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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 3- 3- 9(火):飲酒運転事故で死亡慰謝料合計3150万円を認定した地裁判決紹介
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○交通事故での死亡慰謝料は日弁連青本令和2年2月最新27訂版基準は以下の通りです。
一家の支柱の場合 2800~3000万円
支柱に準ずる場合 2500~2800万円
その他の場合   2000~2500万円
この基準額は、死亡被害者の近親者固有慰謝料もあわせた、死亡被害者1人当たりの合計額と解説されています。

○しかし、飲酒・赤信号無視等で事故態様が悪質な場合、轢き逃げ・証拠隠滅等事故後の行動が極めて悪質な場合、基準を上回る慰謝料が認定される傾向があります。自転車で走行中に駐車場から進出してきた飲酒運転被告車に衝突されて死亡した24歳女子の死亡慰謝料2800万円、母親250万円、弟100万円の固有慰謝料の合計3150万円の慰謝料を認定した令和2年2月26日大阪地裁判決(自保ジャーナル・第2068号)慰謝料認定理由部分を紹介します。

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主  文
1 被告乙山は、原告春子に対し、6124万2667円及びうち5849万2667円に対する平成29年12月20日から、うち275万円に対する平成27年5月11日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告乙山は、原告一郎に対し、110万円及びこれに対する平成27年5月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、別紙訴訟費用目録記載のとおりの負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。
(別紙)
訴訟費用目録
1 原告らに生じた費用の9分の2及び被告乙山に生じた費用の11分の7を被告乙山の負担とする。
2 原告らに生じた費用の9分の7、被告乙山に生じた費用の11分の4並びに被告丙川及び被告丁山に生じた費用を原告らの負担とする。

事実及び理由
第一 請求

1 被告らは、原告春子に対し、連帯して、9403万5974円及びうち8853万5974円に対する平成29年12月20日から、うち550万円に対する平成27年5月11日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告一郎に対し、連帯して、330万円及びこれに対する平成27年5月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は、被告乙山が運転する普通貨物自動車(以下「被告車」という。)が、甲野花子(以下「花子」という。)が運転する自転車(以下「本件自転車」という。)に衝突し、花子が死亡した事故(以下「本件事故」という。)につき、花子の母である原告春子及び花子の弟である原告一郎が、被告らに対し、以下の損害賠償を求める事案である。

         (中略)

第四 損害に関する当裁判所の判断
1 花子の損害


         (中略)

(5) 慰謝料 2800万円
 花子は、本件事故当時24歳であり、当時、仕事の面では自分に合った職場を見つけ、私生活では、結婚を約束した交際相手と順調な交際を続け、実家から離れていたものの、母や弟との交流も絶えず、同居していた友人女性をはじめとした友人知人と交友するなど、充実した毎日を送っていたのである。

ところが、何の落ち度もないにもかかわらず、被告乙山の一方的な過失により、突如としてその命を奪われ、家族や交際相手を含む多くの人間関係も断ち切られ、将来を奪われる結果となったのであり、しかも、本件事故が被告乙山による飲酒運転中に発生したものであることなどからすると、花子の被った肉体的精神的苦痛は甚大なものがあり、本件訴訟に現れた一切の事情によれば、本件事故と相当因果関係のある花子の死亡慰謝料は2800万円とするのが相当である。
 
         (中略)

2 原告春子の損害
(1) 慰謝料 250万円
 原告春子は、愛情を持って育てた娘である花子を本件事故により突如として失い、原告春子にとってかけがえのない花子が死亡したとの現実を受け入れられず、花子を失ったことによる喪失感にさいなまれ、苦しみ続けており、その悲しみが癒えることは未だないのである。そして、本件事故が被告乙山の一方的な過失により発生したもので、かつ、本件事故が被告乙山による飲酒運転中に発生したものであることなどからすると、原告春子の被った精神的苦痛は多大なものがあり、本件訴訟に現れた一切の事情によれば、本件事故と相当因果関係のある原告春子の慰謝料は250万円とするのが相当である。

他方、慰謝料の具体的な金額が当事者間において客観的に確定する前に慰謝料請求権を譲渡することが許されるかについてはひとまずおくとしても、少なくとも、三郎が原告春子に慰謝料請求権を譲渡した原因となる事実の主張がされていないことや、本件全証拠をもってしても、三郎の受けた損害についての立証はされていないから、三郎の慰謝料請求権に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。


(2) 弁護士費用 25万円
 本件事案の内容や訴訟活動の難易、上記(1)の損害額等によれば、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用は20万円をもって相当と認める。

(3) 合計 275万円

3 原告一郎の損害
(1) 慰謝料 100万円
 原告一郎は、姉である花子と幼いころから仲が良く、花子のことを慕い続けていたところ、本件事故により突如として姉である花子を失ったばかりか、本件事故による影響により大学に通学できなくなり、原告一郎自身の人生にも大きな影響が及んだことに加え、本件事故が被告乙山の一方的な過失により発生したもので、かつ、本件事故が被告乙山による飲酒運転中に発生したものであることなどからすると、原告一郎の被った精神的苦痛は大きく、本件訴訟に現れた一切の事情によれば、本件事故と相当因果関係のある原告一郎の慰謝料は100万円とするのが相当である。

以上:2,437文字
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R 3- 3- 8(月):家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判審理原則備忘録2
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○「家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判審理原則備忘録1」の続きです。

○第一類事件・第二類事件共通審理手続
職権探知主義が原則
民事訴訟は法律効果を発生させる要件事実は当事者が主張しない限り裁判所は判決の基礎にできないが(弁論主義)、家事事件手続では、公益的見地から弁論主義が適用されず当事者の主張無くしても審判可能
第56条(事実の調査及び証拠調べ等)
 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。

○事実の調査は、当事者等の審問・家庭裁判所調査官の調査(58条)・医師である裁判所技官の関係人心身状況診断(60条)・官庁・公署等調査嘱託(62条)
①陳述の聴取-裁判官による審問
②家庭裁判所調査官による事実の調査
③裁判所の医務室技官による診断
④裁判所書記官による調査
⑤調査の嘱託

○第二類事件の審理手続特則
①第二類事件は基本的に当事者が任意に処分できる権利または利益に関する事件で公益性がさほど高くない事件であり裁判の基礎となる資料の収集等は当事者に委ねるのが合理的
②申立人と相手方に利害対立があるのが通常で、当事者それぞれが自らの主張を述べ、その主張を裏付ける裁判資料を提出する機会を保障することが重要
・合意管轄(66条)
・申立書送付(67条)
・陳述の聴取と審問(68・69条)
・事実の調査の通知(70条)
・審理の終結(71条)
・審判日決定(72条)

○調停手続と家事審判手続との関係
制度上は別の手続であり、家事調停手続における資料が、当然に、家事審判手続の判断資料になるわけではなく、そのための手続が必要であるが、その手続に当事者の同意は不要。

○第二類事件のその他の特則
①法定代理権・手続代理人の代理権消滅は、他方当事者に通知しなければ効力を生じない
②参与員の申立人からの説明聴取はできない
第40条(参与員)
 家庭裁判所は、参与員の意見を聴いて、審判をする。ただし、家庭裁判所が相当と認めるときは、その意見を聴かないで、審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、参与員を家事審判の手続の期日に立ち会わせることができる。
3 参与員は、家庭裁判所の許可を得て、第一項の意見を述べるために、申立人が提出した資料の内容について、申立人から説明を聴くことができる。ただし、別表第二に掲げる事項についての審判事件においては、この限りでない。
③抗告審手続では原則として抗告人以外の当事者の陳述を聴かなければならない(89条2項)
④「再度の考案に基づく更正」は認められない
⑤抗告裁判所は、事件の全部または一部が原裁判所の管轄に属しないと認める場合も、原審判の取消は不要

○未成年者の利益保護制度
・手続行為能力
子の身分関係に影響が及ぶ家事事件(子の監護に関する処分審判事件等)において、未成年者に意思能力があれば自ら手続行為をすることができる(151条2項・168条等)
・未成年者の手続への参加
第42条(利害関係参加)
 審判を受ける者となるべき者は、家事審判の手続に参加することができる。
2 審判を受ける者となるべき者以外の者であって、審判の結果により直接の影響を受けるもの又は当事者となる資格を有するものは、家庭裁判所の許可を得て、家事審判の手続に参加することができる。
3 家庭裁判所は、相当と認めるときは、職権で、審判を受ける者となるべき者及び前項に規定する者を、家事審判の手続に参加させることができる。
4 前条第3項の規定は、第1項の規定による参加の申出及び第2項の規定による参加の許可の申立てについて準用する。
5 家庭裁判所は、第1項又は第2項の規定により家事審判の手続に参加しようとする者が未成年者である場合において、その者の年齢及び発達の程度その他一切の事情を考慮してその者が当該家事審判の手続に参加することがその者の利益を害すると認めるときは、第1項の規定による参加の申出又は第2項の規定による参加の許可の申立てを却下しなければならない。
・未成年者の手続追行の代理
第18条(未成年者及び成年被後見人の法定代理人)
 親権を行う者又は後見人は、第118条(この法律の他の規定において準用する場合を含む。)又は第252条第1項の規定により未成年者又は成年被後見人が法定代理人によらずに自ら手続行為をすることができる場合であっても、未成年者又は成年被後見人を代理して手続行為をすることができる。ただし、家事審判及び家事調停の申立ては、民法(明治29年法律第89号)その他の法令の規定により親権を行う者又は後見人が申立てをすることができる場合(人事訴訟法第2条に規定する人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の申立てにあっては、同法その他の法令の規定によりその訴えを提起することができる場合を含む。)に限る。
第23条(裁判長による手続代理人の選任等)
 手続行為につき行為能力の制限を受けた者が第118条(この法律の他の規定において準用する場合を含む。)又は第252条第1項の規定により手続行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を手続代理人に選任することができる。
2 手続行為につき行為能力の制限を受けた者が前項の申立てをしない場合においても、裁判長は、弁護士を手続代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を手続代理人に選任することができる。

・子の意思の把握等
第5款 家事審判の手続における子の意思の把握等
第65条 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。
以上:2,505文字
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R 3- 3- 7(日):家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判審理原則備忘録1
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○「家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判総論備忘録1」の続きで、今回は家事審判の審理原則備忘録です。家事事件手続法重要条文の確認です。

○家事事件の審理原則は、家族・親族等の事件を広範な裁量を持って後見的立場から行うこと、最終目的を経済的利益追求とする民事手続とは異なる。具体的原則は以下の通り。
・非公開主義-民事手続の公開主義とは対極
第33条(手続の非公開)
 家事事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
家庭に関する非訟事件を非公開で処理する-プライバシーに深く関わる家族・親族問題の秘密保持の必要性

・本人出頭主義
第51条(事件の関係人の呼出し)
 家庭裁判所は、家事審判の手続の期日に事件の関係人を呼び出すことができる。
2 呼出しを受けた事件の関係人は、家事審判の手続の期日に出頭しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
3 前項の事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、5万円以下の過料に処する。
本人自身から直接実情を聴取する必要性

・職権探知主義
第56条(事実の調査及び証拠調べ等)
 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。

・当事者権の保障
①当事者参加・利害関係参加
②調書の作成
③記録の閲覧・謄写

第47条(記録の閲覧等)
 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は家事審判事件に関する事項の証明書の交付(第289条第6項において「記録の閲覧等」という。)を請求することができる。
④証拠調べ申立権
第56条(事実の調査及び証拠調べ等)
 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする。
⑤事実の調査の通知
第63条(事実の調査の通知)
 家庭裁判所は、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による家事審判の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。
⑥審判・終局決定の告知
第73条(審判)
 家庭裁判所は、家事審判事件が裁判をするのに熟したときは、審判をする。
2 家庭裁判所は、家事審判事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について審判をすることができる。手続の併合を命じた数個の家事審判事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。
第74条(審判の告知及び効力の発生等)
 審判は、特別の定めがある場合を除き、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の審判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
⑦不服申立に際しての手続保障
第85条(即時抗告をすることができる審判)
 審判に対しては、特別の定めがある場合に限り、即時抗告をすることができる。
⑧再審を認める規定の整備
第103条(再審)
 確定した審判その他の裁判(事件を完結するものに限る。第五項において同じ。)に対しては、再審の申立てをすることができる。
2 再審の手続には、その性質に反しない限り、各審級における手続に関する規定を準用する。

・第二類事件のみに適用される規定
①相手方に対する事件係属の通知等
第67条(家事審判の申立書の写しの送付等)
 別表第二に掲げる事項についての家事審判の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、家事審判の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。ただし、家事審判の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは、家事審判の申立てがあったことを通知することをもって、家事審判の申立書の写しの送付に代えることができる。
②当事者の陳述の聴取
第68条(陳述の聴取)
 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。
③審問期日における相手方立会権
第69条(審問の期日)
 別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
④審理の終結
第71条(審理の終結)
 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない。ただし、当事者双方が立ち会うことができる家事審判の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。

以上:2,186文字
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R 3- 3- 6(土):家事事件手続法の基礎の基礎-家事審判総論備忘録1
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○「家事事件手続法の基礎の基礎-概要備忘録1」の続きです。訴訟事件・非訟事件区別のため久しぶりに憲法を読み直しました。憲法は、昔、前文から補足まで、全文丸暗記していたのに、今は、内容を含めて殆ど忘れています(^^;)。

○家事事件は、非訟事件
訴訟事件との区別は、当事者が主張する既存の権利義務の存否を確定させる裁判は訴訟事件として最終的には訴訟手続によるが、当事者の権利義務が存在することを前提にその具体的な内容を裁量的に形成する裁判は非訟事件となる。
非訟事件は、原則として裁判所法3条の「法律上の争訟」ではなく、憲法82条「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」が適用されない。

○最高裁二分論
第一に、訴訟事件は、実体的権利義務自体に争いがある場合にこれを終局的に確定するもので、非訟事件は、実体的権利義務があることを前提に裁判所が後見的見地から裁量権を行使してその具体的内容を形成するもの
第二に、憲法32条・82条に基づき、裁判の公開・対審・判決による保障を受けるのは、争訟事件のみであり、非訟事件は憲法32条・82条の対象外
第三に、非訟事件の裁判が確定しても、実体的権利義務の存否について、別に訴訟で争うことができる

○非訟事件とされる事件は、その紛争性の程度の差異から非争訟的非訟事件と争訟的非訟事件に分けられるが、両者の差異は相対的なもの
非争訟的非訟事件は、紛争性が希薄である非訟事件のことでは司法には該当せず、むしろ行政に含まれるが、沿革的又は政策的な理由により裁判所の権限に属するとされる
EX.非訟事件手続法、家事事件手続法別表第一に列挙される審判事項等
争訟的非訟事件は、紛争性が高い非訟事件のことで、紛争性が高いがゆえに訴訟との区別が問題となる
EX.家事事件手続法別表第二に列挙される審判事項、DV防止法に規定する保護命令等

○家事事件手続法別表第一類・第二類区別概要
旧家事審判法では甲類・乙類と分類されていたものにほぼ一致、甲類は争訟性がなく二当事者対立構造を取らない事件類型、乙類は争訟性があり複数関係人の利害が対立し得る事件類型
家事事件手続法での第一類・二類の区分は、基本的には旧法甲類・乙類の区分を承継しているが、一部異なる例もある
第一類は家事調停をすることができず、第二類は家事調停をすることができる事件類型
第一類は、後見開始(民法第7条)から始まり134件、第二類は、夫婦間の協力扶助(民法第752条)から始まり17件
以下、第二類のみ掲載

別表第二(第3条の8、第3条の10―第3条の12、第20条、第25条、第39条、第40条、第66条1第71条、第82条、第89条、第90条、第92条、第150条、第163条、第168条、第182条、第190条、第191条、第197条、第233条、第240条、第245条、第252条、第268条、第272条、第286条、第287条、附則第5条関係)
項、事項、根拠となる法律の規定

婚姻等

夫婦間の協力扶助に関する処分
民法第752条

婚姻費用の分担に関する処分
民法第760条

子の監護に関する処分
民法第766条第二項及び第三項(これらの規定を同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)

財産の分与に関する処分
民法第768条第二項(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)

離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
民法第769条第二項(同法第749条、第751条第二項及び第771条において準用する場合を含む。)
親子

離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
民法第808条第二項及び第817条において準用する同法第769条第二項
親権

養子の離縁後に親権者となるべき者の指定
民法第811条第四項

親権者の指定又は変更
民法第819条第五項及び第六項(これらの規定を同法第749条において準用する場合を含む。)
扶養

扶養の順位の決定及びその決定の変更又は取消し
民法第878条及び第880条

扶養の程度又は方法についての決定及びその決定の変更又は取消し
民法第879条及び第880条
相続
11
相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定
民法第897条第二項
遺産の分割
12
遺産の分割
民法第907条第二項
13
遺産の分割の禁止
民法第907条第三項
14
寄与分を定める処分
民法第904条の二第二項
特別の寄与
15
特別の寄与に関する処分
民法第1050条第二項
厚生年金保険法
16
請求すべき按あん分割合に関する処分
厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第78条の二第二項
生活保護法等
17
扶養義務者の負担すべき費用額の確定
生活保護法第77条第二項(ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(平成20年法律第82号)第21条第二項において準用する場合を含む。)
以上:1,970文字
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R 3- 3- 5(金):家事事件手続法の基礎の基礎-概要備忘録1
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○私が弁護士になった41年前は家事事件の規定法律は家事審判法でしたが、家事審判法は司法試験科目にはなく殆ど不勉強のままでした。家事紛争に関する法律はさらに(旧)人事訴訟法もありましたが、これも司法試験科目になく殆ど不勉強でした。(旧)人事訴訟法については、平成15年に廃止され、新たな人事訴訟法が制定され、家事審判法も平成23年に家事事件手続法の制定により、平成25年から廃止されました。

○弁護士を41年やってきましたが、取扱事件は圧倒的に地方裁判所管轄の民事訴訟事件が多く、家庭裁判所管轄の家事事件は、殆どが調停で解決し、離婚事件については、(旧)人事訴訟法時代は調停不調により民事事件として地裁に離婚訴訟を提起していましたので、家裁での事件は殆どが調停止まりで家裁での審判事件までに及んだ事件は数えるほどでした。

○そのため廃止された家事審判法での審判手続については殆ど勉強する機会がありませんでした。しかし、新人事訴訟法・家事事件手続法の制定で、家事事件については、調停から含めてこの2つの法律によって規定されますのでシッカリ勉強することが必要です。法務省民事局作成家事事件手続法概要テキスト資料です。

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見直しの観点
家庭をめぐる紛争を扱う訴訟手続については,平成15年に人事訴訟法が制定され,現代化が図られたところであるので, 同様に家庭をめぐる紛争を扱う非訟手続について規律する家事審判法(昭和22年制定)についても,非訟事件手続法の現代化のための改正と併せて,当事者の手続保障を図るための制度を拡充するなど現代的社会に適合した内容とする。施行期日は平成25年1月1日

法律の要点
○当事者等の手続保障を図るための制度の拡充

既存の参加制度では,
参加人の権限等が不明確→参加制度の見直しにより,参加人の権限等を明確にし,利害を有する者が手続主体として主張立証することが可能に(第41条,第42条)
記録の閲覧等をすることができる場合が不明確→当事者が記録を閲覧等することができない場合を明確にすることで,記録の閲覧等が容易に(第47条)
主張・立証の期限や審判がされる日が不明確→一定の事件については,予め,主張・立証の期限及び審判の日を定めることで,当事者の予測可能性を確保(第71条,第72条)

○手続を利用しやすくするための制度の創設
遠隔地に居住している者が裁判所に出頭する場合の負担大→電話会議・テレビ会議システムの導入により手続の利用が容易に(第54条)
調停を成立させる方法が限られている→高等裁判所における調停制度(第274条),電話会議システム等を利用した調停制度(第258条)を創設するなど調停を成立させる方法を多様に

○そのほか,管轄(第4条-第9条等)・代理(第22条-第27条等)・不服申立て(第85条-第102条等)等の手続の基本に関する規定を整備


家事事件手続法のあらましQ&A
Qどのようなことを定めた法律なのですか。
A家事事件手続法とは,家事事件の手続について定めた法律です。
ここで,家事事件について簡単に説明しておきましょう。家事事件とは,夫婦間の紛争や成年後見など家庭に関する事件のことをいい,大きく分けると,家事審判に関する事件と家事調停に関する事件とに分かれます。家事審判というのは,裁判官が様々な資料に基づいて判断し決定する手続です。一方,家事調停というのは,裁判官1人と調停委員2人以上で構成される調停委員会が,当事者双方から言い分を十分に聴きながら,合意による円満な解決を目指す手続です。

Qどうして,家事事件手続法が制定されたのですか。
Aこれまで家事事件の手続については家事審判法という法律が定めていたのですが,この法律は,昭和22年に制定された後,60年以上の間,大きな改正がされていませんでした。しかし,この間,我が国の家族をめぐる状況や国民の法意識は大きく変化し,当事者等が手続に主体的に関わるための機会を保障することが重要となってきましたから,家事事件の手続についても,法律の内容を見直し,国民に利用しやすく,現代社会に適合した内容とする必要があったのです。

Qどのような点が見直されたのですか。
Aポイントは主に次の3つです。
①当事者等の手続保障を図るための制度を充実させたこと
②家事事件の手続を,国民にとって,より利用しやすいものとしたこと
③手続の基本的事項を整備したこと

新しくできた制度
Q家事事件手続法で,新しくできた制度があれば教えてください。
A代表的なものをいくつかご紹介します。

申立書の写しの送付
まず,相手方のある事件では,家庭裁判所は原則として,申立書の写しを事件の相手方に送付しなければならないこととされました。申立書の写しを受け取った相手方が,申立ての内容をよく把握した上で,自分の言い分を考えたり,証拠資料を準備したりすることができるようにするためです。

記録の閲覧謄写
また,家事審判事件では,当事者から請求があった場合には,事件の記録の閲覧謄写(記録を見たりコピーしたりすること)を原則として許可することとされました。事件に関係する人のプライバシー等に配慮する必要がありますので,閲覧謄写が許可されない場合もありますが,それらの例外も法律に明確に規定されています。

審判の結果により影響を受ける者の手続保障
さらに,事件の当事者以外の「審判の結果により影響を受ける者」のうち一定の者について,その陳述を聴かなければならない場合を明記するなど,手続保障に関する規定を充実させました。特に,子どもが影響を受ける事件では,子どもの意思を把握するように努め,これを考慮しなければならないとされました。

Q電話やテレビを利用した手続も可能になったと聞いたのですが。
A当事者が遠隔地に居住しているとき等には,当事者の意見を聴いた上で,電話会議システム又はテレビ会議システムを利用して手続を行うことができるようになりました。これによって,当事者の出頭の負担を軽減することができますね。
 ただし,これらのシステムを利用して,離婚や離縁の調停を成立させることはできません。離婚や離縁は重大な身分関係の変更ですから,調停が成立する日には,裁判所に出頭していただく必要があるのです。
 
おわりに
Q家事審判や家事調停の手続について,もっと詳しく知りたいときに,問い合わせができる窓口などはありますか。
A全国の家庭裁判所では,家事手続案内を行っています。家事事件の申立てをお考えになっている方は,お近くの家庭裁判所にお立ち寄りください。
 また,裁判所ウェブサイトにも,手続の説明や申立書の書式などが掲載されていますので,ご覧ください。
以上:2,767文字
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R 3- 3- 4(木):生命保険解約払戻金請求権差押・解約・取立を認めた地裁最高裁判決紹介
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○確定判決に基づき生命保険について強制執行する必要が生じました。従前、生命保険の差押ができるかどうかについて肯定否定両説がありましたが、肯定説で統一した平成11年9月9日最高裁判決(判時1689号45頁、判タ1013号100頁)全文を紹介します。

○事案紹介のため、生命保険契約の解約返戻金支払請求権の差押債権者は取立権に基づき一律に保険契約の解約権を行使することができるとした第一審の平成10年8月26日東京地裁判決(判タ990号288頁、判時165号166頁)全文も紹介します。訴外人に対し確定判決を有する原告が、訴外人が被告との間で締結した生命保険契約の解約払戻金請求権を差し押さえた上、差押債権者の取立権に基づき当該保険契約を解約して、第三債務者たる被告に対し、解約払戻金の支払を求めたものです。

○最高裁判決は、債権者が生命保険契約解約前の解約払戻金支払請求権を差し押さえてこれにつき取立権を取得したときは、この解約払戻金支払請求権を具体化して取り立てるために、保険契約者の有する解約権を行使して、保険契約を解約することができるものと解するのが相当であるとしました。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告受理申立て理由について
一 生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができると解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。
1 金銭債権を差し押さえた債権者は、民事執行法155条1項により、その債権を取立てることができるとされているところ、その取立権の内容として、差押債権者は、自己の名で被差押債権の取立てに必要な範囲で債務者の一身専属的権利に属するものを除く一切の権利を行使することができるものと解される。

2 生命保険契約の解約権は、身分法上の権利と性質を異にし、その行使を保険契約者のみの意思に委ねるべき事情はないから、一身専属的権利ではない。
 また、生命保険契約の解約返戻金請求権は、保険契約者が解約権を行使することを条件として効力を生ずる権利であって、解約権を行使することは差し押さえた解約返戻金請求権を現実化させるために必要不可欠な行為である。したがって、差押命令を得た債権者が解約権を行使することができないとすれば、解約返戻金請求権の差押えを認めた実質的意味が失われる結果となるから、解約権の行使は解約返戻金請求権の取立てを目的とする行為というべきである。


他方、生命保険契約は債務者の生活保障手段としての機能を有しており、その解約により債務者が高度障害保険金請求権又は入院給付金請求権等を失うなどの不利益を被ることがあるとしても、そのゆえに民事執行法153条により差押命令が取り消され、あるいは解約権の行使が権利の濫用となる場合は格別、差押禁止財産として法定されていない生命保険契約の解約返戻金請求権につき預貯金債権等と異なる取扱いをして取立ての対象から除外すべき理由は認められないから、解約権の行使が取立ての目的の範囲を超えるということはできない。

二 これを本件について見ると、原審が適法に確定したところによれば、
(一)本件保険契約は、保険契約者がいつでも保険契約を解約することができ、その場合、保険者が保険契約者に対し、所定の解約返戻金を支払う旨の特約付きであった、
(二)被上告人は、本件保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえ、保険者である上告人に対し、本件保険契約を解約する旨の意思表示をした、
というのであるから、被上告人のした本件保険契約の解約は有効というべきである。

 以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よって、裁判官遠藤光男の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官遠藤光男の反対意見は、次のとおりである。

         (中略)


(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 大出峻郎)


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平成10年8月26日東京地裁判決

主   文
一 被告は、原告に対し、金53万6628円を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告は、原告に対し、金55万円を支払え。

第二 事案の概要
一 本件は、訴外A(以下「訴外人」という。)に対し確定判決を有する原告が、訴外人が被告との間で締結した生命保険契約の解約返戻金支払請求権を差し押さえた上、差押債権者の取立権に基づき当該保険契約を解約して、第三債務者たる被告に対し、解約返戻金の支払を求めた事案である。

二 争いのない事実
1 原告は、訴外人を債務者、被告を第三債務者として、浦和地方裁判所に対し、別紙請求債権目録記載の請求債権及び別紙差押債権目録記載の差押債権により債権差押命令の申立てを行ったところ(同裁判所平成9年(ル)第2568号)、同裁判所は、平成9年11月21日、その旨の債権差押命令を発し、右命令正本は、訴外人に対して平成10年1月16日、被告に対して平成9年11月26日それぞれ送達された。

2 訴外人は、被告との間で、同差押債権目録記載の保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結しているところ、本件保険契約においては、保険契約者はいつでも保険契約を解約することができ、その場合、保険者たる被告は、保険契約者に対し、所定の解約返戻金を支払う旨の特約があった。

3 原告は、被告に対し、本件保険契約を解約する旨の意思表示を行い、右意思表示は平成10年2月2日被告に到達した。

4 本件保険契約によると、本件保険契約の平成10年2月2日時点の広義の解約返戻金(解約により保険者が契約者に返還すべき金額)は53万6628円であり、その内訳は次のとおりである。
(一) 狭義の解約返戻金
54万8370円
(二) 配当金 10万6645円
(三) 契約者貸付元金
△11万2974円
(四) 同利息 △5413円

三 争点
 本件における争点は、①生命保険契約の解約返戻金支払請求権が債権差押えの対象となるか、及びこれを差し押えた債権者は取立てのために保険契約者の有する解約権を行使することができるか否か、②被告は解約返戻金を支払う際に、契約者貸付金の元利金を控除することができるか否か、の二点である。

四 争点に関する当事者の主張
1 争点①について

(一) 原告
 まず、生命保険契約の解約前においても解約返戻金支払請求権の差押えが許されることについては、異論がないところである。そこで、解約返戻金支払請求権の差押債権者がこれを具体化するために保険契約者の解約権を行使することが問題となる。かつては、右解約権は保険契約者の一身専属的ないし人格的権利であるとして、これを否定する見解もみられたが、今日では、これを肯定する見解が有力である。もっとも、学説のあるものは、右解約権行使について、解約返戻金支払請求権と別に解約権を差し押さえ、これについて行使命令(旧民事訴訟法625条一項、600条)を得ることを要するとする。しかしながら、差押債権者が被差押債権につき取立権を取得したときは、被差押債権の取立てのために一定の範囲で債務者の有する権利を行使することができるものと解される。そして、この差押債権者が行使することができるとされる債務者の権利には、解除権や取消権も含まれると解される。したがって、生命保険契約の解約返戻金支払請求権を差し押さえた債権者は、その取立てのために解約権を改めて差し押さえるまでもなく、これを行使できるものと解すべきである。

(二) 被告
 そもそも生命保険契約は、被保険者及び死亡保険金受取人の生活保障的機能を有するところ、債権者による一方的解約は、保険事故発生時における右のような生活保障的機能を奪うことになるから、民事執行法155条の取立権に基づき、差押債権者が当然に解約権を行使できるとする見解は誤りである。また、滞納処分による差押えについては、国税徴収法67条の取立権に基づき、当然に解約権行使が認められるが、この場合は、その公益性が解約権行使を認める根拠となり得るのであるが、本件のような私債権の取立てにはその理が当てはまらない。

 次に、差押債権者は当然には解約権を行使できないが、保険契約を保障性の強い保険と貯蓄性の強い保険に大別し、後者については、執行債権者は債権者代位権により解約権を行使し、解約返戻金を取得できるとする見解がある。しかしながら、右見解は基準が明確でないため、保険会社が任意に後者の保険と認めて解約返戻金を支払った場合、後に債務者(保険契約者)から保険会社相手に提起された保険金請求訴訟において、前者の保険であり、債権者代位権により行使できないと判断された場合、差押債権者による解約権行使が否定され、二重払いをさせられることとなる。仮に、当該保険契約が後者の保険であるとしても、債権者代位権の行使には債務者(保険契約者)の無資力が要件とされるところ、保険会社には、保険契約者の資力は容易に判明しない。そこで、やはり、後の保険契約者と保険会社間の保険金請求訴訟において、債権者代位権の行使が否定されて、保険契約者に対し、二重払いをさせられる危険がある。したがって、右前記二分説にも従うことはできない。

2 争点②について
(一) 原告
 仮に、生命保険契約が保険契約者の一身専属性や公益性の強いものであるとすれば、契約者に対する貸付金による相殺は、当然許されるべきではない。

(二) 被告
 保険料の自動貸付については、終身保険普通保険約款(以下「約款」という。)13条三項二号に、通常の契約者貸付については約款33条三項二号にそれぞれ契約消滅時に当然に支払金から貸付金を差し引くことが規定されている。この措置は、いわゆる相殺の担保的機能からして当然のことであり、また、保険料の自動貸付及び通常の貸付の制度は、本来契約者を保護する制度であるから、これらの規定が、保険契約の一身専属性や公益性に抵触するものではない。

第三 争点に対する判断
一 争点①について

 本件保険契約は、保険契約者がいつでも保険契約を解約することができ、その場合、保険者が保険契約者に対し、所定の解約返戻金を支払う旨の特約付きであったことは当事者間に争いがなく、証拠(乙三)によれば、右解約返戻金の額は、同約款別表五に例示の割合で計算した額とされていることが認められ、本件においてその額(狭義の解約返戻金の額)が54万8370円であることは、当事者間に争いがない。

 右によれば、本件解約返戻金支払請求権は、解約の意思表示によって自動的に額の定まる金銭の給付を目的とする財産的権利であり、しかも、民事執行法152条の差押禁止債権にも該当しないから、それが保険契約の解約によって具体的な権利として存在するに至った場合に差押えが許されることはいうまでもないが、保険契約の解約の前であっても、解約を条件とする条件付権利として存在し、その差押えもまた許されるものというべきである。

また、同法155条1項によれば、差押債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができるものと規定されている。そうすると、差押債権者は、右債権の取立てのために、債務者の有する権利を、右目的の範囲内において、かつ、右権利の性質に反しない限りにおいて、行使することができるのであって、債権者が生命保険契約解約前の解約返戻金支払請求権を差し押さえてこれにつき取立権を取得したときは、この解約返戻金支払請求権を具体化して取り立てるために、保険契約者の有する解約権を行使して、保険契約を解約することができるものと解するのが相当である。

 これに対し、被告は、そもそも生命保険契約は被保険者及び死亡保険金受取人の生活保障的機能を有するところ、債権者による一方的解約は、保険事故発生時におけるその生活保障的機能を奪うことになるから、その権利の性質上、差押債権者の取立権の対象とはならない旨主張する。

 そこで、検討するに、確かに、一般的に、生命保険契約は、被告主張のような機能を有することが認められないではないが、他方において、保険契約者の資産運用、貯蓄、相続税対策等のためにも利用されていることも当裁判所に顕著な事実であって、保険契約者や保険金受取人の有する保険金請求権や解約返戻金支払請求権等については、それらの債権者が債務者の一般財産に属するものとして右権利に重大な関心と利害を有していることもまた明らかというべきである。

したがって、生命保険契約の生活保障的機能を一方的に強調するのは相当ではない。また、保険契約者の有する解約権は、保険契約者の自由意思により、財産的権利である一定額の金銭債権を発生させるという形成権であり、身分法上の権利とも性質を異にするから、保険契約者の一身専属的権利ということもできない。

しかも、もし、解約返戻金支払請求権の差押えが許されると解しながら、他方において差押債権者の解約権の行使は許されず、保険契約者が後に解約権を行使するまでは、差押債権者は解約返戻金支払請求権の取立てを待つべきであるとするのは、いかにも不徹底であり、解約返戻金支払請求権を差押禁止債権とはしていない現行法の建前とも合致しない。そうすると、生命保険契約に被告主張のような生活保障的機能を有する面が存するとしても、このことゆえに、保険契約者の解約権がその性質上差押債権者の有する取立権の対象とならない権利に該当すると解することはできない。

 よって、被告の前記主張は、採用の限りではない。

 ところで、原告が被告に対し、本件保険契約を解約する旨の意思表示を行い、右意思表示が平成10年2月2日被告に到達したことは、当事者間に争いがない。
 そうすると、本件保険契約は、原告の右解約権の行使により、右同日有効に解約されたものというべきである。

二 争点②について
 約款13条3項二号、33条3項二号によれば、保険料の自動貸付金及びその他の契約者貸付金の元利金は、保険契約の消滅時に支払金から差し引くこととされているところ(乙三)、右約款の各規定が特段不合理である旨の主張も立証もないから、被告は、本件解約返戻金から貸付金の元利金を差し引くことができるものと解される。

 そうすると、右貸付金の元金が11万2974円であり、その利息が5413円(合計11万8387円)であることは、当事者間に争いがないから、被告は、原告に対し、狭義の解約返戻金54万8370円に配当金10万6645円を加え、これから右11万8387円を控除した53万6628円を支払うべき義務がある。

第四 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は、53万6628円の支払を求める限度で理由がありその余は理由がないこととなる。
(裁判官小磯武男)

別紙 〈省略〉

以上:6,280文字
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R 3- 3- 3(水):未成年者祖母を民法第766条1項監護者と指定した高裁決定説明
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○「未成年者祖母を民法第766条1項監護者と指定した高裁決定紹介」の続きで、この令和2年1月16日大阪高裁決定(判タ1479号51頁)の内容・意義等についての説明です。

○事案概要は以下の通りです。
・未成年者を事実上監護している祖母が,未成年者の実母及び未成年者と養子縁組をした養父を相手方として,未成年者の監護者を祖母と指定することを求めた
・一審大阪家裁は,祖母を未成年者の監護者と指定する旨
・本決定は,実母及び養父の抗告を棄却する旨の決定をした。


○本件の論点は,
①事実上の監護者である祖父母等は,監護者指定の申立権を有するか,
②有するとして,どのような場合に祖父母等を監護者として指定し得るか
という点です。

○①について、民法766条1項の法意に照らし,事実上の監護者である祖父母等も,子の監護者指定の申立てをすることができる,
②について、上記祖父母等を監護者と指定するためには,親権者の親権の行使に重大な制約を伴うこととなったとしても,子の福祉の観点からやむを得ないと認められる場合であること、具体的には、親権者の親権の行使が不適当であることなどにより、親権者に子を監護させると、子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれが認められることなどを要する
と判断し
本件については、抗告人ら(実母及び養父)の親権の行使が不適当であるため,未成年者を抗告人らに監護させた場合,未成年者の精神状態が著しく悪化し,小学校に通うことができなくなるなど未成年者の健全な成長を阻害するおそれが十分に認められるなどとして,事実上の監護者である祖母を未成年者の監護者と指定するのが相当であるとしました。

○事実上の監護者である祖父母等の第三者が監護者指定の申立権を有するかについては、学説は、一部消極説がありますが、近時の通説は積極説であるとされていました。現在の家裁実務では、消極説の高裁決定例があり、特に「父母以外の親族に民法766条類推適用を否定した高裁決定紹介」で紹介した平成20年1月30日東京高裁決定(抗告審、家庭裁判月報60巻8号59頁)により、消極説での運用をしている裁判官も居て、祖父母等両親以外の申立は、家事審判事項には当たらず、不適法な申立として却下せざるを得ないとしていました。

○平成20年1月30日東京高裁決定に対しては,家裁実務の到達点を無視するものである、形式的な文理解釈に終始しているなどといった批判があり、令和2年1月16日大阪高裁決定はその批判に沿うものです。事実上の祖父母等に監護者指定の申立権を認める場合,その根拠をどのように解するかにつき,民法766条説,民法766条・819条6項類推適用説,民法766条・834条類推適用説等がありますが、大阪高裁決定は,民法766条1項の法意を根拠としました。但し、本件事案は、事実上の監護者である祖母の申立てに係るものでしたが、未成年者を現に監護していない祖父母等の親族や親族以外の第三者にも申立権を認めるのかという点については、さらに慎重な検討を要するとの説明もあります。

○どのような場合に祖父母等を監護者として指定し得るかについては、民法834条「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは」家庭裁判所は親権喪失の審判をすることができると規定や、監護権と同じく親権の一部である管理権の喪失の審判を定める民法835条は「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは」家庭裁判所は管理権喪失の審判をすることができると規定していることが参考になります。本決定は、祖父母等を監護者と定めることは親権者の親権の行使に重大な制約を伴うこととなるという観点から、親権者に子を監護させると子が心身の健康を害するなど子の健全な成長を阻害するおそれがあることなどを要件としています。
以上:1,628文字
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R 3- 3- 2(火):2021年03月01日発行第288号”孔明弁護士の指針”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年3月1日発行第288号「孔明弁護士の指針」をお届けします。

○「弁護士の仕事をしていると、迷うことばかりです。」との大山先生のお言葉は、何年弁護士をしても同じです。先ずは、多くは徹底的に争いたいと希望するお客様に対して、和解を勧めるかどうかです。後になって弁護士に無理矢理和解をさせられたと言われることもあるからです。私の場合、お客様が納得しない和解はしないことを基準としています。

○大変なのは、お客様から弁護士の判断に任せますからと言われたときです。そのときは、弁護士は判断材料は提供しますが、最終的に判断するのはお客様ご自身ですと、逃げをうちます。しかし、弁護士さんならどうしますかとたたみ込まれることがあります。そういうときの判断材料は、過去の裁判例です。その善し悪しを含めて裁判例は、学者が書いた一般論の多い教科書よりズッと参考になります。裁判例は多く集めれば集めるほど判断材料として価値があり、これからも裁判例集めを続けて行きます。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

孔明弁護士の指針


弁護士の仕事をしていると、迷うことばかりです。不利な和解でもした方が良いのか、徹底的に争うべきなのか、2つの選択肢のどちらにするのか、なかなか決められない。こういうときには、決断のための指針が欲しくなります。「葉隠」なんて、有名です。選択に迷ったときには、辛い方、厳しい方を常に選べという教えです。「武士道とは死ぬことと見つけたり」という殺し文句と共に有名です。意識しないうちに安全策を選んでしまう、私みたいに度胸のない人間には、「保身を考えないで、死ぬ気で辛い道を選べ!」という指針は役に立ちそうです。
ただ、和解するか示談するか、依頼者に影響がある問題に、「葉隠」の指針だけで対応するのは困難ですね。死ぬのは依頼者ですから。。。

指針の話として、ドン・キホーテのエピソードがありました。従者のサンチョが、ある町の領主として赴任したときに、有罪なのか無罪なのか、難しい判断を迫られるエピソードです。いくら考えても、分からない。そこで、主君のドン・キホーテから言われた指針を思い出します。「どうしてよいのか迷ったら、慈悲深い方を選びなさい」というアドバイスです。そこで、許して無罪としたという話です。確かに良い話だと思いますが、「簡単に真犯人を無罪にされたらたまらない!」と、被害者の方には言われそうです。現代日本の刑事裁判でも、執行猶予が付くか付かないか、微妙な事件があります。そういうときに、裁判官が「慈悲の心」で、全員執行猶予にしてしまったとしたら、「本当にいいのかな?」という気持ちにもなりそうです。(私が弁護人のときには、慈悲の心で裁いて欲しいですけど。) やはり、もう少し具体的な場面に即した指針といえるものがあれば有難いと思うのです。

というわけで、私の好きな「三国志」のエピソードです。関羽が、魏と呉に挟まれた土地の領主になります。魏と呉の両方から攻められたら、持ちこたえられません。「両方から攻められたらどうするつもりか?」と孔明に聞かれて、関羽は「死んでも戦います」と回答するんです。それに対して孔明が、「人の上に立つものが、死ぬなどと軽々しく言うものではない」と窘めて、指針を授けます。「呉と連携し、魏と争う」というものです。とても具体的で明快な指針です。

しかし、これだけ明確な指針でも、現実の場面で守るのは難しい。呉の呂蒙や陸遜の挑発に我慢できずに戦となり、関羽は戦死してしまうわけです。孔明大先生のような凄い話ではないですけど、弁護士の場合も依頼者に指針を示すことはよくあります。

例えば労働事件の会社側は、なかなか勝てません。かなりの問題社員であっても、解雇はできませんし、遊んでいるように見える人でも、法定労働時間を超えて会社に居れば、残業代を支払わないといけないんですね。紛争になると、まずは従業員側の弁護士から、和解の話が出てきます。これを蹴って裁判になれば、さらに被害が拡大する場合がほとんどです。「納得できない気持ちは分かりますが、労働事件では、何としても和解した方が得です」なんて指針を会社側に出すのです。経営者の方も、頭では理解できているから、「そうするか」なんて受け入れてくれます。
ところが、そういうときに相手方の弁護士から、さらに強気な書面がでて来るんですね。そうなると、こちらも怒りが再燃してきて、「死んでも戦います」と、関羽みたいなことを言い出しちゃう。
気持ちが分かるだけにとても辛い。思わず相手の弁護士に対して、「あんたは、呂蒙か陸遜か!」と、わけの分からないことを、つぶやいてしまうのです。

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◇ 弁護士より一言

ニュースレターの中で使う話など、ほとんど記憶で書いてます。後から、私の勘違いで、そんな話ではなかったなんてことがよくあるんです。それに、字の間違いも結構あります。昨年のニュースレターで、孫子を取り上げたんですが、間違って「孫氏」と書いてました。ニュースレターを読んだ娘に、「孫氏ってソフトバンクの人?」って聞かれ、「アホか!」と思った自分が恥ずかしい。「間違っているのは自分だ」とまず考えることを、今後の指針としていきます。
以上:2,281文字
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R 3- 3- 1(月):映画”今そこにある危機”を観て-アメリカ大統領の裏側を観る
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○「映画”パトリオット・ゲーム”を観て-静かな迫力があります」の続きです。令和3年2月26日(金)フラメンコギター合奏練習の後、ハリソン・フォード氏主演ジャック・ライアンシリーズ3作目「今そこにある危機」をUHDソフトで鑑賞しました。「パトリオット・ゲーム」を観て、無性にハリソン・フォード氏の続きシリーズを見たくなっての鑑賞で、初めての鑑賞でした。

○1994(平成6)年の作品ですから、令和3年からは26年前の作品です。ジャック・ライアンシリーズは、「レッドオクトーバーを追え!」、「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」の3部で、「レッドオクトーバーを追え!」も先日鑑賞済みでしたが、ハリソン・フォード氏は無関係で、実質、ジャック・ライアンではないショーン・コネリー氏主演映画で、ジャック・ライアン役は、アレック・ボールドウィン氏でした。

○「今そこにある危機」の物語は、アメリカ大統領の友人一家が、ヨット乗船中に、子供を含めて一家皆殺しにされて居るところから始まります。これに怒ったアメリカ大統領の密命を受けた大統領補佐官と麻薬密輸組織との争いが始まりますが、仲介組織との駆け引きが絡み、ストーリーをシッカリ追っていないと、こんがらかり良く理解出来ないところがありました。表面上は、正義をかざすアメリカ大統領の裏側に、実際の政治は、このようなものと実感させるものがありました。

○Yahoo!映画での解説・あらすじは「大統領の友人がクルーザーの中で一家皆殺しにされる。CIA情報担当副長官ライアンは、被害者が麻薬組織の金の洗濯係だったことを突き止めた。大統領は密かに組織への攻撃を補佐官に命令する。密かに現地入りする海兵隊員。麻薬王の情報係コルテズはボスの地位を乗っ取るため補佐官に取引を持ちかけ、攻撃の中止を約束させる。それを知ったライアンは見殺しにされようとしている隊員たちを救うために現地に向かう」とありますが、このあらすじでも、内容は良く判りません。

○おそらく2,3回観ないとストリー展開がハッキリ理解出来ないと思われます。「パトリオット・ゲーム」はストーリーはシンプルで、静かな迫力と感じましたが、「今そこにある危機」は、密輸組織とアメリカ大統領密命組織との間に、結構派手な殺戮戦と駆け引きが繰り広げられます。主人公ハリソン・フォード氏が、見殺しにされようとしている海兵隊員たちを救うために現地に向かってからの展開は、最後は勝つと判っていても手に汗握るモノでした。
以上:1,036文字
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R 3- 2-28(日):幼児教育無償化は婚姻費用減額理由にならないとした高裁決定紹介
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○「夫に対して別居中の妻子婚姻費用として生活保持義務を認めた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審令和元年11月12日東京高裁決定(判タ1479号59頁)全文を紹介します。

○原審では、別居中の相手方妻子に対する過去の婚姻費用として116万4264円の支払と令和元年8月から1ヶ月当たり25万8800円の支払を命じられ、これを不服とした抗告人夫が抗告していましたが、抗告審では、抗告人の相手方に対する既払金額の増加に基づき、抗告人が支払うべき婚姻費用分担額を定めるのが相当であるとして、過去の婚姻費用について116万4264円から92万1451円に、約24万円の減額が認められました。しかし、毎月の支払額は維持されました。

○抗告人は,原審判が婚姻費用に加算した月額1万6000円の長女の教育費について,令和元年10月から幼児教育・保育の無償化が開始し,幼稚園についても月額2万5700円までは無償化されるから,教育費の加算に当たっては,同額を控除すべきと主張しました。

○これに対し、東京高裁は、幼児教育の無償化は、子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり(子ども・子育て支援法1条参照)、このような公的支援は、私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないのでこの制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきではないとした点が注目されます。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
(1)抗告人は,相手方に対し,92万1451円を支払え。
(2)抗告人は,相手方に対し,令和元年8月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り,1か月当たり25万8800円を支払え。
2 手続費用は,第1,2審を通じて各自の負担とする。

理   由
第1 事案の概要

1 本件は,相手方が,別居中の夫である抗告人に対し,婚姻費用分担金の支払を求めている事案である。
 原審は,抗告人に対し,平成30年I月から令和元年7月までの未払婚姻費用として116万4264円及び同年8月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで毎月末日限り月額25万8800円の支払を命じたところ,抗告人が,これを不服として抗告した。

2 抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」及び「抗告状訂正申立書」に記載のとおりである。

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,既払金額の増加に基づき,原審判を変更して,抗告人が支払うべき婚姻費用分担額を主文のとおり定めるのが相当であると考えるが,その理由は,次のとおり原審判を補正し,次項のとおり当審における抗告人の主張に対する判断を付加するほか,原審判の「理由」欄の「第
2 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,略称は原審判の例による。
(原審判の補正)
(1)原審判2頁1行目冒頭から4行目末尾までを次のとおり改める。
 「相手方は,二女を妊娠し,平成30年I月*日が出産予定日であったところ,同年7月8日,抗告人は,妊娠中の相手方を自宅マンションに残して長女を連れて自宅を出た。抗告人は,自宅マンションを出た後,抗告人及び長女の身の回りの世話をしてもらうため,C在住の抗告人の実母を呼び寄せた。相手方は,抗告人が長女を連れて自宅マンションを出たことから,当初予定していたD内での出産を取りやめ,同年*月19日,里帰り出産のため,E所在の相手方の実家に戻り,以後現在に至るまでその実家で生活している。同年I月*日,相手方は実家の近くの病院で二女を出産した。同年12月25日,抗告人は,長女を相手方に引渡し,以後相手方は,長女及び二女を実家で監護養育し現在に至っている。」

(2)原審判2頁11行目の「1489万5260円であった。」の次に「Fからの給与収入は,平成29年が717万1413円,平成30年が853万2000円であった。」を加える。

(3)原審判2頁14行目の「支払った。」の次に「抗告人は,相手方に対し,同年7月29日,婚姻費用分担金として更に24万2813円を支払い,同月までの婚姻費用分担金の既払額は181万4439円となる。」を加え,同頁14行目から次行にかけての「(乙8の1,2,19)」を「(乙8の1,8の2,19,23,手続の全趣旨)」と改める。

(4)原審判3頁5行目から次行にかけての「一般的に利用され,定着しているものとはいえないから,これを採用しない。」を次のとおり改める。
 「標準算定方式は,裁判官が婚姻費用を算定するに当たっての合理的な裁量の目安となるものであり,同方式は一般的に利用され定着しているところであって,原審判が,標準算定方式に基づいて婚姻費用分担額を算定し,公租公課等について,標準算定方式が基礎とした統計データに代えて相手方が主張する直近の統計データに基づき基礎収入割合を計算しなかったことが,裁判官に与えられた合理的な裁量の範囲を超えるものとは認められない。」

(5)原審判3頁11行目の「これを考慮しないことはなく,信義則違反とはいえず,」を次のとおり改める。
 「その子の生活費を扶養義務を負う親が負担するのは当然であり,当該子がいることを考慮して婚姻費用分担額を定めることが信義則に違反するとはいえず,

(6)原審判3頁13行目から次行にかけての「長女の監護補助者として相手方の実母がいたこと考慮するよう主張するが,」を次のとおり改める。
 「抗告人の実母が長女の世話をするために仕事を辞めて抗告人と同居するようになり,抗告人が実母を扶養していることを,婚姻費用分担額算定に当たり考慮すべきである旨主張するが,」

(7)原審判3頁15行目の「就業していたこと」の次に「,母親に対する扶養を理由に婚姻費用分担額を減額することは,生活扶助義務に基づく母親に対する扶養義務を生活保持義務に基づく妻子に対する婚姻費用分担義務に優先させることとなること」を加える。

(8)原審判3頁20行目から次行にかけての「本務と兼務の兼ね合い等もあることを考えると,平成30年の金額を基礎額とするのが相当である。」を次のとおり改める。
 「平成29年から平成30年にかけての減収は,医師である抗告人が主たる勤務先であるFから支給される給与の減収によるものではなく,兼務先の変更や兼務先からの給与収入の減少を原因とするものであることからすれば,平成30年の給与収入額を婚姻費用分担金算定の基礎とするのが相当である。相手方は,上記減収は抗告人によるアルバイト収入の意図的な減収調整によるものであるから,抗告人の年収は少なくとも平成29年と平成30年の平均値を採用すべきである旨主張し,同旨供述する(甲33の1)が,上記減収が抗告人による意図的なものと認めるに足りる資料はなく,相手方の主張は採用できない。」

(9)原審判3頁25行目の「506万4388円」の次に「(14,895,260×0.34=5,064,388。小数点以下切捨て)」を加える。

(10)原審判4頁2行目末尾の次に以下のとおり加える。
 「なお,同年12月24日までは,抗告人が長女を監護していたことも考慮すべきである。」

(11)原審判4頁9行目末尾に改行して次のとおり加える。
 「平成30年I月*日までの年額
5,064,388×100/100+100+55=1,986,034
 同月*日以降の年額
5,064,388×100+55/100+100+55+55=2,532,194」

(12)原審判4頁13行目末尾に改行して次のとおり加える。
 「平成30年12月25日以降の年額
5,064,388×100+55+55/100+100+55+55=3,430,714」

(13)原審判4頁20行目末尾に改行して次のとおり加える。
 「令和元年K月*日以降の年額
5,064,388×100+55+55/100+100+55+55+55=2,913,757」

(14)原審判5頁1行目の「相手方の収入状況からすると」から2行目末尾までを次のとおり改める。
 「相手方の前記認定に係る収入状況も併せ考慮するならば,平成31年4月以降の前記幼稚園やお稽古事の費用の全部又は一部については,標準算定方式に基づく試算額に加算して婚姻費用分担額を定めるのが,当事者間の衡平に適うというべきである。」

(15)原審判5頁5行目の「本件においては,」から7行目の「考えると,」までを次のとおり改める。
 「下記のとおり月額3万2155円が超過分と認められるところ,本件においては,夫婦関係が正常な状態でなくなった後に別居先において相手方が抗告人の了解を得ずに新たに選定した私立幼稚園や習い事の費用について,上記超過額の全額を抗告人に負担させるのは相当でないこと等からすれば,相手方が無職無収入であることを考慮しても,」

(16)原審判5頁8行目末尾に改行して次のとおり加える。
 「上記超過額の計算
(29,360+6,480+2,500+5,000)×12-134,217=385,863
385,863÷12=32,155(小数点以下切捨て)」

(17)原審判5頁11行目末尾に改行して次のとおり加える。
 「189,766+211,000×■+227,912+285,900×■+252,532+242,800×2=2,721,410」

(18)原審判6頁9行目末尾の次に以下のとおり加える。
 「なお,各種給付金については,児童手当等と同様,実際の負担額に応じて,抗告人と相手方との間で婚姻費用分担額とは別に清算するのが相当である。」

(19)原審判6頁14行目の「6月までの既払額157万1626円を差し引いた116万4264円」を「7月までの既払額181万4439円を差し引いた92万1451円」と改め,16行目の「月額25万8800円」の次に「(242,800円+16,000円)」を加える。

2 抗告人の当審における主張に対する判断
(1)抗告人は,長女とともに自宅マンションを出た後に支払った賃料91万8703円及び光熱費2万1942円について、賃貸借契約を解除できなかったのは相手方の希望によるものであるとして,婚姻費用分担金から控除すべきである旨重ねて主張する。
 しかしながら,引用に係る原審判(前記補正後のもの)が説示するとおり,抗告人は妊娠中の相手方がいるにもかかわらず独断で長女を連れて自宅マンションを出たこと,そのため,相手方はその後間もなく出産のためEの実家で里帰り出産をせざるを得なかったことが認められ,これらの事情にかんがみれば,相手方において自宅マンションの賃料等を負担すべき理由はないから,その後の自宅マンション賃料を,抗告人が支払うべき婚姻費用から控除するのは相当でない。 
 よって,抗告人の上記主張は採用できない。

(2)抗告人は,原審判が婚姻費用に加算した月額1万6000円の長女の教育費について,令和元年10月から幼児教育・保育の無償化が開始し,幼稚園についても月額2万5700円までは無償化されるから,教育費の加算に当たっては,同額を控除すべきである旨主張するが,幼児教育の無償化は,子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり(子ども・子育て支援法1条参照),このような公的支援は,私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから,上記制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきであるとする抗告人の主張は採用できない。

第3 結論
 よって,既払金額の増加に基づき,原審判を一部変更することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 村田渉 裁判官 住友隆行 裁判官 五十嵐章裕)

別紙 抗告状〈省略〉
抗告状訂正申立書〈省略〉
以上:4,858文字
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R 3- 2-27(土):夫に対して別居中の妻子婚姻費用として生活保持義務を認めた家裁審判紹介
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○申立人が、別居中の夫である相手方に対し、婚姻費用分担金の支払を求めた事案で、夫婦は互いに協力し扶助しなければならないところ、別居した場合でも、自己と同程度の生活を保障する、いわゆる生活保持義務を負うとして、申立人の申立てを一部認容した令和元年8月29日東京家裁審判(判タ1479号63頁)全文を紹介します。

○婚姻費用の分担は,その権利者と義務者の収入から,分担するものであり,子の人数や年齢を考慮するところ,仮に不貞行為があったとしても,現実に扶養義務を負うべき子が存在する以上,これを考慮すべきとしています。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,116万4264円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,令和元年8月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り,1か月当たり25万8800円を支払え。
3 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨

 相手方は,申立人に対し,婚姻費用分担金として,毎月35万4465円を支払え。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば,次の事実を認めることができる。
(1)申立人(昭和57年*月*日生)と相手方(昭和53年*月*日生)は,平成24年1月に婚姻した夫婦である。
 申立人と相手方との間には,長女(平成26年*月*日生)及び二女(平成30年I月*日生)がいるほか,相手方は,令和元年K月*日,Gを認知している。(乙21)

(2)申立人と相手方は,平成30年7月8日から別居状態にあり,長女は,別居当初相手方と生活していたが,平成30年12月25日からは申立人と生活し,別居後に生まれた二女は,出生以来申立人と申立人の実家で生活している。

(3)申立人は,平成30年I月7日,婚姻費用分担調停を申し立てたが(当庁平成30年(家イ)第6908号),平成31年4月17日,上記調停は不成立となり,本件審判手続に移行した。

(4)申立人は,稼働していない。(甲4)
 相手方は,H所属の医師であり,その他の病院等でも勤務しており,平成29年の給与収入の合計は1927万6223円,平成30年の給与収入の合計は1489万5260円であった。(甲3,27の1,2,28の1,2,乙1ないし7,20)

(5)相手方は,申立人に対し,平成30年12月26日以降令和元年6月までに,婚姻費用として合計157万1626円を支払った。(乙8の1,2,19)

2 検討
(1)夫婦は,互いに協力し扶助しなければならないところ(民法752条),別居した場合でも,自己と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持義務を負う。

(2)婚姻費用の分担額は,義務者世帯及び権利者世帯が同居していると仮定して,義務者及び権利者の各総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して得られた各基礎収入の合計額を世帯収入とみなし、これを,生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって推計された権利者世帯及び義務者世帯の各生活費で按分して権利者世帯に割り振られる婚姻費用から,権利者の上記基礎収入を控除して,義務者が分担すべき婚姻費用の額を算定するとの方式(判例タイムズ1111号285頁以下参照)に基づいて検討する(以下「標準算定方式」という。)のが相当である。

 なお,申立人は,公租公課等について,最新の統計データを使用することを主張するが,一般的に利用され,定着しているものとはいえないから,これを採用しない。 

 また,申立人は,相手方において認知をした子がいることを考慮するのは,信義則に反すると主張するが,婚姻費用の分担は,その権利者と義務者の収入から,これを分担するものであり,子の人数や年齢を考慮するところ,仮に不貞行為があったとしても,現実に扶養義務を負うべき子が存在する以上,これを考慮しないことはなく,信義則違反とはいえず,申立人の主張は採用できない。

 一方,相手方は,長女の監護者補助者として相手方の実母がいたことを考慮するよう主張するが,長女の監護は,相手方自らが,長女を連れて家を出たことにより生じたものであり,それまで実母が就業していたことも考えると,これを婚姻費用分担の際に考慮するのは相当ではなく,相手方の主張は採用できない。

(3)前記1(4)の認定によれば,申立人には収入がない。
 一方,相手方は,平成30年の給与収入が1489万5260円である。相手方の収入は,確かに平成29年分はこれよりも多額であったが,本務と兼務の兼ね合い等もあることを考えると,平成30年の金額を基礎額とするのが相当である。

 婚姻費用の分担の始期は,その請求があった平成30年I月分からと考えるのが相当である。また,標準算定方式において相手方の基礎収入割合は34パーセントであるから,同年の基礎収入は506万4388円となるところ,同月*日に二女が誕生しており,婚姻費用の分担額の計算においては,同月*日までは,申立人分のみ,同月*日からは,申立人と二女の分となり,同年12月25日からは,申立人と長女及び二女の分となる。
 また,平成31年(令和元年)の収入も同程度考えるのが相当である。

 そうすると,平成30年I月分は,基礎収入を前提に,*日までは,14歳までの子(標準算定方式において指数55)が1人おり,分担額の月額は16万5500円(月額分は100円未満四捨五入。以下同じ。)であるところ,その日割分が7万7233円,*日以降は,14歳までの子が2人おり,月額21万1000円となるところ,その日割分が11万2533円であって,合計18万9766円となる。

 また,平成30年J月から同年12月24日までは,分担額の月額は21万1000円となり,同年12月の24日までの日割分は16万3354円となり,同月25日以降は月額28万5900円となり,その日割分は6万4558円であり,同月分は22万7912円となる。
 さらに,平成31年(令和元年)1月以降も相手方の年収は同程度と認められるから,分担額の月額は28万5900円となるところ,相手方は,同年K月*日,Gを認知した(指数55)から,同人に対する扶養義務が同日から発生し,同月分の分担額は,*日までの日割分は6万4558円であり,*日以降は,分担額の月額が24万2800円となり,その日割分は18万7974円であり,合計25万2532円となる。
 同年L月以降の分担額は,月額24万2800円である。

(4)また,申立人は,長女の幼稚園やお稽古事の費用について,加算対象であると主張する。
 長女は,私立幼稚園(月額2万9360円)に通っているのに加え,Dで生活していた際に通っていた学研(月額6480円),バレエ(2500円)のほか,Dで通っていたバイオリンに相当するピアノ(月額5000円)に通っているところ(甲16,17の1ないし3),これらはDで通っていたものと同等のものであり,相手方の収入状況からすると,平成31年(令和元年)4月以降について,加算を認めるのが相当である。

 ところで,標準算定方式において,14歳までの子の上記指数は,年額13万4217円の学習関係費を含むものであるから,これを超える分を負担することになり,本件においては,月額3万2155円が超過分と考えられること,申立人,長女及び二女は,申立人の実家で生活していること等の事情も併せ考えると,超過額の約2分の1である1万6000円を加算するのが相当である。
(5)上記(3)及び(4)により計算すると,平成30年I月から令和元年7月までの婚姻費用の相手方の分担額の合計は272万1410円に上記(4)の加算額合計6万4000円を加えた278万5410円となる。
 そこで,上記金額から精算すべきものについて検討する。
ア マンションの精算金 4万7250円を加算(争いがない)

イ 荷物の撤去等費用 合計8万3250円を控除(争いがない)

ウ マンション賃料(光熱費)0円
 相手方は,申立人と相手方が長女と共に居住していたマンションの賃料について,申立人の希望により解約できなかった旨主張して,その控除を主張する。
 しかしながら,相手方は,別居に際し,自ら長女と共に同マンションを出たのであり,妊娠中の相手方の病院も転院手続きをとるなどして,申立人の転居を余儀なくしたと認められ,また,同マンションには,申立人が監護する長女に荷物も置かれていたと認められることからすると,その光熱費を含めて,控除するのは相当ではない。

エ クレジットカード代金 1万3520円を控除
 相手方は,合計10万1348円を控除すべき旨主張する。
 しかしながら,婚姻費用の対象期間は,平成30年I月以降であるから,同月以降分で相手方が主張するのは1万3520円であり(甲5),その限度で控除するのが相当である。

オ 出産後の合併症による申立人及び二女の入院費用 0円
 申立人は,上記の費用として35万7478円の入院等の費用については,生命保険から19万円が補填され,乳幼児医療証に基づき還付を受けられる14万8188円のほか,申立人は,各種の給付金も受けていると考えられることからすると,これを特別費用として,支払いを求めることも,各種給付金の性質が婚姻費用とは相いれない(児童手当等と同様)ものであることも考慮すると,精算対象とするのは相当ではない。

3 結論
 以上によれば,相手方は,申立人に対し,平成30年I月分から令和元年7月までの未払婚姻費用として,上記278万5410円に,上記精算にかかる4万7250円を加算し,8万3250円及び1万3520円を控除し,令和元年6月までの既払額157万1626円を差し引いた116万4264円を直ちに,令和元年8月から,当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り,月額25万8800円を支払うこととなる。
 よって,主文のとおり審判する。
以上:4,159文字
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R 3- 2-26(金):ベンチプレス練習中事故損害賠償請求を棄却した地裁判決紹介
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○交通事故判例ではありませんが、自保ジャーナル・第2043号に掲載された平成30年9月10日横浜地裁判決を紹介します。私自身のための備忘録です。事案は、スポーツジムでのトレーニング中に高重量バーベル落下で受傷した48歳男子の補助のトレーナーに注意義務違反はないとしトレーナー及び運営会社の賠償責任を否認したものです。

○「小松弁護士、あわや一巻の終わり!-恐怖のベンチプレス」に私自身のベンチプレス練習中の80㎏のバーベルが、これを支えるべき左右にある補助セーフティラックが所定の高さになかったため、セーフティラックの支えがなく、支えきれずに私の首に食い込んだ事件でした。幸い、「小松弁護士、あわや一巻の終わり!-恐怖のベンチプレス2」記載の通り、練習パートナーがバーベルを持ち上げて難を免れましたが、恐怖の体験でした。

○横浜地裁判決事案は、ジムでベンチプレス練習中の原告が、私の例の2倍の160㎏ものバーベルをベンチプレスで持ち上げ、バーベルを置くラック(補助セーフティラックではありません)に置こうとしたところ、バーベルの右手側がラックに収まらず落下して、右上腕二頭筋長頭筋腱断裂、右肩腱板損傷等の傷害を負い、約3ヶ月通院し、右肩可動域制限及び右上肢しびれから10級10号後遺障害を残し、練習補助を依頼していたジムのトレーナーWとジム経営会社を相手に約2724万円の損害賠償請求をしたものです。

○判決は、本件事故が発生した当時、原告が使用していたバーベルはラックの背に当たって跳ね返り落下したと認められるが、このようなバーベルの動きを考慮すると、原告が使用するバーベルは遅くともラックの背に当たった直後の段階で原告の手を離れていたと認められる…Wがこの段階でバーベルの位置を誘導し、あるいはバーベルをラックに戻す義務を負っていたとは認められない。また、上記のようなバーベルの働きから考慮すると、原告がバーベルを挙上してからバーベルが落下するまでの時間は僅かであったと考えられるが、この間にWが原告に声をかけ、あるいは自らバーベルを握る手に力を入れるなどしてバーベルを安全な位置まで誘導できたと認めるのは困難である」として、「Wが、本件事故の発生に際し前記注意義務を怠ったとは認められない」とWの注意義務違反を否認し、原告の請求を棄却しました。

○ベンチプレス練習者にとっては、大変、怖い事案ですが、限界重量に挑戦するときは、気をつけなければなりません。補助セーフティラックがあれば防げた事故のようにも思えますが、補助セーフティラックをつけていなかったのかどうかは不明です。

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主  文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由
第一 請求

 被告らは、原告に対し、連帯して2724万2962円及びこれに対する平成25年7月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、被告会社が営業するスポーツジムにおいてベンチプレス(仰向けの姿勢で胸の前からバーベルを挙上し胸筋等を鍛えるトレーニング方法。以下同じ。)をしていた原告が、ベンチプレスを終了する際の被告Wの補助の過失により落下したバーべルで負傷したとして、被告会社に対しては債務不履行又は使用者責任による損害賠償請求権に基づき、被告Wに対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、それぞれ2724万2962円及びこれに対する平成25年7月19日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。原告は、被告会社の債務不履行責任及び使用者責任に共通する請求原因として被告Wの上記過失を主張している。

1 争いのない事実等

         (中略)

第三 当裁判所の判断
1 争点(1)(被告Wの過失の有無)について
(1) 認定事実

 前記争いのない事実等のほか、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 被告Wは、平成21年4月に被告会社に入社し、平成23年頃から本件ジムのトレーナーとして勤務していた。被告会社は、被告Wを含むトレーナーに対し、本件ジムの利用者のベンチプレスを補助する際の方法として、ラックに置かれたバーべルのすぐ後ろの位置(べンチプレス用のベンチに横たわっている利用者の頭の先の位置)に立ち力の入りやすい姿勢をとること、利用者がバーベルをラックから外す際にバーベルのバーを両手で握ること、利用者がバーベルを上下させてラックに戻すまでの間はバーベルのバーを握った両手を開き気味にしてバーに両手を添えること、バーベルのバーを握る際には片方の手を順手に、もう片方の手を逆手に握ることを指導していた。

 被告Wは、本件事故が発生するまでトレーナーとして原告のベンチプレスを10回程度補助したことがあった。被告Wは、いずれの機会でも原告から手招きをされて補助に入り、被告会社の上記指導に従ってベンチプレスを補助したが、ベンチプレスの終了時にバーベルがラックから落下し、あるいは落下しそうになったことはなかった。

イ 被告Wは、本件事故の当日、原告から手招きをされて原告のベンチプレスの補助に入った。原告が使用するバーベルは160㌔㌘又は180㌔㌘であり、原告はバーベルを1回だけ挙上することを被告Wに伝えていた。被告Wは、ベンチプレスの開始時から原告がバーベルを挙上するまでの間、被告会社の指導する方法(前記ア)で原告が使用するバーベルのバーを握った。

 原告がバーベルを1回挙上し、両腕を伸ばしたままバーベルを頭の方向に水平移動させてラックに戻そうとしたところ、バーベルの左手側はラックに収まったが、バーべルの右手側がラックの背の上部に当たって跳ね返り、ホルダーの足側の爪の上端に当たって落下した。被告Wは、上記の間もバーベルのバーを軽く握っていた。

ウ 被告Wは、すぐにバーベルの右手側を握って持ち上げようとしたが重くて持ち上がらず、原告の右手側に回って落下したバーベルの右手側を両手で持ち上げた。

(2) 検討
ア 前記認定のとおり、原告は本件事故の当時160㌔㌘以上の重さのバーベルでベンチプレスをしていたところ、上記のバーベルの重量は、標準的な体格の成人男性の体重の2倍以上に相当し、成人男性であっても上から持ち上げたり下から支えたりすることを独力で容易にできるものではない。以上のほか、ベンチプレスにおける一般的な動作の内容、前記のとおり認められる原告の従前のベンチプレスにおける補助の状況及び本件事故当日に被告Wが原告のベンチプレスの補助に入った経過を併せ考慮すると、被告Wが本件事故当日の原告のベンチプレスの補助において負っていた注意義務は、原告のバーベルを下から支える力が不足した場合にこれを補い、あるいは原告がラックの位置を誤って認識している場合に声をかけるなどしてバーベルをラックまで誘導するというものであって、被告Wが原告の手から離れたバーベルを独力でラックに戻す義務まで負っていたと解することはできない。

イ そこで、被告Wが前記注意義務を怠ったかについて検討する。
 本件事故が発生した当時、原告が使用していたバーベルはラックの背に当たって跳ね返り落下したと認められるが(前記(1)イ)、このようなバーベルの動きを考慮すると、原告が使用するバーベルは遅くともラックの背に当たった直後の段階で原告の手を離れていたと認められる。前記アで述べたところによれば、被告Wがこの段階でバーベルの位置を誘導し、あるいはバーベルをラックに戻す義務を負っていたとは認められない。

 また、上記のようなバーベルの働きから考慮すると、原告がバーベルを挙上してからバーベルが落下するまでの時間は僅かであったと考えられるが、この間に被告Wが原告に声をかけ、あるいは自らバーベルを握る手に力を入れるなどしてバーベルを安全な位置まで誘導できたと認めるのは困難である。


 以上によれば、被告Wが、本件事故の発生に際し前記注意義務を怠ったとは認められない。事実確認書は被告Wの過失の内容を明示するものではないから、被告Wがこれに署名押印をしたことによっても上記認定は左右されない。

ウ なお、原告は、本件事故の直前に被告Wが視界から消えたと供述するが、被告Wはバーベルが落下した直後に原告の救助に当たっており(前記(1)ウ)、原告の近くにいたと認められるから、原告の上記供述を採用することはできない。また、原告は、本件事故当日のベンチプレスの開始時に、被告Wに「(バーベルを)取っちゃって」と伝えた旨供述するが、先に述べたとおり160㌔㌘のバーベルを成人男性が独力で持ち上げたり支えたりすることは困難であるから、上記供述にあるような発言があったこと自体認め難く、仮に同発言があったとしても、被告Wがバーベルを取ってラックに戻す義務まで負うとは認められない。

(3) 小括
 以上のとおりであり、被告Wに原告が主張するような注意義務違反があったとは認められない。

2 結論
 以上によれば、その余の主張について検討するまでもなく、原告の被告Wに対する請求及び被告会社に対する請求はいずれも理由がない。
 よって、原告の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成30年6月18日)   横浜地方裁判所第9民事部  裁判官 小松秀大
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