平成20年12月20日(土):初稿 |
○事業任意債務整理における動産売買先取特権の話を続けます。 先ず民法の動産売買先取特権の基本規定は次の通りです。 第311条(動産の先取特権) 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。 (省略)5.動産の売買 A社が倒産会社でB社が商品甲の売買代金債権金10万円を有する債権者とするとB社はA社の元にある商品甲に対する先取特権を有し、この甲商品を差押えて競売にかけ、その競売代金を他の債権者に優先して得ることが出来ます。この差押手続の具体的方法は、「動産売買先取特権の基本-裁判所による競売の許可」に記載したとおりで、実際には大変難しく実務では余り活用されておりません。 ○平成15年の民事執行法改正以前は、動産売買先取特権に基づく差押をするには、 動産売買先取特権対象動産について ①債権者が執行官に提出する、 ②対象動産の占有者が差押承諾文書を出す の何れかが必要で、「動産売買先取特権の基本-権利行使殆ど不可能だった」に記載したとおり、「動産売買先取特権は民事執行の面では有名無実で絵に描いた餅」でした。 ○そこで平成15年民事執行法改正で「執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。」と規定を追加し、債務者が破産になった場合で破産管財人が対象動産の差押承諾文書を出さなくても裁判所の許可さえあれば差押が可能になりました。問題は裁判所がこの許可をだすかどうかで、私自身はこの許可を求める手続を取ったことはなく,実務でこの規定が実際に活用されているかどうかは疑問です。 尚、以下の規定により裁判所の動産競売開始許可があれば執行官に先取特権対象動産のある場所でその動産を探すことを求めることが出来るようになっています。 民事執行法第123条(債務者の占有する動産の差押え) 債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。 2 執行官は、前項の差押えをするに際し、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、その場所において、又は債務者の占有する金庫その他の容器について目的物を捜索することができる。この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸及び金庫その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。 ○従って債務者会社が破産になって破産管財人が就任しても動産売買先取特権による競売申立をしてその開始許可を得れば破産管財人が差押承諾文書を出さなくても先取特権に基づく競売が出来ますので破産になったからと言って先取特権の行使を諦める必要はなくなりました。それもあり私は任意整理においてはより動産先取特権者を保護すべきと考えております。 以上:1,135文字
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