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事業任意整理における先取特権者者保護1

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平成20年12月19日(金):初稿
○私は「事業者債務整理通知書等1」記載の通り、事業債務整理事件においては、原則として任意整理で処理し、破産手続は取りません。私なりの事業債務整理のやり方は、「事業者債務整理通知書等2」「事業者債務整理任意整理チェックシート(未完成)」記載の通りですが、必要な書面を作成・送付して対債権者との最初の仕事は、動産先取特権者に対する先取特権対象商品の返還作業です。

○動産先取特権者に対する先取特権対象商品の返還とは、買掛金未払いの在庫商品をその未払い債権者に返還することです。「事業倒産任意整理での先取特権商品返還」記載の通り、債権者は自己が売却しまだ代金が支払われていない商品は自分の物との意識があり、倒産時に倒産債務者がこの自分の商品が他に処分する行為は泥棒に等しいとの意識があります。

○ところが倒産債務者が自己破産手続を取った場合就任した破産管財人はこの先取特権は認めず明らかに先取特権対象の在庫品を売却した代金も破産財団に組み入れ先取特権者への優先配当は認めないのが一般です。破産管財事件を担当する仙台地方裁判所第4民事部は、「先取特権者に対しては、破産管財人におかれまして、当該事案に照らして適切な対応をされるようお願いいたします。 」と言うものの、「これまでの管財実務の論拠及び新破産法の立法経緯に照らすと、改正後の民事執行法下においても、破産管財人としての対応は、基本的には従来と変わるところはないと思われます。」とも述べ、仙台地裁における破産管財事務では先取特権者保護はなされていないのが現状です。

○と言うことは事業倒産において直ちに自己破産手続を取ると言うことは先取特権対象商品を破産管財人に引き渡して債権者の先取特権を奪うに等しい行為です。然るに債権者においても破産手続を取られたら仕方がないと諦める傾向もありますが、先取特権は公平の原則から認められるものであり、私はこの公平を確保する意味でも事業債務整理事件においては先ず先取特権者に対象商品を返還するところから整理業務に着手します。

○問題はその先取特権対象商品が売却済みでその売却代金が未回収の場合です。この未回収売却代金は先取特権の対象になり、先取特権者はその売却代金に対し優先権を持ちます。民法では以下のように定めています。
第304条(物上代位)
 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
第321条(動産売買の先取特権) 動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

 先取特権者保護を徹底するのであれば、倒産時未回収の売掛金が残っている在庫品売却代金債権を回収した資金は先取特権の対象であり、一般配当の対象にせず先取特権者に優先配当すべきことになりますが、次項でこの問題を考えます。
以上:1,220文字

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