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裁判所鑑定結果による賃料増額請求を認めた地裁判決紹介4

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令和 7年 9月19日(金):初稿
○「裁判所鑑定結果による賃料増額請求を認めた地裁判決紹介3」の続きで、裁判所鑑定結果による賃料増額請求を認めた地裁判決例として令和6年5月24日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○建物の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対し賃料増額請求権を行使し、現行32万円の賃料について、令和4年6月14日付け通知書を送付し、同年7月分以降の賃料を月額66万5000円に増額する旨を請求し、被告が増額を拒絶し、従前と同様の賃料月額32万円の支払を継続し、原告が提訴しました。

○裁判所の採用に係る鑑定結果は、建物の適正賃料額を40万3000円であると査定したところ、裁判所の採用に係る鑑定は、裁判所が指定した中立の立場の鑑定人が宣誓の上で行ったものであるから、特段不合理な点がない限りはこれを重視して適正賃料額を判断すべきであり、本件鑑定はその評価の手法、過程、内容等に特段不合理な点はみられず、これに不合理な点があると指摘する旨の当事者の主張もないから、適正賃料額を40万3000円と認めました。

○直近合意が令和元年6月20日月額32万円で、その僅か3年後の令和4年7月1日に月額賃料40万3000円と26%も上昇が認められており、東京の不動産バブル状況が良く判ります。

○被告は、原告に対し、不足賃料合計166万円及びうち不足賃料についての別紙認定差額一覧表「認定差額」欄記載の各金員に対する同表「起算日」欄記載の各年月日から各支払済みまで年1割の割合による各金員を支払も認められています。

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主   文
1 原告が被告に賃貸している別紙物件目録記載の建物の賃料は、令和4年7月1日以降、月額40万3000円であることを確認する。
2 被告は、原告に対し、166万円及びうち別紙認定差額一覧表「認定差額」欄記載の各金員に対する同表「起算日」欄記載の各年月日から各支払済みまで年1割の割合による各金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、これを4分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 事案の要旨

 本件は,建物の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対し賃料増額請求権を行使したとして、増額後の賃料額の確認等を求める事案である。 

第2 請求
1 原告が被告に賃貸している別紙物件目録記載の建物の賃料は、令和4年7月1日以降、月額66万5000円であることを確認する。
【請求の法的根拠】
 借地借家法32条1項に基づく賃料増額請求権

2 被告は、原告に対し、655万5000円及びうち別紙請求差額一覧表の「請求差額」欄記載の各金員に対する同表「起算日」欄記載の各年月日から各支払済みまで年1割の割合による各金員を支払え。
【請求の法的根拠】
・主たる請求:不当利得返還請求権
・附帯請求:利息金請求権(起算日は令和4年7月分から令和6年2月分までの各賃料の支払期、利率は借地借家法32条2項ただし書所定)

第3 前提事実、争点及び当事者の主張
1 前提事実(証拠の記載がないものは当事者間に争いがない。証拠を摘示する場合は、特に記載のない限り枝番号を含む。以下同じ。)
(1)原告は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)を所有している。
 被告は、原告から本件建物を賃借して、中華料理屋を営業している。

(2)本件建物の原告の前所有者と被告は、平成25年3月18日に、本件建物について以下の内容の賃貸借契約(以下「本件契約」という)を締結した(甲2)。
ア 賃料:月額32万円。翌月分を毎月末日までに前払いする。
イ 契約期間:平成28年6月16日~平成31年(令和元年)6月15日

(3)本件契約は、令和元年6月20日に、以下の内容で更新された。
ア 賃料:月額32万円。翌月分を毎月末日までに前払いする。
イ 契約期間:令和元年6月16日~令和4年6月15日

(4)原告は、令和4年3月14日に、売買により本件建物を取得し、本件建物の前所有者から本件契約の賃貸人の地位を承継した。

(5)原告は、被告に対し、令和4年6月14日付け通知書を送付し、同年7月分以降の賃料を月額66万5000円に増額する旨を請求し、同通知書は同年6月19日に被告に到達した。
 被告は、上記増額を拒絶し、従前と同様の賃料月額32万円の支払を継続している。

2 争点
 令和4年7月1日時点における本件建物の適正賃料額

3 当事者の主張
【原告の主張】
 本件建物の賃料は坪単価で月額9600円程度であるが、地価が上昇傾向にあるほか、近傍の同種建物の借賃との比較によれば、同日時点の適正賃料額は坪単価で2万円を超えていることが明らかであり、月額66万5000円を下回ることはない。
 そして、本件建物の賃料と適正賃料額との差額は月額34万5000円であるから、原告は、別紙請求差額一覧表のとおり、令和4年7月分から令和6年2月分までの差額合計690万円と、毎月の賃料の支払期限(翌月分を毎月末日までに前払)の翌日を起算日とする借地借家法32条2項ただし書所定の年1割の割合による利息の支払を求めることができる。

【被告の主張】
 争う。本件建物の賃料は月額32万円が適正である。

第4 当裁判所の判断
1 令和4年7月1日時点における本件建物の適正賃料額について
 当裁判所の採用に係る鑑定結果(以下「本件鑑定」という)は、同日時点の本件建物の適正賃料額を40万3000円であると査定した。裁判所の採用に係る鑑定は、裁判所が指定した中立の立場の鑑定人が宣誓の上で行ったものであるから、特段不合理な点がない限りはこれを重視して、適正賃料額を判断すべきである。
 そして、本件鑑定は、その評価の手法、過程、内容等に特段不合理な点はみられず、これに不合理な点があると指摘する旨の当事者の主張もない。
 以上によれば、本件建物の賃料は、直近合意時点である令和元年6月16日より後の経済事情の変動により令和4年7月1日時点で不相当となっており、同日時点の適正賃料額は40万3000円と認めるのが相当である。

2 適正賃料額との差額分に係る不当利得等について
 前提事実(3)及び(5)のとおり、被告は、本件建物の賃料月額32万円の支払を継続している。そうすると、上記認定に係る適正賃料額との差額は月額8万3000円であり、本件契約の令和4年7月分から令和6年2月分までの各賃料について合計166万円の不足が生じている。
 したがって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき166万円及びうち別紙認定差額一覧表「認定差額」欄記載の各金員に対する同表「起算日」欄記載の各年月日から各支払済みまで借地借家法32条2項ただし書所定の年1割の割合による利息の各支払を求めることができる。


3 結論
 よって、原告の各請求は主文記載の限度で理由があるからその限度で認容し、その余はいずれも理由がないから棄却して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第5部
裁判官 伊藤孝至

別紙 当事者目録
(省略)
以上:2,943文字

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