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全損害から人身傷害保険金相当額全額は控除できないとした最高裁判決紹介5

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令和 6年 8月31日(土):初稿
○「全損害から人身傷害保険金相当額全額は控除できないとした最高裁判決紹介4」の続きで、遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から前記金員を全額控除することはできないとされた令和5年10月16日最高裁判決(判タ1519号177頁、判時2594号75頁)の説明補足です。弁護士仲間4名で毎月1回Zoom会議で実施している判例時報勉強会での報告会資料備忘録です。

○被害者亡Aの遺族に対する損害賠償金額認定が、妻(法定相続分2分の1)について、一審約358万円、最高裁約1901万円と大きく異なっています。この金額に至る経緯の説明が判りづらく、自分なりに整理したつもりです。シンプルに考えると人傷社が支払った人身傷害保険金3000万円について、被害者亡Aの過失割合相当損害金約2485万円に充当に充当するかどうかの違いです。一審判決は充当しなかったところ、最高裁判決は充当して、その結果遺族は、被害者亡Aの過失相殺前の全損害額を回収できます。人身傷害保険金の趣旨からは当然の結論です。

判例時報要旨
被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、被害者の遺族に対し、前記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合において、前記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から前記金員を全額控除することはできないとされた事例

論点と参照条文
人身傷害保険金の受領金額について、加害者への損害賠償請求権から控除できる範囲、民91・709、自賠法16条1項

事案
・h28.5.2AM3:24頃、道路横臥中の亡Aが被告Y1運転車両にれき過
・同日AM3:12分頃、亡Aが被告Y2運転車両にれき過、亡Aは、救急搬送後死去
・亡A相続人は妻X1、子らX2~4

一審認定事実と損害
亡Aの全損害8285万2813円
(内訳)
・亡A全損害額は8285万2813円、
・X1固有損害350万円(固有慰謝料200万円+葬儀費用150万円)
・X2~4各固有損害は固有慰謝料各100万円

・道路横臥中の亡Aの過失割合30%と認定
※Aの過失割合部分損害金は2485万5843円
・過失相殺の結果
X1損害3144万8484円(亡A損害1/2+葬儀費用+固有慰謝料)過失相殺
X2~4各1036万6161円(亡A損害1/6+固有慰謝料)過失相殺

・亡A・人傷社Zとの保険契約の人身傷害保険金3000万円
・人傷社Zが、h28.9.6金8640円、同12.28金2999万1360円の合計3000万円をXらに支払(支払金1・2)
・h29.5.24、Zは、Y1自賠責保険会社から3000万円受領
・同11、Zは、Xらに3000万円支払(支払金3)
・h30.1.11日、Zは、Y2自賠責保険会社から3000万円受領

・X1損害3144万8484円を前提に遅延損害金算出し3000万円全額控除し損害残元本325万9854円と認定
・X2~4損害各1036万6161円を前提に遅延損害金算出し各1000万円の合計3000万円全額控除し損害残元本96万0082円と認定
・弁護士費用はX1分32万円、X2~4分各9万円

一審主文概要
1 被告らは原告X1に対し,357万9854円及び各損害金を支払え。
2 被告らは原告X2~4らに対し、各105万0082円及び各損害金を支払え。
控訴審も基本的に同じ結論

最高裁判示概要
最高裁判示主文概要
1 被上告人らは上告人X1に対し,1901万0006円及び各損害金を支払え。
2 被上告人らは上告人X2~4らに対し、各613万5430円及び各損害金を支払え。

判示理由
①人傷社Z支払3000万円(支払金1・2)は、特段の事情がない限り、人身傷害保険金としての支払であり自賠責保険金支払ではなく、損害から控除できない
※Aの過失割合部分損害金は2485万5843円に充当
②人傷社Z支払3000万円(支払金3)は、人身傷害保険金ではなく、自賠責保険立替金支払であり、損害から控除できる
※約定人身傷害保険金3000万円を越えている金額だから
③その結果、
前記①は、過失相殺前の損害額上回る部分のみ(X1は152万2078円(控除後X1損害金元本2992万6406円)、X2~4は各55万7359円(控除後X2~4損害金元本980万8802円)控除し、
前記②は、X1は1500万円、X2~4は各500万円を損害から控除できる
④前記③の控除金額は先ず損害金に充当し、残りが元金に充当される
⑤その結果、
X1全損害3144万8484円につき、事故日からの支払金2支払日までの遅延損害金103万5394円、支払金3支払日までの遅延損害金は132万8206円、支払金3の1500万円控除後の損害元本は1729万0006円、
X2~4全損害各1036万6161円につき、事故日からの支払金2支払日までの遅延損害金34万1290円、支払金3支払日までの遅延損害金は43万5338円、支払金3の各500万円控除後の損害元本は558万5430円、
⑥前記⑤に弁護士費用を加算した金額が、最高裁判決主文記載金額になる
⑦その結果、Xらは、過失相殺しない全損害額の回収を実現

※損害額計算は大変複雑で理解困難だが、ポイントは、自賠責保険金と加害者側支払損害賠償金は、加害者の過失部分に充当されるが、人身傷害保険金は過失割合減額分に充当されて、被害者は過失相殺されない全損害額を回収を目指すのが人身傷害保険金の趣旨であるということ

※原審(一審二審とも)は、過失相殺後の損害から人身傷害保険金(支払金1・2)を控除するとの誤りを犯した

備考
サンプル
A死去
裁判基準全損害額8000万円
人傷基準損害額6000万円
人傷保険金額5000万円
A過失割合50%

A相続人Xは、人傷社Zから5000万円受領し、加害者Yに3000万円請求し、8000万円回収可能

広義の人傷一括払とは、人傷基準損害額より人傷保険金額が大きく(前記サンプルでは人傷保険金額7000万円等)、人傷社からの支払額が保険金額範囲にとどまる場合、

狭義の人傷一括払とは、人傷基準損害額が人傷保険金額を超過するため(前記サンプルの例)人傷社がサービスとして保険金額に上乗せして自賠金相当額を支払う場合、

以上:2,561文字

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