仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 >    

建物老朽化・建替必要性を理由に解約正当理由を認めた地裁判決紹介

貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 6年 5月11日(土):初稿
○建物が朽廃状態になったことを理由に賃貸借契約を解除した裁判例を探しています。

○原告の先代が昭和20年頃、被告Aの先代に貸した本件建物について、先代から相続した原告が、賃借人の地位を相続した被告Aに対し、賃貸借契約解約申入による契約終了を理由に、また、本件建物を占有している被告Bに対し、所有権に基づき建物明渡を求めました。

○これに対し、本件建物はすでに建築後64年を経過しており、老朽化が著しく、地盤崩壊等の危険性があり、賃貸人原告には本件建物を取り壊して今後の生活の基盤となる新しいビルを建築する必要性が高いと認められる事情があるところ、賃借人は本件建物を薬局として長年使用し、今後も使用する必要性は否定し難いが、住居としては使用していず、他に不動産を所有し、近隣には賃借人の現住するビルがあり、薬局の移転先を見つけることが不可能ではないなどの事情があり、賃貸人による賃貸借契約の解約申し入れには、正当事由があると認めた平成3年11月26日東京地裁判決(判時1443号128頁)全文を紹介します。

*********************************************

主   文
一 被告らは、原告に対し、別紙物件目録記載一の建物を明け渡し、かつ、連帯して、平成元年7月18日から右建物明渡済みまで一か月9万2000円の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由
第一 請求

主文と同旨

第二 事案の概要
 本件は、原告が被告Aに対し、賃貸借契約の解約申入による契約終了を理由に、被告有限会社B(以下「被告B」という。)に対し所有権に基づき、それぞれ建物の明渡しを請求するものである。

一 当事者間に争いのない事実
1 原告は、別紙別件目録記載一の建物(以下「本件建物」という。)を所有している。

2 Cは、昭和20年3月ころ、本件建物をDに賃貸した。
3 Dは昭和52年1月22日死亡し、子である被告Aが、相続により本件建物を賃借人の地位を承継した。
4 Cは昭和61年1月20日死亡し、子である原告が、相続により本件建物の賃貸人の地位を承継した。
2 被告Bは本件建物を占有している。
6 平成元年1月18日、原告は、被告Aに対し、本件建物の賃貸借契約を解約する旨の意思表示をした。
7 昭和60年6月以降、本件建物の賃料は一か月9万2000円であった。

二 争点
 本件の争点は、原告の解約申入につき正当事由が認められるかどうかであり、原告は正当事由に関連して多岐にわたる具体的事実を主張しているが、中心的な争点は、本件建物の老朽化の程度、原告が本件建物を取り壊して建物を新築する必要性及び被告らが本件建物を使用する必要性等の点である。

第三 争点に対する判断
一 建物の老朽化について

 本件建物は,昭和2年に建築され、既に64年の歳月を経て、以下のように老朽化が進み、固定資産評価額も昭和36年に25万5000円とされてから今日に至るまで変更がない。
1 本件建物の南西の通し柱は上部が16、7センチメートル東側へ傾斜している。
2 本件建物店舗部分の床面は南西へ向かい、傾斜しており、傾斜の度合いは店舗南奥の部分で南側に75センチメートルにつき一センチメートルの割合である。建物の傾きは、床を歩けば傾斜が分かる程度にまで達している。

3 本件建物の南西の通し柱の上部は、東南方向にねじれている。
4 本件建物の前面のシャッター部分は東側が下がり、床面及びシャッター部分に接続する建物本体も東側に傾斜している。
5 本件建物の二階は物置になっている。

6 本件建物の物置部分(別紙物件目録記載一の2の付属建物)については、壁板は外れ、全体的に北に傾き、一階の戸は開閉できなくなっており、二階は不用品が乱雑に置かれ、朽廃状態にある。
7 建物の土台も腐っており、既に昭和60年6月時点で釘がきかない状態であった。
8 本件建物は、昭和11年の道路拡張の際、北側の傾斜地を地盛して埋め立てた土地上に跨がっており、地盤は軟弱である。さらに昭和53年ころ、道路の下水道工事を契機に地盤が東南に沈下したので修復工事をしたが、再度地盤が沈下している。これに伴い敷地の土留めのコンクリートも膨らみひび割れしており、地盤は崩壊の危険に瀕している。

二 原告の事情
(以下の認定に供した証拠は、後に別個に掲げるものの他)
1 本件建物及びその敷地は、原告が育った場所である。

2 原告が居住している家は、木造モルタル塗りの二階家で、昭和28年に建てた住居を移築したものであるが、土地は道路工事のアスファルトや粘土の混ざった粗悪な土で埋められ、排水が良くないのでかびや害虫が発生する率が多く、白アリのため建物の一部や木戸が傾いたり、湿気で畳が腐食することもある。柱や床も害虫に侵され年三回程度殺虫剤を散布して建物の保存に努めている。昭和61年には隣地に六階建ビルが建てられ、陽もあまり当たらなくなった。

3 原告は平成元年10月26日Eと養子縁組し、右養子夫婦と同居しているが、収入の不足を補うために家の二階を人に貸し、一階に住んでいることもあり、現在の家では手狭で不自由である。

4 原告は、現在66歳であるが、本件建物の明渡しを受けた後は、これを取り壊し、鉄骨造地下一階、地上5階建位の事務所兼住居用のビルを建築し、その一部に息子夫婦と居住し、他は賃貸して建築費の回収と収入の安定を図り、老後の生活を支える基盤とする予定である。

5 原告は、本件建物及びその敷地のほか、別紙物件目録記載二ないし五の各不動産を所有している。

三 被告らの事情
(以下の認定に供した証拠は、後に別個に掲げるものの他)
1 被告Aの母Fは、本件建物から70メートル玉川線よりの同じ商店街に、別紙物件目録記載六の建物(賃貸マンションYビルを所有し、この各部屋を賃借人に貸し、賃料収入を得ている。

2 被告Aは、本件建物を住居として使用せず、Yビルに居住している。

3 被告A及びその先代は薬剤師として、本件建物で柳田薬局の名のもと数十年来薬局営業を継続してきた。被告Bは、被告Aが代表取締役、被告Aの妻G及び母Fが取締役に就任している、被告Aの個人会社である。

4 Yビルの四軒先(距離にして30ないし40メートル)には同業である「うさぎ薬局」が開業している。

5 被告Aは、本件家屋付近に別紙物件目録記載七の(一)ないし(四)の物件を所有しており、このうち店舗に適した部屋である同目録記載七の(四)の物件については陶磁器卸商の鳥居某に貸与している。

四 その他の事項
 本件建物のブロック塀は昭和54年の東京都世田谷区都市環境部防災課の調査の際に、その危険性が指摘され、改善勧告を受けていたところ、被告Aは、本件訴訟係属中の平成2年10月31日、原告の承諾を得ることなく、ブロック塀を撤去し新しい塀を造り、本件建物の雨漏りを防ぐため、平屋部分のトタン屋根全体に板を打ちつけ、元の屋根をそのままにして、その上をカラートタンで覆う工事に着手したため、原告と被告らとの間に紛争が生じ、原告は被告らを債務者として工事禁止の仮処分を申請し、右仮処分決定に基づく執行がされたため、被告らは工事を中断した。

五 以上によれば、被告らが本件建物を薬局として長年使用し、今後も使用する必要性を否定し難く、また原告は本件建物以外にも不動産を所有しているものの、本件建物が既に建築後60余年を経過し、老朽化が著しいばかりか、地盤崩壊等の危険性すらあること、前示のように原告が本件建物を取り壊して今後の生活の基盤となる新しいビルを建築する必要性が高いと認められること、被告Aは本件建物を住居としては使用してないこと、被告Aが本件建物以外にも不動産を所有していること、本件建物の近隣には、被告Aが現住する、F所有にかかるYビルが存在すること、したがって、他の薬局との競合という問題はあっても、被告らにおいて薬局の移転先を見つけることは不可能ではないこと、その他前示認定にかかる諸般の事情を総合すると、原告の賃貸借契約の解約申入は、被告Aとの関係において正当事由が認められ、かかる正当事由に基づく賃貸借契約の終了は、転借人である被告Bとの関係においても正当なものというべきである。

第四 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は理由がある。
(裁判長裁判官 石川善則 裁判官 永田誠一 田代雅彦)
別紙 別件目録

(主たる建物の表示)
所在 東京都世田谷区《番地略》
家屋番号《略》
種類 居宅
構造 木造亜鉛メッキ鋼板瓦交葺二階建
床面積 一階 100・82平方メートル
二階 23・14平方メートル
(付属建物の表示)
1 種類 浴場
構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
床面積 3・30平方メートル
2 種類 物置
構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
床面積 21・48平方メートル
2~7《略》
以上:3,631文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 > 建物老朽化・建替必要性を理由に解約正当理由を認めた地裁判決紹介