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平成24年10月17日(水):初稿 |
○「交通事故加害者の任意保険会社への請求方法試案1」で、 加害者Aと被害者Bが共同で次のような請求の趣旨で訴えを提起する方法を、正に、思いつきで提案しました。 加害者から保険会社に対するものは 「被告(保険会社)は原告A(加害者)に対し、別紙目録記載交通事故で原告Aが原告B(被害者)に対して負担する損害賠償債務は平成○○年○○月○○日(通常は事故発生日)現在金○○○万○○○○円であることを確認する。」 被害者から保険会社に対するものは 「被告(保険会社)は原告B(被害者)に対して金○○○万○○○○円及び平成○○年○○月○○日(通常は事故発生日)から支払済みに至るまで年5%の割合による金員を支払え。」 となるかなと考えております。 ○これについて、私は、「民訴手続上種々の問題を検討しなければならず、現時点では全くの試案で致命的誤りがあるかも知れず」とも記載していましたが、結論として、現時点では、 加害者から保険会社に対するものは 「被告(保険会社)は原告A(加害者)に対し、別紙目録記載交通事故で原告Aが原告B(被害者)に対して負担する損害賠償債務は平成○○年○○月○○日(通常は事故発生日)現在金○○○万○○○○円であることを確認する。」 は、やはり、無駄で実益乏しく、必要がないとの結論になっています。 ○この考えについて,何人かの若い弁護士さんからご意見を頂きましたが、確認の利益について、次の意見を頂きました。 第1 原告A(加害者)の請求は訴訟要件を満たすのか 1 原告Aの請求は確認請求ですが、確認の利益が争点になりそうです。 (1)共同原告たる被害者Bが保険会社に対して支払請求をしているのであるから、原告Aの請求は、即時確定の利益を欠くことになりそうです。 また、原告Bが原告Aに対して請求権不行使承諾書面を交付している以上、原告Aは、原告Bから請求されるおそれがないため、この点からも即時確定の利益が否定され、確認の利益を欠くことになりそうです。 (2)原告Aは、任意保険会社ではなく、被害者Bを被告として「AがBに対して負担する損害賠償債務は○円であることを確認する」と請求するのが直截的であるから、被告選択が不適切として確認の利益を欠くことになりそうです。 2 結論 原告Aの請求は、確認の利益を欠いて不適法却下されるおそれが大きいと思います。 ○私の司法試験受験時代は、民訴法と刑訴法は選択科目でどちらか一つを選択すれば良く、比較的刑事法が好きであった私は、大学3,4年と連続して受講した小田中聰樹東京都立大学教授(昭和48年当時)の夏季連続講義で、更に刑事訴訟法が好きな科目となり、ためらいなく刑訴法を選択し、民訴法は3年の時授業で受講しただけで、その後は殆ど勉強していませんでした。 ○そのため民訴法の基本も不十分でこの問題についても全く自信のない提案でしたが、上記意見の通り、加害者が保険会社に対し「保険会社は、加害者の被害者に対する損害額」の確認を求めるのは、理論的にも、また、実務的にも無駄であり、止めた方がよいとの結論になっています。 先のご意見での「即時確定の利益」とは、「確認の訴えが認められるためには、原告の権利・地位に不安・危険が生じていなければならず、かつ、その不安・危険は現実的なものでなければならない。原告の権利・地位に不安・危険がないのであれば、訴訟をさせる意味はなく、不安・危険がないわけではないが抽象的・空想的であれば、具体化ないし現実化した段階で訴訟をさせれば足りるからである(新堂256頁・高橋(上)339頁)。」と説明されていますが、被害者が加害者には請求しないことを書面で承諾することが、被害者の保険会社に対する直接請求の要件であり、被害者が請求しないと宣言している以上、加害者には「原告の権利・地位に現実的な不安・危険がない」訳ですから、「即時確定の利益」がないと言えます。 ○実務的にも、加害者が保険会社に対して確認を求める「損害額」については、主張自体困難で、且つ、立証に至っては到底不可能です。訴えを提起しても、ただ、被害者の保険会社に対する直接請求の訴訟を眺めているだけになります。そして、最も重要なことは、例えば事故態様について争いがあり、特に過失相殺について厳しい対立があり加害者が証人として証拠方法になる場合、加害者が当事者となっていたのでは、不都合が生じる場合も考えられます。 やはり、加害者としては、保険会社が被害者に十分な補償をしない場合、被害者自身権利実現のため保険会社に直接請求することを薦めるしかないとの結論です。 以上:1,840文字
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