サイト内全検索
 

[全 8364頁] 本日 昨日累計
ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 7- 3-26(水):未成年者一時保護を理由に養育費支払判決を一部取り消した家裁審判紹介
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
○申立人と相手方は、平成19年5月1日に婚姻をしましたが、その後当事者間の離婚等請求控訴事件、離婚等反訴請求事件において、平成22年12月に、申立人と相手方とを離婚する旨の判決が言い渡され、判決は、相手方が未成年者を監護養育する前提で、未成年者の親権者を相手方と定め、申立人に対し判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月16万円の割合による養育費の支払を命じ、同判決は確定しました。

○ところが、未成年者は、令和3年9月15日以降、D児童相談所により一時保護されたことから、申立人は、相手方が未成年者を監護養育しなくなったことを理由に、令和3年9月16日以降の未成年者の養育費の定めを取り消すことを求めました。

○これについて、未成年者は、令和3年9月15日以降、D児童相談所により一時保護されており、家庭裁判所は、扶養関係に関する判決が確定した場合であっても、その判決の基礎とされた事情に変更が生じ、従前の判決の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には、事情の変更があったものとして、その取消し又は変更をすることができ、未成年者は、令和3年9月16日以降、相手方の監護養育下にないから、申立人が相手方に対し養育費を支払う必要はなく、上記の事情の変更が認められるとして、申立人の申立てを認容した令和4年8月26日横浜家裁審判(判タ1526号118頁)全文を紹介します。

○相手方が即時抗告し、抗告審は東京高裁は取り消しの始期について、一部変更していますので、別コンテンツで紹介します。

********************************************

主   文
1 当事者間の東京高等裁判所平成*年(ネ)第*号離婚等請求控訴事件,同第*号離婚等反訴請求事件について平成22年12月22日にされた判決主文第4項の申立人が相手方に対し支払うべき令和3年9月16日以降の未成年者の養育費の定めを取り消す。
2 手続費用は各自の負担とする。 

理由の要旨
第1 申立ての趣旨

 主文1項同旨

第2 当裁判所の判断
1 事実の調査の結果によれば、次の事実を認めることができる。
(1)申立人と相手方は,平成19年5月1日に婚姻をした。当事者間の東京高等裁判所平成*年(ネ)第*号離婚等請求控訴事件,同第*号離婚等反訴請求事件について,同裁判所は,平成22年12月22日,申立人と相手方とを離婚する旨の判決(以下「前件判決」という。)を言い渡した。前件判決は,相手方が未成年者を監護養育する前提で,未成年者の親権者を相手方と定め,申立人に対し判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月16万円の割合による養育費の支払を命じた。同判決は平成23年8月3日確定した。

(2)未成年者は,令和3年9月15日以降,D児童相談所により一時保護されている。

2 家庭裁判所は,扶養関係に関する判決が確定した場合であっても,その判決の基礎とされた事情に変更が生じ,従前の判決の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には,事情の変更があったものとして,その取消し又は変更をすることができる。

3 上記認定事実に照らすと,未成年者は,令和3年9月16日以降,相手方の監護養育下にないから,申立人が相手方に対し養育費を支払う必要はなく,上記の事情の変更が認められる。
裁判官 高谷英司
以上:1,384文字
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-25(火):マンション敷地崩落死亡事故に管理会社等の責任を認めた地裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > マンション法 > 「マンション敷地崩落死…」←リンクはこちらでお願いします
○判例時報2615号令和7年3月11・21日合併号にマンションの敷地の一部が崩落し、直下の市道を通行していた被害者亡Dが崩落に巻き込まれ死亡した事故について、通行人との関係で、マンションの管理会社及び同会社の従業員に本件事故の発生を防止する義務の違反があるとして不法行為責任を認めた令和5年12月15日横浜地裁判決(判時2615号○頁、判タ1524号229頁)が掲載されていましたので、関連部分を紹介します。

○マンション敷地崩落による死亡事故は珍しい事案ですが、被害者遺族とマンション管理組合との間には和解契約が成立し、組合から遺族である原告A(亡Dの義父)に3385万2521円、原告B(亡Dの実母)に6534万6862円、原告C(亡Dの妹)に80万0617円が支払われています。遺族は、組合和解金でも不足する損害として、マンション管理会社とその従業員に対し、原告Aが約2074万円、原告Bが約4003万円、原告Cが約49万円を請求して提訴しました。

○横浜地裁判決は、敷地崩落による死亡事故の発生を予見できたとして、被告管理会社らの過失責任を認めて、亡D自身の全損害を7429万4850円と認定し、その損害について原告らの法定相続分で相続承継した損害分に固有の慰謝料と弁護士費用・遅延損害金を付加した合計額から組合が支払った和解金を控除して、原告Aに約24万円、原告Bに約72万円、原告Cに約10万円を連帯して支払うようにマンション管理組合とその従業員に命じました。

*********************************************

主   文
1 被告らは、原告Aに対し、連帯して24万7008円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告Bに対し、連帯して72万2182円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、原告Cに対し、連帯して10万3025円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、これを50分し、その49を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
6 この判決は、第1項から第3項までに限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告らは、原告Aに対し、連帯して2073万7777円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告Bに対し、連帯して4003万0951円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、原告Cに対し、連帯して49万0451円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 本件は、原告らが、原告A及び原告Bの子である亡Dが別紙物件目録記載の建物(以下「本件マンション」という。)の敷地の一部である東北東向きの斜面地部分(以下「本件斜面地」という。)の一部の土砂の崩落に巻き込まれ死亡した事故(以下「本件事故」という。)について、以下のとおり請求するものである。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実
(後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の各事実が認められる。)

     (中略)

2 争点1(被告Eの不法行為責任の有無)について
(1)
ア 上記1及び前提事実を前提にすれば、以下の各事実を認定することができるので、被告Eについて、通行人である亡Dとの関係で、条理上、その生命、身体に生じる損害を防止する義務を負っていたということができる。
(ア)被告会社は、本件管理委託契約上、本件マンションの亀裂、瑕疵等の速やかな通知義務又は本件組合のため緊急性の高い業務を行う権限と義務を有していると認められる。
 したがって、被告会社は、本件斜面地の崩落の危険性を発見したときには、本件組合に生じる損害を防止する義務を負っている。
 被告Eは、被告会社の担当者として、上記義務を履行できた可能性の最も高い者である。

(イ)本件斜面地の直下を本件市道が走っていることや、本件斜面地が土砂災害警戒地域に指定されていたことを踏まえると、被告Eが、上記義務を履行しない場合、本件斜面地の崩落によって、亡Dを含む通行人に対してその生命、身体の安全を損なうこととなる重大な結果が発生する。

(ウ)被告Eが、本件市道を管理する逗子市に連絡して、通行禁止の措置を求めたり、自ら又はHをしてコーンを置いて通行人に注意を呼びかけたりする措置をとるなど事故発生を回避する措置をとることは可能であった。

(エ)亀裂に関する一般的な知見の存在及びそれに沿うHの認識を踏まえると、合理的な判断ができる通常人であれば、本件亀裂の存在、専門家に対する相談及び調査の不存在によって、亀裂発見から約22時間後の崩落の危険性が否定できないことを認識することができる。被告Eにおいても、本件亀裂の存在、専門家に対する相談及び調査の不存在を認識している以上、何らの根拠もなく何らの対応もしないことが不合理であることは容易に理解可能であるので、予見可能性がなかったとはいえない。

イ 被告Eは、上記義務を負っていながら、結果回避措置をとっていないので条理上の義務を怠ったものとして、過失責任を免れない。

(2)これに反する被告らの主張は以下のとおり採用できない。
ア 被告らは、本件斜面地に関して、本件管理委託契約上、いかなる管理業務も受託していない旨の主張をする。
 しかし、少なくとも上記1で認定した本件亀裂の通知義務又は緊急時における本件組合の損害発生回避義務は本件管理委託契約上認められているものと解されるので、上記主張は採用できない。

イ 被告らは、予見可能性の認識の対象として、本件斜面地の崩落事故が落石防止柵で防止できない程度の大規模であること、発見から約22時間後の短時間で発生すること、通行人の生命を奪う程度の重大な損害が生じることが必要である旨の主張をする。

 しかし、不法行為として過失責任を問うために必要な予見可能性の認識の対象としては、他人に権利侵害が発生する具体的おそれの認識で足りるというべきであり、それ以上の具体的な認識までは不要であると解される。
 本件の場合、一般的に亀裂が崩落の前兆と理解されていること、落石防止柵の存在を認識しているHが、令和2年2月15日まで猶予があるか判断しかねると回答していることを踏まえると、本件斜面地が崩落する具体的おそれは認識可能であると認められる。
 また、本件斜面地の高さが約15.9mメートルであることを踏まえると、本件斜面地の崩落によって他人の生命侵害が発生するおそれも認識可能と認められるので、過失責任を問うについて必要な予見可能性の認識は満たされているということができる。


 被告らの主張は、緊急性の認識可能性がなかったことをいうものであるが、過失責任を問うに必要なおそれの危険性の程度は、緊急であるまでの必要性はなく、行為時において結果発生防止策を命じるに足りる程度の具体性で足りるというべきであり、本件に即していえば、近い将来崩落するおそれの認識可能性で足りるというべきである。

ウ 被告らは、本件斜面地の崩落の具体的おそれの認識可能性はなかった旨の主張をする。主張に沿う証拠(丙4、6、11、12、証人H、被告E)がある。
 しかし、上記証拠のうち、H及び被告Eの供述を内容とするもの(丙11、12、証人H、被告E)は、利害関係人である被告会社の従業員が具体的おそれを認識していなかったことをいうにとどまり、認識可能性がなかったことを合理的に説明したものではない。上記証拠のうち、技術士等の資格を有する専門家の意見書(丙4、6)の内容は、本件亀裂のみによっては、崩落の時期が予見できないことをいうものであって、専門家に対する相談や調査の必要性を否定したものではなく、むしろ、専門家に対する相談や本件斜面地の調査をしていれば、直ちに崩落するおそれの認識可能性があったことをいうものと理解できるので、被告Eの予見可能性を否定するに足りるものではない。

 以上のとおりであり、上記証拠によっても、本件斜面地の崩落の具体的おそれの認識可能性は否定されない。

 また、本件亀裂が崩壊の前兆であり、本件亀裂についての専門家への相談及び本件斜面地の調査がなされていない以上、通常人であれば、直ちに崩落する危険性があることも認識可能というべきである。

3 争点2(被告会社の使用者責任又は不法行為責任の有無)について
(1)上記2のとおり、被告Eの不法行為責任が認められ、かつ、同人の不法行為は被告会社の業務執行の際に行われたものと認められるので被告会社は使用者責任を免れない。

(2)被告Eが不法行為責任を負うか否かにかかわらず,前提事実及び上記1の認定事実を前提にすれば、被告会社は、本件斜面地の直下を通行する通行人との関係においても、本件報告書の内容を確認して被告会社の従業員に対し本件斜面地の危険性を説明し、本件斜面地に亀裂を発見した場合には、速やかに結果回避措置をとるように予め指揮命令すべき条理上の義務があったと解される。 

 しかし、被告会社は上記義務を怠ったのであるから、被告会社自身の不法行為責任も免れない。

(3)これに対し、被告会社は、本件報告書の内容を確認すべき義務はなかった旨の主張をする。
 しかし、グローベルスが本件報告書を被告会社に交付した目的は、その内容を踏まえて適切な本件斜面地の管理を求める趣旨と解され、被告会社において、その趣旨を受領時に理解できなかったとは考え難い。本件管理委託契約が締結された経緯を踏まえると、被告会社において本件報告書の内容を確認すべき義務があったというべきである。

4 争点3(原告らの損害額)について
(1)亡Dの損害について
ア 治療費について

     (中略)

 上記アからオまでの小計は7429万4850円である。

(2)原告Aの損害額
ア 相続分
 原告Aの相続分は3分の1のため、2476万4950円(=7429万4850円×1/3)となる。
イ 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、亡Dを突然失った養父である原告Aの精神的苦痛は極めて大きいことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告A固有の慰謝料として165万円を認めるのが相当である。
ウ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記ア、イの合計2641万4950円の1割に相当する264万1495円をもって相当額と認める。
エ 小計 2905万6445円
オ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は504万3084円(=2905万6445円×0.05×(3+172/365))となる。
カ 和解金の充当
 原告Aは、和解金として3385万2521円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、24万7008円(=2905万6445円-(3385万2521円-504万3084円))となる。

(3)原告Bの損害額
ア 相続分
 原告Bの相続分は3分の2のため、4952万9900円(=7429万4850円×2/3)となる。
イ 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、亡Dを突然失った実母である原告Bの精神的苦痛は極めて大きいことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告B固有の慰謝料として165万円を認めるのが相当である。
ウ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記ア、イの合計5117万9900円の1割に相当する511万7990円をもって相当額と認める。
エ 小計 5629万7890円
オ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は977万1154円(=5629万7890円×0.05×(3+172/365))となる。
カ 和解金の充当
 原告Bは、和解金として6534万6862円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、72万2182円(=5629万7890円-(6534万6862円-977万1154円))となる。

(4)原告Cの損害額
ア 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、実妹である原告Cは、亡Dから特に面倒を見てもらっていたことなどから、同人を突然失ったことにより極めて大きな精神的苦痛を受けたことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告C固有の慰謝料として70万円を認めるのが相当である。
イ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記アの1割に相当する7万円をもって相当額と認める。
ウ 小計 77万円
エ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は13万3642円(=77万円×0.05×(3+172/365))となる。
オ 和解金の充当
 原告Cは、和解金として80万0617円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、10万3025円(=77万円-(80万0617円-13万3642円))となる。

5 結論
 よって、原告らの請求は、それぞれ上記4記載の元本及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないのでこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
横浜地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官 小西洋 裁判官 谷藤一弥 裁判官 門野亜美
以上:5,742文字
ホーム > 法律その他 > マンション法 > 「マンション敷地崩落死…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-24(月):映画”教皇選挙”を観て-残念ながら余り感動無し
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”教皇選挙”を観…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月23日(日)は、夕方、久しぶりにTOHOシネマズ仙台3番シアターで話題の映画「教皇選挙」を鑑賞しました。映画コムでは、「全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。」と解説されています。

○ローマ教皇の選挙は「コンクラーベ」というそうですが、日本語で「根比べ」と言われるほど長い時間がかかる選挙で、決まると選挙が行われる礼拝堂の煙突から白い煙が出されるとの知識はありました。最近、一時危篤の報道がなされた現在のフランシスコ教皇が、10数年前に選出されるときも長い時間がかかったとの報道があったように記憶しています。

○殆どが会話劇で途中眠くなるのではと思いましたが、鑑賞中は、誰が教皇に選出されるかハラハラの連続で、眠くはなりませんでした。最終的には、亡くなった教皇が死期を悟り、入念に時期教皇選出のシナリオを作った上で、シナリオ通りに選出されたとのレビューもありましたが、そこまでは気付きませんでした。最後は、反トランプ思想で製作されたのかと思わせるシナリオでしたが、それが何かは映画を観ての楽しみです。

○話題の映画だけあって観客席は7割程度埋まっていましたが、映画終了後のクレジット(エンドロール)が長々と続き完全終了して電気が付くまで、席を立つ人が殆ど居ませんでした。皆さん、感動の余韻に浸っていたのかも知れません。しかし、残念ながら、私自身は終わってみると余り映画の感動を感じませんでした。私の感性には合わなかったのかも知れません。

【アカデミー賞《脚色賞》受賞】映画『教皇選挙』予告|3月20日[木・祝]全国公開

以上:783文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”教皇選挙”を観…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-23(日):政治家の寄付禁止に関する公職選挙法・政治資金規正法条文備忘録2
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
○政治家とお金と言えば何と言っても金権政治家の権化と言われた田中角栄氏です。最も有名なエピソードは、若手議員が女性問題で100万円必要になり、派閥ボスに借りに行くも断られ、田中角栄氏に泣きつくと、角栄氏は現金300万円を手渡し、100万円で問題にケリをつけ、100万円で世話になった人にご馳走し、100万円をこれからのため取っておけ、全額返済無用と伝え、感涙した若手議員はそのまま田中派入りしたとの話しです。この若手議員は誰なのか100数十冊ある角栄本で調べたのですが、実名データは見当たりませんでした。

○ウィキペディア田中角栄解説には「福田派の福家俊一が入院した時、いち早く見舞いに訪れ、分厚い袋に500万もの金を入れて足元に忍ばせた。その後4回ほど田中は見舞いに訪れたが、その度に500万を忍ばせていたという。福家は以後、田中の批判をしなくなった。」とのエピソードが記述されています。

○角栄氏にはこの手の話しは山ほどあり、自民党他派閥だけでなく、対立する野党の政治家にもお金を配っていたとの話しは、角栄本の中に山ほど記載されています。角栄氏が衆議院議員になったのは1947(昭和22)年、1957(昭和32)年郵政大臣、1962(昭和37)年大蔵大臣、1972(昭和47)年内閣総理大臣と出世しましたが、この300万円のエピソードは、昭和30~40年代の話しと思われます。2025(令和7)年からは60年も前の話しで、300万円の価値はその3倍くらいはあった時代かも知れません。

○角栄氏には、数百万円単位のお金、今の時代なら数千万円単位になるかも知れないお金を他の議員や官僚に渡していたとのエピソードが山ほどあり、おそらく実際の話と思われますが、贈与税問題や政治資金規正法問題は、角栄本には全く記述されていません。公にはならない藪の中の話しだからですが、この田中角栄氏のエピソードに比べたら、現在の石破首相の10万円商品券問題なんて問題にする方がおかしいなんて考え方もあるかも知れません。

○以上の角栄氏のエピソードから寄附を規制した政治資金規正法ができたのは昭和50年代以降かと思っていました。しかし、ウィキペディア解説では、「本法は、第二次世界大戦後の混迷した政治情勢のもと現出した政治腐敗と群小政党の乱立に対処するため、GHQの指導により1948(昭和23)年に制定された。当初、内務省が政党法の立案を試みたが成案に至らず、その後国会での各党間での協議を経て、最終的にアメリカ合衆国の腐敗行為防止法をモデルとする政治資金規正法として成立した。制定当初は政治資金の収支の公開に主眼が置かれ、寄附の制限は設けられていなかった。」とされています。

○その後、「しかし、田中金脈問題を契機として、1975(昭和50)年に全面的な改正が行われた(三木内閣時)。この時、はじめて寄附の制限が導入され、同時に政治団体の収支公開も強化された。」と説明されており、前述の角栄氏の金配りは、当時、政治資金規正法「寄附」規制はなく、違法ではなかったようです。
以上:1,265文字
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-22(土):政治家の寄付禁止に関する公職選挙法・政治資金規正法条文備忘録
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
○石破首相が新人議員に10万円商品券を渡した行為が、政治資金規正法あるいは公職選挙法で禁止されている寄付に該当するかどうかが問題となり、連日、報道されています。刑事事件を扱わない民事弁護士実務で、政治資金規正法あるいは公職選挙法を読む機会はありませんが、法律専門家備忘録として条文を確認します。

○政治家の寄附で問題になるのは選挙区民に対する寄附の禁止で、政治家は選挙区民に対しては、政治家本人が出席する結婚披露宴祝儀・葬式香典以外の寄付は一切禁じられています。たまに問題とされる秘書が出席しての政治家としての寄付は公職選挙方違反行為です。秘書が秘書名義で祝儀・香典を出すのは問題ありませんが、政治家の代理出席として政治家名義で祝儀・香典を出すのは公選法違反行為になります。

○石破首相の10万円商品券問題は、新人議員への贈呈なので、公選法規制寄付には該当しませんが、政治活動に関する贈呈と評価され、渡した石破首相、受け取った新人議員いずれも政治資金規正法違反として1年以下の禁錮こ又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。石破首相は政治活動ではなく、お土産で公選法違反ではないと主張していますが、微妙なところです。受け取った新人議員は受け取った時点で違法な受領行為となりますが、直ぐに返していますので、大目に見られるでしょう。

○「寄附」とは、政治資金規正法では「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」と、公職選挙法では「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」と定義されています。

*********************************************

公職選挙法
第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)

 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならないただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第199条の5第4項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。

第249条の2(公職の候補者等の寄附の制限違反)
 第199条の2第1項の規定に違反して当該選挙に関し寄附をした者は、1年以下の禁錮こ又は30万円以下の罰金に処する。
2 通常一般の社交の程度を超えて第199条の2第1項の規定に違反して寄附をした者は、当該選挙に関して同項の規定に違反したものとみなす。
3 第199条の2第1項の規定に違反して寄附(当該選挙に関しないもので、かつ、通常一般の社交の程度を超えないものに限る。)をした者で、次の各号に掲げる寄附以外の寄附をしたものは、50万円以下の罰金に処する。
一 当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀の供与
二 当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む。以下この号において同じ。)に自ら出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む。以下この号において同じ。)の供与又は当該公職の候補者等が葬式の日(葬式が二回以上行われる場合にあつては、最初に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与

*********************************************
政治資金規正法
第21条の2(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)

 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。

第21条の3(寄附の総額の制限)
 政党及び政治資金団体に対してされる政治活動に関する寄附は、各年中において、次の各号の区分に応じ、当該各号に掲げる額を超えることができない。
一 個人のする寄附
 2000万円

第22条の2(量的制限等に違反する寄附の受領の禁止)
 何人も、第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は前条第1項若しくは第2項の規定のいずれかに違反してされる寄附を受けてはならない。

第22条の8(政治資金パーティーの対価の支払に関する制限)
 政治資金パーティーを開催する者は、一の政治資金パーティーにつき、同一の者から、150万円を超えて、当該政治資金パーティーの対価の支払を受けてはならない。

第26条 次の各号の一に該当する者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、1年以下の禁錮こ又は50万円以下の罰金に処する。
一 第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は第22条第1項若しくは第2項の規定に違反して寄附をした者
二 第21条第3項の規定に違反して寄附をすることを勧誘し、又は要求した者
三 第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者
以上:2,431文字
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-21(金):映画”ジョーズ”を観て-ネタバレですが凄い映画を堪能
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ジョーズ”を観…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月20日(木)春分の日は、午後、最近購入したばかりの4KUHDソフトで映画「ジョーズ」を鑑賞しました。映画「ジョーズ」は、私が大学を卒業した1975(昭和50)年製作で映画コムでは「製作当時、弱冠27歳だったスティーブン・スピルバーグが、ピーター・ベンチュリーの同名小説を映画化し、大ヒットとなった海洋パニック。」と説明されている、超有名映画です。私は、LDは購入しませんでしたが、DVDとBD版は購入して鑑賞し、TVでも繰り返し放映されたものも鑑賞していました。

○20数年ぶりの鑑賞でしたが、人食い鮫が現れた島の警察署長が海洋学者フーパーと荒くれ者の地元の漁師クイントとともに、独断でサメ退治に乗り出すまでのストーリーは忘れており、記憶力の衰えに、ガックリでしたが、警察署長・海洋学者・荒くれ者漁師の3人で、漁師が所有する小さな船で、巨大鮫と死闘を繰り返し、漁師が巨大鮫の餌食となり、最後に巨大鮫を爆破するクライマックスシーンと生き残った2人が陸に向かう最後のシーンはよく覚えていました。

○天才スピルバーグ氏が、25歳で監督デビュー作映画「激突!」を製作した2年後の映画ですが、弱冠27歳でこんな凄い映画を撮影する天才ぶりがよく分かる映画です。スピルバーグ氏はこの映画で一流監督の仲間入りをして、その後、次々と歴史に残る名作映画を撮り続けたことは周知の通りです。当初は、せいぜい海面から背びれだけを出して見せて、巨大鮫の姿は見せずに恐怖感を煽る技術は流石です。さらに後半になって姿を現す巨大鮫は、CGやSFX等デジタル技術の無かった時代なので、実際の作り物と思われますが、それでも如何にも、生きた本物の様に見せる撮影の仕掛けは凄いの一言です。

○50年前の製作でも4KUHD化した映像は、ちと荒さは感じますが、まずまず綺麗に仕上がっており、後半の死闘シーンは繰り返し鑑賞したいと思っています。

映画「ジョーズ/JAWS」(1975)予告編

以上:820文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ジョーズ”を観…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-20(木):RU令和7年3月例会映画”天国と地獄”鑑賞会報告ネタバレあり
ホーム > 九士会・RU > RU開催記録 > 「RU令和7年3月例会…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月19日(水)は、RU(ライジングアップ)例会で、映画鑑賞イヤーと決めた令和7年最初の映画鑑賞日で、黒澤明監督の名作映画「天国と地獄」を参加者7名で鑑賞しました。映画「天国と地獄」は1963(昭和38)製作の映画で、小学校低学年から映画好きでほぼ毎週のように当時気仙沼市三日町にあった東映劇場、南町にあった旭劇場(東宝作品上映映画館)、内ノ脇にあった名前は忘れましたが大映・日活映画を上映する映画館に通ったものでした。

○一番多く通ったのは南町の旭映画劇場で、昭和30年代の黒澤映画はここで封切りを鑑賞しており、映画「天国と地獄」も最初に鑑賞したのは旭劇場での封切りでした。しかし黒澤明監督作品映画「用心棒」や映画「椿三十郎」ほど印象は残っていません。おそらく平成10年頃DVDも購入していますので、その頃再鑑賞していたはずですが、「映画”天国と地獄”を観て-少々ネタバレしますが結構面白い」記載のとおり、令和5年6月11日(日)に4UHDソフトで3回目の鑑賞をしていました。

○令和7年3月からはほぼ1年9ヵ月前に鑑賞しているのに、細かいストーリーの半分くらい忘れているのには、ガッカリでした。令和5年の鑑賞では、「子供が解放されて主人公権藤金吾役の三船敏郎氏が懸命に走って子供と抱き合うシーンには感動で涙がウルウルでした」が、今回の鑑賞ではこの場面で涙が全く出ませんでした。感動のレベルは、鑑賞時の精神状態等で相当異なることが判りました。令和5年の鑑賞ではストーリー展開に自然に感情移入できたのですが、今回の鑑賞では、前半、主人公権堂邸での遣り取りに、少々違和感を感じた箇所もあり、感情移入の程度が弱く感じました。

○今回感心したのは後半で、緻密で且つ膨大な捜査活動によって徐々に犯人の居所が絞られ、最後は誘拐された子供の記憶に基づく誘拐過程で見た風景の絵や犯人の似顔絵がヒントになって犯人特定に至るまでの過程です。特別捜査本部を設置して大量の捜査員が投入され、仲代達矢氏演ずる捜査責任者の捜査員への適切な指示と大人数での捜査会議の積み重ねで犯人を特定しますが、特定した後に逮捕に至るまでの、マスコミ報道まで利用しての過程も見事でした。犯行は悪質極まり、誘拐罪での懲役15年の刑で済まされる事案ではないと3件の殺人まで立件する執念は感動モノです。

○鑑賞後、30分程、参加者の感想を披露して貰いましたが、やはり人それぞれで、映画の楽しみも人それぞれと実感しました。
以上:1,031文字
ホーム > 九士会・RU > RU開催記録 > 「RU令和7年3月例会…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-19(水):債権者名簿に記載の無い債権について非免責債権とした地裁(控訴審)判決紹介
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「債権者名簿に記載の無…」←リンクはこちらでお願いします
○2年前に破産開始決定手続して免責決定を受けたお客様から、裁判所から差押決定書類が届いたとの連絡があり、その書類を持参して事務所に来て貰いました。するとお客様には全く知らない金融機関3社を第三債務者とする債権差押決定書を持参してきました。差押債権者名は債権回収会社で5年前に督促手続での債務名義を取得するも差押手続も取られなかったためお客様はスッカリ失念し、2年前の破産手続の際、債権者に上げていませんでした。

○破産手続での免責決定の効力は、以下の破産法規定により、破産手続の際債権者姪御に記載しなかった債権者は原則として非免責債権となり、免責決定の効力が及びません。
破産法第253条(免責許可の決定の効力等)
 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  (中略)
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)


○そこで、破産手続での債権者名簿記載漏れについて判断した裁判例を探したところ、平成29年7月6日東京地裁判決(LEV/DB、控訴審)がありましたので紹介します。事案は、被控訴人が、控訴人との間で行っていた金銭消費貸借取引の貸付金残金に関し、控訴人との間で和解契約を締結したと主張して、控訴人に対し、和解契約に基づき、和解金残金及び遅延損害金の支払を求め、原審簡易裁判所が、和解契約の締結及び本訴請求債権が非免責債権であることを認め、被控訴人の請求を認容し、控訴人が控訴したものです。

○控訴審東京地裁判決は、破産法253条1項6号は、破産者が「知りながら」債権者名簿に記載しなかった請求権を非免責債権とする旨規定しているが、債権者名簿に記載されなかった債権について、その成立については了知していた破産者が、債権者名簿作成時には同債権の存在を失念して記載しなかった場合、そのことについて過失が認められるときには免責されず、過失が認められないときには免責されると解することが相当であるところ、被控訴人の和解契約に基づく和解金請求権の記載漏れには、過失が認められ、非免責債権に当たり、控訴人は免責決定によって免責されないとしました。

○前記お客様の例の様に、破産手続の3年前に支払督促命令が確定するも、それに基づく差押手続が3年間なされず、且つ、催告もないため忘れていたような場合に債権者名簿に記載しなかった場合、過失ありと評価できるかどうかは、この東京地裁判決の事案と比較すると、微妙なところです。一般的な金融機関は、免責の効力を否定しても、現実的に債権を回収できる見込みがないため、自社の債権が債権者一覧表に記載されておらず、かつ、破産手続きの開始を知らなかった場合でも免責の効力を受け入れることが多いようです。しかし債務名義を取っていた場合には、請求異議訴訟が提起されない限り、非免責債権と主張すると思われます。

*********************************************

主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は,被控訴人が,控訴人との間で行っていた金銭消費貸借取引の貸付金残金に関し,控訴人との間で和解契約を締結したと主張して,控訴人に対し,和解契約に基づき,和解金残金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。控訴人は,和解契約の締結を否認したほか,抗弁として破産免責を主張したのに対し,被控訴人は,本訴請求債権が非免責債権に当たると主張した。
 原審は,和解契約の締結及び本訴請求債権が非免責債権であることを認め,被控訴人の請求を認容したため,控訴人が請求の棄却を求めて控訴をした。

2 前提となる事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠又は弁論の全趣旨によって認定することができる。)
(1)被控訴人は,貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)控訴人は,被控訴人との間で,平成16年7月8日,継続的に金銭の借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借に係る基本契約を締結した(甲1。以下「本件基本契約」という。)。
(3)控訴人は,名古屋地方裁判所に対して破産手続開始の申立てをし,同裁判所は,平成27年8月21日,控訴人について破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定をし,同年10月30日,控訴人について免責許可決定(以下「本件免責決定」という。)をした(乙1,2)。
(4)控訴人は,上記(3)の破産手続において提出した債権者名簿(破産法248条5項により債権者名簿とみなされる債権者一覧表。以下同じ。)に被控訴人を記載しなかった(乙3)。

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)和解契約の締結

     (中略)

(2)破産法253条1項6号該当性
(被控訴人の主張)
ア 破産法253条1項6号は,債権者名簿に失念による記載漏れがあった請求権については,失念につき過失の有無にかかわらず,免責の効力が及ばないと解すべきである。したがって,本件和解契約に基づく請求権は破産法253条1項6号の「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」に当たり,破産免責の効力は同請求権には及ばない。
イ 仮に,破産法253条1項6号の要件として債権者名簿に記載しなかったことについて過失の存在が要件となるとしても、債権者名簿に記載された債権者らと控訴人との取引はいずれも平成16年から平成17年までに開始されているところ,被控訴人からの借入れも平成16年7月でほぼ同時期であること,被控訴人が,本件和解契約締結後,定期的に控訴人に催告書を送付していたこと等に照らせば,被控訴人を債権者名簿に記載しなかったことは,控訴人の過失によるものと評価すべきである。

(控訴人の主張)
ア 破産法253条1項6号に該当するといえるためには,形式的に債権者名簿に記載されていないという事実だけは足りず,破産者側の事情を十分に考慮した上,平均的な破産者を基準に,債権者として挙げることを失念し,債権者名簿に記載しなかったことが無理もないと評価できる場合には同号の適用はないというべきである。 
イ 控訴人は,平成16年頃から平成17年頃までに,生活苦のため複数の借入先から借金をした。その後平成17年6月に現住居地へ転居し,請求があった債権者に対しては支払等の対応をしてきた。しかし,平成26年9月にがんが発覚し,入院,手術を経て生活保護受給開始となり,就労不能の状態で返済見込みが全くなくなったために破産申立てに至った。平成24年9月以降,被控訴人から控訴人に対して督促がされていなかったこと及び同年頃以降控訴人ががんによる体調不良に苦しんでいたことを踏まえれば,被控訴人を債権者名簿に記載しなかったことについて,控訴人には過失がなかったと判断すべきである。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について

(1)証拠(甲2,4,8,9)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件基本契約に基づく借入債務について,平成18年8月29日に1万2000円を返済してから返済を怠っていたこと,被控訴人担当者が平成24年8月27日に控訴人の勤務先に電話したところ,控訴人は離席していたが,同日中に折り返し被控訴人に電話し,名古屋に引っ越してきて娘の面倒をみている,清掃業のパートをしている,勤務先には電話をしないでほしい,娘の協力を得て月々1万は返済する,初回9月3日から毎月1万円を45回(総額45万円)支払う,初回分は極力31日に返済する,などと述べたこと,同年8月27日頃,控訴人の被控訴人に対する残債務を確認し,同年9月3日から平成28年5月6日まで月々1万円を支払う内容の控訴人の署名のある本件契約書が作成されたこと,控訴人は,平成24年8月31日に被控訴人に対して1万円を支払ったが,同年10月3日に分割金の支払を怠り,同日の経過により期限の利益を喪失したことがそれぞれ認められる。

(2)これに対し,控訴人は,平成24年8月27日に被控訴人担当者と電話をしたことはなく,本件契約書への署名も同月31日の弁済もしていないと主張しており,控訴人作成に係る陳述書(乙6)にはこれと同趣旨の記載が存する。しかしながら,証拠(甲1,2)によれば,本件契約書中の控訴人の署名と本件基本契約の契約書中の控訴人の署名は酷似していることが認められる上,証拠(甲8,9)によれば,平成24年8月27日の電話の際に被控訴人担当者が作成した電磁的記録には,当時の控訴人の生活状況(長野県から名古屋市に引っ越したこと,娘も名古屋市にいること,清掃業のパートをしていること)等が記録されていることが認められるところ,その内容は,控訴人自身の本訴における陳述(乙4,6)に符合するものであり,被控訴人担当者がこれらを記録できたのは,電話で控訴人の話を聞いたからにほかならないと解されること,被控訴人の業務上作成している顧客取引リスト(甲4)には,平成24年8月31日に控訴人から1万円の返済を受けたことが記録されていること等に照らすと,控訴人の上記陳述書の記載は信用性に欠けるといわざるを得ず,他に上記(1)の認定を覆すに足りる証拠はない。

(3)以上によれば,平成24年8月27日頃,被控訴人と控訴人との間で本件和解契約が締結された事実を認めることができるというべきである。

2 争点(2)について
 破産法253条1項6号は,破産者が「知りながら」債権者名簿に記載しなかった請求権を非免責債権とする旨規定しているが,同号の趣旨は,債権者名簿に記載されなかった債権者は,破産手続の開始を知らなかった場合に免責に対する異議申立ての機会を失うことになるから,債権者名簿に記載されなかった債権を非免責債権とし,かかる債権者を保護しようとするものである。

他方,破産免責の制度が,不誠実でない破産者の更生を目的とするものであることからすれば,債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると,債権者名簿に記載されなかった債権について,その成立については了知していた破産者が,債権者名簿作成時には同債権の存在を失念して記載しなかった場合,そのことについて過失が認められるときには免責されず,過失が認められないときには免責されると解することが相当である。

 上記1のとおり,本件和解契約の締結が認められることからすれば,控訴人は被控訴人の本件和解契約に基づく和解金請求権について,その成立は了知していたというべきである。そして,証拠(甲4)によれば,本件和解契約以前の事情として,控訴人は,平成16年7月11日から平成17年8月5日までの間,被控訴人から15回の借入れを行い,平成18年8月29日まで毎月返済を行い,同日時点で22万9478円の残元金が存したことが認められる上,本件和解契約に関して,上記1認定のとおり,平成24年8月27日に控訴人が被控訴人担当者と電話で話をしたこと,本件和解契約に従って控訴人が初回の支払をしたこと,さらに,本件和解契約が締結されてから控訴人の破産申立てまではおよそ3年程度しか経過していないこと等に照らせば,控訴人が債権者名簿作成時に本訴請求債権の存在を失念して記載しなかったのだとしても,控訴人には過失が認められるというべきである。

 控訴人は,本件和解契約に基づく控訴人の債務について督促がされていなかったことや控訴人ががんを患っていたことを主張して過失を争うが,督促については,そもそもその有無自体に争いが存するものの,いずれにせよそれによって本件の結論は左右されないというべきであるし,控訴人の体調不良についても,被控訴人との関係で破産者の責めに帰することができないような事情があったとまではいえない。
 したがって,被控訴人の本件和解契約に基づく和解金請求権は,非免責債権に当たり,控訴人は本件免責決定によって免責されない。

3 争点(3)について
 控訴人は,被控訴人が本件和解契約に基づいて和解金を請求することは信義則に反して許されないと主張する。しかし,消滅時効期間が経過している債務について,債務者が時効を援用する前に和解契約を締結することは,債権者においてたとえそのことを認識していたとしても直ちに信義則に反するということはできないし,上述のような本件和解契約締結の経緯からすれば,本件和解契約について,控訴人の真意に基づかないものであったとか,被控訴人がそのことを認識していたとは認められない。その他本件全証拠によっても,被控訴人の請求が信義則に反すると認めるに足りる事実は認められない。

4 結論
 よって,被控訴人の請求には理由があり,被控訴人の請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第37部
裁判長裁判官 上田哲 裁判官 波多野紀夫 裁判官 森沙恵子
以上:5,503文字
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「債権者名簿に記載の無…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-18(火):社債利息について利息制限法適用はないとした地裁判決紹介
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「社債利息について利息…」←リンクはこちらでお願いします
○「社債利息について利息制限法適用はないとした最高裁判決紹介」の続きで、その第一審平成30年7月25日東京地裁判決(最高裁判所民事判例集75巻1号12頁)全文を紹介します。

○破産者株式会社Cの破産管財人である原告が、被告は甲に対して社債購入名下に計2000万円を貸し付け、甲から利息制限法所定の上限を超える約定金利で弁済を受けたと主張して、不当利得返還請求権に基づき、同法所定の上限を超える利息相当額約315万円のの支払いを求めました。

○これに対し、東京地裁判決は、利息制限法は金銭消費貸借契約に適用されるところ社債発行は、金銭消費貸借とは異なる規律で両者は性質が異なり、また利息制限法の趣旨は、金融の面における経済的弱者の保護にあるところ、社債発行会社は経済的弱者とは認められず、社債に利息制限法が適用されると解すると、社債発行会社の自由な資金調達が阻害されるおそれがあり、社債に利息制限法を適用すべき事情はないので、社債の利息の支払いに利息制限法は適用されないとして、原告の請求を棄却し、平成31年1月31日東京高裁も同じ結論でした。

*********************************************

主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、315万4860円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、破産者である株式会社Z(以下「Z」という。)の破産管財人である原告が、Zにおいて、被告がZに対して社債購入名下で貸し付けた2000万円を利息制限法所定の金利の上限を超える約定金利で弁済したため、過払金が生じ、また、被告は悪意の受益者であると主張して、被告に対し、Zの被告に対する不当利得返還請求権に基づき、315万4860円及びこれに対する最終弁済日の翌日である平成27年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める事案である。

2 前提事実等(当事者間に争いがないか、又は後掲の各証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者等
ア 原告は、Zの破産管財人である(甲1)。
イ Zは、投資に関するシステム開発等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
ウ 被告は、Zから社債を引き受けた者である(弁論の全趣旨)。

(2)社債の引受け
 被告は、Zが発行した社債(以下「本件社債」という。)を合計2000万円引き受け、平成24年6月28日に1000万円、同年7月24日に1000万円を支払った(甲2の1、2の2、弁論の全趣旨)。

(3)Zによる弁済
 Zは、被告に対し、本件各社債に関し、別紙計算書の「弁済額」欄記載のとおりの額を支払った(甲2の3~2の36、3、弁論の全趣旨)。

(4)Zの破産手続開始決定
 東京地方裁判所は、平成28年4月13日午後5時、Zの破産手続開始決定を行い、原告が破産管財人に選任された(甲1)。

3 争点
(1)社債に利息制限法が適用されるか(争点1)
(2)被告は悪意の受益者であるか(争点2)

4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(社債に利息制限法が適用されるか)について
(原告の主張)
 次の理由からすれば、社債に利息制限法が適用され、金利の上限が年利15%となる結果、Zに過払金が生じている。
ア 社債は、会社法676条各号に掲げる事項に従って債務者である会社が社債権者に対し払込金額を償還する契約であるから、金銭消費貸借契約ないしそれに類似する契約に該当する。なお、本件社債は、不特定多数の投資家を対象に募集される公募債ではなく、特定少数の投資家を対象とする私募債であるから、社債としての側面を殊更強調する必要はない。

イ 利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借における利息の契約全般を対象としており、契約当事者による区別をしていないため、当事者の属性により適用の有無を区別すべきではない。また、利息制限法は、過剰な投機を抑えて金融取引の安定性を維持する側面もあり、消費者保護のみを目的とする法律ではない。

ウ 本件は、社債を発行したZが破産した事案であり、被告のような多大な利息を取得した社債権者がいる一方、破産直前に社債を引き受けたためほとんど利息を収受できず、元本の回収も未了の社債権者が多数おり、債権者平等の観点からも利息制限法の適用があると解すべきである。

(被告の主張)
 次の理由からすれば、社債に利息制限法は適用されず、Zに過払金は生じていない。
ア 利息制限法は、消費貸借契約上の利息に適用される法律であるところ、社債は消費貸借であるとはいえない。

イ 利息制限法は、一般消費者保護を目的として制定された法律であるところ、社債に利息制限法が適用されるとすると、一般消費者としての立場も有する社債権者を犠牲にして会社を保護することとなり、利息制限法の趣旨に合致しない。

ウ 消費貸借契約は、債権者と債務者の交渉により契約締結に至ることから、交渉過程で債権者が債務者の窮状に乗じることにより、債務者にとって不本意な利率に決まる可能性があり、債務者を保護する必要がある。これに対し、社債は、債務者である会社が、資金調達のために自ら利率等の条件を決めるものであるから、債務者保護の必要性はない。むしろ、社債に利息制限法が適用されるとなると、会社の多様な資金調達が阻害され、会社にとっても不利益となる。これらのことは、社債が私募債であるか否かに左右されない。

エ 利息制限法に高金利そのものを規制する趣旨があるとしても、それは副次的な機能にすぎない。

オ 原告の主張する債権者平等の観点と利息制限法の適用の有無については関係がなく、社債を引き受けた時期によって異なる取扱いをすることはかえって公平を害するものであるし、被告は債権者平等に反する行為を行っていない。

カ Zは、高利率の社債を発行したからこそ資金調達のメリットを享受できたのであって、原告が利息制限法の適用を主張することは、信義則に反する。

(2)争点2(被告は悪意の受益者であるか)について
(原告の主張)
 原告は、利息制限法所定の金利の上限を超える金利による利息であることを認識した上で、Zから約定利息での支払を受けており、悪意の受益者に該当する。

(被告の主張)
 争う。

第3 争点に対する判断
1 争点1(社債に利息制限法が適用されるか)について

(1)利息制限法は、「金銭を目的とする消費貸借における利息」の利率を一定限度に制限している(同法1条柱書)。他方、社債は、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう(会社法2条23号)ところ、これは一面では会社の借入金としての性質を有するものである。

 しかしながら、社債の引受けを申し込んだ者は社債発行会社による割当てによって社債権者となるところ(会社法680条1号)、社債発行会社は、割当てを受ける者を定め、その者に割り当てる募集社債の金額及び金額ごとの数を定めることができ、割り当てる募集社債の金額ごとの数を申込者が引き受けようとする数よりも減少することもできること(同法678条1項)、また、債務の成立に払込みを要しないこと(同法676条10号)、分割による払込みも認められること(同条12号、会社法施行規則162条1号)、額面未満の発行も認められること(同法676条9号)など、返還約束及び約定金額の金銭の授受をもって効力を生ずる金銭消費貸借契約(民法587条)とは法律上の規律を異にしている。

 さらに、社債権者は、社債権者集会の決議を経て、資本金の減少等に対する異議を述べることができる(会社法740条1項)など、社債権者には、会社法の規定により、単に会社に対して金銭債権を有する者とは異なる権限が付与されている。
 したがって、両者は法的性質を異にするものであると考えられる。

(2)また、利息制限法の趣旨は、金融の面における経済的弱者の保護にあるところ(乙6)、金銭消費貸借契約においては、債権者が債務者の窮状に乗じることにより、債務者にとって不本意な高利率になる可能性があり、経済的弱者である債務者を保護する必要があるといえる。しかしながら、債務者である社債発行会社が類型的に経済的弱者であるとは認められないこと、社債発行会社は、資金調達の必要性や引受けの見込み等の諸般の事情を踏まえ、利率も含めて自ら社債の内容を設定するものであること、社債に利息制限法が適用されると解すると、社債発行会社の自由な資金調達が阻害されるおそれがあり、また、一般消費者も含まれ得る社債権者の利益を犠牲にして、債務者である社債発行会社を保護することになることからすれば、社債に利息制限法を適用すべき事情があるということもできない。

(3)以上からすれば、社債をもって、利息制限法にいう「金銭を目的とする消費貸借」に該当するということはできず、社債の利息の支払について利息制限法は適用されないというべきである。そして、このことは、本件社債が特定少数を対象とする私募債であるか否かによって左右されない。

(4)
ア 原告は,利息制限法には、過剰な投機を抑えて金融取引の安定性を維持する側面もあると主張する。 
 しかしながら、利息制限法は、同法所定の制限利率を超える利息について私法上の効力を認めないことによって経済的弱者を保護するものであるから、利息制限法の規定による金融取引の安定性については、それ自体実効性がある機能として位置付けられているものであるとはいい難く、原告の主張は採用することができない。

イ また、原告は、本件において、債権者平等の観点からも社債に利息制限法を適用すべきであると主張する。
 しかしながら、Zの発行する社債を引受けた時期によって社債権者の回収可能金額が異なるという原告が主張する不均衡は、利息制限法の趣旨や機能と関係があるとはいい難く、原告の主張は採用することができない。

2 まとめ
 以上の次第で、社債の利息の支払に利息制限法は適用されないから、その適用があることを前提としてZに過払金が生じているとする原告の主張は採用できず、Zの被告に対する不当利得返還請求権は認められない。

第4 結論
 よって、その余の点について検討するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 竹内努 裁判官 浅海俊介 下山雄司

(別紙)〈略〉
以上:4,368文字
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「社債利息について利息…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-17(月):社債利息について利息制限法適用はないとした最高裁判決紹介
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「社債利息について利息…」←リンクはこちらでお願いします
○社債の返還請求について相談を受けていますが、その利息が利息制限法違反の高利息でした。社債を募集するため高く設定したと思われます。長い弁護士生活の中で、社債の返還請求の相談は、初めてでしたので社債利息制限法が適用されるかどうか裁判例を調査しましたところ、令和3年1月26日最高裁判決(判時2495号25頁)を見つけましたので紹介します。事案は以下の通りです。

○破産者C社(投資に関するシステム開発会社)の破産管財人である上告人が、C社がその発行した社債について社債権者である被上告人に利息制限法1条所定の制限を超えて利息として支払った金額を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して、被上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、約315万円の過払金の返還等を求めました。しかし、一審・控訴審ともに、社債には利息制限法1条の規定は適用されないから、本件社債にも同条の規定は適用されないと判断して、上告人の請求を棄却しました。

○そこで上告人が上告しましたが、最高裁も、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないとし、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却しました。

○社債とは、企業が発行する債券で、投資家が発行企業に資金を出資し、企業は満期になったら元本と約束された利息を付けて償還するものですが、企業が倒産したら元本も返還されません。平均利息は3%以下とされており、利息制限法での制限利息100万円以上で年15%を越えるような社債は、資金繰りに苦しむ企業が金集めのために高利息で吊るものであり、倒産の危険が高いと判断し、手を出さない方が賢明です。

********************************************

主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,破産者株式会社CFSの破産管財人である上告人が,CFSがその発行した社債について社債権者である被上告人に利息制限法1条所定の制限を超えて利息として支払った金額を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還等を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)CFSは,投資に関するシステムの開発等を業とする株式会社である。

(2)CFSは,投資に関する新たなシステムの開発等に要する資金を調達するため,会社法676条各号に掲げる事項(以下「募集事項」という。)を定めて,その発行する社債を引受ける者の募集をした。
 上記募集に応じて社債の引受けの申込みをした被上告人は,CFSからその割当てを受け(以下,被上告人が割当てを受けた社債を「本件社債」という。),平成24年,本件社債の募集事項に従って,2000万円を払い込み,平成27年までの間,CFSから,第1審判決別紙計算書のとおり,利息制限法1条所定の制限利率を超える利率の利息の支払及び社債の償還を受けた。

(3)CFSは,平成24年3月から平成27年11月にかけて,本件社債を含め,合計203回にわたり,社債権者をそれぞれ1名として社債を発行したが,そのほとんどは,利息制限法1条所定の制限利率を超える利率の利息を定めたものであった。

(4)CFSは,平成28年4月,破産手続開始の決定を受けた。

3 原審は,事実関係のいかんにかかわらず、社債には利息制限法1条の規定は適用されないから,本件社債にも同条の規定は適用されないと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

4 所論は,社債にも利息制限法1条の規定が適用されるから,本件社債に同条の規定が適用されないとした原審の判断には,同条の解釈適用の誤りがある旨をいうものである。 

5 利息制限法1条は,「金銭を目的とする消費貸借」における利息の制限について規定しているところ,社債は,会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であり(同法2条23号),社債権者が社債の発行会社に一定の額の金銭を払い込むと償還日に当該会社から一定の額の金銭の償還を受けることができ,利息について定めることもできるなどの点においては,一般の金銭消費貸借における貸金債権と類似する。

 しかし,社債は,会社が募集事項を定め,会社法679条所定の場合を除き,原則として引受けの申込みをしようとする者に対してこれを通知し(同法677条1項),申込みをした者の中から割当てを受ける者等を定めることにより成立するものである(同法677条2項,3項,678条,680条1号)。このように社債の成立までの手続は法定されている上,会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく,償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される(同法676条2号,9号参照)などの点において,社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違がある。また,社債は,同法のみならず,金融商品取引法2条1項に規定する有価証券として同法の規制に服することにより,その公正な発行等を図るための措置が講じられている。

 ところで,利息は本来当事者間の契約によって自由に定められるべきものであるが,利息制限法は,主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から,利息の契約を制限したものと解される。社債については,発行会社が,事業資金を調達するため,必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し,自らの経営判断として,募集事項を定め,引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているのであるから,上記のような同法の趣旨が直ちに当てはまるものではない。今日,様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され,会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると,このような社債の利息を同法1条によって制限することは,かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなる。

 もっとも,債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し,社債の発行に仮託して,不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど,社債の発行の目的,募集事項の内容,その決定の経緯等に照らし,当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には,このような社債制度の利用の仕方は会社法が予定しているものではないというべきであり,むしろ,上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。

 そうすると,上記特段の事情がある場合を除き,社債には利息制限法1条の規定は適用されないと解するのが相当である。
 前記事実関係によれば,本件において上記特段の事情の存在はうかがわれないので,本件社債に利息制限法1条の規定は適用されないというべきである。したがって,上告人の請求は理由がない。

6 以上によれば,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宇賀克也 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林景一 裁判官 宮崎裕子 裁判官 林道晴)
以上:3,144文字
ホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 「社債利息について利息…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-16(日):2025年03月16日発行第385号”肩の上の弁護士2.0”
ホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター3 > 「2025年03月16…」←リンクはこちらでお願いします
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年3月16日発行第385号「肩の上の弁護士2.0」をお届けします。

○今回の「肩の上の弁護士2.0」は、大山ニュースレター平成25年5月1日発行第100号「肩の上の弁護士のバージョン2です。

○バージョン1の「肩の上の弁護士」の感想文として、「重要なことは、お客さまの心情をシッカリと理解し、ここは「火に油を注ぐ」役割を果たしているが、最終的には「火消し役」となる一環であることを意識して、節度ある「火に油を注ぐ」役割にすることです。」なんて如何にも判ったようなことを書いているのが、恥ずかしい限りです。

○星新一の「肩の上の秘書」は、キャバクラに出かけた男性が、女の子の肩のインコから「あなたが来てくれなくて寂しかったわ」と言われて、心から喜ぶところで終わるとのことですが、男性の肩のインコは女性の言葉の本音を男性に伝える役割も果たすようです。大山先生は、不快な「真実」を聞かないよう、自分のインコのスイッチを切っていたとされていますが、小説で確認したくなり、早速、Amazonに注文しました。

*******************************************
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

肩の上の弁護士2.0

前回、私の手作りとAI が数秒で作ったニュースレターを、皆様に比較して貰いました。「嘘でもいいから私の方が面白いと言って欲しい」とお願いしたのに「同じくらい面白かったです」とか「AIの方が良かったです」なんてコメントもあったのです。それでも多数の人は私の方が面白いと言ってくれました。もっとも、「大山さんの方が断然良かった」と褒めながら、その理由は「AIのは字が小さくて読みにくかったです」なんて続けている方もいました。「人間の温かみのある文章はAI とは大違い。心に響きました」なんて熱烈な褒め言葉に喜んでいたら、「この誉め言葉、CHATGPTに作ってもらいました」と付け加える人もいた。そ、そういうことは黙ってて欲しいのです。

先日、生成AIのセミナーを受講したのですが、「CHATGPTを使って妻への感謝の手紙を作成する方法」を教えてくれました。「妻への感謝の手紙を作成。000の思い出。美味しい食事と温かい家庭への感謝」みたいな指示を出すと、長い感謝の手紙を自動生成してくれるんです。セミナーでは同時に、長い文章の要約を、AIに作って貰う方法も教えてくれました。奥さんの方もそれを習っていたら、旦那さんからの長い手紙も、結局は要点だけになってしまいそうです。そんな AI が活躍する社会を、今から50年も前に予見したのが、星新一の「肩の上の秘書」です。

そこでは、誰もが肩の上に、鳥のインコの形をした AI を乗せています。簡単な指示を出すと、インコはそれをもっともらしい言葉にして言ってくれるのです。しかし言われた側も、そんな言葉なんて聞いちゃいません。自分のインコに、何を言われたのかと質問して、要点を教えて貰います。まさに、現在のCHATGPTで私が勉強したのと同じことが描かれているのです。そういえば少し前のネット記事で、「これからの AI は音声で指示を出せば、イヤホンを通して回答を貰えるようになる」なんて書いてありました。挨拶された相手が誰だか思い出せないとき、AIに「この人誰だっけ」と聞けば、イヤホンから答えが返ってきます。伝えたい要点を言えば、イヤホンからもっともらしい文章も出てくる。これをもう一歩進めれば、まさに星新一の描いた肩の上のインコの世界です。

こうなってくると、弁護士業務にも影響が出るでしょう。例えば示談交渉のときなんか、どういう風に相手に伝えるのか本当に気を使います。でも、弁護士の肩の上にインコが止まっていれば、「50万円払うから許してくれよ」なんて言えばOKです。あとはインコの方で、「本人は心から反省しております。お金で解決できる問題でないことは重々承知しておりますが、本人の誠意の表れとして・・・」みたいな感じで言葉にしてくれます。もっとも示談相手のインコも、「50万円で示談しろってよ!」なんて要約してそうで心配です。そもそも全員の肩の上にインコが乗っている世界ですと、弁護士なんて必要ない気もします。弁護士に聞くよりも気楽に、インコに法的質問をすれば足ります。私なら調査しないと回答できないような問題でも、インコはすぐに答えを出してくれそうです。こうなってくると、法的知識が足りないために騙される人なんて、いなくなりそうに思えてきました。

もっとも、星新一の「肩の上の秘書」は、キャバクラに出かけた男性が、女の子の肩のインコから「あなたが来てくれなくて寂しかったわ」と言われて、心から喜ぶところで終わります。男性は不快な「真実」を聞かないよう、自分のインコのスイッチを切っていたのだと思います。現代の日本でも、ロマンス詐欺で騙されて、大金を振り込む人は大勢います。中には「これは詐欺です」と銀行員が、どんなに説得しても聞かない人もいます。肩にインコがいても、忠告を聞く気が無ければどうしようもないでしょう。

「インコの言葉は聞きませんが、大山弁護士のアドバイスなら従います!」と言って貰える弁護士になりたいものです。

*******************************************

◇ 弁護士より一言

CHATGPT の勉強を始めて、AIに色々な法律問題を質問してみました。とても役に立つのは間違いないのですが、ときにAIは、平気で嘘をつきます。「知ったかぶりしないで、分からないならそう言ってくれれば良いのに。」と家族に愚痴ったら、「何でもよく知っているけど、知ったかぶりもするって、それパパじゃん!」と言われました。わ、私はそんなことないですよ。。。

以上:2,435文字
ホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター3 > 「2025年03月16…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-15(土):映画”ワイルド・スピード/ジェットブレイク”を観て-残念ながら
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ワイルド・スピ…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月2日(日)は、夕方、映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」を鑑賞しました。2月の下旬にAmazonでこの映画の4KUHDソフトを1645円で購入済みでした。Amazonで4KUHD映画ソフトを探していたらたまたま1645円という驚異的な安い価格で販売していたので即注文していました。映画の4KUHDソフト価格は、定価は7000円以上で、Amazon価格でも平均的には5000円を超えています。この映画の4KUHDソフト価格は、3月初めには5700円に上昇し、3月15日現在は3164円で、時期によって大幅に変動しています。映画を4KUHDソフトの綺麗な映像で鑑賞することを趣味としている私は、私は定期的にAmazonで検索し、安くなったものを選んで購入しています。

映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」は、映画コムでは「メガヒットカーアクション「ワイルド・スピード」シリーズの第9作。ドミニクはパートナーのレティや幼い息子ブライアンと3人で平穏な日々を過ごしていたが、否応なく自身の過去の罪と向き合うことに。ドミニクの実の弟ジェイコブの存在が初めて明かされ、その因果はファミリーを窮地に追い込んでいく。ファミリーは世界を揺るがす陰謀を阻止するため、凄腕の殺し屋で超一流の運転技術を持つジェイコブとの戦いに身を投じる。」と解説されています。

○映画「ワイルド・スピード」シリーズは、映画館でも何度か鑑賞していますが、残念ながら凄まじいカーアクションは凄いとは思うのですが、余り感動・感激したものはありません。4KUHDソフトでの映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」は、映画館では観ていないと思っていましたが、映画開始後まもなくどこかで観たような気がするシーンが続き、令和3年の公開時に封切りで観ていたことが判明しました。僅か4年前に映画館で観たのに殆ど覚えていませんでした。覚えていないと言うことは記憶に残らない、記憶に残らないと言うことは印象が薄い、と言うことは感動・感激がなかったことになります。

○今回3年ぶりに鑑賞しても、残念ながら、殆ど感動・感激は得られませんでした。映画ですから、現実にはあり得ない状況を表現するのは当然です。しかし、この現実にはあり得ない状況の表現が、観る者に感動・感激を与えるかどうかは、そのストーリーの流れや、観る者の心理状態等によって、紙一重の差によるところもあります。今回のこの映画は、このあり得ない状況が、特に後半に至って、余りに不自然で無理に組み立てていると感じさせるものでした。その結果、今回の鑑賞でも殆ど印象に残らず、浅はかさばかり感じるものでした。以下の予告編の方がよほど良く出来ています。

『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』|本予告 <2021年8月6日(金)公開>

以上:1,171文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ワイルド・スピ…」←リンクはこちらでお願いします