平成19年 7月21日(土):初稿 |
○動産売買先取特権に基づく強制競売について、平成15年の民事執行法改正により、動産売買先取特権対象動産について①債権者が執行官に提出する、②対象動産の占有者が差押承諾文書を出すの何れも不可能な場合であっても、民事執行法第190条第2項「執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。」ことになりました。 ○先ず「担保権の存在を証する文書」ですが、複数の文書を総合的に判断することにより、担保権の存在が高度の蓋然性をもって証明されることで足りる(書証説、大阪高裁決定昭和60年8月12日判事1169号56頁)とされており、売買先取特権の存在を証する文書としては、債権者債務者各記名押印のある契約書、債務者作成発注書、債権者作成見積書、債権者が作成し債務者の受取確認印のある納品書、債権者の納品伝票等が該当します。 ○実務では特に小さな会社においては上記書面をキチンと取り交わさないまま売買を実行し商品を引き渡して居る例が多く、特に納品書について債務者の納品確認印を取らない例が意外と多いので、売買履行に当たっては後に紛争が生じた場合に備えて上記最低限の書面の確認が重要になります。 ○裁判実務では債務者の確認を取った書面がなく、事後に債権者のみが報告書として売買の履行状況について文書を作成しても「担保権の存在を証する文書」とは認めてくれませんので注意が必要です(大阪高裁決定昭和61年7月14日判時1215号59頁)。 ○動産売買先取特権に基づく競売の申立での次の問題は、「動産売買先取特権対象動産の特定程度」です。実務では単発的売買の場合は、この特定はさほど難しくないのですが、継続的売買の場合は代金未払部分の対象動産を如何にして特定するかは大変難しい問題となります。 ○東京地裁の動産競売開始許可手続実施要領によれば、執行官は現場で裁量的判断は出来ませんので、「○○の表示のシールが貼付された段ボールに梱包された○○3個」と言うような保険状況を含めた詳細な記載をさせることが望ましいとされ、債権者としては動産売買先取特権対象動産が保管されている場所を特定し且つ他の動産と区別できるような例えば発注伝票番号表示シールの貼付されている段ボール箱の中の○○等まで特定する必要があります。 ○以上の要件が整い裁判所の動産競売開始許可が出た場合、執行官は債務者の住所等に立ち入り、目的物を創作する権限があり、必要によっては閉鎖した戸および金庫その他の容器を開くことも出来るようになりました(民事執行法第192条)。 以上:1,080文字
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