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ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 6- 4-27(土):映画”犬神家の一族”を観て-おぞましさがよくでています
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○令和6年4月21日(日)夕方、BDソフトで1976(昭和51)年制作映画「犬神家の一族」を鑑賞しました。最重要登場人物の「すけきよ(佐清)」という名前はシッカリ記憶に残っており、一度は鑑賞していたはずですが、殆ど忘却の彼方で初めて観る感覚での鑑賞でした。BD版ながら映像は、鮮明さに欠け、ちとくすんだ感じで全体に暗い場面が多く、それがこの映画のおぞましさをよく表現していました。

○三國連太郎氏演ずる日本の製薬王といわれた信州・犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛の臨終場面から始まりますが、死に際の老いた老人が三國連太郎氏とは、当初気付かないほど老醜メイクアップされていました。後半から結末にかけて明らかになる犬神佐兵衛の生涯は、正に横溝正史ストーリーでした。横溝正史氏ご本人も那須ホテルの主人役で出演したのですが、鑑賞中は全く気付きませんでした。

○制作当時23歳の島田陽子氏の清純さ、21歳の坂口良子氏の可愛らしさが引き立っていましたが、犬神佐兵衛の腹違いの娘、長女松子を演ずる高峰美枝子氏、二女竹子を演ずる三條美紀氏、三女梅子を草笛光子氏の円熟した女優陣も見事でした。この女優陣の中で、現在存命は草笛光子氏だけで、90歳になった現在もその健康ぶりがよくTVで放映されているとおりです。同じ90歳でなお徹子の部屋で若さを見せている黒柳徹子氏とは仲が良いとのことです。

○湖畔にそびえる犬神邸に次々と発生する怪奇な連続殺人事件に挑む石坂浩二氏演ずる金田一耕肋の活躍を描くと解説されていますが、この金田一耕助の役割は、なんとなく付け足しという感じでした。一介の民間人探偵が警察の捜査に色々関与することに少々違和感を感じましたが、少々間が抜けた感じの加藤武氏演ずる警察署長とはよくマッチしていました。最後の謎解きは、金田一耕助の面目躍如でしたが。

○金田一耕助は日本三大探偵の一人ということで、更に有名探偵は明智小五郎ですが、後の一人は誰か分かりません。ネットで調べると高木彬光の推理小説に登場する神津恭介とのことですが、高木彬光の推理小説は全く読んだことが無く、全く分かりませんでした。

【予告篇】『犬神家の一族』1976年公開



歴代ミステリーの中で最高傑作と言われている名作を徹底解説!『犬神家の一族』

以上:939文字
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R 6- 4-26(金):立体駐車場設備の賃貸借は借家法での建物に該当しないとした地裁判決紹介
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○「テントが借地借家法上の建物に該当するとした地裁判決紹介」の続きで、借地借家法の「建物」認定に関する判例として、昭和61年1月30日東京地裁判決(判タ626号164頁、判時1222号83頁)関連部分を紹介します。

○判決は、本件賃貸借の賃借物件の中心は、右機械を始めとする立体駐車場設備一式にり、本件建物部分は右設備の使用に必要な範囲内においてそれに附随して賃借物件とされたに過ぎず、通常の建物の賃貸借においては、契約当事者の合意、建物の構造等に照らし、建物自体の使用に主眼があるものであるところ、本件賃貸借においては、その賃借物件の用途を立体駐車場としての使用に限定している原告と被告との合意及び右物件の構成等に照らし、本件建物部分の使用そのものに独自の価値があるとはいえないとして、借家法の適用を否定しました。

*********************************************

主   文
一 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物部分を明け渡せ。
二 原告の被告に対する昭和57年12月17日から昭和60年11月22日まで1か月340万円の割合による金員の支払を求める請求を棄却し、原告の被告に対する同月23日から右一の明渡済みまで1か月340万円の割合による金員の支払を求める訴えを却下する。
三 訴訟費用は、これを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、原告が1000万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。 

事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨

1 主文一同旨
2 被告は、原告に対し、昭和57年12月17日から右明渡済みまで一か月340万円の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 当事者の主張
一 請求原因


     (中略)

3 本件賃貸借は借家法にいう建物の賃貸借ではない。
(一)本件賃貸借は、本件建物部分内に組み込まれた立体駐車場設備一式の賃貸借であって、建物自体の賃貸借とは異なるものである。右設備の特殊性から本件建物部分を附随して利用することになるが故に、本件建物部分も、本件賃貸借の賃貸物件としたが(右1参照)そのことによって、本件賃貸借が建物賃貸借となるわけではない。

(二)したがって、本件賃貸借には借家法の適用はなく、右2の(三)の期間満了により終了した。

     (中略)

二 請求原因に対する答弁

     (中略)

2(一)同3は争う。
(二)本件賃貸借は借家法にいう建物の賃貸借である。
(1)本件賃貸借の賃借物件である本件建物部分は、1階から10階に及ぶ立体駐車場車庫の部分と1階の車路、管理室等の部分とから成っているが、いずれも本件ビルのそれ以外の部分と障壁・周壁等によって明確に区画され、独占的排他的支配が可能な構造規模を有する。

(2)本件賃貸借は、立体式屋内駐車場を経営するための営業用建物の賃貸借と解すべきものであり、駐車場設備一式(機械を中心とする。)の賃貸借はこれに附随するものというべきである。経済的にも、本件建物部分の空間の方が右設備一式よりもはるかにコストが高いのである。

(3)このことは、本件賃貸借において、駐車場設備たる機械の性能、品質の変更が、原告の承諾を得れば被告においてもすることができるとされていること及び右機械の滅失、毀損による機能停止が本件賃貸借の終了事由とされていないことや契約書上は原告の負担とされている電気、水道、ガス等の経費を被告が負担していることにも表われている。

     (中略)

理   由
一 請求原因1(本件賃貸借の成立)及び2(その更新)の事実は当事者間に争いがない。

二 本件賃貸借が借家法にいう建物の賃貸借に当たるか、否かについて検討する。
1 本件建物部分がそこに存する立体駐車場設備一式と共に本件賃貸借の賃借物件とされていることは、右一のとおり当事者間に争いがなく、右の賃借物件が全体として駐車場を構成するもの(これを本件駐車場と称している。)であることは当事者間に争いがないものと認められる。

     (中略)

2 〈証拠〉に弁論の全趣旨を合せ考えると、次の事実が認められる。
(一) 本件建物部分は、本件ビルの一部であり、その1階から10階までに相当する高さ約31メートル、床面積85・92平方メートルの立体駐車場車庫すなわちハイ・ガレージと称される部分とその1階の床面積236・53平方メートルの駐車場管理室及び駐車場用車路の部分から成つており、永続性のある材質により屋蓋、周壁を有すると共に、本件ビルのそれ以外の部分と区画され、独占的排他的支配が可能である。

(二) 右のハイ・ガレージの部分に垂直循環式立体駐車(場)設備機械2基(1基30台分計60台分)が設置され、1階のハイ・ガレージ入口部分にその運転盤、右入口の直前にターン・テーブル(方向転換装置)、その付近に消火設備等が備えられ、立体駐車場設備一式を成している。

(三) 右(二)の立体駐車場設備一式は右(一)の本件建物部分に組み込まれ、両者が一体となつて全体として本件駐車場を構成しているものということができるが、更に、詳細にこれを見ると、次のとおりである。

すなわち、本件建物部分のうち、ハイ・ガレージの部分は、自動車を保管する車庫部分であるが、自動車の保管のためには、もつぱらそこに設置された垂直循環式立体駐車(場)設備機械が用いられ、その建物部分は右機械を覆い、それを屋内に収容する点に効用を有するのみで、右設備機械を離れて独自の価値を有するものではないし、また、駐車場管理室及び駐車場用車路の部分も、ハイ・ガレージの部分の車庫としての使用に必要な管理担当者の事務室の部分及びハイ・ガレージの部分と外部とを結ぶ自動車の通路の部分であつて、ハイ・ガレージの部分を離れて独立の効用を有するものではない。そして、本件賃借物件の用途は、原告と被告との合意からも、右物件の構成等からも、立体駐車場として自動車を保管するということに限定されている。

3 右1、2の事実によると、本件賃貸借は、立体駐車場としての本件駐車場の賃貸借ということができるが、建物の賃貸借に当たるか否かの観点から見ると、立体駐車場設備一式の賃貸借というべきであり、借家法にいう建物の賃貸借に当たらないものと解するのが相当である。なぜなら、本件賃貸借を、立体駐車場としての賃貸借と見る限り、本件建物部分は、ハイ・ガレージの部分も、管理室、車路の部分も共に、垂直循環式立体駐車(場)設備機械の効用を発揮するためのものであつて、そのままでは、右機械を離れて独自の価値を有するものではなく、したがつて、本件賃貸借の賃借物件の中心は、右機械を始めとする立体駐車場設備一式にあるというべきであり、本件建物部分は右設備の使用に必要な範囲内においてそれに附随して賃借物件とされたに過ぎないものと考えられるからである。

 右の判断に関し、若干ふえんする。
(一) 被告は、本件建物部分は建物の賃貸借の対象となり得る独立性を備えた建物の一部であり、本件賃貸借は駐車場の経営をするための営業用建物の賃貸借と解すべきである、と主張している(請求原因に対する答弁2の(二)の(1)、(2))。

なるほど、本件建物部分が建物の賃貸借の対象となり得ることは、右2の(一)の事実に照らし明らかなところであるが、通常の建物の賃貸借においては、契約当事者の合意、建物の構造等に照らし、建物自体の使用に主眼があるものであるところ、本件賃貸借においては、既に述べたとおり、その賃借物件の用途を立体駐車場としての使用に限定している原告と被告との合意及び右物件の構成等に照らし、本件建物部分の使用そのものに独自の価値があるとはいえないのであるから、被告の右主張は採り難い。なお、一般に、倉庫や車庫の賃貸借も、建物の賃貸借と解されているが、それは、倉庫や車庫となつている建物自体の使用に主眼が置かれるが故であり、本件の場合と異なることはいうまでもない。

(二) また、被告は、本件建物部分の空間の方が立体駐車場設備一式よりはるかにコストが高い、と主張し(請求原因に対する答弁2の(二)の(2))、それにより、本件賃貸借が本件建物部分の賃貸借であることを支えようとするが、本件建物部分の空間の価値そのものを確定するに足る証拠はなく(右空間を店舗ないし事務所として利用する場合の価値をいうとすれば、それは、右空間自体の価値とはいえない。)また、仮に、右空間の価値が高価なものであるとしても、それは、主として本件ビルの所在する場所すなわちその土地の価格を反映することによるものと推測され、そうであれば、そのような場所に所在する立体駐車場設備もその土地の価格を反映して右設備自体の価値より高価となるとも考えられるので、右空間の方が当然に右設備よりはるかに高価であるとは断定できず、右被告の主張は、そのままこれを採用するわけにはいかない。

(三) 被告は、本件駐車場の電気、水道、ガスの経費を被告が負担していることは、本件賃貸借が建物の賃貸借であることを示すものであると主張するが(請求原因に対する答弁2の(二)の(3))、被告において本件の立体駐車場設備一式を賃借して全面的に管理し、それに附随して本件建物部分を占有している以上、右の経費を被告が負担するのは当然のことであり(前掲乙第三号証の本件賃貸借の契約書第九条には、右の経費は原告の負担とする旨の規定があるが、被告代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、締約当初から、原告が被告に対し、右の経費の支払を請求し、被告が原告に対し、何らの異議もなく当然のこととして、これを支払つていることが認められ、これによると、右規定が当事者の合意内容をそのまま表現しているかには疑問がある。)、また、前掲乙第三号証の本件賃貸借の契約書第10条の被告は書面により原告の承諾を得なければ、物件の原状を変更しないものとする旨の規定や、同第12条の賃貸借期間に生じる物件の滅失、毀損による機能の停止についての負担を、その原因により、原告又は被告に分担する旨の規定も、右各規定にいう物件が立体駐車場設備一式を成す機械等を指すとしても、本件賃貸借が右設備一式の賃貸借であるとする前記判断に牴触するものとは考え難い。


以上:4,300文字
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R 6- 4-25(木):テントが借地借家法上の建物に該当するとした地裁判決紹介
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○賃貸した物件が、借地借家法上の建物に該当するかどうか判断が必要な事案の相談を受けています。借地借家法上の建物該当性についての解説は、多湖・岩田・田村法律事務所HPの「借家の要件」に多数の判例を援用して詳しく解説されています。

○同サイトでは、借地借家法上の「建物」とは、土地に定着し、周壁、屋蓋を有し、住居、営業、物の貯蔵等の用に供することのできる永続性のある建造物をいい、その限界は、結局、社会通念、立法の趣旨等に照らして決められるべきであるとされ、建物の一部であっても、障壁その他によって他の部分(他の物)と区画され、独占的排他的支配が可能な構造、規模を有するものと解説しています。

○援用判例の中で、テントについても、設置費用・設置期間・土地への固定方法によっては「土地に定着している」として、「建物」に該当するとした平成29年5月19日東京地裁判決(判時488号62頁、判タ209号133頁)がありましたので、関連部分を紹介します。

*********************************************

3 争点
 本件の争点は,次のとおりである。
(1)本件テント倉庫は借地借家法上の建物といえるか

     (中略)

4 当事者の主張
(1)争点(1)(本件テント倉庫は借地借家法上の建物といえるか)について
ア 被告の主張
 本件テント倉庫は,その周囲に鉄筋コンクリート製の幅60センチメートルから1メートル,深さ60センチメートルから1メートルの基礎が設置され,その上部構造は平成14年国土交通省告示第667号「テント倉庫建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件」所定の構造であり,本件各土地に定着している。したがって,本件テント倉庫は,借地借家法上の建物である。

イ 原告の主張
 原告は,会計上,本件テント倉庫を償却財産である構築物として処理しており,本件テント倉庫に係る不動産取得税の納付を求められたこともない。被告は,本件テント倉庫には基礎工事が施工されていると主張するが,被告が主張する工事は,本件テント倉庫自体の基礎ではなく,その重量により地面がへこむことを防止するためのものである。また,被告が指摘する技術的基準においては,軒の高さが5メートル以下であることが求められているが,本件テント倉庫の軒の高さは7メートルあり,本件テント倉庫は,被告が指摘する技術的基準を充足するものではない。したがって,本件テント倉庫は,借地借家法上の建物とはいえない。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実


     (中略)

2 争点(1)(本件テント倉庫は借地借家法上の建物といえるか)について
 前記1(5)のとおり,本件テント倉庫(当初部分)は,軒高7メートル,間口28メートル,奥行き29.5メートル(面積約826平方メートル)の大きさであり,周囲に幅60センチメートルから1メートル,深さ60センチメートルから1メートルの鉄筋コンクリート製の基礎が設置され,そこに複数の鉄骨柱がアンカーボルトによって緊結され,これらの鉄骨柱をエステル防災防水帆布が覆っているという構造であり,本件テント倉庫(増設部分)は,面積約448平方メートルの大きさであり,本件テント倉庫(当初部分)と同様の構造である。

このように,本件テント倉庫は,鉄骨柱をエステル防災防水帆布が覆っているという簡易な構造ではあるものの,これが屋根及び外壁に相当する役割を果たしているということができるし,複数の鉄骨柱がアンカーボルトによって鉄筋コンクリート製の基礎に緊結されていることからすると,本件各土地に定着したものということができる。このことに,本件テント倉庫の建設費用が3500万円を超えるものであったこと(前記1(2)ウ及びク),本件テント倉庫(当初部分)が建設されてから14年以上経過した現在においても,本件テント倉庫はその効用が維持されていることを併せ考えると,本件テント倉庫は,借地借家法上の建物に該当するというべきである。
以上:1,669文字
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R 6- 4-24(水):高低差のある土地の境界擁壁修繕費用負担に関する高裁判例紹介
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○「高低差のある土地の境界擁壁修繕費用負担に関する判例紹介」の続きで、その控訴審昭和62年9月29日東京高裁判決(ウエストロー・ジャパン)全文を紹介します。

○一審昭和61年2月21日横浜地裁判決(判タ638号174頁、判時1202号97頁)は、隣地との間に約4mの高低差のある低地所有者から高地所有者に対し所有権に基づく妨害予防請求としてなされた擁壁の改修請求について、土地相隣関係調整の見地から、低地所有者に改修費用の3分の1を負担させて認容しました。

○これに対し、控訴審東京高裁判決は、「侵害を生ずる原因となるべき物の所有者(相手方)は、右侵害の蓋然性が不可抗力により生じたことを主張、立証しない限り、これが自己の故意、過失によって生じたか否かにかかわりなく、右予防措置を講ずべき義務を負うものであり、かつ、これに要する費用も、その多寡を問わず全額、右相手方において負担すべきものと解するのが相当」として、低地所有者への改修費用の負担は無しとしました。

○この高裁判決は、上告審令和元年3月3日最高裁判決(ウエストロー・ジャパン)において、「原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。」として維持され、確定しています。

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主   文
一 第一審原告と第一審被告Y1との間において、
1 第一審原告のX事件の控訴に基づき、原判決主文第二項及び第三項中第一審被告Y1に関する部分を次のとおり変更する。
(一) 第一審被告Y1は、第一審原告に対し、原判決別紙土地目録(一)記載の土地と(二)記載の土地との境界に沿って設けられている擁壁を、原判決別紙擁壁設計図記載のとおりの鉄筋コンクリート造倒立T型擁壁に改修せよ。
(二) 第一審原告の第一審被告Y1に対するその余の請求をいずれも棄却する。
2 第一審被告Y1のY事件の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、第一、第二審を通じ(X、Y事件とも)、これを五分し、その一を第一審原告の、その余を第一審被告Y1の、各負担とする。
4 主文第一項1(一)は、仮に執行することができる。
二 第一審原告と第一審被告Y2との間において、
1 第一審被告Y2のY事件の控訴を棄却する。
2 控訴費用は、第一審被告Y2の負担とする。

事   実

第一 当事者の求めた裁判

 (X事件につき)
一 第一審原告

(一) 原判決を次のとおり変更する。
(二) (主位的請求)
(1) 第一審被告Y1(以下「第一審被告Y1」という。)は、第一審原告に対し、第一審被告Y1所有にかかる原判決別紙建物目録(二)記載の建物(以下「第一審被告Y1所有建物」という。)のうち、原判決別紙土地目録(一)記載の土地(以下「第一審原告所有土地」という。)と同目録(二)記載の土地(以下「第一審被告Y1所有土地」という。)との境界(以下「本件境界」という。)までの最短水平距離が6・98メートル以内の部分を撤去せよ。

(2) 第一審被告Y1は、第一審原告に対し、第一審被告Y1所有土地につき、本件境界から計測して最大の仰角が30度を超える部分に存する大谷石その他の土砂を除去して、崖の勾配を30度以下とせよ。

(三) (予備的請求)
 主文第一項1(一)と同旨

2 第一審被告Y1は、第一審原告に対し、第一審被告Y1所有建物のフーチング基礎につき、原判決別紙フーチング基礎改修工法記載のとおりの工法に従ってこれを改修し、かつ、その鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを六センチメートル以上とする工事をせよ。

3 第一審被告Y1は、第一審原告に対し、第一審被告Y1所有建物の基礎ぐい10本につき、標高マイナス18・18メートル以深にある砂層を支持地盤とする鋼くい又はPC溶接継手くいを用い、別紙基礎構造打直し工法その他の方法記載のいずれか一の工法に従い、5・8トンの地震時水平外力に対して安全に耐え得る基礎ぐいの打直し又はくい先端地盤の改良等の工事をせよ。

4 訴訟費用は、第一、第二審とも第一審被告Y1の負担とする。

二 第一審被告Y1
 第一審原告のX事件の控訴を棄却する。
(Y事件につき)
一 第一審被告Y1、同Y2(以下「第一審被告Y2」という。)
1 原判決中第一審被告Y1、同Y2の敗訴の部分を取り消す。
2 原審甲事件につき、第一審原告の第一審被告Y1、同Y2に対する請求をいずれも棄却する。
3 原審乙事件につき、第一審原告は、第一審被告Y1に対し、金1285万1500円及びこれに対する昭和54年3月20日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は、第一、第二審とも第一審原告の負担とする。
5 3項につき仮執行宣言

第二 当事者の主張
 当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決事実摘示欄の「第二 当事者の主張」(原判決四枚目裏六行目冒頭から17枚目裏7行目末尾まで及び引用にかかる36枚目表1行目の「土地目録」から41枚目表8行目の「損害一覧表」の末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

一 第一審原告
1 5枚目表1行目の「土地のうち」の次に「横浜市a区b町147番14の山林」を、2行目の「残りの」の次に「同所同番一の山林」を、それぞれ加える。
2 9枚目裏4、5行目を次のとおり改める。
 「 (ロ) 本件基礎ぐいは、ほぞ式モルタル充填継ぎくいであって、地震時等には、継ぎ目が塑性ヒンジとなり、折れ曲がり、復元性がないため、水平外力に耐えられない。」
3 9枚目裏末行の「ある項」を「第一項(先端支持力を算出するための項)」と改める。

4 15枚目表1行目の「争う。」の次に次のとおり加える。
「 本件擁壁が倒壊する危険性は、もともと、その地盤である第一審被告Y1所有土地固有の性質及び形態に内在していたが、第一審被告Y1がアパート経営により利益をあげる目的で、昭和42年3月ころから同年夏ころにかけて、追加擁壁を積んだうえ、宅地造成等規制法違反の盛土造成工事を行ったため、その危険性が一層増大し、第一審原告所有土地の所有権が侵害される蓋然性が高まるとともに、第一審原告及びその家族の生命までおびやかされるに至ったものである。しかして、第一審原告は、第一審被告Y1が第一審被告Y1所有土地を取得する前から、第一審原告所有土地上に平穏に居住していたものであるから、本件擁壁が新擁壁に改修されたとしても、何ら新たに利益を受けるわけではなく、ただ第一審被告Y1の行為によって生じた被害が回復することになるにすぎない。このような事実関係のもとでは、本件擁壁改修費用の負担につき、民法所定の相隣関係の法規の類推適用はありえず、右費用は、全額、第一審被告Y1が負担すべきである。また、自ら違法な盛土造成工事を行って危険を発生させた第一審被告Y1が、右費用の負担を第一審原告に請求するのは、信義則に反し、権利の濫用に該当するから、許されない。」

5 17枚目裏7行目を次のとおり改める。
「 第一文の事実のうち、本件増築工事につき、第一審被告Y2名義で建築確認申請がなされたことは認めるが、その余の事実は否認する。同3項のうち、第一審原告が、本件増築により本件擁壁が倒壊する危険性があるとして、本件増築に反対したことは認めるが、その余の事実は否認する。同4ないし6項の事実は否認する。第一審原告は、第一審被告Y2の違法な本件増築工事によって、自己及び家族の生命、財産等が侵害されるのを防止するため、建築工事禁止の仮処分申請をなし(横浜地方裁判所昭和53年(ヨ)第890号事件)、第一審被告Y1から第一審原告に対する工事妨害禁止等の仮処分申請(同裁判所同年(ヨ)第149号事件)に対しては、特別事情による仮処分取消申請(同裁判所同年(モ)第1962号事件)及び執行取消申請(同裁判所同年(モ)第1963号事件)を行うなど、第一審原告としてとりうる法的手段はすべてとったものであり、違法な自力救済を行ったことは全くない。」

6 37枚目表2行目の「b1町」を「b町」と改める。

二 第一審被告Y1、同Y2
1 14枚目裏3行目の 「本件擁壁」の次に「は、第一審原告が第一審原告所有土地を取得した昭和40年当時には、既に存在していたものであるところ、これ」を加える。
2 15枚目表8行目の「計画し、」の次に「自己の計算において、」を加える。
3 16枚目表2行目の「横浜市」の前に「本件増築工事を妨害する意図をもって、」を加える。
4 16枚目裏8行目の「陳述」を「陳情」と改め、10行目の「行動により」の前に「自力救済的」を加える。

第三 証拠
 証拠に関する事項は、原審訴訟記録中の書証目録、証人等目録及び当審訴訟記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理   由
一 当裁判所は、第一審原告の原審甲事件の請求は、第一審被告Y2に対し、本件擁壁を新擁壁に改修する工事が完了するまでの間、第一審被告Y1所有建物上に第一審被告Y2増築予定建物の増築工事を施工することの禁止を求め、第一審被告Y1に対し、全額、第一審被告Y1の費用負担において、本件擁壁を新擁壁に改修する工事をなすべきことを求める限度においては、理由があるからこれを認容すべきであるが、その余は理由がないからこれを棄却すべきであり、第一審被告Y1の原審乙事件の請求は、すべて理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決理由説示欄(原判決17枚目裏末行冒頭から32枚目表一行目末尾まで及び引用にかかる42枚目表1行目の「計算書」から43枚目表1行目の「擁壁設計図」の末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

1 18枚目表6行目及び9行目の各「証言」の次に「及び弁論の全趣旨」を加え、10行目の「51年」を「52年」と、同行目の「塀」を「物置用建物の東側ブロック壁」と、それぞれ改める。

2 18枚目裏1行目及び3行目の各「証言」の次に「及び弁論の全趣旨」を加え、1行目の「昭和51年」を「昭和53年1月ころ」と改め、四行目の「53年」の次に「8月」を、末行の「成立に争いのない」の前に「昭和60年9月ころの第一審被告Y1所有建物の写真であることに争いのない甲第75号証の1ないし6、」を、それぞれ加える。

3 19枚目裏3行目の「9月から」から4行目の「3月にかけて、」までを「9月と昭和42年3月の二回に分けて、」と改め、10行目の「又は被告Y1所有土地の前所有者」を削る。

4 20枚目裏2行目の「透水性の」の次に「高い」を加える。
5 21枚目表2行目の「同層は、均質なものと仮定すれば、」を「同層及びそれ以深の地盤(いわゆる地山の部分)は、安定しており、」と改める。
6 22枚目裏3行目の「生じ」の次に「、昭和60年9月ころには、二階北西端の庇の一部が崩れ落ちたことがあり」を、四行目の「第67号証の1、2」の次に「、第75号証の一ないし六」を、それぞれ加える。

7 23枚目表8行目の「他の」の前に「本件全証拠によるも、」を加える。
8 23枚目裏6行目の「事情もない」の次に「(第一審被告Y1所有土地内の本件擁壁側には、二本以上の基礎ぐいは打ち込まれていない旨の原審証人Aの供述部分は、前掲甲第13号証の1、乙第10号証の1、2及び原審証人B、同C、同Dの各証言並びに原審における第一審被告Y2の本人尋問の結果と対比し、にわかに措信できない。)」を加える。
9 24枚目表1行目の「埋込み工法」を「くい打設予定箇所にアースドリルで深さ約4メートルの穴を掘った後、前記くいを埋め、くい頭をポータブル・ドロップハンマーで打撃して打込むという工法」と改める。

10 25枚目表10行目の「第57号証」を「第53号証」と改める。
11 25枚目裏1行目の「ある項」を「第一項(先端支持力を算出するための項)」と、4行目の「本件基礎ぐいが」から5行目の「ことによって、」までを「本件基礎ぐいは、前示のとおり、埋込み工法と打込み工法を併用して打設されたものであるから、」と、それぞれ改める。
12 26枚目表2行目の「請求の趣旨1項」を「第一審被告Y2に対する増築工事施工禁止請求」と改める。
13 26枚目裏9行目及び10行目の各「請求の趣旨2項(一)」を「第一審被告Y1に対する第一審被告Y1所有建物等撤去の主位的請求」と改める。
14 27枚目表末行の「請求の趣旨2項(二)」を「第一審被告Y1に対する本件擁壁改修の予備的請求」と改める。

15 29枚目表九行目冒頭から31枚目表3行目末尾までを次のとおり改める。
「しかしながら、所有権に基づく妨害予防請求権は、所有権の円満な行使を侵害する可能性が客観的に極めて大きい場合において、これを予防するため、現に侵害のおそれを生ずる原因をその支配内に収めている相手方に対し、これを除去して侵害を未然に防止する措置を講ずること等を請求する権利であるから、右侵害を生ずる原因となるべき物の所有者(相手方)は、右侵害の蓋然性が不可抗力により生じたことを主張、立証しない限り、これが自己の故意、過失によって生じたか否かにかかわりなく、右予防措置を講ずべき義務を負うものであり、かつ、これに要する費用も、その多寡を問わず全額、右相手方において負担すべきものと解するのが相当である。

そうすると、本件擁壁上部大谷石3、4段目までの倒壊の危険が不可抗力によって生じたことにつき、何ら主張、立証のない本件においては、第一審被告Y1の右主張は、その余の点につき判断するまでもなく、採用することができず、第一審被告Y1は、本件擁壁を新擁壁に改修するための費用を全額負担して、右改修工事を行うべきである。」

16 31枚目表4行目の「請求の趣旨3、4項」を「第一審被告Y1に対する本件フーチング基礎及び本件基礎ぐい等の改修請求」と、末行の「請求の趣旨3、4項」を「本件フーチング基礎及び本件基礎ぐい等の改修」と、それぞれ改める。

二 よって、原判決のうち、右と異なり、本件擁壁を新擁壁に改修する工事費の3分の1を第一審原告が負担するとの条件のもとに、第一審被告Y1に対し、右改修工事を命じた部分は相当ではなく、第一審原告の第一審被告Y1に対する請求のうち、右工事費を全額第一審被告Y1において負担して、右工事を施工すべきことを求める部分は理由があり、その余の部分は理由がないというべきであるから、第一審原告のX事件の控訴に基づき、原判決主文第二項及び第三項をその旨変更し、第一審被告Y1、同Y2のY事件の控訴は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法96条、95条、89条、92条、93条を適用し、なお、本件擁壁改修工事の緊急性に鑑み、同法196条により、職権をもって仮執行宣言を付することとして、主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第14民事部
 (裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 鈴木經夫 裁判官 山崎宏征)

以上:6,216文字
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R 6- 4-23(火):相続土地国庫帰属制度根拠法の主要3条文紹介
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○「相続登記義務化を定めた改正不動産登記法紹介」の続きで、令和5年4月27日からスタートしている相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属制度)の条文についての紹介です。先日、相続した土地を国庫に帰属させる方法について質問され、慌てて条文を調べたからです。この制度については、法務省HPの「相続土地国庫帰属制度について」に詳しく説明されており、「相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、
一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする」制度とされています。

○問題は「一定の要件を満たした場合」であり、先ず、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の主張3条文を紹介します。この3条文だけで、結構、ハードルが高いことが分かります。
この制度により国庫に引き取って貰える土地は、更地で且つ境界が明確で、地上に樹木等余計な物が無くて管理には過分の費用・労力がかからない土地でなければなりません。その上、管理に要する10年分の標準的な費用を考慮した負担金も支払わなければなりません。「いらない土地を返す方法とは?条件が厳しい?土地を手放す前にまず絶対やるべきこととは?」とのサイトによると負担金は100万円を超えることもあるとのことです。制度がスタートして1年近くなりますが、利用状況を具体的に報告して貰いたいものです。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
第2条(承認申請)

 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(中略)

第5条(承認)
 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。

(中略)

第10条(負担金の納付)
 承認申請者は、第5条第1項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。
2 法務大臣は、第5条第1項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。
3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から30日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第5条第1項の承認は、その効力を失う。
以上:1,855文字
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R 6- 4-22(月):映画”疑惑”を観て-自動車海中転落検証シーンに圧倒
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○令和6年4月20日(土)は夕方、BDソフトで映画「疑惑」を鑑賞しました。1982(昭和57)年制作の作品ですから令和6(2024)年から42年前の作品で、映画「事件」と同様、野村芳太郎監督の法廷場面がメインとなる作品です。映画「事件」を観て無性に鑑賞したくなりBDを購入しました。私が弁護士3年目の作品で、当時、実際の保険金詐欺事件が世間を賑わしており、話題になった作品です。映画館で鑑賞した記憶も微かにありましたが、内容は殆ど記憶が無く、初めての鑑賞の感覚で鑑賞出来ました。

映画「事件」同様に丹波哲郎氏が弁護人として登場すると思いきや、冒頭僅か数分程度の登場で退場となり、岩下志麻氏が国選弁護人として登場し、意外にしぶとい弁護士ぶりを発揮しました。殺人容疑者の女と彼女を弁護することになった女性弁護士の間の確執を描くと解説されていますが、当時現役で華々しく活躍していた原作者松本清張氏が脚本制作にも加わっており、小説よりも面白いとの評判もありました。微かに記憶に残っていたのは、ラストシーンでの主人公悪女役桃井かおり氏と岩下志麻氏のきわどい遣り取りだけでした。

○ストーリーは、富山県新港湾埠頭で車が海中に転落、乗っていた地元の財閥、白河福太郎は死亡したが、後妻の球磨子はかすり傷ひとつ負わず、球磨子は過去に情夫と共謀して数数の犯罪を起こしていたことが判明し、殺人罪で逮捕・起訴され、丹波哲郎氏分する有名刑事弁護士は依頼を拒否し、なかなか弁護人が決まらず、最後に岩下志麻氏演ず国選弁護人が弁護を担当し、結構迫力ある法廷場面が連続します。
主な配役の当時の年齢は以下の通りです。
桃井かおり30才
岩下志麻41才
鹿賀丈史32才
柄本明34才
仲谷昇53才
森田健作33才

○柄本明氏は、最近の老人役の記憶ばかりで、その若々しさが印象的でした。41歳の岩下志麻氏の凜とした美しさには惚れ惚れするものでした。同氏は令和6年現在は83歳になっていますが、最近全く見かけませんが、「岩下志麻は現在(2023)も活動中!病気や肺がんの噂はデマ&夫の介護で仕事セーブ」とのサイトがありました。裁判のシーンでは、自動車の海中転落検証シーンの迫力に圧倒されました。実際そこまでやるかと思ったのですが、当時話題となった保険金目的殺人事件では実際に自動車海中転落検証を行ったとのことです。

○真実が明らかになる証人尋問もそこまでやるかと思われるものでしたが、その結果が、被告人の利益になるとは限らないひねりを加えていたのが、面白いところでした。

疑惑 予告



あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション『疑惑』2015/5/8リリース!

以上:1,101文字
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R 6- 4-21(日):”アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった”紹介-悪習慣チェック2
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○「”アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった”紹介-悪習慣チェック」の続きで、西原克成医師著「アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった」の第3章「知らずにアレルギー体質をつくっている7つの習慣」のうち、特に印象に残った記述の備忘録です。

・免疫力とは、古い細胞を日々作り替える新陳代謝の一つ
・人体60兆個の細胞は毎日1兆個が作り替えられ健康を維持-体重60㎏の人は毎日1㎏の細胞が作り替えられている
・酸素と栄養から細胞を作り替えるエネルギーを作っているのがミトコンドリア
・口呼吸・冷え・寝不足がミトコンドリアの働きの障害となる
・片かみが顔や身体の歪みを作り、横向き寝・うつぶせ寝に連鎖し、口呼吸を助長

・睡眠で体を横たえるのは体を重力から解放するための「骨休め」
・横たわっているときの重力は1g(ジー)、立っているときは2g(ジー)
・体を真っ直ぐに横にしなければ体は重力から解放されず「骨休め」にならない
・新幹線・飛行機の中での睡眠等椅子に座っての睡眠は完全な「骨休め」にならない
・脊椎動物の血液は骨髄造血で作られるので体を横たえることが必須
・血液は細胞への酸素と栄養の供給源であり、造血が不十分だと全身細胞の新陳代謝も不十分となる
・睡眠は重力エネルギーから解放して造血を十分に行い新陳代謝を十分に行うためのモノ
・成人は一日最低8時間の睡眠-体を横たえ重力から解放する時間が必要

・ミトコンドリアは体内温度37°で正常に働く
・ビール・冷水・アイスクリーム等で体内温度を下げるとミトコンドリアは正常に働かなくなる
・薄着やエアコンで体を冷やすのはミトコンドリアの働きの障害となる
・生の生姜は体温を下げる
・玄米に含まれるアプジン酸フィチン酸を摂取し続けると腸内細菌状態を悪くする

・激しいスポーツは口呼吸を招く
・テニス野球ゴルフ等のスポーツは体の左右差を作り体の歪みを助長
以上:777文字
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R 6- 4-20(土):”アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった”紹介-悪習慣チェック
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○「”アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった”紹介-ミトコンドリアが重要!」の続きで、西原克成医師著「アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった」の第3章「知らずにアレルギー体質をつくっている7つの習慣」の紹介です。先ずチェック項目備忘録です。以下、全て体に悪い習慣とのことです。

・口で呼吸する習慣
□無意識のうちに口が半開き
□出っ歯
□受け口
□下唇がポッテリとしたタラコ口
□唇がカサカサに乾燥
□朝起きたとき喉がヒリヒリ痛む
□鼻の穴を意識して動かせない
□唇と閉じるとあごに梅干しのようなシワ

・食べるとき、片側でかむ習慣
□左右どちらか片方でかむ
□殆どかまずに丸呑み
□クチャクチャ音を立てて食べる
□早食い
□テレビを見ながら斜めに傾いた姿勢で食べる
※一口30回以上両側の歯で均等にかむことが重要

・横向きやうつぶせで寝る習慣
□左右どちらか横向きで寝る
□うつぶせで寝る
□高い枕で寝る
□ふかふかの布団、ベッドで寝る
□いびき・歯ぎしりがある

・無意識にとっている姿勢の習慣
□足を交差するクロス立ちをする
□片脚に体重を乗せる「やすめ」の姿勢で立つ
□ほおづえをよくつく
□デスク・テーブルに突っ伏して寝る
□猫背でパソコンを打つ
□バッグはいつも同じ側の肩にかける

・短時間睡眠で十分な骨休めをしない習慣
□熟睡しているので睡眠は5時間以下で平気
□仕事で移動が多く、車内や飛行機の中で寝る
□深夜まで夜更かししてしまう
□休日にまとめて睡眠をとる

・冷たいモノで腸を冷やす食習慣
□キンキンに冷えたビールや酒が好き
□アイスクリーム・シャーベットをよく食べる
□冷えた清涼飲料水をよく飲む
□刺身が好き
□コンビニの冷えたおにぎりやサラダをよく食べる

・いいつもりの健康常識の誤り
□スポーツは体にいい
□子どもは小さいうちからよく運動させ、走らせる
□冷え解消に生姜をおろして食べ、たっぷり料理に使う
□体にいい玄米食を食べる
□体を鍛えるため薄着を心がける
以上:796文字
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R 6- 4-19(金):財産毎詳細な夫婦共有財産額認定で清算的財産分与を認めた家裁審判紹介
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○財産分与について相談を受けていますが、財産が多岐に渡る場合に、各財産毎に詳細に夫婦共有財産該当部分の金額を認定して、その合計額の2分の1ずつの分配を決めて、財産は名義人の取得を原則として、清算金の支払を財産分与額とした平成29年4月28日さいたま家裁川越支部審判(ウエストロージャパン)全文を紹介します。各財産毎の夫婦共有財産の評価方法が参考になります。

○元夫が申立人として、元妻である相手方に財産分与を求め、原則として財産の名義人がその財産を取得し、最終的に元妻に対し、財産分与の清算金として約432万円のの支払を命じています。自宅建物から始まり、退職金・預金・自動車・生命保険まで、共有財産部分相当額を認定し、その総合計を807万5000円として、その2分の1相当額403万7500円ずつの分配とし、各取得財産額によって清算し、元妻に約432万円の支払を命じました。

○元夫が全額特有財産から保険料を一括支払いした元妻が契約名義人の生命保険について、その別居時評価額に保険契約の成立からその後の契約関係の維持や存続について,相手方元妻にも応分の貢献を認め2割相当額を夫婦共有財産としたことが注目されます。

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主   文
1 申立人から,相手方に対し,別紙の登録事項等証明書記載の自動車を分与する。
2 申立人は,相手方に対し,前項の自動車について,所有権移転登録手続をせよ。
3 相手方は,申立人に対し,432万3520円を支払え。
4 手続費用は,各自の負担とする。

理   由
1 事案の概要

 本件は,申立人が,元妻である相手方に対し,離婚に伴う財産分与を求める事案である。

2 事実関係
(1) 申立人と相手方は,平成13年○○月○○日婚姻した夫婦である。子はいない。
(2) 相手方は,平成27年○○月○○日,自宅を出て申立人と別居した。申立人と相手方は,同年○○月○○日調停離婚した。
(3) 申立人と相手方の間では,平成28年○○月○○日,相手方ほか1名が申立人に対し,解決金230万円を支払い,他に何らの債権債務がないことを確認する(ただし,財産分与を除く。)旨の和解が成立した。

3 財産分与の判断
(1) 自宅建物

ア 申立人は,婚姻前の平成8年○○月,実父の土地上に,代金1500万円で自宅建物を新築した。代金のうち600万円は申立人の自己資金,残りの900万円は○○の住宅ローンでまかなった。住宅ローンは,申立人の給与から返済し,その額は年間69万円(元利均等払い)である。申立人は,父から相続した土地の売却代金から,平成21年○○月に260万円,平成24年○○月に67万円を返済して,住宅ローンを完済した。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円である。

イ 自宅建物の取得資金1500万円のうち,申立人の自己資金600万円の分は特有財産であり,残りの住宅ローン900万円の分は全体の6割に相当する。この住宅ローンは,①申立人が婚姻前に特有財産で約4年半(年額69万円,合計約759万円),②申立人と相手方が婚姻中に共同して約11年間(同,合計約620万円),③相手方が終盤に特有財産から合計327万円を返済し,①~③の合計は約1396万円であった。上記②の共同返済額は全ローン返済額の約5割を占める(返済額中の元金の割合は,上記①が少なく,②が中位で,③が多い。)。

ウ そこで,自宅建物の取得資金のうち住宅ローンの割合(6割)に,全ローン返済額のうち共同で返済した上記②の割合(5割)を乗じると,自宅建物の約3割が夫婦共同財産ということができる。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円であるから,その3割である84万8000円が夫婦共同財産である(千円未満四捨五入,(2)~(7)の末尾も同じ)。

(2) 退職金
ア 申立人は,○○に勤務してきた。○○の退職金支給規定によれば,申立人が別居時に近接する平成27年○○月末に自己都合退職したと仮定した場合,勤続21年の退職金支給額は471万4400円である。この21年分の退職金のうち,婚姻後である13年半分を按分計算すると,夫婦共同財産は303万1000円である。

イ なお,申立人は,財産分与の基準時について,2人が別居した平成27年○○月ではなく,相手方がCと不貞関係を持った平成25年○○月か,申立人が相手方にこれを告知した平成26年○○月とすべきであり,相手方は,それ以前から,申立人のために炊事,洗濯,掃除をせず,肉体関係を拒否していたと主張し,申立人の陳述書にもこれ沿う記載がある。しかし,上記の主張を裏付ける客観的証拠は乏しい。そして,財産分与の分与対象財産の確定基準時は,夫婦の経済的な協力関係が終了した時とされているから,それが外形的に明らかになった別居時とするのが相当である。

(3) 申立人名義の預金
ア 申立人は,別居時に,申立人名義の預金として,①○○・普通・口座番号○○に7万9901円,②同・普通・口座番号○○に5万6745円,③同・普通・口座番号○○に1万9814円,④同・普通・口座番号○○に19万2952円,⑤同・普通・口座番号○○に4159円を有し,その合計は35万3571円であった。

イ 申立人の上記⑤の口座には,別居後の平成27年○○月○○日に14万8568円,同月○○日に1万2142円が,夫婦の同居中に加入していた○○から振込入金され,その合計は16万0710円である。

ウ 上記ア,イは,いずれも夫婦共同財産であり,これらの合計は51万4000円である。

(4) 相手方名義の預金
ア 相手方は,別居時に,相手方名義の預金として,①○○・積立・口座番号○○に7万5000円,②同・同・口座番号○○に12万円,③○○・普通・口座番号○○に65万9288円,④○○・普通・口座番号○○に24万2805円,⑤同・積立型・口座番号○○に35万1099円,⑥同・同・口座番号○○に100万3686円,⑦同・定期・口座番号○○に12万1827円を有し,その合計は257万4000円であった。これは夫婦共有財産である。

イ 申立人は,相手方が別居前に預金口座から多額の金員を払い戻した旨を主張するが,それが他に分与対象財産として現存することを認める証拠はない。

ウ 相手方は,○○の預金は親からの預り金,○○の預金は婚姻前からの特有財産であると主張するが,このつながりを示す証拠はない。

(5) ホンダ・フィット
ア 申立人は,婚姻中の平成23年○○月,別紙の登録事項等証明書記載の自動車(ホンダ・フィット)を代金208万円で購入した。代金のうち125万円は父から相続した財産から,残りの83万円は○○のオートローンでまかない,そのうち同居中に返済した元本は58万4000円である。相手方は,別居直後から,この車を使用してきた。車の評価額は,平成27年○○月時点で79万9000円であった。

イ フィットの購入代金208万円のうち,申立人の相続財産125万円による分は特有財産であり,残りのオートローン83万円による分は全体の約4割に相当する。オートローンの返済元本のうち,婚姻中に共同で返済した元本58万4000円は7割を占める。そこで,フィットの購入代金のうちオートローンの割合(約4割)に,返済元本のうち共同で返済した元本の割合(約7割)を掛けると,夫婦共同財産の割合はフィット全体の約3割に相当する。平成27年○○月(評価額79万9000円)から約2年が経過したことから,現在の評価額はその約8割である64万円を上回らないものと認められる。この64万円に夫婦共同財産の割合(3割)を乗じると,19万2000円が現在の夫婦共同財産の分である。

ウ 相手方は,フィットの前に乗っていた買換車両を申立人が友人に30万円で売却したから,その30万円も分与の対象とすべきである旨を主張するが,これが分与対象財産として現存することを認める証拠はない。

エ 申立人は,相手方の求めに応じて,平成27年○○月の別居時からフィットを使用させたのであるから,別居時の評価額で算定するべきであると主張する。しかし,財産分与の評価額は分与時を基準とするのが合理的であり,本件の事実関係において上記の原則を覆すには足りない。

(6) ホンダ・オデッセイ
ア 申立人は,婚姻中の平成21年○○月,自動車(ホンダ・オデッセイ,旧車両)を313万円で購入し,全額をオートローンでまかなった。申立人は,合計36万4000円を分割返済し,平成21年○○月,残金279万円を父から相続した財産により一括返済した。夫婦が共同で返済した36万4000円は,返済総額315万4000円の約12パーセントに当たる。

イ 申立人が,平成26年○○月に自動車(ホンダ・オデッセイ,新車両)を買い替えた際,旧車両の下取り価格は96万円であった。夫婦が共同で返済した割合である12パーセントを乗じると,旧車両のうち12万円が夫婦共同財産であり,それが新車両の購入代金に充当された。そこから3年が経過した現在,新車両全体の評価額は購入代金の約7割を上回らないと認められるから,12万円の7割に当たる8万4000円が夫婦共同財産と認められる。

(7) ○○の生命保険
ア 申立人は,勤務先で保険契約獲得のノルマを課されたが,職員本人の加入は禁止されていた。そこで,相手方を保険契約者兼被保険者とし,その同意を得て,平成24年○○月○○日,保険会社(略称:○○)との間で,別紙生命保険証券記載の生命保険契を締結した。死亡保険金1000万円の受取人は申立人,高度障害保険金1000万円及びリビング・ニーズ保険金の受取人は相手方であった。申立人は,同日,父の相続財産を原資とする定期預金を解約し,相手方の銀行口座に510万円を入金し,前納保険料509万8374円を相手方名義で保険会社に振り込んだ(振込手数料を控除)。保険代理店は申立人の勤務先であり,保険証券は申立人が保管してきた。現状では,申立人及び相手方の間で,保険契約者や被保険者を変更することが困難である。

イ 解約返戻金は,別紙生命保険証券記載のとおりであり,前払保険料があればそれも併せて返還される。そのため,保険を解約した場合に受領できる解約返戻金及び前払保険料は,平成25年○○月○○日に解約した場合が477万6790円,平成27年○○月○○日に解約した場合が415万9500円,平成29年○○月○○日に解約した場合が359万8660円,同月○○日に解約した場合が514万7020円である。別居時(平成27年○○月○○日)に近接する時期の解約返戻金及び返還保険料は415万9500円であり,現時点に近接する時期の解約返戻金は514万7020円である。

ウ 上記のとおり,○○の生命保険は,申立人の勤務先の必要から加入し,名義は相手方であったものの,前納保険料509万8374円の全額が申立人の特有財産から支払われ,死亡保険金の受取人や保険証券の管理者も申立人であることからすれば,夫婦間においては実質的に申立人の財産ということができる。

エ 他方で,この生命保険契約が締結されるためには,相手方が保険契約者及び被保険者となって契約手続を行い,これを前提として保険料などの契約条件が設定され,保険期間中は相手方の生命身体が保険の目的とされ,高度障害保険金及びリビング・ニーズ保険金の受取人は相手方であった。そうすると,○○の保険契約は,保険契約の成立はもとより,その後の契約関係の維持や存続について,相手方にも応分の貢献があるというべきであり,清算的財産分与の観点では,保険契約の別居時の評価額である415万9500円の約2割に相当する83万2000円が,夫婦共同財産であると認められる。

(8) 分与額の計算
 申立人と相手方の夫婦共同財産は,前記(1)ないし(7)の合計807万5000円である。清算的財産分与においては,衡平の原則に基づき,貢献度に応じた寄与割合を評価して算定する方法が相当であるところ,夫婦共同財産は,原則として夫婦が協力して形成したものとして,特段の事情がない限り,財産形成に対する寄与貢献を同等とし,相互に2分の1の権利を有するものと考えるべきである。上記の807万5000円の2分の1は,403万7500円である。

(9) 分与の方法
 前記の財産のうち,自宅建物,退職金,申立人名義の預金,ホンダ・オデッセイは申立人名義の財産であり,そのまま申立人が取得することが相当である。また,相手方名義の預金,○○生命保険は相手方名義の財産であり,そのまま相手方が取得することが相当である。しかし,ホンダ・フィットは,申立人名義の財産であるが,相手方が使用しており,申立人にはホンダ・オデッセイがあるため,申立人から相手方に分与することが相当である。
 そして,相手方が取得する財産は,相手方名義の預金257万4000円,○○生命保険514万7020円,ホンダ・フィット64万円であり,その合計額は836万1020円である。ここから前記の分与額403万7500円を差し引くと,432万3520円超過するから,これを申立人に清算する必要がある。


4 結論
 よって,申立人は相手方にホンダ・フィットを分与し,その旨の所有権移転登録手続を行い,その他の財産は,各名義人がそのまま取得するとともに,相手方が申立人に清算のため432万3520円を支払うことが相当であり,主文のとおり審判する。
 さいたま家庭裁判所川越支部
 (裁判官 ○○)
以上:5,475文字
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R 6- 4-18(木):債務超過の夫からの財産分与について詐害行為取消請求を棄却した地裁判決紹介
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○債務超過の夫から離婚に伴う財産分与として夫名義不動産の譲渡を受けることは夫の債権者に対する詐害行為になりますかとの質問を受け、関連判例を調べたところ、以下の判例がありました。

○事案は、以下の通りです。
・被告Y1が訴外信用金庫から借入れをするに当たって、原告が被告Y1の借入金債務につき連帯保証
・被告Y1が返済を怠り期限の利益を喪失して原告が訴外信用金庫に約931万円を代位弁済し、原告が被告Y1に対し同額の求償請求
・被告Y1は、妻であった被告Y2に唯一の財産である本件土地を離婚に伴う財産分与をとして譲渡
・原告は、被告Y1・Y2に対し、財産分与を詐害行為として取消し、被告Y2に対し財産分与土地の所有権移転登記抹消登記手続請求


○これに対し、被告Y1に対する請求は認容した一方、本件財産分与が民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情の存在を認めることはできず、詐害行為として取消しの対象とならないとして、被告Y2に対する請求は棄却した平成23年9月30日東京地裁判決(ウエストロージャパン)関連部分を紹介します。

○判決は「離婚に伴う財産分与は,分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって,一般債権者に対する共同担保を減少させる結果となるとしても,それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り,詐害行為として,債権者による取消しの対象となり得ないものと解するのが相当」と財産分与と詐害行為に関する一般論を述べています。

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主    文
1 被告Y1は,原告に対し,931万1502円及びこれに対する平成22年3月13日から支払済みまで年14%の割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
2 原告の被告Y2に対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は,原告に生じた費用の2分の1と被告Y1に生じた費用は同被告の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告Y2に生じた費用は原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 
事実及び理由
第1 請求

1 主文第1項と同旨
2 原告と被告Y2との間で,被告Y1が,別紙物件目録記載の土地について,平成22年7月8日,被告Y2に対して行った財産分与を取り消す。
3 被告Y2は,別紙物件目録記載の土地について,東京法務局平成22年7月9日受付第11401号所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

第2 事案の概要
 本件は,被告Y1(以下「被告Y1」という。)が朝日信用金庫(以下「訴外信金」という。)から借入れをするに当たって,原告が被告Y1との間の保証委託契約に基づき被告Y1の借入金債務につき連帯保証をしたところ,被告Y1が約定の返済を怠り期限の利益を喪失したことから,原告が訴外金庫に対し合計931万1502円を代位弁済したとして,原告が被告Y1に対し,931万1502円及びこれに対する代位弁済の日の翌日である平成22年3月13日から支払済みまで約定の年14%の割合(年365日の日割計算)による遅延損害金の支払を求めるとともに,被告Y1の妻であった被告Y2(以下「被告Y2」という。)が,被告Y1から,被告Y1の唯一の財産である別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)について,平成22年7月8日,離婚に伴う財産分与を受けたとして,所有権移転登記を了したところ,当該財産分与は詐害行為に当たり,被告Y2は,債権者である原告を害することを知っていたなどとして,原告が,原告と被告Y2との間で,上記財産分与を取り消した上,被告Y2に対し,本件土地について,上記所有権移転登記の抹消登記手続をすることを求める事案である。

1 争いがない事実

     (中略)

第3 争点に対する判断
1 離婚に伴う財産分与は,分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって,一般債権者に対する共同担保を減少させる結果となるとしても,それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り,詐害行為として,債権者による取消しの対象となり得ないものと解するのが相当である(最高裁昭和57年(オ)第798号同58年12月19日第二小法廷判決・民集37巻10号1532頁参照)。

2 そこで,本件財産分与について,上記特段の事情があるか否かについて判断する。
(1) 前記争いのない事実に,証拠(甲29~32,乙1~29,30の1・2,31,32,被告Y2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
ア 被告Y1(昭和21年○月○日生)と被告Y2(昭和23年○月○日生)は,昭和50年5月12日に婚姻の届出をした夫婦であり,両名間には,2人の子(長男B,長女C)がいる。被告Y1は,自宅において,個人で皮革卸売業を行っていた。被告Y2は,家事に従事するとともに,被告Y1の仕事も手伝っていた。しかし,経営不振のため,被告Y1は,平成21年8月には,店を閉め,営業を停止した。

イ 被告Y1とその妹のDは,昭和55年5月17日,ローンを組んだ上,本件土地を買い受けた(持分は,被告Y1が5分の3,Dが5分の2であった。)。その後,被告Y1と被告Y2は,協力して,ローンを返済していた。本件土地は,貸駐車場として利用され,月額12万円前後の収益を上げていた。そして,平成10年7月28日,共有物分割により,被告Y1が本件土地の所有権を取得した。
 また,被告Y1は,平成9年1月25日,自宅とその敷地の借地権(別紙1の2及び3の不動産)を相続により取得した。そして,被告Y1は,上記自宅について,平成10年1月9日,東京信用金庫を根抵当権者とする極度額1500万円の根抵当権を設定し,その旨の登記を了した。

ウ 被告Y2は,両親から生前贈与を受けたり,相続することなどにより平成10年初めころには3000万円を超える特有財産を有していた。そして,被告Y2は,被告Y1に対し,事業のために必要であるという説明を信じて,別紙2の第1記載のとおり貸付等をしてきた。しかし,平成22年2月ころ,上記貸付金等の多くが,被告Y1の競馬や飲食代などの遊興費に用いられていたことが判明した。そのため,被告Y2は,被告Y1との離婚を意識するようになったところ,同年5月には,被告Y1が,東京信用金庫浅草支店から借入金の返済を迫られていたことから,被告Y2に対し,「自宅についている根抵当権を外すのに100万円ほど必要だから,代わりに返済してくれ。」と嘘をつき,被告Y2に90万5236円を弁済させるということがあったため,被告Y2は被告Y1との離婚を決意した。

エ 被告Y1と被告Y2は,平成22年6月27日,長男Bの立会いの下,離婚について協議をし,その結果,まず,被告Y1が,被告Y2に対し,別紙1の「被告Y1から被告Y2に対する財産分与の内容」記載の各不動産(本件土地を含む。)を分与することが合意された。上記各不動産のうち,1の本件土地の固定資産税評価額は1980万8530円,2の建物(自宅)の固定資産税評価額は538万5500円,3の土地の借地権の評価は市場価値が不明である(東京都所有の非課税物件である。)。次に,被告Y2が,被告Y1に対し,別紙2の「財産分与に対する反対給付(対価)一覧表」の第1記載のとおり,従前,被告Y2が被告Y1に対し有していた貸金債権及び求償金債権の合計2292万4237円を上記財産分与の対価として充当すること,同第2記載のとおり,被告Y2が,自宅に付された東京信用金庫の根抵当権を解除するために,509万9691円を第三者弁済すること,新たに,被告Y1に対し,被告Y2の特有財産の中から594万円を分与することが合意された。

オ そして,被告Y1と被告Y2は,平成22年7月8日,E司法書士の事務所において,離婚協議書(乙3)を作成するとともに,離婚の届出をした。
 被告Y1は,上記離婚協議書において,平成22年7月31日限り,自宅から退去すると定められていたことから,同月29日,自宅を出て,東京都葛飾区〈以下省略〉aマンション108に転居した。

カ 被告Y2は,上記エの合意に従い,平成22年7月16日,東京信用金庫に対し,509万9691円を第三者弁済し,これにより,同月23日,自宅に付されていた同金庫の根抵当権が解除された。また,被告Y2は,上記エの合意に従い,みずほ銀行千束町支店の被告Y2名義の口座から,同月16日に294万円を,同月27日に300万円をそれぞれ払い戻して,被告Y1に渡した。

キ 被告Y2は,現在,前記特有財産もなくなり,本件土地から得られる駐車場代(現在は月額9万円)で暮らしている。また,被告Y1は,離婚後,いったんはNPO法人の契約社員として稼働し,月額15万円程度の収入を得ていたが,平成23年4月4日からは,失業を理由に生活保護を受けている。

(2) 上記認定事実によれば,被告Y1と被告Y2は,真意に基づき離婚をしたものであり,また,被告Y1と被告Y2が離婚するに至ったのは,専ら被告Y1の側に責任があること,被告Y2は,家事に従事するとともに,被告Y1の仕事も手伝い,財産の形成及び維持に寄与してきたこと,被告ら間においてされた財産分与の内容は,おおむね均衡がとれていること,被告Y2は,本件土地からの駐車場収入により生計を立てていることなどからすれば,本件財産分与が民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情の存在を認めることはできない。そうすると,本件財産分与は,詐害行為として,債権者による取消しの対象となり得ないものと解するのが相当である。

3 また,上記認定事実によれば,本件財産分与が,被告Y1において強制執行を免れるためにされた通謀虚偽表示であると認めることもできない。

4 以上によれば,原告の被告Y1に対する請求は理由があるが,被告Y2に対する請求は理由がない。
 よって,主文のとおり判決する。 (裁判官 志田原信三)
 
 
 〈以下省略〉
以上:4,298文字
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R 6- 4-17(水):2024年04月16日発行第363号”弁護士の偶然世界”
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横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和6年4月16日発行第363号弁護士の偶然世界をお届けします。

フィリップ・K・ディックなんて名前も全く知りませんでしたが、ウィキペディアで調べると有名なアメリカのSF作家で、映画「ブレードランナー」、「トータル・リコール」等の原作者なんですね。今回もまた勉強になりました。古典からSFまで大山先生の幅広い教養にいつもながら感心します。

○現在は激減していますが、後遺障害の等級を争う難しい交通事故訴訟を相当数取り扱い、相当数の裁判官と巡りあって来ましたが、大山先生の言う「偶然」は、ホントに実感してきました。交通事故訴訟の実体は、加害者と被害者の争いではなく、加害者側保険会社と被害者の争いです。被害者に寄り添う裁判官もいますが、保険会社の言いなりとしか思えない裁判官もいました。いずれの裁判官に会うかは、正に「偶然」です。

○訴訟は、裁判官による当たり外れの多い、バクチみたいなところがありますとお客様に説明してきました。大山ニュースレターを見て、外れの裁判官に当たっても、当たりの方向に変えるべく努力して、弁護士は当たりだったと言って貰えるよう頑張る重要性を実感しました。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の偶然世界

「偶然世界」は、フィリップ・K・ディックのSF小説です。「公共的偶然発生装置」というシステムにより、60億人の人類の中から権力者がランダムに選ばれる未来の話です。50年前のSFですが、今読んでもとても面白い。ところで、つい最近も自民党の裏金事件が問題になりました。確かにけしからん話です。ただ、今の民主制の下では、選挙にお金がかかるのも事実なのです。マーケティングをしたことがある人なら、商品を全国的に売り出すのに大変なお金がかかることはよくわかっているはずです。これは、「議員」という「商品」を売り出す場合でも同じことです。

この点、「偶然世界」のように、権力者を偶然に選ぶ仕組みなら、お金がかかる選挙の問題は解決されちゃうのです! 偶然選ぶことに抵抗がある人もいるでしょう。しかし、ギリシャの民主制度では、権力者はくじ引きで決めていたなんて、歴史の教科書で習ったはずです。それでも、特に今の制度と比較して大きな問題もないように思えてしまいます。もっとも、「偶然」選定された権力者が暴君になるようなリスクもあります。それを防ぐためなのか、このSF小説では、権力者に対して公認の暗殺者を向けることが許されているのです。それに対して権力者側は、人の考えを読むことができるエスパーを護衛につけることができます。

このSF小説では、暗殺者側が多数の人間の意識を共有するアンドロイドで、エスパーの裏をかいて暗殺をしていくなんて、いかにもSFらしい盛り上がりを見せていきます。さすがに現代社会では、偶然に選ばれた議員や総理大臣を暗殺する仕組みはまずいでしょう。しかし、ここでもギリシャの制度が活用できます。罷免させたい者の名前を書いて投票する、「陶片追放」です。多くの人が罷免させたいとするなら、権力者の座を追われるわけです。でもこの制度、現代日本でも採用されているんです。最高裁判所の裁判官について、「国民審査」ということで、罷免させたい人の名前を書くことができます。今まで一人の裁判官も、実際に辞めさせられたことはないのですが。。。

さらに、「偶然」を政治の世界だけでなく、裁判の世界にも持ち込めないかと考えちゃいます。今の制度だと、裁判に非常に長い時間と費用が掛かります。そうであるなら、おもいきって裁判の勝敗も「偶然」で決めるなんてどうでしょうか? 中世のヨーロッパなど、神託による裁判みたいなものもあったそうです。これなんて「偶然」による裁判と同じに思えますね。「偶然で結果が左右されるのはおかしい」と考える人も多くいそうですが、現状の司法制度でも、本当に多くの面で「偶然」によって結果が左右されているのです。たとえば、うちの事務所では多くの痴漢や盗撮の刑事事件を扱っています。こういう比較的軽い事件の場合、どの検察官が担当するかによって、処分の内容が違ってきます。弁護士がしっかり活動して、被害者と示談すれば、多くの検察官は不起訴にしてくれます。

しかし中には厳しい検察官もいて、罰金や正式裁判にされることもあるのです。これなんて本当に「偶然」によって決まります。裁判官も同じです。弁護士としてできる限りの対応をしても、どの裁判官が担当になるかという「偶然」で、裁判結果が違ってきます。これは、裁判の「判断」の違いだけではないのです。和解によってお互い妥協できるところを見つけようとする裁判官と、法律でバッサリ切る裁判官では、結果に大きな違いが出てきます。

というわけで、弁護士についてです。お金のない被告人につける国選弁護人では、示談などを熱心にする人と、適当にやる人でかなり結果が違ってきます。これまた偶然に左右されます。でもこれって国選弁護人だけではなく、自分で契約した弁護士でも同じようなものです。依頼した弁護士の有能さなど依頼者からは中々分からない。「偶然選んだのが大山弁護士で良かった」と言って貰えるよう頑張ります!

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◇ 弁護士より一言

少しは筋肉を付けようと、マンツーマンのジムに通い始めました。コーチのお兄さんがノリの良い人で、私のことを励ましてくれます。「大山さんはトム・クルーズと同じ年ですから、そこを目指しましょう!」さらには、「大山さんと同じ年の人、また見つけてきましたよ。阿部寛も堤真一もほぼ同じ年ですから、頑張りましょう」 そ、そんな人たちと比べなくても。。。
以上:2,443文字
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R 6- 4-16(火):相続登記義務化を定めた改正不動産登記法紹介
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○以下の不動産登記法改正による第76条の2等の新設により、令和6年4月1日から不動産の相続人は「相続が開始して所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならない」と定められ、
・被相続人が死亡した事実
・自分が不動産を相続して所有者となった

ことを知った時点から3年以内に相続登記をしなければならなくなっています。

○相続登記は原則として遺産分割協議の成立が必要ですが、協議が成立しないなどの理由で相続登記が難しい場合、「自分が相続人です」と法務局に申請することにより、上記の義務を履行したことにしてもらえる相続人申告登記制度も定められました。相続人申告登記の申請があると、登記官はその不動産の登記に申出人の氏名や住所などの情報を付記しますが、この時点では正式な相続登記ではなく、その後、遺産分割協議などを行って相続人が確定したら、その日から3年以内に正式な相続登記(名義変更)をすれば相続人は義務を履行したことになります。

○令和6年4月1日以降の相続について、正当な理由がないのに3年内に相続登記を完了しない場合、「10万円以下の過料」が課されます。過料は、罰金や科料とは異なり犯罪ではありませんので、前科はつきません。

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改正不動産登記法
第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)

 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

第76条の3(相続人である旨の申出等)
 前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第1項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第1項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第1項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第1項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第164条(過料)
 第36条、第37条第1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第49条第2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条、第58条第6項若しくは第7項、第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。

以上:1,711文字
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