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ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地法適用を否認した最高裁判決紹介

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令和 4年 1月28日(金):初稿
○「ゴルフ練習場敷地賃貸借契約に借地借家法適用を認めた地裁判決紹介」の続きで、同判決が引用した昭和42年12月5日最高裁判決(判時503号36頁、判タ216号120頁)全文を紹介します。

○この最高裁判決は、ゴルフ練習場として使用する目的でされた土地の賃貸借がされた場合には、たとえ当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造、所有することが予想されていたとしても、特段の事情のないかぎり、その土地の賃貸借は、借地法第1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということはできないとしました。

○ゴルフ練習場として賃貸借契約を締結し、一部に建物を建築した場合の借地法適用について、第一審昭和41年5月31日名古屋地裁判決は否認し、控訴審昭和41年12月22日名古屋高裁判決は肯定して結論が分かれていたところ、最高裁判決は適用否認で決着しました。

○そこで令和3年3月30日金沢地裁判決の事案も借地借家法は適用されないはずとして、民法617条1項1号により、解約の申入れをして明渡請求しましたが、昭和42年12月5日最高裁判決のいう「特段の事情」により、借地借家法の適用が認められました。建築した建物が御フル練習場を利用するための「従たる目的」に過ぎないかどうかの認定は、ケースバイケースで、建物の規模等シッカリ見極める必要があります。

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主   文
原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理   由
 上告代理人鶴見恒夫の上告理由第二および上告代理人原瓊城の上告理由(ホ)について。
 借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であつても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解するのが相当である。

 ところで、本件土地の貸借については、それが賃貸借であるといえるか否かの点にも問題がないわけではないが、その点はさておき、仮にそれが賃貸借であるとしても、その目的は当事者間に争いがないように右土地をゴルフ練習場として使用することにあつたというのであるから、これを社会の通念に照らして考えれば、その主たる目的は、反対の特約がある等特段の事情のないかぎり、右土地自体をゴルフ練習場として直接利用することにあつたと解すべきであつて、たとえその借地人たる被上告人岡博が当初から右土地上に業としてゴルフ練習場を経営するのに必要な原判決判示のような事務所用等の建物を築造・所有することを計画していたとしても、それは右土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかつたものといわなければならない。

 しかるに、原判決は、一方では、本件土地貸借の目的がゴルフ練習場として使用することにあつたことを判示しながら、何ら特段の事情の立証がないのにかかわらず、右被上告人が右土地上に判示のような事務所用等の建物を築造・所有する意図を有していたことをもつて、にわかに、それが右土地使用の主たる目的であつたかのように認定し、本件貸借が借地法1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借に当たる旨判断したものであるから、原判決は本件土地貸借の目的についての認定判断を誤り、ひいては借地法の解釈適用を誤つたものであつて、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 上告代理人鶴見恒夫の上告理由第四について。
 上告人が、原審において、上告人は宗教法人であり、かつ、本件土地はその貸借の当初には宗教法人の境内地であつたから、宗教法人法23条、24条により、上告寺の代表役員たる高間宗道には上告寺の規則または宗教法人法19条所定の手続を経ることなく単独で右土地を処分する権限がなく、右土地につき民法602条二号所定の5年間をこえる賃貸借契約を締結することができなかつたものであり、したがつて、右高間が右手続を経ないでした右法定期間をこえる本件貸借は無効である旨を主張したことは、本件記録、とくに原判決引用の第一審判決の事実摘示によつて明らかである。

 しかるに、原判決は上告人の右主張について何らの理由説示もしていないから、原判決は右主張についての判断を遺脱したものというほかはなく、この違法も原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 以上の次第で、原判決の如上の各違法を主張する右各論旨はいずれも理由があるというべきであり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、上告人の本訴請求の当否を確定するためには、なお、事実審理を必要とするから、本件を原審たる名古屋高等裁判所に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法407条1項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)

上告代理人鶴見恒夫の上告理由
原判決は、つぎのとおり判決に影響を及ぼすべき法令の違背があり破棄を免れない。

第二、また、原判決は、本件土地の貸借が建物の所有を目的とするものであるとして借地法の適用をしているが、同法第1条の解釈適用を誤つたものといわねばならない。
貸借目的がゴルフの練習場として使用するものであつたことは明白な事実であるが、そのほか、原判決は「客の来集を目的とする場屋を経営するために借受けたものであり、従つて雨天の場合でもゴルフの練習ができるような建物を建築し又そのゴルフ練習場経営のための事務所、管理人の居宅、物置場を建築所有することが、右土地貸借の目的であつたことが認められる」としている。

右の認定が甚だしく恣意的、一方的なものであることは、その理由の記載が通常、素人が契約にあたつて考えないような条文的あるいは教科書的なものであることからも、また、第一審判決のこの点の判断と対比してみても既に明らかであるが、それはさておき、かかる判断が適法に確定された事実認定であるにせよ、当事者間に争いのない根本的な事実たる「ゴルフ練習場」という主たる使用目的からみて、ある種の建物の所有の如きは(事実は契約違反の建物の建築)、それ自体、独立の存在価値はないものというべく、ゴルフ練習場にとつては付属のものであること勿論である。

この種の貸借目的が主たるものであるか、従たるものかの判断は、一般社会観念にしたがつて為されるべきことは言うまでもないが、果して、一般世人は、ゴルフの練習場に土地を貸すという契約の中に、建物所有を独立の、あるいは主たる目的とする合意があると考えるであろうか。原判決のごとき考えによれば、バツチングセンター、野球場、水泳プール、競馬場等、一切のものが建物所有を目的とするものとされるおそれがあり、かくては、借地法の立法趣旨、すなわち、借地法の保護の対象をどのように限定すべきかの考慮を誤らせること大である。

なお、原判決が文字通りゴルフの練習場として本件土地を用いる目的と、建物を地上に建築する目的との双方について主従の別を検討せずにいること、またもし、原判決のような事実認定の程度で借地法第1条の適用の有無を決めて良いとせられるにせよ、それだけで同条の適用を肯定したことは、従来の裁判例と牴触するものである(大審院昭和15年11月27日判決)。

第四、また、原判決は、宗教法人法第23条、第24条の解釈適用を誤り,かつ、民事訴訟法第191条に違反して争点を判断せざる法令の違背がある。

原判決は、上告人の主張について、右宗教法人法第23条、第24条に関する部分は第一審判決の摘示を援用しているところ、右両判決に明白なとおり、上告人の主張は「上告人の代表役員高間宗道にその処分の能力、権限がない」とするにあり、それが宗教法人法第23条違反の処分行為である、とするものであることは明らかである。

その内容は、同条によつて明白なとおり、(イ)規則違反および同法19条の違反、(ロ)公告の欠缺の2点であるが、右(イ)の点は第一審判決ですらはつきり「賃貸するには檀家総代に諮つたり、主管長の許可が必要である」と認めているのに拘らず、全くこの点を判断せず、かつ、判断の記載をせず、判断を全く遺脱し、民事訴訟法に違反するものである。

そして、原判決は、右の(ロ)の点については、宗教法人法第24条により、相手方に無効を対抗しえないものとしているが、しかし、第24条は、第23条による公告義務違反にのみ関するものと解すべきである。けだし、公告のごとき軽微な手続違反については、第24条のような無効の主張の制限が必要であるけれども、主務管長の許可、檀家総代の同意、あるいは、同法第19条の決議などは、ことの性質上、極めて重要な手続要件であつて、その違反行為の効力を認める場合には、代表者一名の行為によつて、宗教団体の存立の基礎を失わしめるに至る重大な結果を生ずるからである。この点において、原判決は、判断の遺脱のみならず、右宗教法人法の条項の解釈適用を誤つたものである。
(その他の上告理由は省略する。)

上告代理人原瓊城の上告理由
原審判決には以下(イ)乃至(ハ)の(1)(2)の各点において採証法則に違背したため一方的に事実を認定した違法がある。又(ニ)乃至(ヘ)各点につき法の解釈に誤りがあり、破毀を免れない。
(ホ) かりに本件土地につき当事者において賃貸借があつたものとしても借地法の適用がない。
本件土地は被上告人岡博がここで10年間だけゴルフ練習場に使用する目的で貸借した。
10年すれば土地を原状に復して返地する約束があつた。

斯様に土地使用目的が限定せられ特に返地の約束もあつたのであるからもともと建物所有の目的で貸借されたものでないこの事は甲第1号証契約書によつて明らかにされている(甲第1号証第1条第6条)
そしてこの土地が上告人のビル建築予定地である事については住職高間宗道が被上告人岡博にも伝え被上告人は其使用期間について15年を希望したが結局10年ときまつた事が右両名の供述書によつて窺われる。決して建物所有が目的で貸借したものではないのである。
そして事実上被上告人岡博に於ては期間10年後取除いても惜しくない建築をしたのである。

(授受された100万円も第一審判決摘示のとおり不当に安いもので原審判決は早川友吉の鑑定書を援用するかによつて不当に安いものでないとは判断出来ないのである)
よつて本件土地貸借につき建物所有を目的とする借地法を適用し、貸主に賃貸期間上不当な負担を加える事は公平の原則にもそむき実際的でない。
(昭和41年9月4日上告人提出準備書面一項冒記及同年9月7日附準備書面)
原審判決はこの点土地貸借の目的を顛倒して借地法を適用できないのに之を適用した違法がある。
(その他の上告理由は省略する。)

以上:4,497文字

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