仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 >    

ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地法適用を認めた高裁判決紹介

貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 4年 2月 1日(火):初稿
○「ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地法適用を否認した最高裁判決紹介」の続きでその控訴審で、ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地法適用を認めた昭和41年12月22日名古屋高裁判決(金融・商事判例93号8頁)全文を紹介します。

○名古屋高裁判決は、本件土地は控訴人Yがゴルフ練習場として客の来集を目的とする場屋を経営するために借受けたものであり、従つて雨天の場合でもゴルフの練習ができるような建物を建築し、又そのゴルフ練習場経営のための事務所、管理人の居宅、物置等を建築所有することが、右土地賃貸借の目的であつたことが認められるとしています。

○しかし、最高裁判決は、それは右土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかつたものといわなければならないとして、高裁判決を覆しています。建物所有が「従たる目的」か「主たる目的」かの判断は微妙なところがありますが、本件では、建物目録を見ると木造瓦葺平家建床面積52・95平方米(16坪2勺)で土地合計約1100坪に比較して小さすぎたようです。

*******************************************

主   文
原判決を取消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事   実
控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出援用及び書証の認否は、被控訴代理人において「控訴人Yが被控訴人に対しその主張の如き金100万円を支払つたことは認めるが、これは控訴人Yが被控訴人に寄附したものであつて、本件土地の権利金及び賃料ではない。

仮りに本件土地の貸借関係が賃貸借であるとしても、それは一時使用を目的とする賃貸借である。被控訴人は本件土地にゴルフ練習場用の仮設小屋を建築することを許可したが、住宅を建築することは許可していないし又別紙第二目録記載の4、6、7、8、の各建物建設については被控訴人は承諾を与えていない。又本件土地は控訴人Yが自らゴルフ練習場として使用するために貸与したものであるから、同人が控訴人株式会社末広ゴルフクラブに右土地を使用せしめることは契約違反である。よつて被控訴人は本訴において右土地の貸借契約を解除する」と述べた。

証拠(省略)

控訴代理人において「仮りに被控訴人が本件土地の賃貸借につき宗教法人法第23条の手続をなさなかつたとしても、控訴人Yは善意であつたから、右賃貸借の無効は同控訴人に対抗することを得ない。本件土地は室内ゴルフ練習場建設のために賃貸借されたものであるから、控訴人Yが本件土地上に右練習場及びこれに附属する建物、管理者の居宅等を建築することは初めから被控訴人において承認していたものである。なお本件土地賃貸借が一時使用を目的とするものであることは否認する」と述べ、証拠として当審証人松見三郎の証言及び当審鑑定人早川友吉の鑑定の結果を援用し、甲第5、6号証の成立は不知、と述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、にこれを引用する。

理   由
一、被控訴人が昭和29年9月10日控訴人Yに対し、別紙第一目録記載の土地を、ゴルフ練習場用として、期間を10年と定めて貸与したこと、及び同控訴人がその主張の如き金100万円を被控訴人に支払つたことは、いずれも当事者間に争いがない。

そこで右土地の貸借が使用貸借であつたか或は賃貸借であつたかについて案ずるに、成立に争いのない甲第1号証によれば、被控訴人が右土地を控訴人Yに使用せしめることの謝礼として同控訴人は被控訴人に寄附金100万円を納入すること、同控訴人が右寄附金を納入しないときは被控訴人において直ちに右土地の貸借契約を解除することができる旨定められていることが認められるから、被控訴人の土地使用許可と控訴人Yの寄附金納入とは互に反対給付の関係に立つていることが認められる。

そして土地所有者が相手方に反対給付をなさしめて土地の使用を許可する場合には、それが賃貸借となることもあり、又賃貸借にあらざる有償貸借契約ないしは負担付使用貸借となる場合もある(最高裁昭和38、12、26民集17巻12号1827頁、同昭和26、3、29民集5巻177頁)。

そこで本件土地の貸借が右のいずれに該当するかは、右寄附金が民法第601条所定の賃金に該当するか否かによつて決すべきであるが、右寄附金が金銭であることは明らかであり、そして右寄附金が本件土地使用の謝礼であることは前記認定のとおりである。又当審鑑定人Aの鑑定の結果によれば本件土地の賃貸借について権利金50万円、10年間の賃料前払として金50万円は、決して不当に安過ぎるものではないことが認められる。

かような諸般の事情を総合すれば、右当事者は本件土地を使用せしめる義務と右寄附金支払とを対価関係に立たしめる意思で相互に出捐契約をなしたものと解するのが相当である。よつて右寄附金100万円は本件土地の権利金及び賃料であり、従つて本件土地の貸借関係は賃貸借であると解するを相当とする。被控訴人提出援用にかかる全証拠によるも右認定を覆すに足らない。

二、次に右賃貸借につき借地法の適用があるか否かについて案ずるに、当事者間に争いのない本件土地がゴルフ練習場用として貸借された事実、原審証人Bの証言及び原審における被控訴人代表者本人尋問の結果を総合して成立を認め得る乙第1号証、見取図の部分を除きその余の部分は成立に争いのない乙第2号証、原審証人C、同D、同Eの各証言を総合すれば本件土地は控訴人Yがゴルフ練習場として客の来集を目的とする場屋を経営するために借受けたものであり、従つて雨天の場合でもゴルフの練習ができるような建物を建築し、又そのゴルフ練習場経営のための事務所、管理人の居宅、物置等を建築所有することが、右土地賃貸借の目的であつたことが認められる。

被控訴人は右土地の賃貸借は一時使用を目的とする賃貸借であると主張するので、以下この点について案ずるに、原審における被控訴人代表者本人尋問の結果及び当審証人Fの証言を総合すれば被控訴人は本件賃貸借締結当時から本件土地にビルデイングを建設する計画であつたことが認められるが、然し被控訴人が右契約締結の際これを控訴人Yに伝えて、特に賃貸借期間を10年と定めたことを認めるに足る証拠はないし、又単に賃貸借期間を10年と定めたということだけで当然に右賃貸借が一時使用を目的とする賃貸借となるものではない。

一時使用を目的とする賃貸借とは、賃貸借が臨時的であり、且つ当事者双方とも期間満了後は賃貸借を継続する意思がなく、そうしてそういう事情が客観的且つ具体的事実によつて裏付けられている場合をいうのであるが、本件賃貸借には右要件が具備していることを認めるに足る証拠がない。よつて被控訴人の本件賃貸借が一時使用を目的とする賃貸借である旨の主張は採用できない。

以上の理由により本件賃貸借は借地法の適用を受ける賃貸借であると解するを相当とする。

三、そこで本件賃貸借の期間について案ずるに、被控訴人と控訴人Yとが本件土地の貸借期間を10年と定めたことは当事者間に争いのないところであるが、右契約は借地法第11条によつて無効である。

然し、右当事者が賃貸借期間を10年と定めたことは、できるだけ短期を約束する趣旨とみるべきであるから借地法第2条第2項の趣旨に従い、当事者の定めた賃貸借期間を20年に延長してその効力を認めるを相当とする。そうすれば本件土地の賃貸借は昭和49年9月10日まで存続するものというべきである。

四、以上の理由により被控訴人が貸借期間の満了を理由として、控訴人等に対し、建物収去、土地明渡等を請求することは失当であるというべきである。

五、被控訴人は、控訴人Yが本件土地に居宅等を無断建築したことは本件土地の使用目的違反であると主張するが、前記認定の如く、本件土地賃貸借の目的が、客の来集を目的とする場屋の経営を目的とするものである以上、その管理人の住居を建設することは当然のことであり、これを以つて本件土地の使用目的違反ということはできない。又右賃貸借は建物所有を目的とする賃貸借であるから、控訴人Yがゴルフ練習場経営のために必要な建物を本件土地に建築することは、仮令被控訴人に無断でこれをなしたとしても何等賃貸借契約に違反するものではない。

被控訴人は、本件土地は控訴人Yが自らゴルフ練習場を経営するというので貸与したものであるのに、同控訴人が株式会社末広ゴルフクラブを設立して同会社に本件土地を使用せしめ、同会社をしてゴルフ練習場を経営せしめているのは、本件土地使用権の無断譲渡であり、契約違反であると主張するが,本件土地に建設された建物の所有権を控訴人会社に譲渡したことを認めるに足る証拠がないから、控訴人Yが本件土地の賃借権を控訴人会社に譲渡したとは認め難い。

控訴人Yが控訴人会社をしてゴルフ練習場を経営せしめていることは当事者間に争いのないところであるが現在控訴人Yが控訴人会社の代表取締役となつていること及び原審証人岡文枝、同岡進の各証言並びに原審における控訴人Y本人尋問の結果を総合すれば、控訴人会社は税金対策上、控訴人Yの個人企業を会社組織に改めたものであり、その実体はY個人経営の当時と何等異るところがないことが認められるから、控訴人Yが控訴人会社をして右ゴルフ練習場を使用せしめても、これを目して賃貸借契約を継続し難い背信的行為ということはできない(最高裁昭和39、11、19民集18巻9号1900頁参照)。

以上の理由により、控訴人の使用目的違反、或は使用権の無断譲渡等を理由とする被控訴人の本件賃貸借契約解除は無効である。

六、被控訴人は本件土地の賃貸借契約は宗教法人法第23条第24条により無効であると主張するが、仮りに被控訴人が同法第23条所定の公告をなさずして本件賃貸借契約を締結したとしても、控訴人Yが右公告がなされなかつたことを知つていたことを認めるに足る証拠はなく、却つて弁論の全趣旨によれば、控訴人Yは右公告がなされないため本件賃貸借が無効になるなどとは些かも知らずして右賃貸借を締結したことが推認できる。よつて被控訴人は宗教法人法第24条但書により、右賃貸借の無効をもつて控訴人Yに対抗することができないものというべきである。

七、以上認定の理由により、被控訴人の控訴人Yに対する建物収去、土地明渡の請求は失当であり、又控訴人Yと控訴人会社間の本件ゴルフ練習場の貸借が仮りに本件賃貸借契約違反であるとしても、これが被控訴人に対する背信的行為であるとは云えないこと、前記認定のとおりであるから、被控訴人は控訴人会社に対して本件土地の使用を差止めることができず、従つて被控訴人が控訴人会社に対して建物退去、土地明渡を求めることも亦失当であるというべきである(最高裁昭和39、6、30、民集19巻5号991頁参照)。

八、よつて被控訴人の本訴請求はこれを棄却すべきであるに拘らず、原判決がこれを認容したことは失当であり、原判決は取消を免れない。よつて右認定の趣旨に従い、民事訴訟法第386条、第96条、第89条を適用し、主文のとおり判決する。
(昭和41年12月22日 名古屋高等裁判所第六部)

別紙
第一目録
名古屋市中区東田町2丁目中5工区58ブロツク28番
 1271坪5合3勺(4203・39平方米)の内
 233、02平方米(70坪4合9勺)
旧地中区東田町二丁目15番地1052坪4合2勺(3479・06平方米)

第二目録
名古屋市中区東田町二丁目中5工区58ブロツク28番
 家屋番号 2丁目15番の
 21、居宅 木造瓦葺平家建
 床面積 52・95平方米(16坪2勺)
 附属建物
 二、ゴルフ練習場、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建
 床面積 31・07平方米(9坪4合)
 三、事務所、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建
 床面積 10・90平方米(3坪3合)
 四、ゴルフ練習場、木造亜鉛葺平家建
 床面積 20・30平方米
 五、事務室、木造亜鉛葺平家建
 床面積 7・14平方米
 六、物置場、木造亜鉛葺平家建
 床面積 4・59平方米
 七、物置場、木造亜鉛葺平家建
 床面積 5・04平方米
 八、居宅、木造瓦葺平家建
 床面積 14・17平方米
以上:5,034文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 > ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地法適用を認めた高裁判決紹介