平成28年 2月18日(木):初稿 |
○「120年ぶり民法大改正備忘録-消滅時効制度に関する新旧条文確認」の続きです。 平成28年から20年前の平成28年4月1日発行の当事務所事務所通信「鶴亀通信」創刊号に「●役に立つ法律問答-消滅時効の話● 」を記載していました。以下、再現します。 Q.当社はA社に対し、工作機械を代金500万円で、代金支払は商品納入後1ヵ月の約束で売りましたが、A社は商品納入1ヵ月後に100万円支払ったのみで、残代金400万円を支払いません。現在、商品納入時(代金支払期限)から既に2年7ヵ月を経過しましたが、当社は、A社に対して訴えを出して、強制的に代金を回収したいと考えています。大丈夫でしょうか?○上記の「当社はA社に対し、半年おきに内容証明郵便で400万円の支払い請求をし、時効は中断してきたつもりです。」との誤解は、それまで時効に関する相談を受けた経営者の方10人中9人がこのように、誤って考えていました。そこで注意喚起のために鶴亀通信創刊号の最初の記事にしました。 ○このように多くの方が時効中断について誤った考えになっているのは、実は以下の現行民法の規定の仕方にあります。 現行民法第147条(時効の中断) 時効は、次に掲げる事由によって中断する。 一 請求 (中略) 現行民法第157条(中断後の時効の進行) 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。 現行民法第153条(催告) 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効中断の効力を生じない。 ○上記の通り、時効は、請求によって「中断する」と規定されています。「時効の中断」とは、時効時間が進行を始めたものを、その進行を止めてそれまで進行した期間を無意味にすることと説明されています。ですから、請求によって中断すれば、時効期間が振り出しに戻ります。従って請求することで時効を振り出しに戻すので、6ヶ月おきに請求を繰り返せば時効は完成しないとの勘違いが生じるのです。 ○現行民法第153条で「催告」は、6ヶ月以内に裁判手続を取らないと「時効中断の効力は生じない」と規定しているのですが、現行民法第147条の時効の中断事由は「請求」としており、「催告」と「請求」と同じものを違った表現にしていることも誤解が生じる原因の一つです。 ○そこでこのような誤解が生じないように改正民法は、請求(催告)と時効の関係を次のように規定しました。 改正民法第150条(催告による時効の完成猶予) 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。 2 催告によって時効の完成が猶予されている間になされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。 ○催告の効果は、「中断」と言う紛らわしい表現ではなく、単に時効の完成を6ヶ月間猶予するだけと表現し、更に2項で猶予期間中に再度催告しても完成猶予の効果はないと、誤解が生じないように規定しています。紛らわしい表現を判りやすく変えたもので、正に「改正」となっています。 以上:1,977文字
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