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社債利息について利息制限法適用はないとした最高裁判決紹介

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令和 7年 3月17日(月):初稿
○社債の返還請求について相談を受けていますが、その利息が利息制限法違反の高利息でした。社債を募集するため高く設定したと思われます。長い弁護士生活の中で、社債の返還請求の相談は、初めてでしたので社債利息制限法が適用されるかどうか裁判例を調査しましたところ、令和3年1月26日最高裁判決(判時2495号25頁)を見つけましたので紹介します。事案は以下の通りです。

○破産者C社(投資に関するシステム開発会社)の破産管財人である上告人が、C社がその発行した社債について社債権者である被上告人に利息制限法1条所定の制限を超えて利息として支払った金額を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して、被上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、約315万円の過払金の返還等を求めました。しかし、一審・控訴審ともに、社債には利息制限法1条の規定は適用されないから、本件社債にも同条の規定は適用されないと判断して、上告人の請求を棄却しました。

○そこで上告人が上告しましたが、最高裁も、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないとし、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却しました。

○社債とは、企業が発行する債券で、投資家が発行企業に資金を出資し、企業は満期になったら元本と約束された利息を付けて償還するものですが、企業が倒産したら元本も返還されません。平均利息は3%以下とされており、利息制限法での制限利息100万円以上で年15%を越えるような社債は、資金繰りに苦しむ企業が金集めのために高利息で吊るものであり、倒産の危険が高いと判断し、手を出さない方が賢明です。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,破産者株式会社CFSの破産管財人である上告人が,CFSがその発行した社債について社債権者である被上告人に利息制限法1条所定の制限を超えて利息として支払った金額を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還等を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)CFSは,投資に関するシステムの開発等を業とする株式会社である。

(2)CFSは,投資に関する新たなシステムの開発等に要する資金を調達するため,会社法676条各号に掲げる事項(以下「募集事項」という。)を定めて,その発行する社債を引受ける者の募集をした。
 上記募集に応じて社債の引受けの申込みをした被上告人は,CFSからその割当てを受け(以下,被上告人が割当てを受けた社債を「本件社債」という。),平成24年,本件社債の募集事項に従って,2000万円を払い込み,平成27年までの間,CFSから,第1審判決別紙計算書のとおり,利息制限法1条所定の制限利率を超える利率の利息の支払及び社債の償還を受けた。

(3)CFSは,平成24年3月から平成27年11月にかけて,本件社債を含め,合計203回にわたり,社債権者をそれぞれ1名として社債を発行したが,そのほとんどは,利息制限法1条所定の制限利率を超える利率の利息を定めたものであった。

(4)CFSは,平成28年4月,破産手続開始の決定を受けた。

3 原審は,事実関係のいかんにかかわらず、社債には利息制限法1条の規定は適用されないから,本件社債にも同条の規定は適用されないと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

4 所論は,社債にも利息制限法1条の規定が適用されるから,本件社債に同条の規定が適用されないとした原審の判断には,同条の解釈適用の誤りがある旨をいうものである。 

5 利息制限法1条は,「金銭を目的とする消費貸借」における利息の制限について規定しているところ,社債は,会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であり(同法2条23号),社債権者が社債の発行会社に一定の額の金銭を払い込むと償還日に当該会社から一定の額の金銭の償還を受けることができ,利息について定めることもできるなどの点においては,一般の金銭消費貸借における貸金債権と類似する。

 しかし,社債は,会社が募集事項を定め,会社法679条所定の場合を除き,原則として引受けの申込みをしようとする者に対してこれを通知し(同法677条1項),申込みをした者の中から割当てを受ける者等を定めることにより成立するものである(同法677条2項,3項,678条,680条1号)。このように社債の成立までの手続は法定されている上,会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく,償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される(同法676条2号,9号参照)などの点において,社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違がある。また,社債は,同法のみならず,金融商品取引法2条1項に規定する有価証券として同法の規制に服することにより,その公正な発行等を図るための措置が講じられている。

 ところで,利息は本来当事者間の契約によって自由に定められるべきものであるが,利息制限法は,主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から,利息の契約を制限したものと解される。社債については,発行会社が,事業資金を調達するため,必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し,自らの経営判断として,募集事項を定め,引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているのであるから,上記のような同法の趣旨が直ちに当てはまるものではない。今日,様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され,会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると,このような社債の利息を同法1条によって制限することは,かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなる。

 もっとも,債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し,社債の発行に仮託して,不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど,社債の発行の目的,募集事項の内容,その決定の経緯等に照らし,当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には,このような社債制度の利用の仕方は会社法が予定しているものではないというべきであり,むしろ,上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。

 そうすると,上記特段の事情がある場合を除き,社債には利息制限法1条の規定は適用されないと解するのが相当である。
 前記事実関係によれば,本件において上記特段の事情の存在はうかがわれないので,本件社債に利息制限法1条の規定は適用されないというべきである。したがって,上告人の請求は理由がない。

6 以上によれば,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宇賀克也 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林景一 裁判官 宮崎裕子 裁判官 林道晴)
以上:3,144文字

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