建ての受給額平均が、男子16万4770円、女子10万3159円、男女平均14万4268円とは、意外に低いと感じました。到底、これだけでは老後の生活資金としては不足と思われます。

○厚生年金保険男子1066万人、女子531万人合計約1600万人の受領年金額の人数を見ると、10万円未満が380万人も居るのに、25万円以上は31万人しかいません。30万円以上に限定すると僅か1万8000人しか居ません。受給額が多い人の割合が低く、受給額が少ない人の割合が高いのは、厚生年金の受給額には、現役時代の収入が反映されているからと解説されています。



○厚生年金だけでは、老後の生活には到底不足ですので、リタイヤ後の暮らしに向けて、
「世界株式」に目を向ける
「長期積立」でコツコツ運用を
「投資と保障のバランス」を意識する
なんて記載されていますが、言うは易く行うは難しの典型のようです(^^;)。
以上:810文字
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R 3-10-15(金):岸田政権経済政策や与野党の選挙公約は“バラマキ合戦”か
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○財務省の事務方トップ・矢野康治財務事務次官が『文藝春秋』に寄稿した『財務次官、モノ申す 「このままでは国家財政が破綻する」』が話題を呼んでいます。この矢野財務事務次官の寄稿について、会計学に無知識とこき下ろしています。高橋洋一氏の考え方については、「髙橋洋一氏著作”日本経済の真相”一部紹介」「日本の借金は1000兆円、それとも100兆円のいずれか?」で、一部紹介しています。

○「高橋洋一氏の上げる数値の根拠は全く判らず、ああそうですか、と聞くしかありませんが、悲観してもどうなるわけでなく、楽観でいった方が精神衛生上は楽なので、こちらを信じようかと思っております(^^)。」と記載していましたが、正に「会計学に無知識」な私は、悲観より楽観でいきたいところです。しかし、バラマキが、日本経済復興のカギになるかどうかは、全く不明です。

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巨額経済対策「必要なのか」 財務次官が異例の雑誌寄稿
日経新聞2021年10月8日 17:42


財務省の矢野康治次官は8日発売の月刊誌「文芸春秋」11月号に寄稿し「本当に巨額の経済対策が必要なのか」と疑義を呈した。岸田文雄首相は数十兆円規模の対策を主張している。現職の財務次官が雑誌寄稿で首相の意向に疑念を表明するのは異例だ。

鈴木俊一財務相は8日午前の閣議後の記者会見で、寄稿は麻生太郎前財務相の了解を得ていると説明した。内容は「まだ読んでいない」と話した。

寄稿の題名は「このままでは国家財政は破綻する」。経済成長だけで財政健全化するのは「夢物語」だと指摘し、衆院選を控えて与野党が展開する「バラマキ合戦」に懸念を示した。与党が検討する現金給付も「死蔵されるだけ」と断じた。日本の財政状況について「タイタニック号が氷山に突進しているようなもの」と表現した。

自身について「一介の役人にすぎない」としながらも、財務省職員として黙っているのは「不作為の罪」だと主張。「心あるモノ言う犬」として注意喚起をしたと説明した。


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矢野事務次官の寄稿は「財務省の事務方トップが“会計学に無知識である”ことを世界に晒した」 ~高橋洋一氏が指摘
ニッポン放送10/13(水) 17:45配信


飯田)『文藝春秋』11月号に載りましたけれど、現役の財務事務次官が、政策に関して「バラマキ合戦」と批判したという記事について伺います。ここへ来て与野党に波紋が広がっていますが、どうご覧になりますか?

高橋)「ついにやってくれたな」と思いますね。

飯田)やってくれたな?

高橋)いままで表では言わなかった話を言ってくれたなと思いました。私も30年以上昔から、「これはおかしい」と思っていたのです。何がおかしいかと言うと、一般会計のフローと言って、収支だけで判断する。おまけにストックのところは債務だけしかないという。

飯田)いままで言わなかった話。

高橋)国の会計は一般会計以外にも、特別会計がたくさんあるのですよ。それがフローの段階では全部合わせていない。さらに、それを全部合わせたもので「バランスシートをつくって、債務だけではなく資産も見なくてはいけない」というのが会計学の基本なのですが、それに反している。最初から変だと思っていたのだけれど、政府のバランスシートをつくることがなかったから、きちんと説明できなかったのです。私が財投改革をやったときに、「政府のバランスシートをつくらないと絶対にできませんよ」と言ったら、「やっていい」と言われたのですよ。

飯田)バランスシートを。

高橋)一般会計以外も含めたものを全部つくったのですよね。それで初めてわかったのですが、「財政問題はない」というのはそのときからそうでした。

飯田)この主旨の部分は、各党の経済政策に対して、「政府債務がこれだけあるのに、こんなにバラ撒いてもいいのか」というようなことが書いてあったわけですが。

高橋)はっきり言うとバランスシートが読めないという、会計学から見れば0点という状況なのですよ。みんな「意見だから、意見だから」と言うけれど、前提となる会計学の知識が0点というのは恥ずかしいことですよ。

飯田)矢野氏はもう少し踏み込んで書いていたかも知れませんが、資産の部分について「いきなり売ると言ったって、山や道路は売れないだろう」ということが出て来ますよね。

高橋)それはどんな会計でも一緒ですけれどね。売れなかったときには、それを担保としてファイナンスするなど、いくらでもできるのです。要するに、財務省の事務方トップが「会計学に無知識である」ということを世界に晒したというのが、私はポイントだと思います。

飯田)昨日(12日)の閣議後会見のなかで、閣僚の方々が「個人の意見だ」とか、「いままで政府が言って来たことから反していない」というような、どちらかと言うと擁護的な発言をしています。

高橋)「ずっと間違いを続けていて平気?」ということです。中身について言えないでしょう。中身について唯一言えている人は、安倍さんです。

飯田)安倍元総理。

高橋)「あの論文は間違っている」の一言でおしまいです。

飯田)間違っている。

高橋)このように「間違っている」とはっきり言えないとダメです。「意見だ」などと言うのは誤魔化していますよね。従来と同じだと言うけれど、従来からずっと間違っているのです。みんな中身について言えないのです。これでお里が知れてしまう人が出て来ますよ。

飯田)経済同友会の櫻田代表幹事は、「書かれていることに100%賛成だ」と言っています。

高橋)それでは企業経営はできませんね。

飯田)選挙の直前で出て来たというのも、ハレーションを生んでいるところです。

高橋)官僚のやりたい放題であるという内閣の形を表していると思います。

以上:2,422文字
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R 3-10-14(木):自筆証書遺言要件の主張立証責任は有効性主張者とした地裁判決紹介
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○民法第968条自筆証書遺言「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」についての解釈について詳細に判断した令和2年10月8日東京地裁判決(判時2491号54頁)関連部分を紹介します。

○その要旨は、
①民法968条1項が規定する各要件が具備されていることの主張立証責任は、自筆証書遺言の有効性を主張する者が負う
②遺言書には遺言書が作成された真実の日が記載されていることが必要であり、その主張立証責任は、自筆証書遺言の有効性を主張する者が負う
③封緘されていない封筒に収められていた3枚の便箋からなる遺言書について、それぞれ作成時期が異なる1枚目の便箋(左半分が切断されて右半分しか残っていないもの)と2枚目・3枚目の便箋とを組み合わせた形式で作成されたという合理的な疑いを否定できず、有効な自筆証書遺言の要件を具備しておらず、無効であるとした
ものです。



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主   文
1 奈良家庭裁判所葛城支部平成30年(家)第845号遺言書検認申立事件において検認された平成8年10月6日付け自筆証書遺言によるA(最後の住所:奈良県橿原市〈以下省略〉)に係る遺言は無効であることを確認する。
2 被告は,原告に対し,159万2287円及びうち150万円に対する令和2年4月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告に対し,令和2年4月30日から第1項のA(平成29年9月17日相続開始)に係る遺産分割の成立の日又は被告が別紙1物件目録記載2の建物の2階及び3階部分から退去する日のいずれか早く到来する日までの間,毎月末日限り5万円を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
 
事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は,平成29年9月17日に死亡したA(以下「亡A」という。)の長女の原告が,長男の被告に対し,亡A作成名義の平成8年10月6日付け自筆証書遺言(以下「本件遺言書」という。)は無効であると主張して,本件遺言書の無効確認(主文第1項)を求めると共に,本件遺言書において被告に相続させる旨の記載がある亡Aの遺産に属する不動産の一部(別紙1物件目録記載2の建物の2階及び3階部分)は,被告が亡Aから賃借していたものであり,亡Aの相続発生後は亡Aと被告との間の賃貸借契約に基づく賃料債権の2分の1(原告の法定相続分に相当する月額5万円)が原告に帰属すると主張して,同賃貸借契約に基づき,令和2年3月末日までに発生した賃料の2分の1に相当する150万円並びにこれに対する同年4月8日までに発生した平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金9万2287円及び150万円に対する同月9日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払(主文第2項)と,同月30日から亡Aに係る遺産分割が成立する日又は被告が同建物の2階及び3階部分から退去する日のいずれか早く到来する日までの間,毎月末日限り5万円の賃料の支払(主文第3項)を求めた事案である。

2 前提事実(争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1) 当事者等
 亡A(昭和2年○月○日生)は,B(大正4年○月○日生,平成16年2月17日死亡。以下「亡B」という。)と婚姻し,亡Bとの間に被告(長男)と原告(長女)の2人の子をもうけ,亡Bと死別した後,平成29年9月17日に死亡した。
 原告(昭和30年○月○日生)は,被告の妹である。
 被告(昭和23年○月○日生)は,原告の兄であり,奈良県橿原市において小児科医院を開業している。(甲1の6・9・11)

(2) 本件遺言書
 亡A作成名義の平成8年10月6日付け自筆証書遺言(本件遺言書)が存在し,平成30年11月1日,奈良家庭裁判所葛城支部において,原被告双方が出頭した上で検認が行われた(奈良家庭裁判所葛城支部平成30年(家)第845号遺言書検認申立事件)。検認時の本件遺言書は,封緘されていない封筒に3枚の便箋が入った状態のものであり,その記載内容及び記載状況は別紙2記載のとおりである。

 遺言書の1枚目として扱われた便箋(冒頭に「遺言書」と記載され,右肩に「一頁」との付記があるもの。以下「1枚目の便箋」という。)は,紙面の中央付近で何者かの手により縦方向に切り取られて,便箋の右半分のみが残存した状態となっており,その右半分には,後記本件不動産を被告に相続させる旨の記載がある。遺言書の3枚目として扱われた便箋(右肩に「三頁」との付記があるもの。以下「3枚目の便箋」という。)の末尾には,「平成八年十月六日 遺言者 A」との記載と押印がある。遺言書の文字は,黒色ボールペンで筆記されているが,遺言書の2枚目として扱われた便箋(右肩に「二頁」との付記があるもの。以下「2枚目の便箋」といい,3枚目の便箋と併せて「2・3枚目の便箋」という。)の下端近くの年や年月日の記載部分のみ,鉛筆で筆記されている。(甲7,乙1)

(3) 検認手続における本件遺言書の保管・発見状況の説明
 被告は,平成30年9月14日,奈良家庭裁判所葛城支部に対し,本件遺言書の検認を申し立てた。検認申立書には,同年8月15日頃,被告が遺言者の遺品整理を進めていた際に,遺言者の自宅内の金庫の中から本件遺言書を発見したこと,金庫の鍵は遺言者が生前被告に預けていたことが記載されている。

 検認期日調書には,申立人(被告)の説明内容として,本件遺言書の保管又は発見の経緯は申立書記載のとおりであり,「申立書記載の金庫の棚に遺言書が入っていました。」と記載されている。
 被告が本件遺言書を発見したと主張する金庫は,亡Aが生前居住していた後記本件建物の4階にあり,金庫内は三段に分かれていて,上段と中段が棚で,下段が鍵付きの引出となっている。(甲2,7,乙4,被告本人)

(4) 本件不動産の権利関係及び利用状況

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 自筆証書遺言の要件の検討

(1) 自筆証書遺言が有効であるためには,その有効性を主張する当事者において,①遺言書の全文を遺言者が自書したこと,②日付を遺言者が自書したこと,③氏名を遺言者が自書したこと,④遺言者による押印があること,の各要件を具備することを主張立証する必要がある(民法968条1項)。

 このうち②については,民法が自筆証書遺言に日付の記載を要求しているのは,遺言者の遺言作成当時の遺言能力(同法961条,963条)の有無を判断するなどのための基準として日付が重要な意味を持ち,また,複数の遺言が存在して内容に抵触がある場合に,最後のものが遺言と認められること(同法1023条)との関係で,遺言作成の先後を確定する上で日付が不可欠となることによるものであることに照らすと,単に形式的な日付の記載があるだけでは足りず,実際に遺言書が作成された日が正しく記載されていることが必要であり,遺言書の真実の作成日と合致しない日付は無効である。そして,実際の遺言書の作成日に合致する有効な日付が記載されていることの主張立証責任は,自筆証書遺言の有効性を主張する当事者(被告)が負うと解するのが相当である。

 これに対し,被告は,遺言書に記載された日付が実際の作成日と相違することは,遺言能力等の遺言の無効事由が争点となる場面と同様に,自筆証書遺言が無効であることを主張する当事者(原告)が主張立証責任を負うべきである旨主張する。
 しかし,上記のとおり,民法は遺言書に記載された日付が遺言能力の有無や内容が抵触する複数の遺言の効力等の判断基準となり得る有効な日付であることも自筆証書遺言の一般的な成立要件として要求していると解すべきであり,遺言の効力を争う当事者が主張立証責任を負う遺言能力等の遺言者の意思能力や意思表示の瑕疵に関わる問題とは場面が異なるから,被告の主張は採用できない。

(2) また,全文の自書のある自筆証書遺言が複数枚の紙面にわたる場合,全ての紙面に日付,氏名,押印がなくても,いずれかの紙面に日付や氏名の自書と押印が存在し,かつ,複数枚の紙面が全て一通の一体性のある遺言書を構成していると認定できるのであれば,自筆証書遺言の要件を充足する有効な遺言と認めて差し支えない。一般に,複数枚の紙面にわたる遺言書に契印や編綴が施されていたり,複数枚の紙面が封緘された封筒の中に一緒に収められていたりした外形がある場合には,遺言書の一体性が肯定されやすくなるが,逆にこれらの処置が何も施されていない場合には,遺言書の一体性に対する疑義を生じさせやすくなるといえる。

 そして,遺言の内容が記載された複数枚の紙面が一通の一体性のある遺言書を構成していることは,自筆証書遺言に要求される①ないし④の要件と相まって,遺言者が遺言書の作成時点においてした意思表示の内容を正確に把握するための不可欠の前提をなすものであるから,遺言書が一通の一体性のある書面であることの主張立証責任は,遺言の有効性を主張する当事者(被告)が負うと解するのが相当である。

 これに対し,被告は,自筆証書遺言が有効であると主張する当事者は,①ないし④の自筆証書遺言の要件を主張立証すれば十分であり,明文の要件ではない遺言書の一体性については,遺言が無効であるとする当事者(原告)が一体性を欠くことの主張立証責任を負うべきである旨主張するが,前述した点に照らして採用できない。

         (中略)

2 本件遺言書の切断に関する問題の検討
(1) 本件遺言書は,1枚目の便箋の左半分が何者かの手によって切断されている。切断された部分には,遺言の内容の一部を構成する何らかの文言が記載されていた可能性が高く,これは遺言書の一部破棄に該当する。
 問題は,この切断が誰の手によって行われたかである。仮に遺言者である亡A本人の手によって切断されたのであれば,遺言者の故意による遺言書の一部破棄であり,一部破棄された部分の遺言のみが撤回されたものとみなされるから(民法1024条),本件遺言書が自筆証書遺言の要件を全て具備している限り,残存部分を有効な遺言として扱うことに問題はない。一方,第三者の手による切断であった場合には,第三者が意図的に遺言書の物理的形状を改変したことを意味するから,果たして本件遺言書が3枚の便箋(1枚目は切断前のもの)により構成された一通の一体性のある遺言書として元々存在していた事実があったのか,という遺言書の一体性への疑問に結び付く要因になると考えられる。
 そこで,初めに本件遺言書の切断を行った人物が亡Aであるか否かについて検討する。

         (中略)

(5) 以上によれば,本件遺言書の1枚目の便箋の左半分を切断した主体が亡A自身である可能性は乏しく,実際には亡A以外の第三者が何らかの意図をもって故意に切断した可能性が高いというべきである。
 もっとも,仮に第三者が完成後の遺言書の一部を切断して破棄したとしても,それだけでいったん完成していた遺言全体の効力が直ちに失われるわけではなく,残存部分の遺言をなお有効なものと扱う余地があると解される。第三者による遺言書の一部破棄は,遺言者の意思に基づかないものであるから,遺言者自身が遺言の一部を撤回したという法的効果は発生しないものの,現実には切断部分の遺言の内容の復元が不可能である以上,切断部分に遺言としての法的効力を付与することはできず,結果的には遺言者自身が遺言書を一部破棄した場面と同一視せざるを得ないからである。
 このような観点を踏まえると,亡A以外の第三者が本件遺言書の1枚目の便箋の左半分を切断した可能性が高いという点は,第三者が不当な意図の下に亡Aの遺言書に自ら手を加えたことの不自然性を通じて,次項以下で検討する遺言書の一体性に関する否定的な考慮要素の一つとして位置付けるべきことになる。

         (中略)


3 本件遺言書の一体性及び日付の有効性に関する問題の検討
(1) 序論
 被告は,本件遺言書の末尾に記載された平成8年10月6日という日付は,本件遺言書の作成日,すなわち,本件遺言書の1枚目ないし3枚目の便箋の本文が全て記載され,遺言書が完成した日を表示したものであるから有効であるし,本件遺言書の一体性にも何ら疑問は生じない旨主張している。(6) 本件遺言書の発見状況に関する疑問

         (中略)


(7) 本件遺言書の有効性についての判断
ア 前記(2)ないし(6)に説示した疑問点を踏まえて,本件遺言書の一体性と日付の有効性の問題について検討する。

         (中略)


イ 以上に掲げた事情を総合すると,本件遺言書の有効性については,次のとおり分析することができる。
 亡Aは,元々作成時期が明らかに異なる2種類の遺言書の外観を呈する書面を作成していた可能性が相当程度存在し,本件遺言書は,この2種類の遺言書の外観を呈する書面の一部又は全部を組み合わせた形式,具体的には,それぞれ別の遺言書の外観を呈する書面の一部又は全部を構成していた1枚目の便箋と2・3枚目の便箋を組み合わせた形式で作成されたものであるという合理的な疑いを否定できない。

 仮にこうした組替えを行った主体が第三者であった場合には,亡Aが一通の一体性のある遺言書として完成させていた遺言の内容を無断で改変したことを意味するから,遺言書の一体性が失われる結果となり,自筆証書遺言の要件を充足しない状態と化すので,本件遺言書は無効と判断すべきことになる。

 また,仮にこうした組替えを行った主体が亡A自身であり,亡Aが組替え後の本件遺言書を一通の遺言書として完成させる意思を有していた場合であっても,1枚目の便箋が平成16年2月17日以降に作成されたものであり,組替え後の本件遺言書の完成日は同日以降の日であったという具体的な疑念を払拭し切れない以上,平成8年10月6日の作成日付の記載が有効なものであると認めるには足りず,やはり本件遺言書は無効と判断すべきことになる。

 なお,亡A自身が別々の遺言書の外観を呈する書面を構成する紙面であった1枚目の便箋と2・3枚目の便箋を組み合わせて,元々2・3枚目の便箋の直前に置かれるはずであった1頁目に相当する紙面を本件遺言書の1枚目の便箋と差し替えることは,平成30年法律第72号による改正前の民法968条2項に違反した遺言書の加除訂正となり,加除訂正の効果は生じないが,その結果,1枚目の便箋を含む紙面で構成されていた遺言書については,日付と氏名の自書が確認できなくなり,2・3枚目の便箋を含む紙面で構成されていた同日付けの遺言書についても,1頁目に相当する紙面の内容が不明で,全文の自書が確認できなくなることから,いずれの遺言書も全体が無効となり,本件遺言書の一部が有効となる余地もない。

 本件遺言書が有効となるのは,亡Aが3枚の便箋を平成8年10月6日以前に全て書き終えており,かつ,亡A自身が同日の時点で,明らかに作成時期が異なり,形式面の不統一を残したこれら3枚の便箋を一通の遺言書として完成させる意思を有していたと積極的に認定できる場合に限られるが,これまでに説示した種々の疑問点に鑑みれば,その立証は尽くされていないと判断せざるを得ない。

ウ 以上によれば,本件遺言書は,自筆証書遺言の有効要件を具備しておらず,無効である。

4 総括
 上記のとおり,本件遺言書は無効である。
 そして,本件不動産を被告に相続させる旨の遺言が無効であるとすると,亡Aの相続発生時から現在に至るまで,亡Aの遺産に属する本件不動産は,亡Aの相続人である原告と被告による遺産共有状態にあり,被告は,亡Aの死亡後も,本件建物の共同相続人である原告との関係では,依然本件建物の一部を賃借する賃借人の地位が残存していることになる。

そうすると,被告は,亡Aの相続財産について2分の1の法定相続分を有する原告に対し,亡Aが死亡した翌月の平成29年10月以降,亡Aに係る遺産分割が終了するか,又は本件建物の2階及び3階部分から退去するかのいずれか早い時点までの間,遺産共有状態にある不動産の果実である賃料(月額10万円)の2分の1に相当する5万円を毎月末日限り支払う義務を負うと認められる。

 これに従って未払賃料及び遅延損害金を計算すると,別紙3記載のとおり,確定遅延損害金の算定基準日である令和2年4月8日の時点で,150万円の未払賃料元本及び9万2287円の確定遅延損害金が発生しており,これに加えて,被告は,原告に対し,同月30日以降も,亡Aに係る遺産分割が成立する日又は同建物部分から退去する日のいずれか早く到来する日までの間,毎月末日限り5万円の賃料を支払う義務があると認められる。

第4 結論
 よって,本訴請求はいずれも理由があるので,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第42部
 (裁判官 篠原敦)
以上:7,023文字
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R 3-10-13(水):日本の年金制度の世界ランキングは相当低いようです
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○私も、繰り下げ受給を含めて年金全額が貰える年齢に達しましたが、日本の年金額は世界各国の年金額の中でどの程度のランキングなのか興味を持ち、ネットで色々調べています。しかし、年金制度ランキングの記事はありますが、具体的な年金額のランキングデータは殆ど見当たりません。レファレンス協同データベースというサイトのレファレンス事例詳細(Detail of reference example)に具体的な金額が記述されていますが2002年現在と20年近い前のデータで余り参考になりません。以下の通りです。
日本17万4839円、アメリカ単身者10万5317円、イギリス単身者6万1172円、ドイツ職員年金8万6460円、スウェーデン全受給者7万3080円

○上記データでは、日本の平均年金額はダントツに多いのですが、他の年金制度ランキングをみると日本は相当低く評価されています。Mochaというサイトの「世界の年金制度ランキング 日本はかなり低かった」では、世界の年金制度は、「マーサーCFA協会グローバル年金指数」で39か国中32位!とされていました。「グローバル年金指数は「Adequacy(十分性)」「Sustainability(持続性)」「Integrity(健全性)」の3つに大別される50以上の項目で年金制度を評価し、総合指数値を算出しています。」と説明されていますが、肝心の年金具体的金額は不明です。



「世界年金ランキング2018が発表!海外の年金制度の評価を日本と比較」では、「先進国の中で日本の年金制度は最下位で、全体で見ても34ヵ国中29位とかなり低い結果となっています。」とされ、その理由は「少子高齢化が進む日本では、保険料を支払う若者が減る一方、年金を受給する高齢者が増えているため、年金制度の持続性が低いことが、低い評価に繋がっています。」と説明されています。

○日本の賃金の世界ランキングはどうなっているかについては、Mochaというサイトの「世界の平均賃金ランキング、1位はアメリカ。日本は何位?」で「2020年の平均賃金を見ると日本はG7の中で下から2番目」と年金同様大変低い評価です。



日本の国力の低下が言われて久しいのですが、日本は賃金においても年金制度においても、隣の韓国に抜かれているようです。平成になったばかりの頃は、日本は世界随一の経済大国なんて言われたこともありましたが、この30年凋落の一途だったようです。
以上:1,015文字
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R 3-10-12(火):工学鑑定事故態様から事故と傷害の因果関係を否認した判決紹介
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○「追突程度如何にかかわらず事故と傷害に因果関係を認めた地裁判決紹介」に引き続いて、工学鑑定事故態様から事故と傷害の因果関係を否認した平成3年5月24日仙台高裁判決(自動車保険ジャーナル・第910号)関連部分を紹介します。

○軽微追突事故で受傷の有無が争われた事案につき、仙台地裁・仙台高裁いずれの判決も、工学鑑定で衝突速度5キロ、衝撃加速度最大0.85G、小さな凹損の破損状況、異常所見がなく理学療法の治療状況等から受傷を否定しました。


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主   文
一 本件控訴を棄却する。
(以下略)

事実の要旨
 被害者は、昭和62年2月26日午後6時25分頃、仙台市太白区茂庭字人来田中27番4号先でタクシーを運転中、加害者の運転する乗用車に追突されて頸部挫傷、腰部打撲で通院5日の後59日入院、約2月通院の傷害を負ったとして253万8,648円を求めて反訴請求。

事   実
 控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人は控訴人に対し253万8648円及びこれに対する平成元年2月7日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。」との判決を求め、主文1項同旨の判決を求めた。
 当事者双方の主張は、次のほかは、原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。

一 控訴人の主張

(一) 原判決は、工学実験に基づく鑑定の結果を全面的に採用して、本件事故によっては控訴人に傷病が発生するとは推認できないとした。

(二) しかしながら、人間の行動や身体の動きは複雑なものであり、かつ、人それぞれには個性がある。また、事故の態様、事故時の人体の動き、作用エネルギーに対する耐性等も様々であるとともに、個人差がある。
 したがって、衝突速度が10キロメートル以下であるからとか、X線では異常がないということだけで、100パーセントの確率で傷害がないと判断することはできない。

(三) また、志願者を用いての追突実験においては、自己に衝撃が与えられることを予知している被験者は無意識のうちに防御姿勢を取る、というのが自然の生体の反射機構であるから、その実験結果を、不意に後方から衝撃が加えられる実際の追突事故に当てはめることはできない。

(四) したがって、工学実験に基づく鑑定結果によっては、本件事故による控訴人の傷病の発生の事実を否定することはできない。


(一) 控訴人は、事故の翌日である昭和62年2月27日の朝、気分が悪くなり、めまいもしたため、佐藤医師の診察を受け、その後、同年3月2日には、真っ直ぐに歩くのも大変になり、首が殆ど回らない状態になったことから、同医師の指示により、同月3日から同年4月30日まで佐藤整形外科医院に入院するに至った。

(二) 控訴人が警察官に受傷の届出をしなかったのは、事故当日は自分の受傷の程度が大したことはないと安易に思ってしまったことによるものであり、その後は届出手続が判らなかったことによるものである。
 したがって、届出のなかったことをもって、受傷の事実がなかったということはできない。


(一) 控訴人の従事する仕事は、休業すれば減給されるというものである。また、控訴人は、注射等の医療行為を受けることを苦手としていた。

(二) それにもかかわらず、控訴人は、59日間という長期間休業して入院治療を受けたのであり、このことからも明らかなように、控訴人に詐病の疑いを生ぜしめる余地はない。

二 被控訴人の主張

         (中略)


理   由
一 当裁判所も、被控訴人の請求を認容し、控訴人の反訴請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、次のほかは、原判決の理由と同一であるからこれを引用する。ただし、原判決4枚目裏9行目の「犯則事犯」を「反則事犯」と訂正する。

二 当審における証拠調べの結果によっても、原判決の認定及び判断を左右することができない。
1 鑑定人大平信廣の鑑定につい

(一) 本件事故における有効衝突速度は時速5キロメートル、衝撃加速度は0.85Gと推定されるが(証拠略)、鑑定人大平信廣の鑑定によれば、このような場合には、椎間板の変性、高度の骨粗鬆症や退行性変性などがない限り、控訴人の頸部に傷害が生じる可能性は非常に稀なものであることが認められるところ、本件事故当時、控訴人に椎間板の変性、高度の骨粗鬆症や退行性変性などがあったことを認めるに足りる証拠はない。

(二) また、同鑑定によれば、本件においては、事故の翌日から治療を受けていたにもかかわらず、事故から7日経過して頸椎運動が全くできないほどの症状の増悪があったとされているが、このようなことは、日常の臨床では、特別の事情がない限り、余り経験するものではないことが認められるところ、右の特別の事情を認めるに足りる証拠はない。

2 控訴人本人の供述について
(一) 控訴人本人の供述中には、本件事故の衝撃により、控訴人は、体が一旦前にのめって、次に後ろに倒れたとの部分がある。
 しかしながら、正面衝突の場合と異なり、追突の場合は、慣性の法則により、体は背部がシートバックに、頸部がヘッドレストに先ず当たるものであるから(証拠略)、右供述部分は、物理法則に反するものであって、信用することができない。

(二) また、控訴人本人の供述中には、衝突時における被控訴人運転車両の速度は時速約20キロメートルであったとの部分がある。
 しかしながら、右供述部分は、有効衝突速度が時速5キロメートルと見積もっても過少評価のおそれはないとする(証拠略)に照らし、信用することができない。

(三) 更に、控訴人本人の供述中には、前記控訴人の主張2に沿う部分がある。
 しかしながら、右供述部分は、原判決が採用した証拠及び右1の鑑定の結果に照らし、信用することができない。

3 当審における控訴人の主張について
(一) 控訴人は、原判決が工学実験に基づく鑑定の結果を採用して傷害の発生を推認できないとしたことは不当であると主張する。
 しかしながら、自動車事故に基づく身体の損傷の有無について、自動車工学的分析の手法を採用し、自動車の損傷の部位、程度から衝突時の速度及び衝撃の度合いを算出し、その結果を判断の一資料として、事故による身体の損傷の有無、程度を判断することは、もとより許され、これが不相当であるとされるいわれはない。

 原判決の判断は、右鑑定の結果のみに基づくものではなく、これに加え、控訴人の事故後の行動、車両の破損の部位程度等を総合勘案した上でされたものであることが明らかであるから、控訴人の右の主張は、採用することができない


(二) 控訴人は、控訴人の従事する仕事は休業すれば減給されるというものであり、また、控訴人は注射等の医療行為を受けるのが苦手であったから、控訴人が休業して入院治療を受けたのは、本件事故により真実傷害を負ったからにほかならないと主張する。
 しかしながら、前示のとおり、他の証拠によって本件事故に基づく傷害の発生の可能性が否定されるものである以上、単に右の事実のみによっては、控訴人にその主張の傷害が発生したものと認定することはできない。

三 よって、主文のとおり判決する。


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(参考 仙台地裁 平成元年10月9日判決)

理   由

一 本件交通事故発生の事実は当事者間に争いがない。

二 (証拠略)によれば、被告が請求原因一記載のとおり佐藤整形外科医院に頸部挫傷、腰部打撲の傷病名により入通院し、理学療法、注射、投薬等の治療を受けたことが認められる。

三  しかしながら、(証拠略)(交通事故現場臨場報告書)、(証拠略)によると、事故の届出により事故後30分位して現場に到着した警察官は、被告から負傷の申告もなく、本件追突による車輌の破損は、原告車輌の右前照灯のガラスが破損し、被告車輌の後部バンパー左側に小さな凹損がある程度の軽微なものであったので、原告の犯則事犯として処理し、警察官に対してはその後も被告から受傷の届出がなされなかったことが認められ、反面(証拠略)(鑑定書)及び同証言によると、本件事故においては、原告車輌が被告車輌に衝突した時の有効衝突速度は最大に見積って時速約5キロメートル、その際被告車輌に生ずる衝撃加速度は最大で0.85Gであること、頸部屈曲角の静的限界値は後屈で60度であるところ、右衝撃加速度を前提とした被告の頸部後屈角は、ヘッドレストレイントの頸部後屈抑止効果を無視しても16度であり、過後屈のために頸部損傷が生ずるまでには44度の余裕があること、頸部に働く付加トルクの生体実験上の無傷限界レベルは後屈で35フィートポンドであるところ、本件衝突によって被告の頸部に生じた負荷トルクは3フィートポンドであることが認められるところであり、右鑑定の基礎とされた各車輌の重量、衝突時の速度、方向等の衝突の態様、車輌の破損状況等は、前掲(証拠略)(実況見分調書の原稿)、(証拠略)(自動車検査証)、本件事故車輌の写真であることに争いのない(証拠略)と対比して、妥当と認められる。

 したがって、本件交通事故によっては、被告の頸部に、その主張にかかる傷病が発生することを推認することはできないといわなければならない。

四 また、被告主張の腰部打撲についても、被告本人尋問の結果により被告は衝突直前、前を見てゆったりと信号待ちをしている状態であったことを、前掲(証拠略)の添付見取図、前掲(証拠略)から、被告車輌は被衝突回転運動を起こすことなく前方向に移動したことを、またA証人の証言及び被告本人尋問の結果から、被告は昭和58年2月頃交通事故に遭い、B整形外科医院に頸部痛のため2、3週間通院していたが、腰部痛を訴えていたわけではなく、本件事故前に腰痛はなく、特に腰部に関し傷害を受け易い状況にあったわけではなかったことが、それぞれ認められるものの、前記認定の本件衝撃加速度に照らすとき、本件交通事故から腰部打撲が生じたものと推認することはできない。


以上:4,160文字
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R 3-10-11(月):追突程度如何にかかわらず事故と傷害に因果関係を認めた地裁判決紹介
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○1年5月前、2年4月前、3年2月前に3回追突されて頸部捻挫等でいまだ通院中、乗用車を運転停車中に自動軽二輪車に追突された事案につき、追突の程度如何にかかわらず心因反応を起こして傷害が生じることは、必ずしも稀な事態ではなく、傷害も本人の意識的な活動によって制御できる範囲外で生じるのであるから、本件事故と傷害との間に相当因果関係があるとされた平成4年2月24日高知地裁判決(自動車保険ジャーナル・第949号)を紹介します。

○同種の疾病で治療中に本件事故を契機として発症した心因反応によって生じた傷害であるとされ、過失相殺が類推適用されて損害の70%が減額され、治療院の施術料等の請求については、医師による指示があったと認めるに足りる証拠はないとされ、請求額の2分の1が認められました。

********************************************

主   文
一 原告は、被告に対し金76万8060円及びこれに対する平成元年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(以下略)

事実の要旨
 被告被害者は、昭和63年4月27日午前11時45分頃、高知市朝倉丙○○○○番地先で乗用車を運転停車中、原告加害者運転の自動軽二輪車に追突され、頸部挫傷等で95日入院、約8か月通院の傷害を負う。よって475万9320円を反訴請求。

理 由
(反訴)

一 請求原因1,2について
 請求原因1の本件事故の発生の事実、同2の責任原因の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二 請求原因3(一)(頸部挫傷等の傷害の発生及びこれと本件事故との因果関係)について
1 (右傷害の発生及び事実的因果関係について)

(一) 被告は、本件事故までに、3回(昭和60年1月、同年12月、昭和61年11月)追突事故にあって、これによりいずれも頸部捻挫等の傷害を負っており、その治療中に本件事故にあった(証拠略)。

(二) 事故当日、頸部挫傷等と診断された(証故略)。自覚症状として、それまでは、左半身の症状が主であったが、事故後は、右半身の症状が中心となった(証拠略)。その主なものを示すと、①右歯茎、右目、右顎、右こめかみ等に激痛が走るようになり、②微熱が続いてけだるくなるようになり、③頭も常時痛むようになったなどである(証拠略)。

(三) 以上の事実によれば、たしかに、被告は、従前の追突事故による症状の治療中ではあったけれども、しかしながら、右のとおり、本件事故を契機として、その症状に変化がみられたのであるから、被告の右のような主訴のある頸部挫傷等の傷害と本件事故との間には、事実的因果関係があるといわなければならない。

(四) そして、右傷害が器質的原因によって生じたことを認めるに足りる証拠のない本件においては、右傷害は、従前の事故の影響や、被告の経済的要因、その性格なども寄与して、本件事故を契機として心因反応により生じたものといわざるをえない
(証拠略)。

(五) もっとも、(証拠略)の工学鑑定書では、本件事故による衝撃力は軽微なものであって、これによって被告の頸部等に挫傷は生じないと述べられているけれども、しかしながら、この結論は、本件傷害の器質的な原因を否定するにとどまるものであるから、(四)の結論と矛盾しない。

2 (相当因果関係について)
 追突事故によって、その程度の如何にかかわらず、心因反応を起こして本件のような傷害が生じることは、必ずしも稀な事態ではないし、また、本件のように心因反応による傷害も本人の意識的な活動によって制御できる範囲外で生じるのであるから、本件事故と本件傷害との間には相当因果関係があるものといわなければならない。

3 (過失相殺の規定の類推適用について)
 本件傷害は、被告が同種の疾病で治療中に本件事故を契機として発症した心因反応によって生じたものであるから、このような被告側の事情も加わって損害が拡大した場合に全損害を原告にのみ負担させるのは公平でないものといわなければならず、本件では過失相殺の規定を類推適用して損害から70パーセントを減額するのが相当である。

三 請求原因3(二)(損害額)について
1 (治療費等について)
(一)土佐整形外科分として、昭和63年4月27日から同年10月13日までに31万8820円の治療費を要した(証拠略)。

(二)長生館西添治療院による施術の処置料、施術証明書料、明細書料として、昭和63年5月10日から平成元年1月26日までに21万7000円を要しているが(証拠略)、これについては医師による指示があったと認めるに足りる証拠はないから、その2分の1にあたる10万8500円を本件事故と相当因果関係があるものと認める。

2 (入院雑費について)
 入院期間は95日であり(証拠略)、請求原因の計算式により、入院雑費として、12万3500円が相当である。

3 (休業損害について)
(一)
(1)被告の事故前1年間(昭和62年5月から昭和63年4月まで)のサウナの売上による1か月平均の収入は、37万6100円である(証拠略)。(算式略)
(2)経費は、1か月7万8400円である(証拠略)。
(3)したがって、1か月の平均収入は、29万7700円である。

(二)よって、95日間の休業損害は、94万2716円である。(算式略)

4 (慰謝料について)
 以上の諸事情、ことに被告の症状、入院期間に加えて、被告が土佐整形外科に入院の前後を通じて本件事故以来約8か月間通院したこと(証拠略)からすると、慰謝料としては130万円が相当である。

5 (過失相殺の規定の類推適用について)
 以上合計279万3536円から70パーセントの減額をすると、83万8060円となる。

6 (弁護士費用について)(略)注-8万円

四 (抗弁及び認容額について)(略)注-損害の填補 15万円
(以下略)

高知地方裁判所  裁判官 楠井敏郎
以上:2,425文字
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R 3-10-10(日):松田道雄訳貝原益軒”養生訓”紹介-巻三飲食の上-食べ過ぎるな!
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○「松田道雄訳貝原益軒”養生訓”紹介-巻一総論上序文人のからだは等2」を続けます。今回は、66頁から94頁までの巻三飲食の上で、飲食の総論的な解説で、以下、その備忘録です。

○「元気は生命のもと」との小見出しから始まり、食事の注意事項が詳細に記述されています。一貫しているのは、石原結實先生の教えの「食べるな!」に通じる教えです。食事はアッサリしたモノが良いから始まり、欲に勝つ、腹八分目等食事を制限すること、食べ過ぎ厳禁が強調されています。夜食は食べてはならず、夕食の後、消化しないうちに早く寝ると病気になるなんて、原則として、午後9時には就寝する私には、ギョッとする記述があります。

○食事制限について、適量を越さないようにかたく慎んで度をこしてはいけないとし、これで十分だと思うほど食べると、かならずあとで腹がふくれすぎて病気になると警告しています。私の印象に残った記述は、「酒食を過ごし、害をなしたときに、酒食を消す強い薬を用いないと酒食を消化できない。」から始まる「酒食を過ごして」でした。

○そのたとえの記述が面白いと感じました。酒食を過ごすことは、敵がわが領内に乱入して、不法をはたらき、城のかこいを攻め破ろうとすることで、これに対し強い薬を飲むことは、こちらからも強い兵を出して防戦させ、味方の士卒がおおぜい討ち死にしないと敵に勝てず、薬を使って消化するのは、自らの腹の中を敵味方の戦場とするものとしています。

○飲んだり食べたりした酒食が、敵となって自分の腹の中を攻めやぶるだけでなく、こちらが使う強い薬もみな病気をせめるから元気も減り、敵兵も味方も、自分の腹の中で入り乱れて元気をはなはだしく損じ、胃の気をそこなうとしています。結論として、敵を自分の領内に引き入れて戦うよりも、外で防いで領内に入れさせないようにするのが一番良いとしてます。要するに酒食は基本的に敵兵です。私が、石原結實先生の御説から、「食は悪!、栄養は悪!」と言っていることと同じと理解しました。

○「食は悪!、栄養は悪!」でも、前提として「過剰な」、「取り過ぎの」が入ります。少ない、或いは適度な食・栄養は、全く悪ではありません。「食が少ないと」との小見出しの説明に「食が少ないと脾胃のあいだにすきまがあって元気がめぐりやすく、消化しやすく、飲食したものがみなからだの養いになる。だから病気が少なく、からだが強くなる。」とし、これに対し「食が多くて腹いっぱいになると、元気のめぐる道をふさぎ、すき間がなくなって消化せず、飲んだり食べたりしたものが養いにならず、滞って元気の道をふさぎ、循環せずに病気になり、酷くなると苦しんで死ぬ。」と大変判りやすい説明をしています。

○現在の医学から正しい説明なのかどうかは疑問ですが、兎に角、飲み過ぎ・食べ過ぎへの厳しい警告、シッカリ自覚します。
以上:1,173文字
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