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中国人夫婦配偶者の中国人不貞行為相手方へ慰謝料請求を認めた地裁判決紹介

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令和 6年 7月 9日(火):初稿
○中華人民共和国では不貞行為相手方に対する慰謝料請求は認められていません。一定要件があれば不貞行為配偶者に対する慰謝料請求は認められているようです。なお、中国に限らず欧米等先進国で不貞行為第三者に慰謝料請求を認めているのは日本だけで、その意味で日本は特異な国とも言えます。

○中華人民共和国の国籍を有する原告が、日本において中国方式で結婚した同じ国籍の夫と、同じ国籍の被告が、日本のホテルにおいて不貞行為に及んだため、不法行為の準拠法が日本法であるとして、中国国籍の被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料330万円の支払を求めました。

○被告は、原告の夫とホテルに滞在した事実は認めるも、休息しただけで不貞行為には及んでおらず、また、原告夫に妻子があることは知らず、さらに本件不法行為の準拠法は中国法であるとして責任はないと争いました。

○これに対し、被告が、原告の中国帰省中に、原告夫と不貞の不法行為に至り、原告と原告夫の婚姻生活の平和の維持という法的利益を侵害した場合、その結果発生地(法の適用に関する通則法17条)は、日本であると認めるのが相当として被告に対し慰謝料110万円と弁護士費用の支払を命じた令和5年3月3日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○不貞行為の結果、中国人夫婦の婚姻関係が破綻したとの主張はなく、婚姻破綻の認定もなく、認定した不貞行為は1回限りと思われます。この事案で慰謝料110万円の認定は驚きとしか言えません。この分野の認定慰謝料金額は、裁判官によって相当差があります。

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主   文
1 被告は、原告に対し、121万円及びこれに対する令和4年4月10日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和4年4月10日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 請求の法的根拠

 不貞の不法行為に基づく損害賠償請求権及びその履行遅滞に基づく損害賠償請求権(附帯請求の起算日は不法行為日の後)

2 前提事実
 原告、被告及びc(以下「原告夫」という。)は、中華人民共和国国籍を有する者である。
 原告及び原告夫は、平成16年に来日し、平成22年2月22日、日本において中国の方式で婚姻し、二人の子供を出産した。

3 争点
(1)故意・過失による不貞行為の有無(争点1)
(2)損害及び因果関係(争点2)

4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(故意・過失による不貞行為の有無)
(原告の主張)
ア 本件不法行為の準拠法は、結果発生地法(法の適用に関する通則法17条)である日本法となる。原告と被告は、日本で婚姻し、夫婦生活を送っており、原告は、中国に一時帰国し、新型コロナウイルス感染拡大により来日が困難になっているものの、原告夫との婚姻共同生活の基盤を日本に有する以上、その平穏が侵害された本件不法行為の結果発生地は、日本である。

イ 被告は、原告夫に妻子がいることを知りながら、又はそのことを知り得たにもかかわらずこれを怠り、令和4年2月27日、原告夫とホテルに入室し、不貞行為を行った。

(被告の主張)
ア 本件不法行為の準拠法は、結果発生地法である中国法となる。原告と被告は、別居し、原告は、中国に居住しており、本件の損害が精神的損害であることからすると、その結果発生地は、中国である。

イ 被告は、原告夫に妻子がいることを知らず、そのことを知らなかったことに過失はない。原告夫は、被告に対し、自らを独身であると説明した。また、被告は、令和4年2月27日、原告夫とホテルに入室したが、被告の体調不良のため、急きょホテルで休息したにすぎず、不貞行為をしていない。

(2)争点2(損害及び因果関係)
(原告の主張)
 慰謝料300万円、弁護士費用30万円
 原告は、離婚調停及び婚姻費用分担調停の申立てを準備中であり、原告夫との婚姻関係は前記不貞行為により破たんした。

(被告の主張)
 争う。

第3 当裁判所の判断
1 争点1(故意・過失による不貞行為の有無)について
(1)結論
ア 本件不法行為の準拠法は、日本法である。
イ 被告は、令和4年2月27日、原告夫と不貞行為を行ったと認められ、原告夫が既婚者であることを知らなかったとしても、少なくともそのことに過失があったと認められる。

(2)理由
ア 認定事実(前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる。)
(ア)原告と原告夫は、平成22年2月以降、日本において婚姻生活を継続していたところ、原告は、令和2年3月13日、子供の春休みを利用して、二人の子を連れて中国に帰省した。原告は、以後、来日していない。(争いのない事実)

(イ)被告は、令和3年5月頃、中国人向けカラオケアプリ「全民K歌」を通じて原告夫と知り合った(乙1、被告本人)。
 なお、原告夫は、同年11月の時点で、「全民K歌」のアカウント(名義は○○○)において、家族4名が映ったアイコンを使用していた(甲15、16)。

(ウ)被告は、令和4年2月27日、原告夫の自動車に同乗して電気店に赴いたほか、原告夫の自動車に同乗してホテル(アジアンカラー)に入室し、同日午後3時52分頃から午後6時15分頃まで、同ホテルに滞在した。被告は、その後、同ホテルから原告夫の自動車に同乗して退出した。(甲3)

イ 準拠法について
 前記認定事実によれば、原告と原告夫は、平成22年2月以降、10年以上にわたって日本において婚姻生活を継続していたものである。また、前記認定事実によれば、原告は、令和2年3月、二人の子を連れて中国に帰省したところ、その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日中間の往来に困難があったこと(当裁判所に顕著な事実)も考慮すると、原告と原告夫の婚姻生活の基盤は、依然として日本にあるといえる。なお、被告は、原告の中国への帰省時にその婚姻関係が悪化していたかのごとく主張し、同旨の供述をするものの、これを裏付けるに足りる的確な証拠も見当たらない。

 そうすると、被告が、原告の中国帰省中に、原告夫と不貞の不法行為に至り、原告と原告夫の婚姻生活の平和の維持という法的利益を侵害した場合、その結果発生地(法の適用に関する通則法17条)は、日本であると認めるのが相当である。

ウ 故意・過失による不貞行為について
 前記認定事実によれば、被告は、令和4年2月27日、原告夫とともに、ホテルに入室・滞在し、不貞行為を行ったものと推認するのが相当である。被告は、不貞行為の事実を否認し、体調不良のためホテルで休息したにすぎないと主張し、同旨の供述をするものの、これを裏付けるに足りる的確な証拠もなく、前記推認を妨げるに足りない。

 また、前記認定事実によれば、被告は、令和4年2月27日当時、原告夫と「全民K歌」というアプリで連絡を取っていたとされるところ、同アプリの原告夫のアカウントには、家族4名が映っている写真が掲載されていたことが認められる。この点、被告は、「全民K歌」というアプリのIDを複数作成できるところ、被告が見せられたアイコンはこれと異なっていたと主張し、同旨の供述をする。しかし、原告夫が、当時、「全民K歌」というアプリのIDを複数所持して前記とは異なるアカウントを提示したとか,被告が前記の家族の映っている写真を閲覧することができなかった疑いを容れるに足りる的確な裏付け証拠も見当たらない。

 そうすると、被告は、不貞行為の当時、原告夫が既婚者であることを知らなかったとしても、少なくともそのことに過失があったと認めるのが相当であり、これに反する被告の主張及び供述は、採用の限りでない。 

2 争点2(損害及び因果関係)について
(1)結論
 慰謝料110万円、弁護士費用11万円

(2)理由
 前記争点1の認定事実のほか、本件に顕れた一切の事情を考慮し、本件の慰謝料としては前記金額をもって相当と認める。また、原告が本訴の遂行を弁護士に委任したことは当裁判所に顕著であり、その弁護士費用のうち前記金額は、本件不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。

第4 結論
 よって、原告の請求は、主文1項の限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第17部 裁判官 古市文孝
以上:3,558文字

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