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”別れさせ工作委託契約”を公序良俗違反としない地裁(控訴審)判決紹介

○「”別れさせ工作委託契約”を公序良俗違反としない簡裁判決紹介」の続きで、その控訴審の平成30年8月29日大阪地裁判決(判タ1484号243頁)を紹介します。

○原審では、被控訴人(別れさせ屋)が、控訴人(依頼者)に対し、被控訴人が控訴人に協力するという内容で締結された「別れさせ工作委託契約」と称する契約について、着手金として80万円、上記契約の目的が達成されたときは成功報酬として40万円を控訴人がそれぞれ支払う旨の約定があったと主張して、残金70万円等の支払を求めて認容されました。

○また、控訴人が、被控訴人に対し、本件契約及びこれに付随する調査委託契約が公序良俗に反し無効であるなどと主張して、不当利得返還請求権に基づき、本件契約等に基づいて支払った既払金等の支払を求めた反訴請求は棄却されました。

○控訴人(依頼者)が、控訴しましたが、控訴審大阪地裁判決も、本件契約等の目的達成のために想定されていた方法は、人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷付ける方法や、関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められないなどとして、本件契約等が公序良俗に反するとまではいえないなどとして、原判決を相当であるとして控訴を棄却しました。

○業者の方を、「別れさせ屋」と記載しましたが、そのHPによると、業務は、別れさせるだけでなく、「元彼と復縁したい」、「別居した妻と復縁したい」、「好きな人ができたがどう接していいかわからない」と言う「結びつけ屋」の面もありました。「恋人との別れ・復縁・気になる人との出会い・好きな人の縁結びなど人には言えない悩みをプロの精鋭工作集団ギフトが解決に導きます。」とのキャッチフレーズです。

○弁護士事務所にも、妻に別居されてしまったが、妻と復縁したいのでどうしたら良いでしょうかなんて相談もたまにあります。私は、そのような問題は弁護士の業務ではなく、本人が真摯に努力するしかないですよと、相談者からすれば冷たい回答をしていました。それを商売にしている業者も相当多そうであり、その専門業者が居ますので、そちらを利用しては如何ですかなんて回答すべきかどうかは悩むところです(^^;)。

○考えてみると弁護士の離婚調停・訴訟業務は、「別れさせ屋」の面があります。専門の「別れさせ屋」業務HPには、恋人の別れさせ工作は業務に入っていますが、夫婦の別れさせ工作までは、業務に入れていないようです。弁護士法違反になる恐れがあるからと思われます。弁護士は、法的「別れさせ屋」業務を独占していることになります(^^;)。

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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決主文第1項を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
1 事案の骨子

 本件の本訴請求は,被控訴人が,控訴人に対し,平成28年4月18日に締結された,「別れさせ工作委託契約」と称する契約,すなわち,控訴人の指定する女性(以下「指定女性」という。)と,指定女性が当時交際していた男性(以下「対象男性」という。)との間の交際を終了させることに関し,被控訴人が控訴人に協力するという内容で,着手金として80万円,上記の目的が達成されたときは成功報酬として40万円を控訴人がそれぞれ支払う旨の契約(以下「本件契約」という。)に基づき,残金70万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成29年1月20日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの,

反訴請求は,控訴人が,被控訴人に対し,本件契約及びこれに付随する調査委託契約(以下,本件契約と調査委託契約を併せて,「本件契約等」という。)が公序良俗に反し無効であるなどと主張して,不当利得返還請求権に基づき,本件契約等に基づいて控訴人が支払った60万8000円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成29年8月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

 原審は,本件契約が締結されており,本件契約等が公序良俗に反するとはいえないなどとして,被控訴人の本訴請求を認容し,控訴人の反訴請求を棄却したところ,控訴人は,本訴請求に係る敗訴部分を不服として控訴した。なお,控訴人は反訴請求棄却部分については控訴しておらず,同部分は当審の審判対象外である。

2 前提事実
(1)被控訴人と控訴人は,平成28年4月15日,次の事項を内容とする調査委託契約(以下「本件調査委託契約」という。)を締結した(甲5)。
ア 契約内容 指定女性と対象男性との交際を終了させるための準備として,被控訴人が対象男性の調査をすること
イ 報酬   10万8000円

(2)控訴人は,被控訴人に対し,平成28年4月15日,10万8000円を支払った(乙4。ただし,同金員の支払の趣旨については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。)。

(3)被控訴人と控訴人は,平成28年4月18日,次の事項を内容とする契約(本件契約)を締結した(甲1,乙5)。
ア 契約期間 平成28年4月19日~同年7月19日
イ 契約内容 別れさせ工作。具体的には,指定女性と対象男性との交際を終了させることに関し,被控訴人が控訴人に協力すること
ウ 着手金  80万円(ただし,着手金の趣旨については,後記争点(1)のとおり当事者間に争いがある。)
エ 成功報酬 40万円

(4)被控訴人は,平成28年4月15日頃~同年5月15日頃,控訴人に対し,LINEで,指定女性及び対象男性の動向等について随時連絡をするとともに,指定女性と対象男性との交際を終了させるための方法について詳細に告げるなどした(甲3)。

(5)控訴人は,平成28年4月28日,被控訴人に対し,本件契約に基づき,着手金のうち30万円を支払った。被控訴人は,同日,控訴人に対し,調査工作代として40万8000円を領収した旨の領収証を作成・交付した。

(6)被控訴人の指示を受けた女性(以下「工作員女性」という。)は,平成28年5月14日,指定女性に対し,対象男性が工作員女性と食事をしたことを告げた。

(7)控訴人は,平成28年5月16日,被控訴人に対し,本件契約に基づき,着手金のうち20万円を支払った。

(8)
ア 指定女性と対象男性との交際は,遅くとも平成28年7月17日には終了した(甲2)。
イ 被控訴人は,平成28年7月17日,控訴人に対し,指定女性と対象男性との交際が終了している旨報告した(甲2,3)。

(9)
ア 本件契約の関係者は,いずれも独身であった(弁論の全趣旨)。
イ 本件契約の目的を達成するために関係者の意思に反して肉体関係を持つことが提示されたことはなく,実際に肉体関係が結ばれたこともなかった(甲3,弁論の全趣旨)。

3 争点
(1)本件契約における合意内容,特に着手金の趣旨
(2)本件契約の目的が達成されたか否か
(3)本件契約に基づく着手金の支払額,特に10万8000円の支払が本件契約の着手金としてされたか否か
(4)本件契約が債務不履行により解除されたか否か
(5)本件契約等が公序良俗に反するか否か

4 争点についての当事者の主張

         (中略)


第3 争点に対する判断
1 認定事実
 前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,次のとおりである。
(1)控訴人は,平成28年4月頃,以前交際していた女性(指定女性)が出会い系サイトで新しい交際男性(対象男性)と知り合ったことを聞き,指定女性との復縁を希望していたことから,被控訴人に対し,指定女性と対象男性との交際を終了させることを目的とする工作を依頼した(甲1,乙5)。
 そして,被控訴人と控訴人は,平成28年4月15日,前記前提事実(1)のとおり本件調査委託契約を締結した。

(2)被控訴人は,上記(1)に係る調査の結果,対象男性の人相,住所を特定した。そして,被控訴人と控訴人は,平成28年4月18日,本件契約を締結した。

(3)被控訴人は,控訴人,指定女性,対象男性がいずれも未婚者であることを確認した。そして,被控訴人の指示を受けた工作員女性は,対象男性との接触に成功し,対象男性と連絡先を交換し,食事をするなどした(乙5)。

(4)本件契約に基づく具体的な工作内容は,当初,工作員女性を対象男性に近づけて恋愛感情を抱かせて指定女性に別れを告げさせるように仕向けるというものであったが,その後,控訴人の提案により,対象男性が工作員女性と浮気をしている事実を指定女性に暴露することで2人が別れるように仕向けるというものに変更された(乙5)。

(5)上記の暴露は,平成28年5月14日に行われた。すなわち,対象男性と指定女性がいる電車内に工作員女性とその友人役工作員が乗り込んで声を掛け,その後,降車駅近くの喫茶店で話をし,暴露を実行した。二股をかけられた形の女性2人(指定女性,工作員女性)は対象男性と別れる旨発言したが,工作員女性は,指定女性と交流し,対象男性と別れたことを確認するため,指定女性と連絡先を交換した(甲4,乙5)。

(6)被控訴人は,平成28年5月16日,控訴人から,被控訴人側の落ち度により「別れさせ工作」が指定女性に発覚したのではないかと指摘されたが,被控訴人側の落ち度で「別れさせ工作」が指定女性に発覚することはあり得ない旨回答した。また,被控訴人は,同月31日,控訴人から,着手金の減額を要望されたが,この要望を明確に拒否した。そして,被控訴人は,控訴人に対し,同年6月12日,同月中頃には指定女性が対象男性と別れた証拠を示すことができるので成功報酬の支払の準備をしてほしい旨を伝え,同年7月17日,指定女性が対象男性と別れた旨を伝え,同月22日,別れた証拠がある旨を伝えた(甲3)。

2 争点(1)(本件契約における合意内容,特に着手金の趣旨)について
 被控訴人は,本件契約において,被控訴人が指定女性と対象男性との交際を終了させることに関し協力すること,控訴人が被控訴人に対し着手金80万円,成功報酬40万円をそれぞれ支払うことを合意した旨主張する。

 そこで検討すると,前記前提事実(3)のとおり,本件契約において,被控訴人は,控訴人との間で,被控訴人が指定女性と対象男性との交際を終了させることに関し協力すること,控訴人が被控訴人に対し着手金80万円,成功報酬40万円をそれぞれ支払うことを合意したことが認められる。

 これに対し,控訴人は,被控訴人と控訴人が,着手金80万円が本件契約期間内における上限であること(仮に短期間で活動が終了した場合には着手金の精算を行うこと)を確認の上で本件契約を締結した旨主張する。

しかし,本件契約の内容に照らすと,本件契約の目的(指定女性と対象男性との交際の終了)が達成されるためには,被控訴人の人脈,計画等,被控訴人の技術的な側面での役務提供が必要不可欠であったといえる。そうすると,短期間で活動が終了した場合というのは,被控訴人が人脈等を用いて本件契約の履行を行ったような場合であって,着手金の減額事由になるものとは考え難い(なお,上記認定事実(6)のとおり,被控訴人は,平成28年5月31日,控訴人から,着手金の減額を要望されたが,この要望を明確に拒否しているところである。)。そうすると,控訴人の上記の主張は理由がない。
 したがって,争点(1)に関する被控訴人の主張は理由がある。

3 争点(2)(本件契約の目的が達成されたか否か)について
 被控訴人は,本件契約の目的が達成された旨主張する。

 そこで検討すると,工作員女性が平成28年5月14日に指定女性に対して対象男性が工作員女性と浮気をしている事実を暴露したこと(上記認定事実(5)),指定女性と対象男性との交際が遅くとも同年7月17日には終了したこと(前記前提事実(8))が認められ,これらの事実を総合すれば,指定女性と対象男性との交際が終了したのは,被控訴人の指示に基づく工作に起因することを推認することができる。そうすると,本件契約の目的は達成されたということができる。

 したがって,争点(2)に関する被控訴人の主張は理由がある。被控訴人は,控訴人に対し,本件契約に基づき,成功報酬40万円を請求することができる。

4 争点(3)(本件契約に基づく着手金の支払額,特に10万8000円の支払が本件契約の着手金としてされたか否か)について
 控訴人は,平成28年4月15日の10万8000円の支払(前記前提事実(2))は本件契約の着手金としてされた旨主張する。

 しかし,控訴人主張の上記の事実を認めるに足りる証拠はない(なお,控訴人も,反訴請求において,60万8000円の返還請求をしているところである。)。かえって,平成28年4月15日には本件契約はまだ締結されていなかったこと(前記前提事実(1),(3)),控訴人が被控訴人に対して同日に締結された本件調査委託契約(本件契約とは別個の契約)に基づき10万8000円の債務を負っていたこと(前記前提事実(1)),乙3号証の領収書は,本件調査委託契約及び本件契約締結日時に近接した時点で作成され,「調査工作代として」の支払とされており,本件調査委託契約及び本件契約双方に関連する弁済であるとうかがわれること(前記前提事実(5))を総合すれば,同日の10万8000円の支払は,本件調査委託契約の報酬としてされたものであって,乙3号証の領収書は,本件調査委託契約に基づく報酬10万8000円及び本件契約に基づく着手金のうち30万円の弁済があった旨を記載したものであることを推認することができる。
 そして,控訴人が被控訴人に対して本件契約に基づき着手金の一部として支払った金額は,前記前提事実(5),(7)の合計額である50万円であると認められる。争点(3)に関する控訴人の主張は理由がない。

5 争点(4)(本件契約が債務不履行により解除されたか否か)について
 控訴人は,被控訴人には本件契約上の債務不履行(報告義務違反,不適切な工作)があり,本件契約は解除された旨主張する。

 しかし,報告義務違反の点については,上記認定事実(6)のとおり,被控訴人は,控訴人に対し,平成28年6月12日,同月頃には指定女性が対象男性と別れた証拠を示すことができるので成功報酬の支払の準備をしてほしい旨を伝え,同年7月17日,指定女性が対象男性と別れた旨を伝え,同月22日,別れた証拠がある旨を伝えたことが認められる。上記事実に照らせば,被控訴人には控訴人主張の報告義務違反はないというべきである(なお,前記前提事実,上記認定事実によれば,被控訴人は,できる限り控訴人の意思に沿うよう,その計画等を検討し,控訴人に報告するなどした上で,これを実行していたことが認められるところである。)。

 また,不適切な工作の点については,本件契約が控訴人からの依頼により締結されたものであること(上記認定事実(1),(3)),控訴人に指定女性と対象男性との交際が終了することを強く希望するという動機があったこと(上記認定事実(1)),被控訴人は,自らの経験に基づき,控訴人と協議しながら,本件契約に基づく各種工作を行っていたこと(前記前提事実(4),上記認定事実(3)~(5))に照らせば,被控訴人が本件契約に基づいて行った工作が本件契約の趣旨に照らして不適切であったとはいい難い(なお,上記認定事実(6)のとおり,被控訴人は,平成28年5月16日,控訴人から,被控訴人側の落ち度により「別れさせ工作」が指定女性に発覚したのではないかと指摘されたが,被控訴人側の落ち度で「別れさせ工作」が指定女性に発覚することはあり得ない旨回答したところである。)。

 したがって,被控訴人に本件契約上の債務不履行があるとはいえず(なお,控訴人が被控訴人に対して解除の意思表示をした事実を認めるに足りる証拠はない。),争点(4)に関する控訴人の主張は理由がない。

6 争点(5)(本件契約等が公序良俗に反するか否か)について
 控訴人は,本件契約等が公序良俗に反する旨主張する。

 しかし,前記前提事実,上記認定事実によれば,本件契約等の目的達成のために想定されていた方法は,人倫に反し関係者らの人格,尊厳を傷付ける方法や,関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められず,また,実際に実行された方法も,工作員女性が対象男性と食事をするなどというものであったというのである。これらの事情に照らせば,本件契約等においては,関係者らの自由な意思決定の範囲で行うことが想定されていたといえるのであって,契約締結時の状況に照らしても,本件契約等が公序良俗に反するとまではいえない。
 したがって,争点(5)に関する控訴人の主張は理由がない。

第4 結論
 以上によれば,被控訴人の本訴請求は,理由があるからこれを認容すべきであり,控訴人の反訴請求は,理由がないからこれを棄却すべきである。これと同旨の原判決は相当である。
 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第19民事部
裁判長裁判官 山地修 裁判官 藪田貴史 裁判官 野上恵里
以上:7,145文字

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