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平成19年 7月17日(火):初稿 |
○自家用自動車総合保険(SAP)では、一般に約款第6条で、被害者の保険会社に対する直接請求権が認められています。その要件は、「交通事故被害者の任意保険会社に対する直接請求」に記載したとおりで、その法律構成は、「保険会社と保険契約者との間で締結される責任保険契約で、被害者に対して直接請求権を付与する第3者のためにする契約(民法第537条)が成立し、被保険者が被害者に対して負担する損害賠償債務の履行を保険会社が引き受け、第3者である被害者の受益の意思表示は、保険会社に直接請求をしたときになされたものとされ、この被害者の直接請求権は、自賠法第16条の規定する直接請求権と同様損害賠償請求権であり保険金請求権ではない」とされています。 ○交通事故の発生により被保険者(以下、加害者と言います)の負担する損害賠償債務自体を保険会社が併存(重畳)的債務引受をし、被害者は加害者と保険会社双方に損害賠償請求権を有することになりますが、その発生要件として加害者の意思が問題になります。 ○一般に、交通事故保険金支払実務は自家用自動車総合保険(SAP)約款第5条に基づき、加害者から委任状を取り、保険会社示談代行員が被害者と示談代行行為をすることから始まります。この示談代行行為は、示談の「代行」の文字通り、あくまで加害者本人の損害賠償債務について加害者が被害者と行う示談を代行するものです。 ○しかし保険会社に対する直接請求要件を具備して、被害者が保険会社に直接請求の意思表示をした場合は損害賠償請求の当事者は被害者と自ら損害賠償債務を負う保険会社のはずで、保険会社は自らの債務について示談行為をするものであり、加害者のための示談代行行為ではないはずです。 ○従ってこの場合、保険会社としては交通事故によって加害者に損害賠償債務が発生したと判断する場合は、加害者の意思に拘わらず、客観的に適正な損害賠償債務を被害者に対して支払うべきことになります。 ○ところが実務ではたまに加害者が自分には過失がなく或いは過失があっても相殺によって損害賠償債務は発生していないので保険会社としても被害者に対して支払をしてはいけないと保険会社による示談代行の委任状を出さないケースが生じます。 ○理屈上は、交通事故の発生によって加害者が負う客観的に適正な加害者の損害賠償債務を保険会社が債務引受したことにより保険会社が自らの債務として損害賠償義務を負うものですから、加害者が反対しても保険会社は客観的に適正な加害者の損害賠償債務を被害者に履行するのがスジです。それ故SAP約款では、第5条示談代行の要件には加害者の同意を明示していますが、第6条被害者直接請求の要件には加害者の同意が上げられていません。 ○しかし、実務においては「加害者本人の意向を無視しても免責証書示談は可能か」に記載したとおり、加害者の明示の反対の意思を無視して保険会社が示談代行を行い或いは自ら債務負担を認めて示談することはありません。加害者が自ら損害賠償債務を負担していないとハッキリ意思表示をしている場合、第3者のためにする契約の根本要件である「被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合」かどうかについて司法判断を仰がざるを得ないと思われます。 以上:1,337文字
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