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不動産共有者は単独占有者に地代相当額を請求できるとした最高裁判決紹介

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令和 6年 8月30日(金):初稿
○原告(控訴人、上告人)が、被告ら(被控訴人、被上告人)に対して、所有権に基づき本件土地上の建物の収去及び土地の明渡し、収去等までの間の地代相当額の金員支払を求めましたが、原審で棄却され、上告しました。

○原告は相続により取得した本件土地の共有者である被告らに対して本件各土地の地上建物の収去及び各土地の明渡しを当然には請求することができないが、原告は被告らの各占有により原告の持分に応じた使用が妨げられているとして被告らに対して持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできると解すべきであり、原審の金員支払に係る部分を破棄し、原告は相続取得の主張をしていないが原審としては適切に釈明権を行使するなどしてこれらを斟酌し請求の一部を認容すべきか審理判断すべきであるとして一部を差し戻した平成12年4月7日最高裁判決(判時1713号50頁、判タ1034号98頁)全文を紹介します。

○不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができるとした点が重要です。

○共有についての民法第249条(共有物の使用)は、「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」としか規定されていませんでした。しかし、令和5年4月1日施行(令和3年法律第61号)改正民法で、以下の2・3項が追加されました。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

これは前記最高裁判決を受けての改正と思われます。

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主   文
原判決中上告人の被上告人A及び同Bに対する金員支払請求に係る部分を破棄する。
前項の部分につき、本件を高松高等裁判所に差し戻す。
上告人の被上告人A及び同Bに対するその余の上告並びに同Cに対する上告を棄却する。
前項の上告費用は上告人の負担とする。

理   由
一 上告代理人○○○○の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

二 職権により、原審の判断の適否につき判断する。
 本件訴訟において、上告人は、被上告人Aに対し、原判決別紙家屋目録二記載の建物(以下「本件建物二」という。)の収去及び原判決別紙土地目録1、2記載の土地(以下「本件各土地」という。)のうち本件建物二の敷地部分の明渡し、右収去等までの間の地代相当額の金員の支払並びに本件各土地の登記済権利証の引渡しを、被上告人Bに対し、右家屋目録一記載の建物(以下「本件建物一」という。)の収去及び本件各土地のうち本件建物一の敷地部分の明渡し並びに右収去等までの間の地代相当額の金員の支払を、被上告人Cに対し、本件建物一からの退去を、それぞれ請求している。

その請求原因として、上告人は、
(1)上告人の亡夫であるDが昭和31年12月25日及び同33年3月18日に国有林の払下げを受けて本件各土地を取得し、同59年12月4日にDが死亡したことにより上告人がこれを相続により取得した、
(2)そうでないとしても、Eが前記各日に本件各土地の払下げを受け直ちにこれらをDに贈与し、Dの死亡により上告人がこれらを相続取得した、
などと主張している。

被上告人らは、上告人の所有権取得を争い、被上告人Aは、本件各土地の払下げを受けてこれを取得したのはFであり、被上告人Bは、本件各土地の払下げを受けてこれを取得したのはEであると主張している。

原審は、上告人の右(1)の主張事実のうちDが本件各土地の払下げを受けたことは認められず、右(2)の主張事実のうち、本件各土地の払下げを受けてこれを取得したのがEであることは認められるが、EからDが贈与を受けたことは認められないとして、第一審判決のうち上告人の建物収去土地明渡し及び建物退去の請求を認めた部分を取消して、右請求及び原審で拡張した本件各土地の登記済権利証の引渡請求を棄却し、同判決のうち上告人の金員支払の請求を棄却した部分に対する上告人の控訴を棄却する趣旨の判決をした。

 しかしながら、原審は、Eが昭和42年5月22日に死亡したこと、Eには妻F並びにD、被上告人A及び同Bの三人の子があったこと、Dが同59年12月4日に、Fが平成4年5月24日に、それぞれ死亡したこと、Eが昭和29年ないし30年に本件建物一及び本件建物二を建築してこれらを取得した上、同42年4月ころにFにこれらを贈与し、同53年4月10日にFから被控訴人Bに本件建物一が同Aに本件建物二が各贈与されたことを併せて認定している。

以上の事実によれば、特段の事情のない限り、Eの死亡に伴い、法定相続人の一人であるDが本件各土地の9分の2の持分を相続により取得したはずのものである。そうすると、上告人がDの右持分を相続により取得したというのであれば、上告人は、同様にE及びFの死亡に伴い本件各土地の持分を相続により取得した共有者である被上告人A及び同Bに対して本件各土地の地上建物の収去及び本件各土地の明渡しを当然には請求することができず(最高裁昭和38年(オ)第1021号同41年5月19日第一小法廷判決・民集20巻五号947頁参照)、同Aに本件各土地の登記済権利証の引渡しを請求することや同Bの所有する本件建物一に居住している同Cに対して退去を請求することもできないものというべきである。

しかし、同A及び同Bが共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、上告人は、右占有により上告人の持分に応じた使用が妨げられているとして、右両名に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできるものと解すべきである。

そして、上告人は右のEの死亡によるその持分の相続取得の主張をしていないが、原審としては、前記各事実を当事者の主張に基づいて確定した以上は、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらをしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものである(最高裁平成7年(オ)第1562号同9年7月17日第一小法廷判決・裁判集民事183号1031頁参照)。


そうすると,原審の前記判断には、法令の適用を誤る違法があるというべきであり、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって、原判決のうち上告人の被上告人A及び同Bに対する金員の支払請求に係る部分は破棄を免れず、右部分につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷玄)
以上:3,041文字

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