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R 3- 5-12(水):特別受益持戻し免除と遺留分減殺請求についての大阪家裁審判紹介
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○「特別受益持戻し免除と遺留分減殺請求についての最高裁判決紹介」の続きで、その第一審平成21年9月14日大阪家裁審判(金商1393号44頁<参考収録>)全文を紹介します。

○事案は以下の通りです。
・被相続人Aの相続人は、妻Y1、Aと妻Y1の子Y2、Y3、Aと先妻との間の子3名、
・A遺産は現金3020万円並びに原々審判別紙遺産目録記載の株式及び宝飾品、
・Aは,平成17年5月26日,相手方Y1の相続分を2分の1,その余の相手方らの相続分を各4分の1,抗告人らの相続分を零と指定する旨の公正証書遺言
・抗告人らが平成18年7月から9月までの間に,相手方らに対し,遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示


○被相続人の前妻の子で、相続分の指定により各相続分をそれぞれ零とされた申立人3名が、被相続人の後妻及びその子である相手方3名に対し、遺留分減殺の意思表示をして遺産分割を申し立てました。

○大阪家裁審判は、被相続人が、相続人の一部に対し、相続財産全体に関して相続分の指定をした場合には、特段の事情のない限り、法定相続分を超過した指定相続分を受けた相続人が、遺留分を侵害された指定もれの相続人に対し、法定相続分の割合に応じて補填させるべきであるとして、申立人らの相続分を40分の2とした上で、分割方法につき、遺産の大半が株式であること、同株式発行会社がいずれも同族会社で、被相続人と相手方らが関与してきたこと、申立人らが代償金支払を求めていた経緯から、株式の代償金を申立人らに支払うのが相当であるして、相手方Y2は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円、相手方Y3は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円を支払うことを命じました。

○Y1とY3に対し遺留分請求権利者3名にそれぞれ3692万2864円の支払を命じた根拠は、遺留分権利者3名の相続分はそれぞれ40分の2として、遺産総額14億7691万4588円の20分の1相当額7384万5729円が遺留分権利者3名それぞれが確保する金額だからのようです。

**************************************

主   文
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙遺産目録記載1の株式につき、相手方Y1は、a興産株式会社5456株、b製罐株式会社5万6000株、c産業株式会社6945株を単独取得し、相手方Y2は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社の1株は相手方Y3と共有取得し、相手方Y3は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社1株を相手方Y2と共有取得する。
(2) 別紙遺産目録2宝飾品については、相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1の割合で共有取得する。
(3) (1)、(2)の遺産取得の代償として、相手方Y2は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円を、相手方Y3は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円をいずれも本審判確定の日から6か月以内に支払え。
2 鑑定人Aに支払った費用は、これを申立人ら2分の1、相手方ら2分の1の負担とし、その余の手続費用は、各自の負担とする。

理   由
 一件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断は、以下のとおりである。

1 相続の開始及び相続人
 被相続人は、平成17年12月23日に死亡し、相続が開始した。
 相続人は、被相続人の前妻の長女である申立人X2、長男である申立人X1、二男である申立人X3、被相続人の配偶者(後妻)である相手方Y1、その長男である相手方Y2及び長女である相手方Y3である(別紙相続関係図参照)。

2 被相続人の遺言と遺留分の減殺の意思表示
 被相続人は、平成17年5月26日、公正証書遺言をした(甲1)。その内容は、相続分を以下のとおり指定するものであった。
 相手方Y1 2分の1
 相手方Y2 4分の1
 相手方Y3 4分の1
 申立人ら いずれも0
 申立人らは、相手方らに対し、平成18年7月ないし同年9月にかけて、遺留分減殺の意思表示をした。

 このように、被相続人が、相続人の一部に対して、相続財産全体に関して相続分の指定をした場合には、特段の事情のない限り、法定相続分を超過した指定相続分を受けた相続人が、遺留分を侵害された指定もれの相続人に対して、法定相続分の割合に応じて補填させるべきであると解するのが相当である。

 その結果、当事者らの相続分は、以下のとおりとなった。
 相手方Y1 40分の20
 (法定相続分を超過した指定相続分ではないので、指定相続分のとおりとなる。)
 相手方Y2 40分の7
 相手方Y3 40分の7
 申立人ら いずれも40分の2

3 遺産の範囲
 被相続人の遺産は、別紙遺産目録記載のとおりであると認める。なお、申立人らは、当初、同目録記載の「1 株式 (3)c産業株式会社」の株式数を13,780株としていたが、これは相続税の申告書に基づき計算したものと思われる。その後、同会社における平成16年6月1日から平成17年5月31日期の被相続人の株式数が13,890株とする証拠(乙1)が提出されていること、被相続人が相続開始までのわずかな期間に上記株式を一部譲渡する事情が見当たらないことからして、遺産としては、13,890株とするのが相当である。

4 遺産の評価額
(1) 本件遺産分割の対象となる別紙遺産目録記載の株式(以下「本件株式」という。)の審判時における各価額について検討する。
ア 本件株式についての双方から提出された意見書(公認会計士B作成の甲8(以下「B意見書」という。)、公認会計士C作成の乙15(以下「C意見書」という。))及び鑑定結果(鑑定人は公認会計士A、(以下「A鑑定」という。))をまとめると、以下のとおりとなる。
 
遺産の表示       B意見書甲8     C意見書乙15    A鑑定 
a興産(株)10,912株  6,219,130,720   247,462,336    571,286,848 
b製罐(株)112,000株 501,939,200    79,520,000     159,376,000 
c産業(株)13,890株  730,141,740    440,882,490    730,141,740 

 B意見書は、限定された資料に基づいたことを前提に、原則として、最も客観的な方法であるとして、純資産方式を採用している。資料が限定されており、評価も簡便に行っている。
 C意見書は、最も客観的と考えられるとして、類似会社比準法を採用し、税法の類似業種比準法又は純資産方式を併用する方式も参考にして株価を算定している。C意見書については、B意見書において、a興産株式会社については、類似の会社を上場会社から見つけ出すのが困難である、b製罐株式会社も同族会社で株式の譲渡制限も付いているので、純資産方式が妥当である、類似会社比準法において、配当の比較をするのは会社の配当政策に依拠するので相当でない、非流通ディスカウントとして30パーセントを評価減とするのは流通性を前提としたもので相当でないなどと批判されている。

 A鑑定は、基本的には、①a興産(株)とb製罐(株)については、時価純資産法と配当還元法による折衷方式により算定し、②c産業(株)については、時価純資産法を採用し、評価時点はいずれも平成21年2月16日である。

イ そこで、以下、検討する。
 まず、本件は、被相続人が、遺言において、相続分の指定を行ったことから、申立人らが遺留分減殺の意思表示を行い、その結果、相続分が、上記のとおりとなった事案である。この相続分に基づいて遺産を分割することになる。遺産分割は、原則的には現物分割であるが、特別の場合には、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物分割に代えることができる(家事審判規則109条。いわゆる代償分割)。したがって、代償分割の場合において、債務について遺産の分割方法という観点から検討すべきもので、申立人らがいったん取得した遺産としての株式を相手方らに売却する代償金という性質を有しているとまではいいきれない。

 そこで、本件株式の価額について検討する。
B意見書は、自らも認めるとおり、限定された資料に基づいており、すぐには採用できない。
C意見書は、本件株式の会社がいずれも上場会社に匹敵するほど大きいとまではいえないこと、B意見書による批判内容からして、類似会社比準法を採用することにすぐには賛成できない。

A鑑定は、①のa興産(株)とb製罐(株)については、被相続人の有していた遺産である株式数からみて、経営権の移動がないと考えられるところから、配当還元方式を基本的に採用し、配当金の原資となる多額の剰余金を有していることから時価純資産法を加味している。非公開会社の株式評価として、大きく問題となることはない。②のc産業(株)については、被相続人の有していた遺産である株式は、議決権割合57パーセントであることから、時価純資産法を採用している。この点は、格別、問題はないといえる。
 以上から、A鑑定を採用するのが相当である。

(2) 別紙遺産目録記載の宝飾品の評価額は、同記載のとおり、1611万円である。

5 相続分の算定
(1) 分割時の遺産総額
 以上から、分割時の遺産総額は、14億7691万4588円となる(別紙計算書「①遺産の総額」欄参照)。

(2) 各相続人の現実の取得額は、別紙計算書「③取得すべき額(①×②)」欄のとおりとなる。

6 分割についての当事者の意見
(1) 申立人ら
 申立人らとしては、相続分に応じた本件株式を取得することを希望する。

(2) 相手方ら
 申立人らが、本件株式を取得することは認められない。申立人らは、もともと本件株式自体でなく、遺留分価額相当の金員を求めていた。本件株式の主体である3社は、いずれも非公開会社で、同族会社である。被相続人と相手方らは、これら会社の経営に関与してきていたが、申立人らはいずれもこれら会社の経営に関与してきていない。このような事情からして、本件株式は、そのすべてを相手方らにおいて相続し、相手方らが申立人らに代償金を弁済することにより解決されるべきである。

7 当裁判所の定める分割の方法
 遺産の大半が、本件株式であること、a興産株式会社、b製罐株式会社及びc産業株式会社がいずれも同族会社で被相続人と相手方らが関与してきていたこと、申立人らにおいても代償金支払を求めていた経緯もあったこと(本件株式の鑑定をしたことは代償金支払を前提としている。)からすると、相手方らが、本件株式を相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1でそれぞれ単独取得し(相手方Y1について、a興産株式会社5456株、b製罐株式会社5万6000株、c産業株式会社6945株、相手方Y2について、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株と1株は相手方Y3と共有、相手方Y3について、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株と1株は相手方Y2と共有)、別紙遺産目録2宝飾品については、相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1の割合で共有取得し、その代償金を申立人らに支払うこととするのが相当である。

 代償金の額は、別紙計算書「⑥相手方らが申立人1人当たりに支払うべき金額(1円未満切り捨て)」欄記載のとおりである。上記代償金の支払能力については、別紙遺産目録記載の遺産以外について、かなりの遺産が分割済みであることから、格別問題はないと考えられる。ただ、代償金額が大きいことから、支払を本審判確定の日から6か月間猶予するのが相当である。

8 手続費用の負担
 手続費用のうち、鑑定人Aに支払った費用は、申立人ら2分の1、相手方ら2分の1とし、その余の手続費用は、各自の負担とするのが相当である。
 よって、主文のとおり審判する。
 (家事審判官 横山光雄)
 
 
 (別紙)相続関係図〈省略〉
 遺産目録〈省略〉
 計算表〈省略〉
以上:5,059文字
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R 3- 5-11(火):特別受益持戻し免除と遺留分減殺請求についての最高裁判決紹介
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○特別受益の持戻し免除意思表示と遺留分減殺請求の関係について検討が必要な遺言書相談を受けています。そこで、遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正され、特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合、当該贈与に係る財産の価額は、遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるとした平成24年1月26日最高裁判決(判タ1369号124頁、判時2148号61頁)を紹介します。

○一審家裁と原審高裁各決定の主文は、以下の通りです。

平成21年9月14日大阪家裁決定主文
主   文

1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙遺産目録記載1の株式につき、相手方Y1は、a興産株式会社5456株、b製罐株式会社5万6000株、c産業株式会社6945株を単独取得し、相手方Y2は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社の1株は相手方Y3と共有取得し、相手方Y3は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社1株を相手方Y2と共有取得する。
(2) 別紙遺産目録2宝飾品については、相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1の割合で共有取得する。
(3) (1)、(2)の遺産取得の代償として、相手方Y2は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円を、相手方Y3は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円をいずれも本審判確定の日から6か月以内に支払え。
2 鑑定人Aに支払った費用は、これを申立人ら2分の1、相手方ら2分の1の負担とし、その余の手続費用は、各自の負担とする。

原審平成23年2月21日大阪高裁決定主文
主   文

1 原審判を次のとおり変更する。
2 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 原審判添付の別紙遺産目録記載1の株式につき、相手方Y1は、a興産株式会社5456株、b製罐株式会社5万6000株、c産業株式会社6945株を単独取得し、相手方Y2は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社の1株は相手方Y3と共有取得し、相手方Y3は、a興産株式会社2728株、b製罐株式会社2万8000株、c産業株式会社3472株を単独取得し、c産業株式会社1株を相手方Y2と共有取得する。
(2) 原審判添付の別紙遺産目録2の宝飾品につき、相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1の割合で共有取得する。
(3) 3020万円の現金につき、相手方Y1・2分の1、相手方Y2・4分の1及び相手方Y3・4分の1の割合でそれぞれ単独取得する。
(4) (1)ないし(3)の遺産取得の代償として、相手方Y2は、抗告人らに対し、それぞれ5000万円を、相手方Y1に対し、1821万0888円を、相手方Y3は、抗告人らに対し、それぞれ2869万9808円を、相手方Y1に対し、1522万9896円をいずれも本決定確定の日から6か月以内に支払え。
3 鑑定人Aに支払った費用は、原審、当審を通じてこれを抗告人ら2分の1、相手方ら2分の1の負担とし、その余の手続費用は、各自の負担とする。


○事案は以下の通りです。
・被相続人Aの相続人は、妻Y1、Aと妻Y1の子Y2、Y3、Aと先妻との間の子の抗告人3名、
・A遺産は現金3020万円並びに原々審判別紙遺産目録記載の株式及び宝飾品、
・Aは,平成17年5月26日,相手方Y1の相続分を2分の1,その余の相手方らの相続分を各4分の1,抗告人らの相続分を零と指定する旨の公正証書遺言
・抗告人らが平成18年7月から9月までの間に,相手方らに対し,遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示

○一審・原審の主文は、遺産は全てYらの取得として、抗告人らに対して支払うべき遺産分割代償金の金額が、
一審は「相手方Y2は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円を、相手方Y3は、申立人らに対し、それぞれ3692万2864円
原審は「相手方Y2は、抗告人らに対し、それぞれ5000万円を、相手方Y1に対し1821万0888円を、相手方Y3は、抗告人らに対しそれぞれ2869万9808円を、相手方Y1に対し1522万9896円
と違っています。

○一審と原審の結論の違いについて分析しないと最高裁の考え方が理解できませんので、今後、分析を続けます。

**************************************

主   文
原決定を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 

理   由
抗告代理人○○○○,同○○○○の抗告理由について
1 本件は,Aの共同相続人である抗告人らと相手方らとの間におけるAの遺産の分割申立て事件である。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 相手方Y1はAの妻であり,相手方Y2及び同Y3はAと同Y1との間の子であり,抗告人ら3名はAと先妻との間の子である。

(2) Aは,平成17年12月23日に死亡した。Aの法定相続人は,相手方ら及び抗告人らである。

(3) 本件において遺産分割の対象となるAの遺産(以下「本件遺産」という。)は,現金3020万円並びに原々審判別紙遺産目録記載の株式及び宝飾品である。

(4) Aは,平成16年10月から平成17年12月にかけて,相手方Y2に対し,生計の資本として,株式,現金,預貯金等の贈与(以下「本件贈与」という。)をするとともに,Aの相続開始時において本件贈与に係る財産の価額をその相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(以下「本件持戻し免除の意思表示」という。)をした。

(5) Aは,平成17年5月26日,相手方Y1の相続分を2分の1,その余の相手方らの相続分を各4分の1,抗告人らの相続分を零と指定する旨の公正証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。

(6) 抗告人らは,平成18年7月から9月までの間に,相手方らに対し,遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示(以下「本件遺留分減殺請求」という。)をした。

3 原審は,上記事実関係の下において,本件遺留分減殺請求により,
①本件遺言による相続分の指定が減殺され,法定相続分を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その法定相続分の割合に応じて修正される結果,相手方Y1の相続分が2分の1,その余の相手方らの相続分が各40分の7,抗告人らの相続分が各20分の1となり,
②本件持戻し免除の意思表示は,抗告人らの遺留分を侵害する合計20分の3の限度で失効する
とした上,民法903条1項の規定により,本件贈与に係る財産の価額を上記の限度で本件遺産の価額に加算したものを相続財産とみなし,これに上記①のとおり修正された相続分の割合を乗じ,相手方Y2の相続分から上記のとおり本件遺産の価額に加算した本件贈与に係る財産の価額を控除して,抗告人ら及び相手方らの各具体的相続分を算定し,本件遺産を分割した。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 前記事実関係によれば,本件遺言による相続分の指定が抗告人らの遺留分を侵害することは明らかであるから,本件遺留分減殺請求により,上記相続分の指定が減殺されることになる。相続分の指定が,特定の財産を処分する行為ではなく,相続人の法定相続分を変更する性質の行為であること,及び,遺留分制度が被相続人の財産処分の自由を制限し,相続人に被相続人の財産の一定割合の取得を保障することをその趣旨とするものであることに鑑みれば,遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものと解するのが相当である(最高裁平成9年(オ)第802号同10年2月26日第一小法廷判決・民集52巻1号274頁参照)。

(2) ところで,遺留分権利者の遺留分の額は,被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え,その中から債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し,それに遺留分割合を乗ずるなどして算定すべきところ(民法1028条ないし1030条,1044条),上記の遺留分制度の趣旨等に鑑みれば,被相続人が,特別受益に当たる贈与につき,当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(以下「持戻し免除の意思表示」という。)をしていた場合であっても,上記価額は遺留分算定の基礎となる財産額に算入されるものと解される。したがって,前記事実関係の下においては,上記(1)のとおり本件遺言による相続分の指定が減殺されても,抗告人らの遺留分を確保するには足りないことになる。

 本件遺留分減殺請求は,本件遺言により相続分を零とする指定を受けた共同相続人である抗告人らから,相続分全部の指定を受けた他の共同相続人である相手方らに対して行われたものであることからすれば,Aの遺産分割において抗告人らの遺留分を確保するのに必要な限度で相手方らに対するAの生前の財産処分行為を減殺することを,その趣旨とするものと解される。

そうすると,本件遺留分減殺請求により,抗告人らの遺留分を侵害する本件持戻し免除の意思表示が減殺されることになるが,遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が減殺された場合,持戻し免除の意思表示は,遺留分を侵害する限度で失効し,当該贈与に係る財産の価額は,上記の限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当である。

持戻し免除の意思表示が上記の限度で失効した場合に,その限度で当該贈与に係る財産の価額を相続財産とみなして各共同相続人の具体的相続分を算定すると,上記価額が共同相続人全員に配分され,遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保し得ないこととなり,上記の遺留分制度の趣旨に反する結果となることは明らかである。


(3) これを本件についてみるに,本件遺留分減殺請求により本件遺言による相続分の指定が減殺され,相手方らの指定相続分がそれぞれの遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される結果,相手方Y1の指定相続分が52分の23,その余の相手方らの指定相続分が各260分の53,抗告人らの指定相続分が各20分の1となり,本件遺産の価額に上記の修正された指定相続分の割合を乗じたものがそれぞれの相続分となる。

 次いで,本件遺留分減殺請求により本件持戻し免除の意思表示が抗告人らの遺留分を侵害する限度で失効し,本件贈与に係る財産の価額を,上記の限度で,遺留分権利者である抗告人らの上記相続分に加算する一方,本件贈与を受けた相手方Y2の上記相続分から控除して,それぞれの具体的相続分を算定することになる。

(4) 以上と異なる原審の前記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,以上説示したところに従い,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 白木勇 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝)
以上:4,831文字
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R 3- 5-10(月):長男・長女監護中夫に妻を監護者指定し引渡請求を変更した高裁決定紹介
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○「長男・長女監護中夫に妻を監護者と指定し引渡を命じた家裁審判紹介2」の続きで、その抗告審である平成29年3月3日福岡高裁決定(ウエストロージャパン)全文を紹介します。

○妻である相手方が、その夫である抗告人に対し、相手方を両人の子であり未成年者である長男A及び長女Bの監護権者と定めることを求めるとともに、長男A(12歳・小学6年生)及び長女B(5歳)の引渡しを求めたところ、第一審平成28年12月16日福岡家裁審判(ウエストロージャパン)が申立てをいずれも認容しました。

○その理由は、未成年者らの年齢,心情等に鑑みれば,未成年者らにとって,その福祉上,双方の親から大事にされ,愛されていることを実感することが望ましく,母である申立人との継続的な関わりやその愛情を実感することが重要としたもので、極めて妥当な判断でした。

○抗告審も監護者は長男A・長女Bいずれも相手方妻としましたが、引渡請求について、長男に関しては、相手方妻に対して強い拒否反応を示しているのであって,長男の年齢(12歳),心情等を考慮すると,現段階において,抗告人夫に対して長男の引渡しを命じるのは相当ではなく,抗告人が,相手方が長男を引き取ることについて妨害することを禁止するにとどめるのが相当であるとしました。

○抗告人夫は、特に長男が相手方母に対して強い拒否反応を示し、抗告人と一緒の生活を希望していることから、平成29年3月3日福岡高裁決定には納得出来ないとして許可抗告・特別抗告をしていました。しかし、許可抗告については平成29年4月13日福岡高裁、特別抗告については平成29年6月21日最高裁判決でいずれも棄却されて相手方妻の請求が認められました。

****************************************

主    文
1 原審判主文第2項中,未成年者Aに関する部分を次のとおり変更する。
 抗告人は,相手方が未成年者Aを引き取ることを妨害してはならない。
2 抗告人のその余の抗告を棄却する。
3 手続費用は,原審,当審とも,抗告人の負担とする。

理    由
第1 抗告の趣旨

1 原審判を取り消す。
2 未成年者A及び未成年者Bの各監護者をいずれも抗告人と定める。

第2 抗告の理由
 別紙「抗告理由書」に記載のとおり。

第3 当裁判所の判断(略語は原審判の表記による。)
1 監護者の指定について

(1) 当裁判所も,未成年者A(長男)及び未成年者B(長女)の監護者をいずれも相手方と定めるのが相当と判断するが,その理由は,次の(2)のとおり判断の補足を加えるほか,原審判の「理由」の「第2 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。
 ただし,原審判14頁21行目から同22行目の「未成年者らの各監護者をいずれも申立人と定めるとともに,相手方に対し,未成年者らを申立人に引き渡すことを命ずるのが相当である。」を「未成年者らの各監護者をいずれも相手方と定めるのが相当である。」と改める。

(2) 判断の補足
 抗告人は,
①未成年者らが,相手方のもとへは行かずに抗告人と生活する意思を表明していること,
②家庭生活を破壊したのは相手方であること,
③未成年者らが現在安定した生活を送っていること
などから,未成年者らの監護者を抗告人と定めるべきであるなどと主張する。

 しかし,原審判も判示するように,長男は,相手方から捨てられたという思いや,抗告人や父方伯父からの偏った情報等によって,相手方に対する拒否反応を示しているのであり,長女は,抗告人や長男の意向に沿って同様の意思を表明しているにすぎず,これらの未成年者らの意思表明を監護者の指定の判断にあたって過度に重視すべきではない。

 また,相手方の不貞行為を含めて抗告人と相手方の婚姻関係破綻の原因が専ら相手方にあることを認めるに足りる証拠はない。
 さらに,原審における家庭裁判所調査官による調査等によれば,抗告人は,将来的には抗告人の母等を含めて,福岡市南区○○a丁目の自宅で生活することを前提に話をしており,未成年者らの生育環境等には特段の問題はないとされていたが,原審判の前後(長女については平成28年11月1日,長男については同年12月26日)に,それぞれ福岡県柳川市にある抗告人の実家に転居したのであって(なお,抗告人の住民票移転は平成29年2月である。甲11),その原因や具体的経緯等は不明であるが,突然の生活環境の変化は未成年者らの心情等に多大な影響を与える可能性がある。

 また,抗告人は,相手方は自分で問題を起こして出て行ったものであり,未成年者らも相手方を嫌っているとして,面会交流には応じない態度をとっている。これらは,抗告人の監護者としての適格性に疑念を生じさせかねないものである。
 したがって,抗告人の上記主張はいずれも採用できない。

2 子の引渡しについて
 以上のとおり,未成年者らの監護者は相手方と定めるべきであり,未成年者らは早急に相手方のもとで監護されるのが相当であるから,長女については直ちに抗告人から相手方に引き渡されるべきである。

 ただし,長男については,上記引用に係る原審判の認定事実のとおり,相手方に対して強い拒否反応を示しているのであって,長男の年齢(12歳),心情等を考慮すると,現段階において,抗告人に対して長男の引渡しを命じるのは相当ではなく,抗告人が,相手方が長男を引き取ることについて妨害することを禁止するにとどめるのが相当である。

3 結論
 よって,未成年者らの監護者を相手方と定めた上で,長男については,相手方が長男を引き取ることの妨害の禁止を,長女については,抗告人に相手方へ長女を引き渡すよう命じるのが相当であるところ,長男についても引渡しを命じた原審判は,その限度で相当でないから,これを変更することとして,主文のとおり決定する。
 福岡高等裁判所第5民事部
 (裁判長裁判官 岸和田羊一 裁判官 岸本寛成 裁判官 小田島靖人)

別紙抗告理由書
1、原審判は、未成年者両名の監護権者をいずれも相手方と定めたが、以下の理由により原審判は変更されるべきである。

2、 抗告の理由
(1) 長男、長女は抗告人と生活する意思であること。
 長男Aは小学校6年生の12才である。この年齢になると、本件のような場合にどちらの親を選ぶのかの意思能力は形成されていると考えられる。昨年12月29日、仮処分決定によって裁判所の執行官が柳川市の抗告人の母の自宅に、長男と長女の引き渡しを求めに来たが、長男は「行かない。」と言って、相手方のところに行くことを拒否した。長男は、「母に捨てられたから」と言っている。

 長女Bは、その意思能力があるとは言えないが、兄と一緒に生活することを強く望んでおり、兄が母親と暮らしたくないと言っている状況の下で長女もその考えを持っている。12月30日、仮処分決定に基づき執行官が長女を連れに来たが、長女も「行かない。」と言って相手方の元に行くのを拒否した。その後、長女に対して執行官が「お母さんが来ているよ。」、「お母さんと少し話したら。」と言われて、長女はためらいながらも車の中にいた相手方と会って、4~5分会話をしたが、会話が終わって祖母の家に戻って来て、相手方と一緒には行かなかった。

(2) 子どもとの生活を含めた家庭生活を破壊したのは、相手方である。
① 2016年1月9日午前2時、相手方は男性を車で送っていて交通事故を起こしている。当時、4才と11才の子どもがいる母親が、深夜に男性を自宅に送って行くこと自体、極めて不自然なことである。これについて、抗告人が相手方に「どうしてそんな深夜に送っていたのか。」と問い詰めたところ、相手方は理由にならない弁解をし始め、弁解が苦しくなって抗告人との離婚を言い出した。両当事者間で離婚の話が出て来たのは、相手方からである。

② その後、3月頃より、相手方は中洲で働くと言って夜8時頃に外出し、金土日と外泊し、朝7時半頃に帰ってくる生活となった。抗告人はこの時期、長男より「相手方に男性がいるようだ」ということを知らされた。長男は、ゲームをするため相手方のスマートフォンを使っていた時に、ラインという通話やメールができるアプリを開き、相手方が男性とつき合っていることを知ったとのことであった。抗告人は相手方の上記①の件や中洲で働き出したことに対して疑念を持っていたが、長男からそのことを聞かされて、相手方に問い質した。相手方は否認するだけであったが、その日以来、相手方は長男に対して暴力をふるうようになった。長男は相手方から、殴ったり、髪の毛を引っ張ったり、蹴ったりといった暴力を受けている。

③ 抗告人は長男より、「ママに言わないで。」と言って、「5月15日に相手方が京都へ行く」ことを教えられた。その日、抗告人は仕事だったため、抗告人の兄に博多駅に確認に行ってもらったところ、相手方は博多駅6時05分発の新幹線に若い男性と2人で乗っていた。
 抗告人の兄は、相手方が男性とタクシーに同乗して博多駅で降りたのを現認し、2人が改札口に向かっていく後ろ姿を写真に収めている。
 審判では、翌日の5月16日夜、抗告人の兄が相手方に暴力を振るったと認定されているが、抗告人の兄は同人が博多駅で見たことを相手方に問いただしたところ、相手方の方から逆上して抗告人の兄に暴行を加えて来たため、抗告人の兄はこれに反撃したものである。相手方は空手初段を持っており、先に暴力行為を行ったものである。抗告人の兄もこの件で警察に被害届を出している。この日以来、相手方は自宅に戻っていないので、翌日より柳川市の抗告人の母親に長男と長女の世話のため抗告人の自宅に来てもらった。抗告人の母親は11月まで抗告人の自宅で子どもらの世話をした。
 相手方は、少なくとも長男は自分の携帯電話を持っていたのに、別居後、未成年者らの安否を気遣う連絡を一度もして来ていない。

④ 以上の通り、この度の相手方との別居や、夫婦の仲が上手くいかなくなったこと、長男の相手方に対する信頼を失ったことは、全て相手方の行動が招いたことである。このような相手方は、未成年の長男、長女の監護者として相応しくないことは明らかである。

(3) 未成年者らの現在の生活について
 長男は、最初は幼稚園の延長でb小学校に通っていたが、同級生よりいじめを受け、3年生の時にc小学校に転校した。しかし、そこでもまたいじめを受け、「学校には行きたくない」と言っていたので、この度、抗告人の実家のある柳川市のd小学校に3学期から転校した。この長男がいじめを受けた原因は、相手方が学校に口を出し過ぎていたことである。b小学校では、相手方は他の保護者と上手く関係を築くことができなかった。c小学校では、相手方は学校に英語の講師として来ていたのであるが、相手方の態度が他の級友たちに疎んじられるようになったことが原因であった。抗告人の母が再婚した抗告人の義父は、d小学校の用務員をしていて、転校手続き等に協力してくれた。

 長女は、柳川市のe保育園に本年1月から通っている。
 長男、長女とも抗告人の母親及び義父とは良い関係を築いており、2人とも懐いていて、相手方の所へは行かないと言っている。

 写真撮影報告書1の写真はいずれも、本年1月9日の昼頃、抗告人代理人が写したものである。撮影場所は、抗告人の柳川市の両親の自宅である。写真の①は、抗告人の母とその夫と2人の未成年者が玄関で一緒に写っている写真である。代理人が①、④及び⑤の写真を撮り終え帰ろうとしている時に、玄関の方を見ると、長女Bが祖母に「抱っこ」とせがむ仕草をして甘えていたので、咄嗟に写したのが②及び③の写真である。この写真から見て明らかなように、未成年者両名は抗告人らと楽しそうに写っている。写真からは、未成年者らが穏やかな日常を送っていることが容易に窺える。現に1月8日午前8時から、未成年者らが生活している地域のいわゆる「△△」(正月の飾り等を燃やして、餅を焼いて食べる)という行事があり、そこに、祖父母に連れられて未成年者両名が来て、餅を食べたりして楽しんでいた。その光景は、祖母の再婚相手にも懐いていて本当の祖父と孫のようであった。上記した通り、祖母の再婚相手は地域のd小学校の用務員をしている現役である。
 このような現状を強制的に変更するのは、未成年者両名の成長発達のために極めて有害であるので、原審判は変更されるべきである。
 以上

 
以上:5,116文字
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R 3- 5- 9(日):長男・長女監護中夫に妻を監護者と指定し引渡を命じた家裁審判紹介1
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○「長女を夫、二女・三女を妻と分離して監護者を指定した高裁決定紹介」に続いて、監護者指定事件の審判例として平成28年12月16日福岡家裁審判(ウエストロージャパン)全文を2回に分けて紹介します。

○事案は、夫婦が別居後、相手方夫がその母及び伯父の補助を得て長男・長女を監護しているのに対して、申立人妻が、相手方夫に対し、長男・長女の監護者をいずれも申立人妻として、長男A(12歳・小学6年生)・長女B(5歳)を申立人妻に引き渡すことを求めたものです。文字数の関係で、先ず裁判所の判断のうち経緯と事情説明部分を紹介します。

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主   文
1 未成年者A及び未成年者Bの各監護者をいずれも申立人と定める。
2 相手方は,申立人に対し,未成年者A及び未成年者Bを引き渡せ。
3 手続費用は各自の負担とする。
 
理   由
第1 申立ての趣旨

 主文第1項及び同第2項に同旨。

第2 当裁判所の判断
1 一件記録(家庭裁判所調査官作成の調査報告書及び関連事件である当庁平成28年(家ロ)第1034号事件の記録を含む。)及び審問の結果によれば,以下の事実を認めることができる。
(1) 当事者等
 申立人と相手方は,平成14年10月3日に婚姻した夫婦であり,平成16年○月○日に長男である未成年者A(以下「長男」という。)を,平成23年○月○日に長女である未成年者B(以下「長女」といい,長男と長女を併せて「未成年者ら」という。)をそれぞれもうけた。
 現在,長男は12歳(小学6年生)であり,長女は5歳である。
 長女は保育園や幼稚園には通っていない。

(2) 本件申立てに至る経緯
ア 申立人と相手方は,同居し,未成年者らと4人で生活していた。
 相手方は,申立人の不貞行為を度々疑っていた。
 申立人は,平成28年以降,相手方と離婚することを考え,同人と話し合ったが,話はまとまらず,手続代理人弁護士らに相談したり,同年5月上旬頃,自ら離婚調停を申し立てたりした。
 申立人は,未成年者らを連れて相手方と別居するため,未成年者らを連れて,転居先を探すなどもしていた。

イ 申立人は,平成28年5月15日,未成年者らを知人に預け,日帰りで京都に行った。
 同月16日夜,相手方の兄(以下「父方伯父」という。)が,申立人の不貞を疑い,なぜ離婚したいのかなどと言いながら,申立人に対し,首を押さえつけるなどの暴行を加え,申立人は,緊急搬送された。
 申立人は,父方伯父による暴行を切っ掛けに,自宅に帰宅することができなくなったとして,同日以降,相手方及び未成年者らと別居するに至った。

ウ 申立人は,平成28年6月20日,本件申立て及び仮の地位を定める仮処分の申立てを行った。
 なお,申立人は,別居後,相手方らとの接触を控えるよう手続代理人らから助言され,また,相手方は,未成年者らの意向等を理由として,未成年者らと申立人との間の面会交流を拒んでいることから,申立人は,同人が長男の授業参観に行った際及び本件審判手続における交流場面観察を除いては,未成年者らと接することができていない。

(3) 未成年者らの監護状況の推移
ア 申立人と相手方の同居期間中は,主に申立人が炊事,掃除,洗濯,未成年者らの通院時の付添い,未成年者らの習い事の送迎等を行っており,未成年者らを監護していた。
 申立人は,自宅で英会話教室を開いており,保育園や幼稚園に通っていない長女もレッスンに参加させるなどして,その監護をしていた。

イ 申立人の別居後は,相手方が同人の母(以下「父方祖母」という。)及び父方伯父の補助を得て未成年者らを監護している。
 父方祖母は,週に一度程度,その夫のおかずを作り置きするなどのため,福岡県柳川市内の自宅に戻るが,それ以外は,相手方方において,炊事,掃除,洗濯を行うほか,長女と一緒に過ごしている。父方祖母が自らの家に戻っている間は,相手方が炊事を行っている。
 父方伯父は,相手方と約10年間,直接の交流がなかったが,申立人の別居後は,平成28年8月1日までの間,相手方らと同居して未成年者らの監護を補助してきた。父方伯父は,相手方との口論が増えたことから,一旦自宅に戻ったが,その後も,父方祖母の不在時等に相手方方を訪れ,未成年者らの監護を補助している。
 なお,未成年者らの身だしなみは整っており,その健康状態も良好である。

ウ 相手方は,本件審判手続において提出された申立人の主張書面を長男に読み聞かせるなどしている。

(4) 申立人の生活状況,監護方針等
ア 申立人は,自宅等で英会話教室を開いているところ,これによって平均15万円程度の月収が得られているとして,月謝袋の写し等を提出している。申立人によれば,平成28年12月6日時点で,同年11月分の月謝として18万9500円を受領したという。また,英会話教室のない曜日には,福岡市博多区内の会社において時給900円で1日6時間程度稼働する見込みであるとして,雇用契約書を提出するとともに,平成28年10月分及び同年11月分の給与明細書(同年10月分合計支給額1万0125円,同年11月分合計支給額2万5185円)を提出している。

イ 申立人は,2LDKの賃貸物件において,単身居住している。家賃は,5万6908円である。申立人の自宅には,長男の机やベッド等が準備されている。

ウ 申立人は,平成28年5月12日に原発性甲状腺機能亢進症及びバセドウ病と診断され,服薬や通院をしているが,就労,家事,育児に支障はなく,その健康状態に特段の問題は認められない。

エ 仮に申立人が未成年者らを引き取った場合,申立人は,長男を転校させずに現在の小学校に通わせる方針であり,長女についても,保育園に通わせることを視野に,問い合わせ,候補を絞るなどしている。また,長男に対しては,スキンシップをとり,相手方を非難しないよう配慮しつつ,ある程度の時間をかけて,申立人に捨てられたなどの誤解を解いていき,長女に対しても,スキンシップを十分にとり,その心身の安定に努める意向を示している。

 申立人は,ルーマニア国籍であるが,日本の永住権を取得しており,今後も日本で生活していく意向である。申立人の父母は他界しており,申立人の姉二人はルーマニアにいる。申立人は,監護補助者として,英会話教室の生徒や保護者,空手教室の保護者らの友人や知人数名の名前を挙げており,緊急時には,同人らに頼ることができる旨述べている。
 また,申立人は,相手方と未成年者らとの間の面会交流に応じる意向である。

(5) 相手方の生活状況,監護方針等
ア 相手方は,平成27年1月から,電気工事の自営業を営んでおり,これによって30万円から50万円程度の月収が得られている。出勤時間は,現場によって異なるが,午前6時頃出勤し,午後6時頃帰宅している。

イ 相手方は,肩書住所地所在の相手方の自宅(4LDK)において,未成年者らと同居しており,前記のとおり,父方祖母と父方伯父も,しばしば相手方方を訪れている。住宅ローンの返済額は,月額9万1499円である。

ウ 相手方や父方祖母の健康状態に特段の問題は認められない。
 父方伯父は,うつ病と診断され,仕事を辞めて生活保護を受給しながら週に1度通院している。

エ 相手方は,申立人との同居中,未成年者らに対し,「あっちへ行け。」等と言ったことはあるが,仕事で疲れていたこと等が原因であり,決して未成年者らを疎んじていたわけではなく,今後も,父方祖母や父方伯父と協力し合って未成年者らを監護していく方針である。長女の通園については,長女自身が行きたいとは言っていないことや,家庭が落ち着いていないことから,次年度以降の通園を考えている。
 また,相手方は,申立人は自分で問題を起こして出て行ったとの認識を有しており,未成年者らも申立人を嫌がっているのであるから,申立人と未成年者らとの間の面会交流には応じられないとしている。

(6) 長男の認識
 長男は,家庭裁判所調査官に対し,平成28年8月2日,要旨,次のとおり述べている。
 以前は,申立人と行動を共にすることが多く,相手方とは月に1回程度サッカーや魚釣りをしており,家族に対して何の不満もなかったが,平成28年4月頃から,申立人と相手方の喧嘩が増えた。申立人の様子が変わり,偶然見た申立人の携帯電話機のSNS上に,見たことのない男性の写真やハートマーク等があった。申立人は,「外国の友達。」と答えたが,「ああ,男を作っとるね。」と思った。

 申立人は,怒ったりすることが増え,長女が何かを壊したりした際,叩いたり,蹴ったりし,止めに入った長男に対し,「うるさい。黙れ。」等と言ったり,週末の夜から翌日の朝まで出掛けるようになった。とにかく申立人に腹が立っており,小学生がしないような考え(浮気)をしていることを許せないと思った。

 また,長男が相手方に対し,「申立人には他に男性がいるようだ。」と告げ,相手方がこれについて申立人に尋ねた際,申立人は,「長男の言うことを信じるならば,長男をあげる。」と言ったが,長男は,それを隠れて聞いており,申立人に捨てられたと感じ,ショックを受けた。申立人から捨てておいて,今更会いたいとか,一緒に住みたいと言われても無理である。

(7) 交流場面観察の実施状況等
ア 相手方は,家庭裁判所調査官に対し,交流場面観察に先立つ面接において,要旨,次のとおり述べている。
 未成年者らは申立人に会いたくないと言っている。
 相手方は,未成年者らに対し,これまでの申立人との不和を全て話しており,長女に対しては,「申立人は,男の人ができたので,男の人のところに行った。」と説明している。長男に対しては,長男自身が申立人の不貞を疑っていたこと等から,相手方から,調査報告書や申立人提出に係る書面を長男の目の前で読み上げ,全てを伝えている。長男は,「あいつ(申立人),うそばっかり言いよる。」と言っている。長男がそのように思うようになったのは,長男と申立人との仲が近かったため,裏切られた気持ちが強く,怒りを持っているのだと思う。

イ 相手方との間の交流場面観察において,未成年者らは,相手方と玩具を用いて楽しく遊ぶ様子が観察された。
 相手方や家庭裁判所調査官が退出すると,長男は,長女に対し,小声で,「ママに会いたくないと言って。」,「もうママのこと嫌いと言って。」と指示した。

ウ 申立人が入室すると,長男は,「出て行って。」と繰り返し述べた。長男は,申立人から「どうして。」と聞かれると,「うそ付いたけん。」と言い,「あの紙に書いとったよね。2回しか叩いてないって。何回叩いとると思うと。」と言った。長女は,立って両手を握りしめたまま,うつむいたり,長男や申立人を交互に見たりしていた。申立人が長女に「髪切って可愛いね。体操やってる。体柔らかくなった。」と話しかけると,長女はその都度うなずき,母に「見せてくれる。」と言われると,困ったような表情で長男を見た。長男が「出て行って。」と述べると,しばらく沈黙となった。

 申立人が「この日を楽しみにしていたよ。」と言うと,長男は,「ふーん。俺は全然楽しみじゃなかった。俺は学校でみんなと遊びたかったと。勉強もしたかったと。」と声を荒げ,涙を流した。申立人が「ごめんね。でも裁判所が決めたことだから。」と言うと,長男は,「自分で問題引き起こしとろうが。」と叫んだ。長男は,「俺からしたら捨てられたと思っとるから出て行って。」と言い,申立人から「捨てられたじゃないよ。」と言われると,「捨てられた。会いたくないって分かる。違うと言うなら,出て行ったらすぐ帰って来るやろ。」と言った。

 母が「救急車で運ばれたの覚えてる。」と尋ねると,長男は「覚えとるよ。うそばっかり言って。誰が信用するっていうとや。」と言った。
 申立人は,家庭裁判所調査官に対し,「どうしたらいいんですか,助けてくれないのですか。」と言い,一旦中断した後,「ママ,あなたたちのこと好きから出て行くよ。」と言って退出した。

エ その後,長男は,家庭裁判所調査官に対し,「そもそも会いたくなかった。」と言った。すると,長女は,「私は会いたかった。」,「ママはいい顔して笑顔になってた。やっぱりママの笑顔いい。」,「Aはママのことあんまり好きじゃないけど,私は大大だーい好き。」と言い,申立人との交流に応じる意思を示した。

オ 長女は,申立人が入室すると,駆け寄って抱きつき,キスをした。長女が泣き始めると,申立人は「ドントクライ。ドントクライ。」と言い,何をして遊びたいかと問いかけた。その後,申立人が長女を抱き上げたり,長女が申立人の求めに応じてブリッジを披露したりした。申立人が拍手をすると,長女は,申立人に抱きつき,その膝に乗り,「ママのことずっとずっと心配していた。」などと述べた。長女と申立人は,玩具を用いて様々に遊んだ後,終了時刻となり,家庭裁判所調査官が長女に対し,「お父さんの所に行こうか。」と言うと,長女は自ら申立人に抱きついた。申立人が長女に靴を履かせようとすると,長女は,靴の説明をし始め,なかなか部屋を出ようとしなかった。

カ 長男は,家庭裁判所調査官に対し,申立人との交流を拒否する理由について,申立人に捨てられた,2回しか叩いていないなどうそばかりであるなどと不満を述べた。また,1,2日で帰ってくればよいのに,帰ってこなかった,現在,申立人がどこに住んでいるのかについても疑問を持っているなどと涙を流しながら述べた。


以上:5,581文字
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R 3- 5- 9(日):長男・長女監護中夫に妻を監護者と指定し引渡を命じた家裁審判紹介2
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○「長男・長女監護中夫に妻を監護者と指定し引渡を命じた家裁審判紹介1」の続きで、平成28年12月16日福岡家裁審判(ウエストロージャパン)の判断部分です。

○小学6年の長男Aは、事実に反して申立人妻(母)から捨てられたとの思いがあり、相手方夫(父)は、申立人妻と長男・長女の面会交流に応じない構えを示しているところ、未成年者らの年齢,心情等に鑑みれば,未成年者らにとって,その福祉上,双方の親から大事にされ,愛されていることを実感することが望ましく,母である申立人との継続的な関わりやその愛情を実感することが重要として、本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すれば,未成年者らの各監護者をいずれも申立人と定めるとともに,相手方に対し,未成年者らを申立人に引き渡すことを命ずるのが相当としています。極めて妥当な判断です。

○長男Aは、「長男の言うことを信じるならば,長男をあげる。」との申立人妻(母)の言葉を聞いて、申立人妻(母)に捨てられたと感じ,ショックを受け、申立人妻(母)の方から捨てておいて,今更会いたいとか,一緒に住みたいと言われても無理であると、申立人妻(母)に強い反発を示しているにも拘わらず申立人妻が監護者に指定され、引渡も認められたことに相手方夫は、到底納得出来ないとして抗告しました。

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2 以上の事実関係を前提として,未成年者らの各監護者を申立人と定めること及び申立人に対し未成年者らを引き渡すことの当否について検討する。

(1) 申立人側の事情について
ア 前記認定事実に照らし,申立人は,未成年者らに対する愛情や監護意欲を備えているということができる。
 これに対し,長男は,申立人に捨てられたとの思いを強く表明しているが,申立人が家を出た経緯は,父方伯父から首を押さえつけられるなどして緊急搬送され,以降,帰宅できなくなったというものであり,かかる経緯や,別居からさほど間を置かずに本件申立てがされていること,申立人が手続代理人らから相手方らとの接触を控えるよう助言されていたこと,申立人は未成年者らを連れて相手方と別居するつもりであり,未成年者らを連れて転居先を探すなどしていたことも併せ考慮すれば,申立人は,その意に反して未成年者らと別居するに至ったというべきであり,申立人が未成年者らを捨てて別居したなどということはできない。

 また,長男は,申立人が,申立人の不貞の有無をめぐる相手方との言い争いの中で「長男の言うことを信じるならば,長男をあげる。」と言った際,捨てられたと感じ,ショックを受けたと述べている。申立人は,そのような言動には及んでいないとしてこれを否認しており,事実認定は困難であるが,仮に長男の述べるとおり申立人が前記言動に及んだものであるとすれば,長男が隠れて聞いていたことを申立人が知らなかったとしても,長男の福祉上,問題であるといわざるを得ない。他方で,申立人が未成年者らを連れて転居先を探すなどしていたことや本件申立てをしていること等の前記事実関係にも鑑みれば,申立人の本意とみることはできない。

イ 前記認定事実のとおり,申立人と相手方が同居していた際,申立人が主として未成年者らの監護養育を担っていたこと等に照らせば,申立人は,未成年者らの監護養育について相応の実績を有しているということができる。

 これに対し,相手方は,申立人が平成28年3月頃から食事の準備をしなくなったなどと述べているが,他方で,申立人は,同月頃,交通事故後の体調不良によって食事の準備ができないこともあったが,そのような場合には,知人から差入れをもらったり,外食に連れて行ったりして未成年者らに欠かさず食事を与えていたと述べており,相手方の述べる点から直ちに申立人の監護養育に問題があるということはできない。

 また,相手方は,申立人は,同じ頃,週末の夜に出掛けて行き,朝方に帰宅するようになったなどとも述べて申立人の不貞を疑っているが,他方で,申立人は,平成28年4月頃の夜,TOEIC等の勉強のためファーストフード店に行ったり,朝,ジョギングをしたりしていたなどと述べているところ,申立人の不貞を裏付けるものは提出されておらず,また,申立人が未成年者らのみを自宅に残して夜間外出していたなどともいえず,相手方の述べる点を踏まえても,申立人が子らの監護養育を怠っていたということはできない。

 さらに,長男は,申立人から何度も叩かれたなどと述べ,他方,申立人は,長男の臀部を2回叩いたことがあるなどと述べており,その言い分は食い違っている。長男が叩かれたと述べる具体的な状況は明らかでないが,仮に躾の一環であったとしても,子を叩く行為は問題といわざるを得ない。他方で,長男は,申立人に捨てられたと繰り返し述べており,さらには,相手方から本件審判手続における一連の資料を読み上げられ,申立人の不貞を疑い,申立人をうそ付きであると非難しており,父を良い人,母を悪い人と二分している様子がうかがわれるほか,別居以前は,長男と申立人との関係性に特段の問題はうかがわれず,相手方も,長男と申立人の仲は近かったなどと述べていること,別居後は,長男が一部誇大的な供述をしていること,相手方や父方伯父らの影響も否定し得ないこと等に鑑みれば,長男の前記供述をもって,申立人の監護者としての適格性を直ちに否定すべきであるとまではいえない。

 相手方は,その他に,申立人の監護者としての不適格性について,①申立人がうそ付きであること,②別居時に未成年者らの金を持ち出していること,③申立人は,「C」や「D」という男性らから物を買い与えられたり,金銭をもらったりしており,このような生活は未成年者らに悪影響であること,④申立人に経済力がないことを挙げている。

 しかし,前記①については,申立人と相手方との間で,申立人の不貞の有無をめぐり,その言い分は大きく食い違っているところ,前記のとおり申立人の不貞を裏付けるものは提出されておらず,また,相手方が指摘する申立人のその余のうそについても,これを裏付けるものは提出されていない。前記②については,申立人は,これを否定しているところ,同事実を裏付けるものもない。前記③については,申立人は,Cは,申立人がバーで働いているときに知り合ったタクシー運転手で,申立人より30歳程年上の「日本のお父さん」のような存在であり,Cとの間で男女関係はないが,未成年者らもCと一緒に出掛けることがあり,Cに物を買ってもらったことがあったこと,申立人が,Cに車検代を立て替えてもらった礼として,Cを同人の職場まで車で送迎し,送迎代としてCから数千円を受け取ったことがあったことを認めている。

また,申立人は,Dも申立人より30歳程年上の「日本のお父さん」のような存在であり,男女関係はないが,相手方が無職の間の家計を助けるため,相手方の助言もあり,金銭の援助を受けたことがあったことも認めている。もっとも,前記のとおり同男性らと申立人の不貞を裏付けるものは提出されておらず,また,相手方が述べ,申立人が自認する事実関係から直ちに申立人の不貞や監護者としての不適格性をいうこともできない。

前記④については,確かに,申立人は,通帳の写しを提出するなどしておらず,その経済的基盤は心許ないといわざるを得ない。他方で,申立人の自宅には,長男の机やベッド等が準備されており,申立人は,自宅等で英会話教室を開き,これを主な収入源とするとともに,その合間に福岡市博多区内の会社においても稼働するなど,経済的にも未成年者らの受け入れ態勢を整えつつあるということができる。

(2) 相手方側の事情について
ア 前記認定事実に照らし,相手方も,未成年者らに対する愛情や監護意欲を備えているということができる。

イ 前記認定事実のとおり,相手方は,申立人の別居後,父方祖母らの全面的な支援を受けながら,未成年者らの監護養育を行っている。
 相手方の月収は,30万円から50万円程度であり,その経済的基盤は安定している。

 これに対し,申立人は,相手方の監護者としての不適格性について,
①相手方は,精神的に未成熟な長男の前で,申立人の主張書面を読み聞かせるなどして長男の申立人に対する不信感を増幅させ,その心の傷をより深いものとしていること,
②相手方は,申立人と未成年者らとの間の面会交流を一切拒否する姿勢を示していること,
③父方伯父は,申立人に暴行を加え,これに起因して,申立人は,その意思に反して未成年者らと別居するに至ったものであるところ,その後,父方伯父は,相手方と同居して未成年者らを監護していたものの,相手方との意見の食い違いから家を出て行き,ところが,その後も頻繁に相手方方に滞在して未成年者らを監護しているところ,父方伯父は,申立人を待ち伏せして接触したりするなど規範意識に欠ける行動がみられることや,精神疾患を抱え,通院中であることから,監護補助者としての適格性に疑問があること,
④父方祖母も,長女を連れて父方祖母方に帰るなど,未成年者らを分離させているおそれがあること,その年齢にも鑑み,父方祖母による監護の継続性には不安があること
を挙げている。

 前記①については,相手方は,長男には真実を伝えなければならないなどと述べているが,申立人不在の状況下で,その主張書面等をそのまま読み上げること自体,長男の福祉に沿わないものといわざるを得ない。なお,長男は,事実に反して申立人に捨てられたとの心情を有しているところ,相手方は,申立人が自分で問題を起こして出て行ったと述べて申立人に対する非難に終始している。

前記②については,相手方は,長男は,交流場面観察後,「なんでこんな無駄なことをした。なんでうそ付きに会わないかんと。」と言っており,長女も「もういい。」と言っているとして,未成年者らの意向等を理由として,面会交流に応じない構えを示している。

この点,相手方も,別居前は申立人と長男の仲が近かったと述べていること,長男は,事実に反して申立人に捨てられたとの思いを有していること,長女も,交流場面観察において,母を求める気持ちを表現していること等に加え,未成年者らの年齢に鑑みれば,未成年者らの前記意向等を理由に面会交流に応じないことは,未成年者らの福祉上,問題が大きいといわざるを得ない。前記③④については,相手方は,父方祖母や父方伯父の監護補助に頼る部分が大きいところ,その監護の安定性には若干の疑問があるといわざるを得ない。


(3) 以上のとおり,申立人には,経済的基盤や,長男との関係性の点で不安があるが,他方で,相手方にも,申立人の意に反する別居を境に変化した申立人と未成年者らとの間の関係性の改善に目が向けられていないことや,その監護の安定性等に問題がある。

 この点,前記認定事実のとおり,別居前の未成年者らの主たる監護者は申立人であり,申立人は相応の監護実績を有し,申立人が監護者としての適格性を欠くというまでの事情を裏付けるものはないこと,申立人による未成年者らの受け入れ態勢は整いつつあること,交流場面観察の実施状況に照らせば,長女は母である申立人を求める気持ちを表しており,申立人との愛着関係がうかがわれること,別居以前の長男と申立人との関係性について,相手方は,長男と申立人の仲は近かったなどと述べており,

長男も,以前は申立人と行動することが多かった旨述べているところ,申立人と長男との関係性の悪化は申立人との別居が契機となったものであり,これには,父方伯父が申立人の首を押さえつけるなどし,申立人が緊急搬送され,以降,自宅に帰ることができなくなったという経緯が介在しており,長男は,その後,申立人不在の状況が続く中で,相手方や父方伯父,父方祖母と生活し,申立人に捨てられたなどの思いを強くしていること,

かかる状況や未成年者らの年齢,心情等に鑑みれば,未成年者らにとって,その福祉上,双方の親から大事にされ,愛されていることを実感することが望ましく,母である申立人との継続的な関わりやその愛情を実感することが重要であるが,相手方は,申立人に対する非難に終始し,かかる重要性に思いを寄せておらず,面会交流を拒んでいること,他方で,申立人は,相手方と未成年者らとの間の面会交流に応じる構えを示していること,未成年者らのきょうだい仲は良好であり,きょうだい不分離が望ましいこと,その他,本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すれば,未成年者らの各監護者をいずれも申立人と定めるとともに,相手方に対し,未成年者らを申立人に引き渡すことを命ずるのが相当である。


3 よって,主文のとおり審判する。
 福岡家庭裁判所
 (裁判官 松井ひとみ)
以上:5,261文字
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R 3- 5- 8(土):長女を夫、二女・三女を妻と分離して監護者を指定した高裁決定紹介
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○「父と生活する小学6年生について父を監護者と指定した高裁決定紹介」の続きで、監護者指定事件の裁判例で令和2年2月18日東京高裁決定(家庭の法と裁判30号63頁、判時2473号88頁)を紹介します。

○相手方夫が,別居中の妻である抗告人に対し,未成年者らの監護者を相手方夫と指定するとともに,現在,抗告人妻の下で養育されている二女及び三女を相手方に引き渡すことを求め、抗告人妻が,相手方夫に対し,未成年者らの監護者を抗告人妻と指定するとともに,現在,相手方夫の下で養育されている長女を抗告人妻に引き渡すことを求め、原審長野家庭裁判所飯田支部(判例掲載なし)は,未成年者らの監護者をいずれも相手方夫と指定し,二女及び三女を相手方夫に引き渡すよう命じました。

○そこで抗告人妻が抗告し、抗告審令和2年2月18日東京高裁は,姉妹分離の点については,監護者指定に当たっての一考慮要素にすぎないとした上で,二女及び三女との関係では,従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致するとして,長女の監護者を相手方夫と,二女及び三女の監護者を抗告人妻とそれぞれ定め,抗告人妻及び相手方夫のその余の申立てはいずれも却下しました。

○原審は、未成年者3人とも夫を監護者と指定する珍しい例でした。抗告審でも長女については、家庭裁判所調査官に対し,抗告人妻の異性関係についての不信感や,同居中の抗告人の生活態度等についての不満を述べ,抗告人妻との同居生活を拒否する意向を示し、この意向は真摯なものと認められ、現在,11歳という長女の年齢にも照らすと,その意向は,一定程度尊重すべきものであるとし、相手方夫を監護者としました。

○二女と三女は,長女とは異なり,抗告人妻と生活することに何ら拒否感を有しておらず,抗告人夫との関係性も良好であり,健やかに成長していることが認められ、従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致するものと認められるとして、抗告人妻を監護者と定めるのが相当としました。

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主   文
1 第1事件の原審判を次のとおり変更する。
(1)未成年者Cの監護者を相手方と定める。
(2)相手方のその余の本件申立てをいずれも却下する。
2 第2事件の原審判を次のとおり変更する。
(1)未成年者D及び同Eの監護者をいずれも抗告人と定める。
(2)抗告人のその余の本件申立てをいずれも却下する。
3 手続費用は,第1事件,第2事件とも,原審及び当審を通じ,各自の負担とする。

理   由
(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,第1事件の原審判に同じ。)
第1 抗告の趣旨
1 第1事件について
(1)原審判を取り消す。
(2)相手方の各申立てをいずれも却下する。
(3)((2)と択一的に)本件を長野家庭裁判所飯田支部に差し戻す。

2 第2事件について
(1)原審判を取り消す。
(2)ア 長女,二女及び三女の監護者をいずれも抗告人と定める。
イ 相手方は,抗告人に対し,長女を引き渡せ。
(3)((2)と択一的に)本件を長野家庭裁判所飯田支部に差し戻す。

第2 事案の概要
1 本件は,〔1〕夫である相手方において,別居中の妻である抗告人に対し,未成年者らの監護者を相手方と指定するとともに,現在,抗告人の下で養育されている二女及び三女を相手方に引き渡すことを求め(第1事件),他方,〔2〕抗告人において,相手方に対し,未成年者らの監護者を抗告人と指定するとともに,現在,相手方の下で養育されている長女を抗告人に引き渡すことを求めた(第2事件)事案である。

 原審は,第1事件については,未成年者らの監護者をいずれも相手方と定め,二女及び三女を相手方に引き渡すように抗告人に命じ,第2事件については,抗告人の各申立てをいずれも却下する審判をしたため,抗告人がこれらを不服として即時抗告をした。

2 抗告理由の要旨
(1)同居中,未成年者らの監護を全般的に担ってきたのは抗告人である上,二女及び三女については,別居後も継続して抗告人の下で安定して生活しているのであるから,監護の継続性の原則からして,抗告人を監護者として指定すべきことは明らかである。原審判は,姉妹分離の解消が最も子の利益に資する旨説示したが,これまで抗告人と一緒の時間を過ごしてきた低年齢の二女及び三女を相手方に引き渡すことにより不可避的に発生する母子分離の及ぼす弊害の方がはるかに深刻なものである。

抗告人と相手方の家は近く,小学校も同じであるから,現在でも継続的に姉妹の交流は図られているし,そもそも,仕事で長時間自宅を不在にする相手方が,長女のみならず,未だ幼い二女及び三女の監護をも継続的に行うことは,現実的に不可能であって,あえて二女及び三女をそのようなリスクの高い環境に置くべき理由は全く存在しない。

(2)長女については,現在は相手方宅に戻っているものの,出生から別居までの10年弱もの期間,抗告人が長女の監護を担ってきたという実績を重視すべきである。

長女は,同居中,抗告人が食事を作ってくれなかったから相手方と暮らしたい旨家庭裁判所調査官に発言したが,そのような事実は存在しないのであり,長女の上記発言は,抗告人の不貞行為を疑って探偵を依頼するなどしていた相手方の影響を強く受けてされたものと考えられる。実際には,相手方こそが,長女を放置して,女性宅に連日,宿泊しており,明らかに子の福祉に反する状況にあるから,長女の監護者を抗告人と定め,長女が二女及び三女とも一緒に生活できるようにすべきである。

3 相手方の主張の要旨
(1)抗告人が未成年者らを連れて別居を開始した直後,長女は,自らの意思で相手方の下に戻ってきて,それ以降,相手方と生活しており,その後,抗告人宅に遊びに行くことはあっても,宿泊したことはほとんどないのであるから,このような長女の一貫した行動が,単に相手方への忠誠心からとられた行動であるはずがない。

家庭裁判所調査官による調査の当時,小学校4年生であった長女は,十分に自分の意向を表明できる年齢であったから,その意向を重視すべきである。なお,相手方が長女を放置して女性宅への宿泊を繰り返しているというのは全くの事実無根であって,長女の監護状況に問題点はなく,長女は,生活面でも情緒面でも安定している。

(2)相手方の自宅は,二女及び三女にとって,別居前まで生活していた馴染みの深い住居であるし,相手方の両親の協力も含めた監護態勢が確立しているから,相手方が二女及び三女を監護することに何の問題もない。

監護の継続性の原則は,あくまで1つの考慮要素にすぎないものである上,相手方は,同居期間中から,未成年者らの朝食の準備,登校・登園準備等,積極的に監護を行ってきており,未成年者らの性格や行動様式を十分理解して,情緒的な結びつきも強く有しているし,相手方の両親も,抗告人と相手方が夫婦で外出する際に,未成年者らの監護を任されることが何度もあった。二女及び三女が相手方に引き渡されることにより,同人らに一定の負担が生じるとしても,姉妹分離の解消により実現できる利益は,それを上回るものである。

 また,抗告人は,不貞相手と疑われる男性や友人の協力を得て,相手方の生活状況を監視し,自らに有利な証拠を作出しようとしているところ,このような抗告人の問題行動は,いたずらに紛争を激化させ、父母の信頼関係を失わせ,ひいては,未成年者らの福祉に反することになるから,監護者としての適格性を疑わせるものである。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所が判断に先立ち認定する事実
は,以下のとおり補正するほかは,第1事件の原審判「理由」第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 
(1)3頁4行目冒頭から14行目末尾までを削る。

(2)4頁4行目冒頭から6行目末尾までを以下のとおり改める。
 「別居直前の平成30年3月には,抗告人が,未成年者らを連れて,上記男性が賃借しているアパートを訪れたこともあった。」

(3)5頁2行目の「6月にかけて,」の後に「後記(6)のとおり,」を加え,同25行目の「本件の」を「第1事件原審の」と改め,6頁4行目の「81号」の後に「。第2事件原審」を加える。

(4)6頁7行目冒頭から7頁15行目末尾までを以下のとおり改める。
 「その後,平成30年8月,家庭裁判所調査官は,抗告人宅や相手方宅をそれぞれ訪問し,未成年者らの監護状況を確認したり,未成年者らが通学・通園する小学校や保育園に対する調査を行ったりしたが,それらの結果,特段の問題点は見当たらなかった。また,家庭裁判所調査官は,同年10月,未成年者らの意向調査を行った。」

(5)9頁2行目冒頭から5行目末尾までを削り,同19行目末尾に行を改めて以下のとおり加える。
「(9)長女は,健康上の問題はなく,出席状況は良好であるものの,学習面では国語や算数で努力を要する課題が指摘されているほか,「学習で使用する物や宿題を忘れずに持ってくることができる。」等の項目で改善を要する旨の評価を受けている。

相手方は,宿泊を伴う出張で自宅を不在にすることが時々あるものの,そのような時は,相手方の母親が宿泊して長女の面倒を見ている。相手方は,連絡帳を活用して長女の担任教諭とのコミュニケーションを積極的に図っており,令和元年10月頃には,長女が友人と自宅で遊んでいた際,好きな子のことでからかわれたことが原因で,その友人にハサミを向けるといったトラブルが発生したが,長女を連れて謝罪に行き長女への指導を行った上で,その旨を担任教諭にも報告した。

 二女は,歯科検診で些細な異常が見つかったほかは,健康状態に特段の問題はなく,生活面,対人関係面での改善項目の指摘も受けてはいない。学習面で,図書館の利用を課題として指摘された際は,抗告人が積極的に働きかけを行い,その結果,二女は,意欲的に読書に取り組むようになった。

 三女は,必要な予防接種を接種しており,健康状態に問題はない。保育園への登園状況も良好であり,抗告人は,家庭での三女の状況を細かく担任保育士に伝えており,特に,発熱,胃腸炎等の体調不良時の報告,対応を適切に行っている。抗告人は,保育園の行事についても積極的にアイデアを出すなど,協力的な姿勢で臨んでいる。」

2 長女の監護者について
(1)引用に係る第1事件の原審判「理由」第3の1の認定事実(以下,単に「認定事実」という。)(2)及び(4)(いずれも補正後のもの)のとおり,長女の従前の主たる監護者は抗告人であったと認められるものの,抗告人に別居先に連れて行かれた長女は,その翌日,自らの意思で相手方宅に戻り,その後,現在までの2年弱にわたって,相手方に監護されていることが認められる。

そして,長女は,家庭裁判所調査官に対し,抗告人の異性関係についての不信感や,同居中の抗告人の生活態度等についての不満を述べたりしながら,抗告人との同居生活を拒否する意向を示しているところ,上記の長女の行動内容も併せ考慮すると,長女の上記意向は真摯なものと認められるし,現在,11歳という長女の年齢にも照らすと,その意向は,一定程度尊重すべきものである。

 また,相手方の下での長女の監護状況を見るに,相手方は,仕事のために,平日や土曜日の日中は不在にしており,また,宿泊を伴う出張もあるものの,相手方の父母が中心となって監護補助に当たっており,家庭裁判所調査官による調査の結果を踏まえても,その監護態勢に具体的な問題は見当たらない(認定事実(6)(補正後のもの)参照)。当審において提出を求めた資料を精査した結果,長女の生活態度等に若干不安定な部分がうかがえるものの,相手方は,それに適切に対処しており(認定事実(9)(補正後のもの)参照),格別問題視すべき状況にあると評価することはできない。
 以上によれば,別居前の長女の主たる監護者が抗告人であったことを考慮しても,現時点においては,長女の監護者を相手方と定めるのが相当である。

(2)これに対し,抗告人は,前記第2の2(2)のとおり,〔1〕別居までの長期間の監護の実績があること,〔2〕長女の発言が相手方の影響を受けたものであること,〔3〕相手方が連日,長女を放置して女性宅に宿泊していること等を理由として,長女の監護者を抗告人と定めるべきである旨主張する。

 しかし,長女の出生後,別居するまでの監護の実績は,監護者を定めるに当たっての重要な考慮要素ではあるものの,本件においては,前記(1)で説示したとおり,長女が,自ら抗告人の下を離れて相手方宅に戻り,その後,2年弱もの間,相手方が長女を監護しているといった事情こそを重視すべきである。

そして,抗告人と相手方がそれぞれ他方の不貞行為を疑って探偵会社に素行調査を依頼するといった状況にあること等からすると,長女が両親の対立の影響を受けている可能性は否定し得ないものの,長女は,抗告人に別居先に連れて行かれた直後の時点で,自らの意思で,相手方の下に戻る意向を抗告人に伝えているのであるから,それが相手方の影響によるものであったとは考え難いし,その後,抗告人と長女が面会する機会がそれ相応にあった中でも,長女の意向が変化したことはうかがえず,引き続き相手方宅での生活を選択し続けていることからすると,長女の上記意向は,自らの考えに基づく部分が大きいというべきである。

また,相手方が長女を放置して女性宅に宿泊しているといった事実を認めるに足りる資料は存在せず,審理終結の直前に抗告人から提出された調査報告書(乙40)が,相手方が長女を連れて女性宅に宿泊した事実を示すものであるとしても,その経緯等は判然としないから,仮に,そのような事実があったとしても直ちに相手方が長女の監護者としての適格性を欠くということにもならない。
 したがって,抗告人の上記主張を採用することはできない。

3 二女及び三女の監護者について
(1)二女及び三女については,認定事実(2),(6)及び(9)(いずれも補正後のもの)のとおり,同居中から抗告人が主として監護を担当しており,別居後も現在に至るまで,抗告人と同居して生活しているところ,その監護状況に特段の問題点は認められない。また,二女と三女は,長女とは異なり,抗告人と生活することに何ら拒否感を有しておらず,抗告人との関係性は良好であり,健やかに成長していることが認められる。

 そうすると,二女及び三女については,従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致するものと認められるから,抗告人を監護者と定めるのが相当である。

(2)これに対し,相手方は,前記第2の3(2)のとおり,〔1〕住居環境や監護補助者の点も含め,相手方には,二女及び三女を監護する態勢が整備されていること,〔2〕相手方は,未成年者らの性格や行動様式を十分理解し,情緒的な結びつきを強く有していること,〔3〕抗告人の問題行動が監護者としての適格性を疑わせるものであること,〔4〕本件では,姉妹分離の解消の利益を重視すべきであること等を理由として,二女及び三女の監護者を相手方に定めるべきである旨主張する。

 しかし,従前,いずれの親に監護されていたかといった人的なつながりと比較すれば,物理的な居住場所に馴染みがあるか否かという点は大きな問題とはいえないし,同居中,相手方が保育園への送迎等の一定の監護を担当したり,あるいは,相手方の両親が二女及び三女を時折預かって面倒を見たりしていたからといって,これらが主たる監護者であった抗告人の監護実績に匹敵するものであったとは到底認め難い。

実際上の問題として,長女1人を監護している現状と比較して,いまだ幼い二女や三女も引き取って日常的に監護する場合の負担が格段に大きくなることは明らかであって,相手方にその態勢が整っているといえるかは疑問が残るところであるし,面会交流において,二女や三女が父親である相手方のことを慕っていることは認められるものの,それが抗告人に対する以上の情緒的な結び付きであると認めるべき事情も見当たらない。

また,相手方の指摘する抗告人の問題行動の存否はさて措くとしても,いずれにせよ,抗告人の下での二女及び三女の監護状況に特段の問題はなく,二女及び三女が健やかに成長していると認められることは,前記説示したとおりである。

 なお,一般的に,低年齢の姉妹を同一の監護者の下で養育した方が望ましいとはいい得るものの,これは,監護者を定める上での一考慮要素にすぎないものであって,父母のいずれを監護者と定めるのが子の福祉に合致するのかについては,個々の未成年者ごとに個別具体的に検討すべき事柄である。そして,二女及び三女との関係では,従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致すると考えられることは,前記説示したとおりであるし,長女と二女及び三女とで監護者を異ならせたとしても,本件においては,抗告人と相手方が比較的近い距離に居住しており,実際に,長女と二女・三女間の交流も相当程度頻繁に行われていることが認められるから,監護親が異なることによる弊害が大きいとはいえない。
 したがって,相手方の上記主張を採用することはできない。

4 引渡し申立てについて
 前記2において説示したとおり,長女の監護者は相手方と指定すべきであるから,長女の引渡しを求める抗告人の申立ては理由がなく,また,前記3において説示したとおり,二女及び三女の監護者はいずれも抗告人と指定すべきであるから,二女及び三女の引渡しを求める相手方の申立ては理由がない。

第4 結論
 よって,長女の監護者を相手方と,二女及び三女の監護者を抗告人とそれぞれ定め,抗告人及び相手方のその余の申立てはいずれも却下すべきところ,二女及び三女の監護者を相手方と定め,相手方への引渡しを命じ,抗告人の申立てを全て却下した第1事件及び第2事件の原審判はいずれもこの点においては失当であるから,各原審判を上記のとおり変更することとして,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 今岡健 裁判官 橋爪信)

以上:7,461文字
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R 3- 5- 7(金):父と生活する小学6年生について父を監護者と指定した高裁決定紹介
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○「父と生活する小学5年生について母を監護者と指定した家裁審判紹介」の続きで、その抗告審である令和元年6月21日大阪高裁決定(判タ1478号94頁)全文を紹介します。

○相手方母が、別居中の抗告人父に対し、相手方母と抗告人父の子である未成年者ら双子で小学5年生の長男及び長女の監護者の指定及び抗告人宅において抗告人父が監護している長男の引渡し及び審判前の保全処分を申し立て、原審平成31年1月11日大阪家裁審判は相手方の申立てを認容し、これに対し、抗告人が抗告していました。

○抗告審大阪高裁決定は、未成年者(長男)の従前の監護状況、今後の監護態勢、未成年者と当事者双方との心理的結び付き、未成年者の心情等を総合すると、抗告人父において未成年者を監護する方が、未成年者の心理的安定が保たれ、その健全な成長に資し、未成年者の福祉に適うものと認められ、また、未成年者は、相手方に引き取られることを強く拒んでおり、従前と同様、自ら抗告人宅に戻る可能性が高いから、相手方母を未成年者の監護者に指定し、その引渡しを命ずることは相当ではなく、抗告人を未成年者の監護者と指定するのが相当であるとして、原審判中長男に関する部分は相当ではないとして、これを取り消し、長男については抗告人父を監護者と指定し、相手方母の長男の引渡しに係る申立てを却下しました。

○子供の監護者或いは親権者争いは、先に子供を引き取った方が勝つと言われていますが、この事案は正にその典型です。双子の小学生の子供について、女の子は母が、男の子は父が引き取り、母が父も元にいる男の子が心配で、監護者を母にすることとその引渡を求め、原審では認められました。しかし、抗告審では、原審保全処分で、父から母への長男の仮の引渡を求めたのに対し、長男自身が強く抵抗して、引渡が実現できないでいたことも抗告審で父が長男の監護者と指定された大きな理由の一つです。

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主   文
1 原審判中未成年者に関する部分を取り消す。
2 未成年者の監護者を抗告人と指定する。
3 相手方の子の引渡しに係る申立てを却下する。
4 手続費用は原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙即時抗告状,平成31年1月28日付け即時抗告状訂正申立書,即時抗告申立理由補充書,平成31年3月29日付け即時抗告状訂正申立書(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判中未成年者に関する部分を取り消した上,未成年者の監護者を抗告人と指定し,相手方の子の引渡しに係る申立てを却下すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原審判の理由説示のとおりであるからこれを引用する。
(1)原審判2頁5行目の「長男」を「未成年者」に改め,以下も同様とし,6行目の「長女」の次に「(二卵性双生児,以下「未成年者ら」という。)」を,「住所地の」の次に「抗告人所有の」をそれぞれ加え、14行目の「もみ合い」から15行目の「殴った」までを「諍いとなり抗告人が相手方を殴るに至った」に改め,22行目の「転居した」の次に「(以下「本件別居」という。)」を加え,23行目の「長男は」を「未成年者(当時小学校4年生,10歳)は,抗告人と会えず,ラグビーにも行けず,友達を家に呼ぶこともできないことが嫌になり」に,25行目の「1月頃」を「1月上旬」にそれぞれ改める。

(2)同3頁5行目の「遅く」を「遅い日もあり」に改め,22行目の「10月生」の次に「の77歳」を加え,末行の「調査官」を「原審の家庭裁判所調査官」に改める。 

(3)同4頁2行目の「午後9時頃であり,」を「概ね午後7時ころであり,帰宅後は未成年者と過ごしているが,帰宅時間が深夜になることもある。」に改め,4行目の「10月生」の次に「の81歳」を加え,6行目の「1月頃」を「1月上旬」に,同12行目の「5年生」を「6年生(11歳)」に,13行目の「,発熱で1日欠席したほか」を「殆ど」に,14行目の「大きな」を「特段の」に,21行目の「長男は,」を「未成年者(当時小学校4年生,10歳)は,原審で実施した」にそれぞれ改め,24行目の末尾に改行して「未成年者は,当審で実施した家庭裁判所調査官の面接(平成31年4月17日)において,抗告人との同居の継続を強く希望し,長女とは自由に会いたいと述べた。

他方,未成年者は,相手方に対する思慕の情はあるものの,相手方と同居すればラグビーができず,友達を自宅に呼んで遊べないことなどを理由として相手方との同居を拒んでいる。また,未成年者は,相手方が未成年者の意見を聞かずに本件別居をしたことや,相手方が未成年者との面会交流の日を間違えたことに失望感や不信感を募らせ,相手方に対する拒否感を強めている。(未成年者が年齢(10歳ないし11歳)相応の理解力,判断力を有しているとみられることに照らすと,上記意向は,真意に基づくものであると認められる。)」を加える。

(4)5頁17行目の「5年生」を「6年生」に,18行目の「発熱で1日欠席したほか」を「殆ど」にそれぞれ改め,21行目から25行目までを削る。

(5)同6頁1行目の「第1回調停期日」の次に「(平成30年4月13日)」を加え,2行目の「長男及び長女」を「未成年者ら」に,19行目の「友達を」を「友達と」にそれぞれ改め,20行目の「傾向にあり,」の次に「前記(2)イ(ウ)(未成年者の心情)のとおり,相手方に不信感等も抱いており,」を加える。

(6)同7頁5行目の「保全処分(」の次に「未成年者の引渡し,」を加え,9行目の「に移行した」を「が再開した」に,11行目の「及び」から14行目までを「を申し立てたが,平成30年11月14日に不成立となり,相手方は,平成31年3月18日,大阪家庭裁判所に抗告人を被告として離婚訴訟を提起した(同裁判所平成31年(家ホ)第102号)。」にそれぞれ改め,同行の末尾に改行して次のとおり加える。
 「原審裁判所は,平成31年1月11日,〔1〕本件各審判事件について,未成年者らの監護者をいずれも相手方と指定し,抗告人に対して未成年者を相手方に引き渡すよう命じる旨の審判をし,〔2〕審判前の保全処分について,抗告人に対して未成年者を仮に相手方に引き渡すよう命じる旨の審判をした(以下「原審保全処分」という。)。

 抗告人は,本件各審判事件及び審判前の保全処分について未成年者に関する部分をいずれも不服として,同年1月28日それぞれ即時抗告した。
 相手方は,同年2月3日,抗告人宅を訪れ,抗告人に対し,原審保全処分に基づいて未成年者の任意の引渡しを求めたが,未成年者が強く抵抗したため未成年者の引渡しを受けられなかった。
 そこで,相手方は,原審裁判所に,同年2月18日,審判前の保全処分(子の引渡)を申し立て(大阪家庭裁判所平成31年(家ロ)第10027号),抗告人に対して未成年者の仮の引渡しを求めている。同事件は,本件(本案)が係属する当裁判所へ送付された。」

(7)同7頁16行目から9頁9行目までを次のとおり改める。
 「(1)上記認定事実によれば,相手方は,本件別居までは未成年者の主たる監護者であり,その監護状況にも特段の問題はなく,今後,未成年者を監護する監護態勢も整っているといえる。

(2)他方,未成年者が抗告人宅に戻った後の,抗告人による未成年者の監護状況にも特段の問題はなく,監護補助者である父方祖母は,77歳と高齢ではあるが健康であって,今後も監護補助を続けられる見込みである。

 なお,未成年者はみずからの意思に基づいて抗告人宅に戻ったのであり,抗告人から不相当な働き掛けがあったことはうかがえないから,抗告人が未成年者の監護を開始したことが違法,不当とはいえない。また,原審がした審判前の保全処分に係る未成年者を相手方に仮に引き渡すことを命じる審判後も,抗告人が未成年者の監護を継続しているのは,未成年者が相手方に引き渡されることを強く拒んだために任意の引渡しができなかったためであるから,そのことをもって抗告人の監護が違法であるとか,監護者として不適格であるとまではいえない。

(3)また,未成年者は,本件別居前から抗告人との父子関係が良好であり,抗告人との同居の継続を強く求めている。他方,未成年者は,相手方に対する不信感等もあり,相手方との同居を拒んでいる(相手方との面会交流にも消極的である。)。


(4)さらに,未成年者と長女は,いずれも小学校6年生(11歳)であり,未成年者らの兄妹関係は既に良好に形成されている。また,抗告人宅と相手方宅は,いずれも未成年者らが通う小学校の校区内にあり,相互の距離も近く,未成年者と長女は自由に交流することができる。そうすると,未成年者と長女の監護者を抗告人と相手方に分離しても,既に形成されている兄妹間の心理的結び付きに大きな影響を与えるものではないから,未成年者らの福祉が害されることにはならない。

(5)以上の未成年者の従前の監護状況,今後の監護態勢,未成年者と当事者双方との心理的結び付き,未成年者の心情等を総合すると,抗告人において未成年者を監護する方が,未成年者の心理的安定が保たれ,その健全な成長に資し,未成年者の福祉に適うものと認められる。また,未成年者は,相手方に引き取られることを強く拒んでおり,従前と同様,自ら抗告人宅に戻る可能性が高いから,相手方を未成年者の監護者に指定し,その引渡しを命ずることは相当ではない。

 したがって,抗告人を未成年者の監護者と指定するのが相当である。そうすると,相手方を未成年者の監護者に指定することを前提とする子の引渡しの申立ては,理由がないから却下すべきである。」

2 よって,原審判中未成年者に関する部分は相当ではないからこれを取消した上,抗告人を未成年者の監護者と指定し,相手方の子の引渡しに係る申立てを却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 三宅康弘)
以上:4,151文字
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R 3- 5- 6(木):父と生活する小学5年生について母を監護者と指定した家裁審判紹介
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○申立人母が、別居中の相手方父に対し、申立人と相手方の子である未成年者ら(長男及び長女)の監護者の指定及び相手方宅において相手方が監護している長男の引渡し及び審判前の保全処分を申し立てました。長男・長女は双子で長女は申立人母と生活していますが、長男は父と生活しており、長男については父から母への引渡を求めました。

○これに対し、長男及び長女については、いずれも小学5年生であり、いまだ日常生活において身の回りの十分な世話を必要とする年齢であるといえ、相手方においては、単独監護の経験は極めて乏しく、相手方父は、長男が相手方宅へ転居した後も、長男の身の回りの監護をほとんど父方祖母に任せており、その依存度は非常に高く、仮に父方祖父母のいずれかが健康上の問題を抱えた場合には、相手方の現在の監護態勢の維持が難しくなるなど、監護に不足が生じる可能性があり、長女のみならず長男についても、申立人が引き続き監護養育することが未成年者らの福祉に沿うものとして、未成年者らの監護者をいずれも申立人と指定し、長男については申立人に引き渡すことが相当であるとして、申立人の申立てを認容した平成31年1月11日大阪家裁審判(判タ1478号97頁)全文を紹介します。

○審判前の保全処分についても申立人母に対して、未成年者長男を仮に申立人母に引き渡すよう命じる旨の審判をして、申立人母は、相手方父に対し、任意の引渡しを求めましたが、未成年者長男が強く抵抗し、長男の引渡しを受けられなかったようです。

*********************************************

主   文
1 未成年者らの監護者をいずれも申立人と指定する。
2 相手方は,申立人に対し,長男を引渡せ。
3 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨

 主文1及び2同旨

第2 当裁判所の判断
1 本件記録(当庁平成30年(家イ)第943号乃至同第945号事件記録を含む。)並びに当庁平成30年(家ロ)第10003号及び当庁平成29年(家イ)第4443号各事件記録によれば次の事実が認められる。
(1)別居に至る経緯
ア 申立人(昭和47年*月*日生)と相手方(昭和44年*月*日生)は,平成16年6月6日に婚姻し,平成19年*月*日に長男及び長女をもうけ,相手方肩書住所地のマンション(以下「相手方宅」という。)で同居して生活していた。

イ 平成29年7月4日,申立人は,自宅の子ども部屋においてあったお菓子の箱を,相手方が子らに買い与えて間もないものであるとは知らず,長期間放置されているものと誤解してゴミ箱に捨てた。これに対し,長男は腹を立てて癇癪を起した。申立人は,ゴミ箱からお菓子の箱を取り出して長男に渡したが,長男の機嫌は直らなかった。

長男の泣き声を聞いた相手方が,申立人に対し,お菓子の箱を申立人の顔あたりに差し出し,お菓子を捨てたことを長男に謝るように言ったが,申立人は謝らず,もみ合いとなって,相手方が申立人を3回ほど殴った。申立人が警察に通報し,警察官が臨場したが,申立人,相手方ともに被害届は提出しなかった。申立人は,同日から3日間程度,単身でホテル及び申立人の両親宅(以下「母方祖父母宅」という。)に宿泊した。

 申立人は,いったん相手方宅に戻ったが,平成29年8月20日,未成年者らを連れて,未成年者らの小学校の校区内(相手方宅から直線距離で400メートル程度の場所)にある申立人肩書住所地所在の賃貸マンション(以下「申立人宅」という。)に転居した。

ウ 長男は,平成29年9月頃の午後9時か午後10時頃,申立人宅を出て相手方に会いに行こうとしたが,探しに来た申立人に見つかって申立人宅に連れ戻された。また,長男は,平成30年1月頃の午後10時頃,申立人及び長女が寝たのを見計らい,相手方に会うため,自転車で相手方宅に向かった。長男については,同日以降,相手方宅において相手方が監護している。

(2)未成年者らの監護状況
ア 同居中の監護状況
 未成年者らの幼少期の平日は,相手方の帰宅時間が遅く,専業主婦であった申立人が未成年者らの身の回りの世話のほとんどを行い,必要に応じて申立人の母(以下「母方祖母」という。)が未成年者らの監護を補助した。相手方は,休日に,未成年者らのおしめを取り替えたり,未成年者らと遊んだりするなどして監護に関与したほか,洗濯,ゴミ捨て,風呂掃除等を手伝った。

 申立人は,平成28年8月からパートを始め,平成29年6月からは不動産業を営む会社で正社員として勤務するようになったが,申立人が仕事をするようになった後も,平日の未成年者らの身の回りの監護は,主として申立人が行った。相手方は,主として休日に,未成年者らをレスリング教室や塾に連れて行ったり,小学校3年生以降は,長男をラグビーに連れて行くなどして,未成年者らの監護に関与した。
 申立人は,未成年者らの監護養育に当たり,特に食事の内容(栄養バランス,量,食品添加物の不使用等),健康,教育や学習の方法等に配慮していた。

イ 長男の現在の監護状況
(ア)生活状況
 相手方は,平成30年1月以降,相手方の母(昭和16年*月生,以下「父方祖母」という。)の補助を受けて長男を監護しており,父方祖母がEの自宅に帰省する日を除き,平日の炊事,掃除,洗濯等,長男の身の回りの世話は主として父方祖母が担当している。相手方宅は3LDKのマンションで,調査官が家庭訪問をした際(平成30年7月18日),室内は清潔で整頓されていた。

 相手方の平日の帰宅時間は午後9時頃であり,相手方は,主に休日,長男のラグビーの練習に同行するなどして長男の監護に関わっている。
 父方祖母は,相手方の父(昭和12年*月生,以下「父方祖父」という。)の定年退職後,父方祖父と2人でF内において農業を営んでいたが,長男が相手方宅に来た平成30年1月頃から,相手方宅で生活し,月に1,2回程度Fの自宅に帰省するようになった。父方祖父母に健康上の問題はなく,父方祖母は,長男が高校生になるまで,Fの自宅と相手方宅を行き来し,長男の監護を補助する意向である。

(イ)通学状況
 長男は,公立小学校の5年生である。通学状況は良好で,小学校4年生以降,発熱で1日欠席したほか欠席はない。心身の状況,基礎的な生活習慣,学習状況のいずれにも大きな問題はない。相手方の学校との連絡状況も良好であり,提出物や集金にも漏れはない。
 平成29年度の夏休みが終わった頃,申立人から住所変更の連絡を受けた長男の小学校4年生及び5年生の担任教諭が,長男に様子を尋ねたところ,長男の表情が暗くなり,「離婚になったらと考えると嫌や。」等と言って泣いた。

(ウ)長男の心情
 長男は,家庭裁判所調査官調査における面接において,家族みんなで生活することを希望していると述べたほか,申立人宅を出た後,申立人に対して,家族全員で住めないのであれば相手方と住みたいと伝えたことがあると説明した。

ウ 長女の監護状況
(ア)生活状況
 申立人は,申立人宅において,長女と二人で生活し,長女を監護している。申立人宅は3LDKの賃貸マンション(家賃8万円)で,家庭裁判所調査官が家庭訪問をした際(平成30年7月18日)には,室内は清潔で整頓されていた。
 申立人の就業時間は月曜日から金曜日までの午前9時から午後5時又は午前8時45分から午後4時30分までで,基本的に土曜日及び日曜日が休みである。通勤時間は約10分で,収入は月額17万円(手取額15万5000円)である。申立人には,申立人宅を賃借する際に母方祖母から借り入れた42万5548円の他に負債はなく,心身の状況に大きな問題もない。

 申立人は,平日は勤務時間の前後に炊事,掃除,洗濯等の家事を行っており,休日は長女と過ごすほか,月に1,2回程度,午後1時から午後3時頃まで趣味のバトミントンの練習に行っている。
 月に1回程度,母方祖母が申立人宅に来て,家事や長女の習い事の送迎を補助している。

(イ)通学状況
 長女は,長男と同じ公立小学校の5年生である。通学状況は良好で,小学校4年生以降,発熱で1日欠席したほか欠席はない。心身の状況,基礎的な生活習慣,学習状況のいずれにも大きな問題はない。申立人の学校との連絡状況も良好であり,提出物や集金にも漏れはない。

(ウ)長女の心情
 長女は,家庭裁判所調査官調査における面接において,今後について特に希望はないが,申立人宅で,申立人と二人になるのだと思う,長男が相手方宅に移動してから生活に変化はなく,困ったこともない,父と会うことはいいことだと思うと述べた。

(3)面会交流の状況
ア 申立人及び相手方は,本件調停の第1回調停期日において,本件調停が成立,取下げ又は審判確定により事件が終局するまでの間,長男及び長女の面会交流につき,下記のとおり実施することを合意した。
(ア)面会交流の開始月は平成30年5月以降。
(イ)長女の面会交流の日時及び方法は,各月の第1及び第3土曜日とし,午後5時に申立人は申立人宅マンション前で相手方に長女を引渡し,相手方は午後8時に申立人宅マンション前で,申立人に長女を引渡す。
(ウ)長男の面会交流の日時及び方法は,各月の第2及び第4日曜日とし,午前9時に相手方は相手方宅マンション前で申立人に長男を引渡し,申立人は,午後8時に相手方宅マンション前で相手方に長男を引渡す。
(エ)面会交流の日時を変更するときは,当事者双方の代理人を通じて協議する。

イ 実施状況
 上記ア記載の合意後の面会交流の実施状況は別紙のとおりであり,相手方と長女との面会交流は比較的円滑に実施されているが,申立人と長男との面会交流は円滑には実施されていない。
 長男は,休日の過ごし方として,ラグビーの練習や試合(基本的には土曜日の午後及び日曜日の午前で,それ以外の土,日曜日や祝日に,不定期に試合や練習がある。),相手方との休日,友達を遊ぶことを優先的に考える傾向にあり,申立人との面会交流には消極的である。また,そのために,相手方から申立人に対して日程や時間の変更の申入れが頻繁にあり,長男が申立人宅に来たが,申立人の勘違いにより申立人が不在であったため面会が実現しなかったこと(平成30年6月24日),長男が申立人宅に来たが,すぐに遊びに出掛けて戻らないこと(平成30年7月8日,同年10月14日,同年11月25日,同年12月9日等),面会交流の実施日に長男が申立人宅に行かなかったこと(平成30年7月22日,同年10月28日等)があった。

(4)本件申立て
 申立人は,平成30年1月17日,相手方に対し,本件各審判(未成年者らに係る子の監護に関する処分(未成年者らの監護者の指定及び長男の引渡し))及び審判前の保全処分(当庁平成30年(家ロ)第10003号)を申し立てた。当庁は,平成30年2月28日,本件各審判事件を調停に付したが(当庁平成30年(家イ)第943号乃至同第945号。以下,これらの調停を「本件各調停」という。),平成30年7月27日,本件各調停は不成立となり,本件審判手続に移行した。

 なお,申立人は,平成29年8月30日,当庁において,相手方に対し,夫婦関係調整調停(当庁平成29年(家イ)第4443号)及び婚姻費用分担調停(当庁平成29年(家イ)第4444号)を申し立てた。このうち,夫婦関係調整調停は平成30年11月14日に不成立となり,婚姻費用分担調停は現在係属中である。

2 検討
(1)上記認定のとおり,申立人と相手方との別居以前の主たる監護者は申立人であり,相手方の監護への関与は,休日を中心とする限定的なものであったといえる。そして,別居前の申立人の監護状況に大きな問題はない。
 長男及び長女については,いずれも小学校5年生であり,いまだ日常生活において身の回りの十分な世話を必要とする年齢であるほか,今後,精神的な自立が進む年代にある。そのような時期には,これまでの成長過程を踏まえた細やかな配慮を伴う監護を行うことが特に重要であるが,そのような監護は,これまでに未成年者らと十分な愛着関係を形成している主たる監護者においてより適切に行うことができると考えられ,特段の事情がない限り,申立人を監護者と指定することが相当である。

(2)まず,長女についてみると,申立人と相手方との別居後,相手方宅を出て申立人と同居して生活しているが,通学状況も含めた生活状況は安定しており,申立人と長女との関係も良好であって,その監護状況に大きな問題は見当たらない。よって,監護者を申立人と指定するのが相当である。

(3)次に長男についてみると,申立人と相手方との別居時,申立人が長男を連れて出たものの,長男は,平成30年1月4日,自ら申立人宅を出て相手方宅に転居しているという経緯がある。しかしながら,長男が相手方宅に自ら転居したのは,長男と相手方との面会交流が長男の希望どおりに実施されなかったことに対する不満や,可能なら従前のように家族4人で暮らしたいとの心情からであると考えられ,今後の生活について熟慮した結果の行動とはいえない。

 また,相手方の単独監護の経験は極めて乏しく,相手方は,長男が相手方宅へ転居した後も,長男の身の回りの監護をほとんど父方祖母に任せており、その依存度は非常に高い。父方祖母は,未成年者が高校生になる頃まで,父方祖父が暮らすFの自宅と相手方宅とを行き来して監護を補助したい旨述べているが,その年齢からしても,FとGとを月に1,2回行き来する身体的負担は小さくないと思われるし,仮に父方祖父と父方祖母のいずれかが健康上の問題を抱えた場合には,相手方の現在の監護態勢の維持が難しくなり,監護に不足が生じる可能性がある。

 さらに,現在,長男と申立人との面会交流は円滑に実施されておらず,相手方において,申立人と長男との母子交流を良好に維持することができているともいえない。他方で,現在相手方と長女との面会交流は比較的円滑に実施されており,申立人が監護者となった場合には,長男と相手方との面会交流が円滑に実施されることが予想される。 

 そうすると,長男が自ら相手方宅へ転居し,相手方との生活を希望する言動をしていること等を踏まえても,相手方による監護が,申立人による監護に比して,より未成年者の福祉に資するともいえない。

(4)以上によれば,長女のみならず長男についても,申立人が引き続き監護養育することが未成年者らの福祉に沿うものというべきである。
 ただし,特に長男については相手方との親和性が強く,申立人が監護者となったとしても,長男の希望に沿う程度の面会交流が実施されなければ,再び不満を募らせて自ら相手方宅に転居するおそれがある。申立人においては,長男の意向を尊重し,十分な父子交流がされるよう留意されたい。

3 結論
 よって,未成年者らの監護者をいずれも申立人と指定し,長男については申立人に引き渡すことが相当であるから,主文のとおり審判する。

別紙〈省略〉
以上:6,173文字
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R 3- 5- 5(水):本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”紹介-風邪・薬解説
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○「本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”紹介-ウィルス解説等」の続きで、今回は、file.5「医療と薬。つき合い方の基本」の備忘録です。
私は、生来虚弱体質で、風邪をひきやすく、平成15年9月までは、毎年1回は風邪をひいて高い熱が続き、4,5日は仕事を休むことがありました。特に平成15年9月初め、夏の終わりで気温が高い時期なのに風邪をひき、39~40°の熱が数日継続し、近所の内科に通院し、解熱剤を処方されても、1週間ほど、殆ど仕事にならない状態でした。

○そこで風邪をひきやすい体質に、これではいけないと思い、始めたのが平成15年10月から令和3年5月現在まで日曜日を除いて殆ど毎日継続している真向法です。当初は、真向法だけ5分程度でしたが、徐々に補助体操等を取り入れ、この10年は毎日30分以上は、自分で考えた方法も含めて真向法中心のストレッチ運動をしています。

○ストレッチ運動をした後は直ぐに筋トレ運動を20~30分、水・土の胸の日は50分程度行っていますので、毎日、合計1時間は、ストレッチ運動と筋トレ運動で身体を動かしており、身体を動かすことが苦にならなくなっています。真向法を始めての最大の成果は、鼻水や多少の喉の痛み等は時々ありますが、発熱で仕事を休むほどの風邪を全くひかなったことで、平成15年10月以来、風邪で仕事を休んだことはありません。

○本間真二郎医師は、「風邪をひくのは、自分の免疫力が落ちているサイン。風邪を薬で治す人は、大病にかかりやすい」との見出しで、風邪について以下の通り解説しています。
・風邪の原因のほとんどはウィルスで、それ以外では細菌の感染
・風邪は、からだを本来の状態に整えるためにかかる-風邪のウィルスにはつねに接していても正常な免疫力があれば風邪をひかない
・体温が低下したとき風邪ウィルスで体内に炎症を起こし体温を上げて生命を守っているともいえる
・風邪で色々なところに炎症が起きるのは弱った部分を修復している
・風邪は自然の浄化反応、症状を出し切り自然の経過にまかせるのがいちばん、解熱剤等対症療法はしないほうがよい

※風邪は万病の元と言われていますが、修復・浄化反応は意外でした。そのような一面があると言うことでしょう。

○インフルエンザについては次のように解説しています。
・風邪の一種、風邪と区別されるのは、インフルエンザの予防・治療の利益が大きいから
・治療薬タミフルは日本だけで世界の75%使用、欧米ではインフルエンザは何もしなくても治る病気としてタミフルを使わない
・ワクチンには予防効果も、重症化の予防効果もないことが信頼できる研究論文で指摘
・症状が落ち着くまで自宅休養が大事で、不確実な検査や投薬は不要

※インフルエンザワクチンは、学校時代は全員打たされましたが、社会に出てから打ったことはなく、本間医師解説によれば正解でした。

○薬については次のように解説されています。
・日本は世界で最も薬の消費が多い
・西洋医学の薬のほとんどは、石油を原料とした「脂溶性化学薬品」-プラスチック等と同じ石油化学工業製品
・脂溶性のものは水に溶けにくく尿から排出されず体内に蓄積
・脂溶性のものは肝臓に負担をかけ、肝臓で処理しきれないものは血管を通じて全身に運ばれ細胞外液に留まり全身の細胞に毒性を発揮する
・脂溶性のものはリンパ管に入りやすく、免疫系に重大なダメージを与え、感染症・がん等のあらゆる病気の原因となる
・西洋医学の薬の多くは対症療法で病気の根本を治さず、自然治癒力を奪うことに繋がる

※薬は基本的に毒と考え、医師に処方されても必要最小限しか服用しませんでしたが、正解でした。

○熱の高さと病気の重症度は無関係。解熱剤で症状を抑えても病気は治らないとの見出しで解熱剤について次のように解説しています。
・発熱は症状の一つで病気ではなく、熱を下げることは病気を治すことではない
・発熱は病原菌とたたかうため自分で熱を上げる反応で体温が1度上がるたびに免疫力増強
・熱の高さと病気の重症度は無関係で、40度の熱が1ヶ月続いても発熱が理由で脳に障害が起こることはない
・解熱剤を使うと回復が長びく-免疫力を落とすから
・解熱剤は交感神経を強力に刺激し、長期使用は自律神経バランスを崩し、あらゆる病気の原因となる

※平成15年9月の風邪での高熱以来解熱剤は使用していませんが正解でした。
以上:1,793文字
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R 3- 5- 4(火):本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”紹介-ウィルス解説等
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○「本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”紹介-腸内細菌」を続けます。同著62頁「新型コロナウイルス、インフルエンザと同じく大型のウィルス。遺伝子の変異がおこりやすく、進化するスピードも速い」と言う見出し部分の備忘録です。

○「細菌とウィルスの違い-感染の仕組み等備忘録」に「人に感染する「コロナウイルス」は、7種類見つかっており、その中の一つが、令和元年12月以降に問題となっている、いわゆる「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」」と記載していますが、ここでは現在の新型コロナウイルスについて、より詳しく特徴や症状をまとめています。

○ウィルスとは
遺伝子(からだの構造や機能の設計図)をもち、他の生物に感染するとても小さな構造体、細胞ではないので細胞最小単位を生物と定義すれば非生物。他の細胞に感染して増殖・自己だけで増殖できない
遺伝子にDNA(デオキシリボ核酸-構造が安定し変化しにくい)を持つDNAウィルスと、RNA(リボ核酸-構造が不安定で変化に富む)を持つRNAウィルスがある
遺伝子とそれを囲むかたいたんぱく質の殻からなる単純構造で、たんぱく質の殻の外側に感染した細胞由来の生体膜(脂質の膜=エンベロープ)ともつものともたないものがある
今回の新型コロナウィルスの特徴は、エンベロープをもつRNAウィルス
RNAウィルスは、変異が激しく、感染し大量増殖する際には、もとのウィルスだけでなく、変異したたくさんの種類のウィルスの集合体になっている

○治る人と重症化する人の違いは基礎の免疫力低下と、獲得した免疫力が感染した細胞に過剰に反応しているかどうか
新型コロナウィルスに感染しても多くは無症状で、発症しても8割は軽症、2割ほどが重症化、軽症は1週間ほどで治るが、重症化する場合、発症1週間経過後急速に悪化する

○免疫の働き
病原体が侵入してきたとき、相手の正体が不明でも自然に発動する自然免疫系と、正体がわかった特定の病原菌に対してだけ反応する獲得免疫系がある
ウィルスがからだの細胞に感染し侵入すると先ず自然免疫系が働き、軽い感染の場合この段階でウィルスを排除
新型コロナウィルスでは、口や鼻から吸い込んだウィルスが舌・鼻・肺などのウィルス受容体をもつ細胞に感染し、自然免疫系を逃れたウィルスは細胞内に隠れて潜伏期の数日から2週間で増殖
増殖したウィルスは細胞から出て血液中に入りウィルス血症になり自然免疫系の働きで発熱し、身体は免疫力を上げるモードになる、発熱は病原体の侵入をからだに知らせるアラーム
発熱時点で解熱剤を使うとせっかく上げようとしている免疫力を下げてしまう、新型コロナウィルスは、潜伏期終わり頃からウィルスを排出し、他人にうつす

○症状出現
感染した細胞が障害されていることによるせき・のどの痛み・呼吸困難・味覚嗅覚障害
自然免疫系が働くことによる発熱・倦怠感・食欲低下・頭痛・関節痛・筋肉痛
増殖した新型コロナウィルスは腸と肺に集中して発現するが、上気道・血管・心臓・胆のう・腎臓・精巣での発現が確認されている

○獲得免疫系の働きが重要
新型コロナウィルスは新興感染症のため殆どの人は、免疫の記憶がなく、獲得免疫系の発動まで時間がかかり、発症して1週間くらいで獲得免疫系の準備を整えその活動により速やかにウィルスを排除できるかどうかが、軽症で済むか重症化するかの分かれ目
重症化する人は、獲得免疫系の反応が強すぎ、感染した自己細胞を強力に排除し、その後免疫の暴走を招くことにより病態が悪化すると考えられている
獲得免疫系過剰反応の理由は、自然免疫系の働きが弱く、獲得免疫系が働くまでに、ウィルスを受容する細胞が増えすぎ、増殖したウィルスだけでなく感染細胞を含めて獲得免疫系が一斉攻撃をするため細胞に大きな障害を受けること
他の重症化の要因としては、感染ウィルス量・到達距離・粘膜免疫の強さ(ウィルスが細胞につくのを防ぐ)・気道の繊毛運動などの異物排除力などもかかわっている
以上:1,631文字
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R 3- 5- 3(月):本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”紹介-腸内細菌解説
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○「本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”を紹介」の続きで、同著105頁以下の腸内細菌についての備忘録です。腸内細菌が宿る腸については、最近江田証医師著「新しい腸の教科書―健康なカラダは、すべて腸から始まる」も購入しました。

○「新しい腸の教科書」14頁以下に、腸は”テニスコート”ほど広い!知っておきたい腸の構造として、腸の基本的構造が説明されています。以下の通りです。
小腸-十二指腸・空腸・回腸
大腸-盲腸・結腸・直腸

日本人の平均的腸の長さは、小腸が約6~9m、大腸が約1.5m、内部の総面積は、絨毛の効果もあり約32㎡(テニスコート一面分)、腸は身長の5倍ほどの長さとテニスコート並みの広大な表面積を活かし、栄養素を効率よく消化・吸収している。

ネット上で見つけた腸の図解


大腸図解


○「本間真二郎医師著作”感染を恐れない暮らし方”を紹介」でお腸内細菌の記述は、以下の通りです。

人の体内には腸内細菌が1000種類以上、総数にして100兆個以上存在-腸内細菌叢と呼ばれる
人のからだを構成する約37兆個の細胞数より遙かに多く、総重量は1~1.5㎏で、脳や肝臓に匹敵する重さ
腸内細菌の遺伝子パラエティは人の150倍

善玉菌-身体に良い影響を与える
悪玉菌-身体に悪い働きをする
日和見菌-善玉菌・悪玉菌どちらにも属せず、善玉菌が増えれば善玉菌のように、悪玉菌が増えれば悪玉菌のように働く、正に日和見の働き
腸内細菌は多様すなわち種類が多ければ多いほど良く、バランスが重要で、善玉菌2~3、日和見菌6~7、悪玉菌1の割合がよいバランス

<腸内細菌の本来の役割>
・病原菌の侵入を防ぐ
・食物の消化・吸収を助ける
・必須アミノ酸・必須脂肪酸・ホルモン・ビタミン・ミネラルといった栄養素を供給する
・有害物質(農薬・添加物・発がん物質・放射性物質)を分解する
・免疫を活性化させ、感染を防ぎ、炎症・アレルギー性疾患などを抑制する
・神経伝達物質の産生を助け、神経系や大脳活動を調節する
・腸管運動を調節し、下痢・便秘を予防する
・腸管以外の臓器の機能を活性化させる
・脂質代謝を活性化させる
・酵素を活性化させる
・人が消化できない食物繊維を分解する
・短鎖脂肪酸を産生し、エネルギーを供給する

<腸内細菌の状態が悪くなると……>
・腸内の腐敗を進め、下痢・便秘をおこす
・発がん性物質をつくる
・アンモニア・硫化水素・インドールなどの有害物質をつくる(腸管や腸内細菌にダメージを与え、肝機能異常に繋がる)
・免疫力を弱める
・高血圧・がん、動脈硬化などの慢性炎症を引きおこし、様々な疾患の原因をつくる
・リーキーガット症候群(LGS)を引きおこし、様々な疾患の病因をつくる


<腸活Lab>から
腸内細菌の3つの役割

未消化物の分解-腸内細菌は、食物繊維などの難消化性物質を分解してエサにする。自分の体だけでは消化できない物質を、腸内細菌が消化

代謝物質の産生-腸内に入ってきた物質を分解した腸内細菌は、ビタミンや有機酸などの代謝物を生み出し、この代謝物は、腸管のバリア機能を高め、全身の免疫にかかわる

免疫刺激-腸の粘膜は免疫においてもとても重要な役割を果たし、腸内細菌が生み出す短鎖脂肪酸は、病原体の侵入を防ぐIgAと呼ばれる抗体の産生をうながす作用がある
 腸内細菌が暮らしやすい環境を整えることは、免疫力を高めることにもなる

腸内細菌の役割はメリットだけではない
 腸内環境が悪化していると腸内細菌はさまざまな悪い影響を及ぼすこともあり、代表的な5つのトラブルは以下の通り

消化器トラブル-腸内細菌の活動は、うんちの状態にも深く関係、腸内環境の乱れが、便秘や下痢を引き起こし、過敏性腸症候群(IBS)や潰瘍性大腸炎(IBD)などの腸の疾患と関係

代謝トラブル-人間の消化活動は、そのまま代謝につながり、腸内細菌の活動が不活発になったり、かたよ偏ったりしてしまうと、肥満やうまく体をあたためることができず体の冷えに繋がる

肌トラブル-腸内細菌の状況は、皮膚の状態にも関係しています。代謝がうまくいかないと、乾燥やシワの原因になることも。

免疫トラブル-免疫細胞の約70%が腸にあると言われ、腸のバリア機能が体全体に大きな影響を与え、腸内環境の悪化に伴う免疫機能の低下が、アレルギーや風邪、インフルエンザなどさまざまな病気を引き起こす

精神や脳のトラブル-腸内細菌は、脳をはじめとした神経系にも影響をあたえ、ビフィズス菌や乳酸菌の数が少ないことが、うつ病の発症リスクとなるという研究もある、メンタルを整える上でも、腸内環境は無視できない存在
以上:1,877文字
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R 3- 5- 2(日):2021年05月01日発行第292号”弁護士の理由”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年5月1日発行第292号「弁護士の理由」をお届けします。

○森氏発言には、同調できませんが、それに対する厳しいバッシングには辟易としました。「あそこまで叩かなくてもいいのでは。。。」は正に同感でした。女性が入ると議論が活発になり深まるという意味も込めて言ったんだと理解を示す政治家がいても良さそうなものですが、元森派議員も誰一人擁護発言がなかったようです。皆さん、森氏と一緒くたにされて自分が叩かれるのを恐れたのでしょう。

○「女三人寄れば姦しい」、「女房と畳は新しい方が良い」、「七人の子は生すとも女に心 許すな」、「大蛇を見るとも女を見るな」、「女賢しくて牛売り損なう」、「女の一念岩をも通す」、「女は、怖い・恐い・強い」など女性蔑視とも取られかねないことわざは相当あります。森氏発言は「女三人寄れば姦しい」の流れでしょうが、そんな目くじらを立てるほどではないと思っていました。

○男と女の違いについての感想として、女は一言で言うと「こわい」と言ったら、ある女性弁護士から、男は一言で言うと「ばか」と言われて納得したことがあります(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の理由


少し前に、森元首相による女性差別の発言が問題になりました。「女性が入ると、会議が長くなる」みたいな発言だったはずです。「あそこまで叩かなくてもいいのでは。。。」と、思わず気の毒になるほど攻撃されていました。仮に会議が長くなるとしたら、女性の方が本気で問題提起をすることが多いからでしょう。

弁護士の場合も、男性弁護士同士だと何となく適当なところで終わらせちゃうところ、女性弁護士の方がしっかりと問題提起してくるなんてことはよくあることです。女性弁護士が相手だと、交渉が長引くなんて言わないように気を付けます。こういった、「女性は何々だ!」みたいな発言は、昔の方が当たり前にあったようです。

私はシェイクスピアが好きなんですが、女性についてかなり悪口みたいな「名言」があります。「男のどんな言葉より、もの言わぬ宝石のほうが、女心を動かします」なんてありました。「金色夜叉」の、「ダイヤモンドに目がくらみ」といった感じです。もっとも、どんな言葉よりも、物言わぬお金の方が雄弁だというのは、古今東西真実のはずです。英語でも、money talks なんて言葉がありました。

弁護士だって偉そうなことは言えません。良いお客様というのは、良いことを言う人ではなくて、お金をきっちり払ってくれる人なのは、間違いないところです。おいおい。。。シェイクスピアに戻りますと、「男が誓うと、女は裏切る」なんて、もてない男の恨み節みたいなのもあります。「心弱き者、汝の名は女」も有名です。女は心が弱いから、言い寄られるとすぐに浮気するという、森さんが言ったら大問題になりそうな言葉です。とまあ、現代ならメチャクチャ叩かれるような、女性についての「名言」を、シェイクスピア先生は残してくれたのですが、今に至るまであまり叩かれていないみたいです。

シェイクスピアの場合、男についても「名言」がありまして、こちらも何とも可笑しいものだからかもしれません。「男は、愛をささやくときは四月だけれど、結婚してしまえば、十二月になる」なんて、思わず笑ってしまいます。「男は簡単に約束するが、意志がその約束に追いつかない。誓うことは得意だが、恋は苦手だ」なんて、思い当たる男性も多そうです。

弁護士の場合も、法律相談の段階では、凄く自信ありげなことを言っておきながら、現実に事件を受任すると、急に厳しい見通しを言う人はいます。わ、私も気を付けます。とまあこんな具合に、シェイクスピアは男女の特徴についての名言を残しているのですが、私の一番好きなのはこれです。「なぜ、彼のことを素敵だと思うの?」と理由を聞かれたときの、女性の回答です。「なぜと聞かれても、私には女の理由しかありません。そう思うからそう思うのです」そもそも、「ある人を素敵だと思う理由」という問題自体、答えにくいですよね。「お金持ちだから」とか「イケメンだから」なんて答え聞きたくないでしょう。「好きだから好き」と言われた方が嬉しくなっちゃいそうです。

そもそも多くの場合、「理由」というのは、あまり意味がないことなのかもしれません。そうは言いましても、弁護士の仕事では、「理由」を聞かざるを得ないこともよくあります。離婚事件で、男性側の不倫が原因というのはよくあることです。そういうときに、不倫相手より奥さんの方が魅力的なこともよくあります。男性側に浮気の理由を聞くと、「自分の心の弱さです」なんて答えます。しかし、これまで何度も繰り返してきた人なら、かえって強い意思を感じてしまいますね。変な言い訳せずに「なぜと聞かれても男の理由しかないよ。浮気したいから、浮気するんだ!」と、男らしく答えて欲しいと思ったのでした。

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◇ 弁護士より一言
先日バーベキューで焼鳥をやった際に、子供たちの大好きなボンジリも妻が用意していました。すると息子が、「ボンジリはいらないよ」なんて言うのです。

一体どうしたのかと妻に理由を聞かれると「若いときは大好きだったけど、最近は脂が多いのは少しでいいや。」そ、そんな「理由」あるんか。あんたこの4月に高校生になったばかりじゃん!
以上:2,323文字
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