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平成24年10月19日(金):初稿 平成24年12月14日(金):更新 |
○平成24年12月14日付で末尾に重要な追記をしましたので、ご笑覧下さい(^^)。 「加害者は任意保険(共済)契約締結で誠意ありと割り切る」の続きで、交通事故事件での加害者・被害者となった当事者の心構えについての私の考えをまとめます。 最近、交通事故加害者の方からメール相談を受けました。その内容は、被害者を大変な状況に陥れたことについて強い自責の念にかられて、自分が加入している保険会社には、被害者に対する十分な補償をして貰いたいのに、保険会社はまるで誠意がなく、被害者側では保険会社に不信感を持って、加害者に直接請求をされ、出来る限り、加害者自身で被害者の要求する金額を支払い、その金額が200万円近くに達し、もう限界であり、保険会社に支払をして貰う方法はないのでしょうかというものです。 ○その加害者の切実な悩みを聞いて、「交通事故加害者の任意保険会社への請求方法試案1」を記載しましたが、種々検討した結果、ここで記載した加害者が保険会社に訴えを提起する方法は、民訴理論的にも、また、実務的にも、無駄であり止めた方がよいとの結論に達し、「交通事故加害者の任意保険会社への請求方法試案2」を記載しました。 ○加害者としては、特に事故直後、真面目で責任感の強い方であればあるだけ、被害者に対し、真摯な対応、誠実な賠償をすることを約束してしまいます。そして自分が加入している保険会社担当者にそのことを伝え、保険会社の誠意ある対応を期待します。しかし保険会社としては、会社独自の事前支払基準があり、被害者の要求を何でもかんでも支払う訳にはいきません。 ○被害者の立場では、この交通事故がなければ発生しなかった費用は全て速やかに加害者側に支払って貰うのが当然と考え、保険会社に請求します。被害者が入院した場合に遠隔地の家族が見舞いに訪れる旅費・宿泊費・仕事を休んだ休業損害等はどこまで損害として認められるか微妙なものまで、被害者側としては、兎に角、事故がなければ発生しない費用であり、事故のせいで発生した費用だから直ぐに支払って欲しいと加害者側に要求しますが、保険会社は、損害認定が微妙な費用については支払を限定或いは拒否する場合が多々あります。 ○そのため誠意ある対応を約束した加害者自身に、保険会社が支払わないから貴方が支払えと要求し、真面目な方であればあるほど、その要求に応じて支払ってしまいます。しかし加害者としては、直接請求された場合、自分の経済力で支払可能な金額は支払っても一定限度で支払を停止し、あとは、保険会社に請求して欲しいと断るべきでしょう。加害者に請求すれば、出して貰えると被害者が考えるとその請求は際限がなくなります。 ○被害にあった場合損害賠償請求出来る金額は、最終的には裁判所が認める「適正な損害賠償額」であり、この金額は、時に激しい争いになり、事前には判断が極めて難しいものが数多くあります。ですから、被害者側専門の私でも、被害者から相談を受けた場合、日々発生する損害を直ちに支払して貰うのは、裁判所から、その支払が無ければ生活が立ちゆかなくなるような場合に「仮払い仮処分決定」を受けない限り、直ちに支払を受けることは無理であり、後でまとめて請求して、裁判所の判断を仰ぎ、裁判所の判決によって支払を受けるしかありませんと回答しています。 ○加害者になった場合、被害者の請求を断ることは辛いことではありますが、加害者の立場としても自分は「任意保険(共済)契約締結で誠意ありと割り切る」ことも必要です。保険会社が支払を拒否して加害者に文句を言ってくる場合は、誠に申し訳ございませんが、被害者側としても専門家を依頼して保険会社に厳しく「直接」請求して下さいとお願いするしかないと割り切るべきでしょう。 (注;平成24年12月14日追記) ○この保険会社に対する「直接」請求は、以下の約款によって可能です。 第11条(損害賠償請求権の直接請求権) (1)対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社に対して(3)に定める損害賠償額の支払を請求することができます。 (中略) ③損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合 (後略) ○自動車保険約款について詳しく解説した唯一の公刊された文献と思われる「自動車保険の解説2012」での、この③号約款による「直接請求」については、以下の通り解説されています。 「なお、本項③の規定は、被保険者が保険会社による示談代行に同意せず、そのうえ被害者との交渉にも応じない場合などに備えたものであって、保険会社への直接請求に際してあらかじめ被害者に承諾書を提出させることを条件付けようとするものではない。」 ○この「被保険者が保険会社による示談代行に同意せず」とは、被保険者としては、保険会社の損害賠償提示額が余りに安すぎて加害者としては、被害者に対して恥ずかしくて、到底、保険会社の示談代行には応じられないと場合が含まれますが、実質的には、この場合が相当多いと思われます。私としては、心ある加害者であれば、殆どの方は内心、このように思っても、自分のために動いてくれる保険会社に気兼ねして、ハッキリ自分の意思を示すことが出来ず、やむを得ず,保険会社の示談代行に任せていると推測しています。 ○加害者は、一般に法律の専門家ではありませんから、提示額が多いのか少ないのか判断できず、そのまま保険会社の示談代行に任せることも多いかと思われます。しかし、被害者の要求に対し、加害者としても保険会社の提案額が低すぎると思えば、ハッキリ、示談代行を拒否すればよいのです。拒否によって加害者に不利になることはありません。被害者に、保険会社への「直接」請求を促せば足ります。 ○また、「保険会社への直接請求に際してあらかじめ被害者に承諾書を提出させることを条件付けようとするものではない。」と記載されているとおり、事前に加害者(被保険者)に対する請求放棄の書面など提出する必要はありません。保険会社が納得する金額を提示してきた場合に、その金額の支払を受けるか支払を確約する書面を作成すると同時に提出すれば足ります。 ○保険会社の提示に納得できない加害者(被保険者)は、同様に納得できない被害者の方に対して、例えば小松弁護士の様に被害者被害回復に全力で取り組む弁護士に依頼して、この③号約款を縦にして、最終的には「直接」保険会社に対して訴えを提起して、被害回復を目指して下さいとお伝えする事が賢明なやり方です(^^)。 以上:2,723文字
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