旧TOP : ホーム > 交通事故 > 任意保険会社への直接請求 > |
平成24年10月18日(木):初稿 |
○「保険会社への直接請求が交通事故訴訟のあるべき姿」等に、繰り返し、繰り返し、記載しているとおり、私は、交通事故による損害賠償請求は任意保険に入っている場合は,保険会社への直接請求を大原則にすべきと確信し、交通事故訴訟においては保険会社直接請求することが一般的になって欲しいと念願しています。 ○当事務所は、交通事故損害賠償請求事件では、被害者側専門であり、加害者側は相談を受けることはあっても、事件として受任することはありません。ここ数年は、常時、20件前後の交通事故事件を抱え、内8割方が訴訟事件ですが、平成18年以来、交通事故訴訟は、原則として、加害者本人には請求しないことを承諾して、保険会社に直接請求する形式で行い、その数は終了事件を含めると40数件になっています。この保険会社直接請求方式は、日弁連作成青本にも東京三弁護士会作成赤い本にも記載されていないため、一般化されず、珍しい方式であるため訴状を受け取った加害者側弁護士、裁判所いずれも当初は戸惑いを見せます。 ○しかし、大方の実質保険会社側形式加害者側の代理人は、その方式に理解を示し、加害者に請求しないことを承諾する書面について「訴状」だけでは足りないので、加害者宛に直接承諾書面を出されたいとの要求を受けることはあっても、この請求自体を争われることは、殆どありません。 ○ところが、この約款第3号による保険会社直接請求方式について、妙にこだわって反発する代理人もおられ、判決まで至った例が、平成24年10月現在まで提起した直接請求方式訴訟40数件の内僅か1件だけ判決まで至ったものがあります。これは、「保険会社(共済)への直接請求が激しく争われた例の初判決1」として紹介しております。 ○現在も僅か1件だけ約款3号による直接請求事件について激しく争われています。その争いの原因は、どうも、東京三弁護士会作成赤い本にあるようです。最新の平成24年版赤い本375頁には、「任意保険の場合、保険約款に基づき、被害者から保険会社に対して直接請求出来る場合がある。この場合、被保険者に対する確定判決の存在、示談の成立等約款に定められている条件を満たしていなければならない。」と記載されています。ここまでは誤りとは言えませんが、次に「従って被保険者(※加害者)に対する確定判決等がない段階で保険会社に訴えを提起するときは、被保険者とともに共同訴訟の被告とし、かつ被保険者に対する判決の確定を条件とする将来の給付の形式を取る必要がある。」との記載は、半分は正しいのですが、半分は誤りです。 ○その誤りとは、「被保険者に対する確定判決の存在、示談の成立等約款に定められている条件」の内第3号「損害賠償請求権者が被保険者(※加害者)に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合」を忘れているからです。この場合、「損害賠償請求権者が被保険者(※加害者)に対する損害賠償請求権を行使しない」訳ですから、「被保険者(※加害者)に対する確定判決」は取りようがなく、従って「被保険者(※加害者)に対する確定判決」は、直接請求要件ではありません。 ○然るに、私の直接請求方式を認めない実質保険会社側代理人は、この約款第3号で「損害賠償請求権者が被保険者(※加害者)に対する損害賠償請求権を行使しない」ことを承諾しているにも拘わらず、この場合でも「被保険者(※加害者)に対する確定判決」が必要だと言い張ります。加害者に「請求しない」と言っているのに、どうして加害者に対する「確定判決」が取れるのでしょうかと言っても聞いてくれません(^^;)。「赤い本」の上記記述は,何とかして貰いたいものです。 注!残念ながらこの考えは、「嗚呼無情!最高裁も約款3号に基づく直接請求を認めず」記載の通り、「保険会社による保険金の給付は、これに先だって、加害者(被保険者)が負担する損害賠償の額が確定していることが論理上前提となる。」との平成26年3月28日仙台高裁判決が確定して、否定されてしまいました。これ以降、私は、加害者本人も被告に加えて訴えを提起しています。 以上:1,695文字
|