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平成19年10月24日(水):初稿 |
○「人身傷害補償担保特約補償範囲と自賠責保険金」で、「自賠責保険金は支払限度額が決められており、この支払限度額の壁を打ち破って人身傷害補償担保特約における補償範囲として裁判基準賠償額を請求する理論構成が必要で、思案しているところです。」と記載しましたが、現実には、人身傷害補償担保特約補償範囲は約款で定められており、裁判基準賠償額を請求するのは困難と思われます。 ○人身傷害補償担保特約は、「過失割合にかかわらず定められた基準に基づいて算定した損害額」を補償するものですから、被害者側の過失が大きい場合に生きてきます。例えば、Aさん(60歳)が交通事故で死亡し、この事故のAさんの過失割合が8割あったとします。この例で過失相殺前の全損害額が裁判基準による適正損害額が5000万円、自賠責保険基準による損害額3000万円の場合を考えてみます。 ○この場合、「自賠責保険金支払基準での過失相殺の請求は?」に記載したとおり、自賠責保険金は3割減額されますので、自賠責保険金は自賠責保険基準による損害額3000万円の7割相当額2100万円しか支払われません。また裁判基準によっても5000万円の過失相殺後の2割相当額1000万円しか損害が認定されません。結局、自賠責保険金で過失相殺後の損害額は填補されて、任意保険からは全く補償がありません。 ○このような場合に生きてくるのが、人身傷害補償担保特約です。仮にこの特約での約款に定められた基準でのAさんの損害額が3500万円とするとAさんの相続人はこの3500万円全額を人身傷害補償担保特約に基づく保険金として保険会社に請求できます。 ○問題は自賠責保険金との関係です。 Aさんの相続人は先ず人身傷害補償担保特約に基づく保険金3500万円を請求・受領して、その後に自賠責保険会社に自賠責保険金2100万円を請求・受領すると合計5600万円取得することになります。Aさんの裁判基準による適正全損害額5000万円を上回ることになりますのでこれは明らかに不当と思われます。 それでは自賠責保険金から2100万円を受領し、人身傷害補償担保特約に基づき適正全損害額の5000万円との差額2900万円の請求をして合計5000万円を取得できるかというと人身傷害補償担保特約保険会社は拒否するはずです。 では人身傷害補償担保特約保険金3500万円から自賠責保険金2100万円を控除した1400万円しか人身傷害補償担保特約保険金を請求できないのでしょうか。 この問題を引き続き検討します。 以上:1,042文字
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