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平成18年 6月11日(日):初稿 |
○自賠責保険は最低保障を目的とした下積み保険であり、任意保険は自賠責保険の不足分を補うためのみの上積み保険と解説され、自賠責保険金だけでは適正な損害賠償金を回収できないと思われていますが、実は任意保険金は出ないけれども、自賠責保険金は貰える場合があります。 ○一つは任意保険をつけても加害者が故意に引き起こした交通事故の場合、任意保険金は出ませんが、自賠責保険金は出ます。また加害者が妻、父母、子などの親族の場合、任意保険金は出ませんが、自賠責保険金は出ます。 ○良く問題になるのが過失相殺です。被害者が交通事故で死亡し、その裁判基準による適正な損害賠償金が6000万円の場合でも、被害者の過失が8割もあった場合、6000万円の8割減の1200万円が、適正な損害賠償金額になります。この場合、自賠責基準による損害額が3000万円であったとしても自賠責保険金は2割減額になるだけですから、死亡保険金限度額3000万円の8割相当額の2400万円が支払われます。すると適正賠償金額は自賠責保険金によって支払済みとなり、任意保険金は全く支払われません。 ○自賠責保険は被害者補償を最大目的としているため、自賠責保険支払基準では、過失相殺による減額について、被害者側の過失割合が7割未満までは全く減額せず、7割以上の場合に、 後遺障害又は死亡事案で ①7割以上8割未満の場合、2割減額 ②8割以上9割未満の場合、3割減額 ③9割以上10割未満の場合、5割減額 傷害事案で 7割以上10割未満の場合、2割減額 と定めています。 ○以上の通り仮に被害者が99%過失での事故であっても、傷害事案であれば最大2割、後遺障害・死亡事案でも5割しか減額になりません。被害者の過失が大きく、過失相殺後の適正賠償金額が相当減額される事案では、先ず自賠責保険金を請求することが肝要です。 ○上記設例で人身傷害補償担保特約における支払基準での保険金額が5000万円であった場合、自賠責保険金が支払われた2400万円との差額2600万円は、被害者或いは同居の親族等のかけていた自動車保険の人身傷害補償担保特約に基づき請求が可能かと言う問題があります。 ○人身傷害補償担保特約の約款を完全精査してませんが、同特約は被害者の「過失割合にかかわらず定められた基準に基づいて算定した損害額を支払う」ものであり、約款第9条(損害額の決定)には「ただし、賠償義務者がある場合において、上記の額が自賠責保険金等によって支払われる金額を下回る場合には、自賠責保険金等によって支払われる金額とします。」となっているだけであり、自賠責保険金はあくまで下限ですから、請求可能ではと現時点では思っております。 ○結論としては被害者の過失割合が大きい交通事故では先ず自賠責保険金を請求して次に不足金を人身傷害補償担保特約に基づく保険金請求をする方法をお薦めします。 以上:1,181文字
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