平成19年 7月18日(水):初稿 |
○動産売買先取特権の概要は、「事業倒産任意整理での先取特権商品返還」にも記載しておりますが、ここでは関係条文を確認してその基本についての復習します。 動産売買先取特権に関する民法の条文は次の通りです。 第303条(先取特権の内容)先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 第304条(物上代位)先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。 第311条(動産の先取特権)次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。 1~4(略)5.動産の売買 第321条(動産売買の先取特権)動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。 ○動産売買先取特権に関係する民事執行法の条文は次の通りです。 平成15年改正前 第190条 第122条第1項に規定する動産(以下「動産」という。)を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、債権者が執行官に対し、動産を提出したとき、又は動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出したときに限り、開始する。 平成15年改正後 第190条(動産競売の要件)動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。 1.債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合 2.債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合 3.債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第192条において準用する第123条第2項の規定による捜索に先立つて又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合 2 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第123条第2項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。 ○動産売買先取特権とは、動産を売り渡した債権者がその売買代金債権について、売買した動産から他者に優先して弁済を受ける権利で、動産を売買した際の、売掛金の回収の場合にはまず最初に検討すべき重要な権利です。この権利があるため債権者には売った物がまだ債務者の手元にあるときに債務者が倒産状況になったときは取り返せるとの意識があり、事業者任意整理の時は先ず先取特権対象在庫品の未払債権者への返還作業から始めます。 ○事業倒産でも任意整理の場合は以上のような柔軟で現実的な処理が可能ですが、破産手続を取ると破産決定が出ることによって先取特権対象動産の管理者が破産管財人になった瞬間、その動産についての債権者の動産売買先取特権は一律消滅してしまうと言うのがこれまでの扱いで、私はこれは大変不合理であると感じていました。 以上:1,281文字
|