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民法第597条の目的に従った使用収益期間について判断した最高裁判決紹介

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令和 6年 7月10日(水):初稿
○使用貸借契約に関する貸借期間に関する裁判例を探しています。条文は以下の通りです。

第597条(期間満了等による使用貸借の終了)
 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。


○建物の使用貸借契約が借主及びその家族の長期間の居住を目的とするものであつても、借主が右建物の使用を始めてから約32年4月を経過したときは、特段の事情のない限り、右目的に従つた使用収益をなすに足るべき期間は、経過したものと認めるべきであるとした昭和59年11月22日最高裁判決(最高裁判所裁判集民事143号177頁)全文を紹介します。

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主   文
上告人の反訴請求につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
被上告人は上告人に対し、第一審判決別紙物件目録三の建物を明け渡せ。
訴訟の総費用は、被上告人の負担とする。

理   由
上告代理人○○○○、同○○○の上告理由について
一原審は、上告人の本件反訴請求について、
(一)被上告人は、昭和23年10月15日兄の訴外亡Dと、第一審判決別紙物件目録三の建物(以下「本件建物」という。)につき、貸主を同訴外人、借主を被上告人とし、返還の時期を定めなかつたが、目的を被上告人及びその家族の長期間の居住と定めて、使用貸借契約を締結し(以下「本件使用貸借」という。)、これに基づき爾来今日に至るまで本件建物を占有使用してきているのであり、被上告人が現に健在で本件建物に居住している以上右目的に従つて既に使用収益を終つたとはいえないし、また、使用収益をなすに必要な期間が既に経過したともいえない、
(二)したがつて、Dから本件使用貸借の貸主たる地位を承継した上告人が、被上告人に対し、昭和56年2月5日被上告人に到達の書面をもつてした本件使用貸借を解約する旨の意思表示(以下「本件解約」という。)は、民法597条2項及び3項所定の返還請求のいずれにもあたらないから、本件使用貸借は未だ終了していないとし、
(三)結局、本件使用貸借の終了を理由として本件建物の明渡を求める上告人の反訴請求を棄却すべきであるとし、
これを棄却した第一審判決を相当として、右反訴請求についての上告人の控訴を棄却している。

二 しかしながら、原審の確定した右事実によると、本件使用貸借の目的は被上告人及びその家族の長期間の居住ということにあるが、被上告人が本件使用貸借に基づき本件建物の占有使用を始めてから本件解約当時まで約32年4か月の長年月を経過していることが明らかであるから、他に特段の事情のない限り、本件解約当時においては、前示の本件使用貸借の目的に従い使用収益をなすに足るべき期間は、既に経過していたものと解するのが相当であるところ、右特段の事情があることについては被上告人が主張・立証していないから、本件使用貸借は本件解約によつて終了したものというべきである。

それゆえ、上告人が本件使用貸借の終了を理由として被上告人に対し本件建物の明渡を求めている本件反訴請求は、正当として認容すべきものである。右と異なる見解のもとに、本件使用貸借は本件解約によつて終了しないとした原判決には、民法597条2項の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり,右違法が原判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点の違法をいう論旨は理由がある。したがつて、その余の論旨についての判断を省略して、上告人の反訴請求につき、原判決を破棄し、第一審判決を取消し、右請求を認容することとする。
 よつて、民訴法408条一号、96条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 角田禮次郎 裁判官 藤崎萬里 裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一 裁判官 矢口洪一

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