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更生手続開始決定以前の過払金返還請求権認められる

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平成20年 2月14日(木):初稿
○当事務所では事業倒産整理(清算または再建)を好んで取り扱っていますが、その規模は負債総額が精々数億円程度で負債総額数十億円、数百億円と言う大規模事業倒産事件はお呼びがかからず、そこで大規模倒産の事業再建のための法律である会社更生法には全く無縁で不勉強でした。

○ところが今般某信販会社に過払金返還請求をしたところ、当社は平成12年6月30日会社更生法に基づく更生手続開始決定を受けており、その日以前に入金された金員についての不当利得返還請求権は、更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であり、届出期間内(平成12年8月15日)に債権届出をしなかったので、免責されているので支払出来ないと回答され、どう対処すべきか思案中でした。

○この支払拒否の根拠となる判例は、平成15年8月26日東京地裁判決(金法1703号52頁)で以下のものでした。
 貸金の過払金返還請求権(不当利得返還請求権)は、旧会社更生法241条ただし書に列挙された債権と同視できる程度の政策的・公益的要請があるとは言えないし、個別的事情によって非免責債権の該当性を判断し、免責効の及ぶ範囲を決することは、債権者に対する画一的・確定的処理を著しく阻害するから相当でなく、右過払金返還請求権(不当利得返還請求権)について旧会社更生法241条ただし書を類推適用することはできない。

○旧会社更生法の関連条文は以下の通りです。
(更生債権等の免責等)第241条
 更生計画認可の決定があつたときは、計画の定又はこの法律の規定によつて認められた権利を除き、会社は、すべての更生債権及び更生担保権につきその責を免かれ、株主の権利及び会社の財産の上に存した担保権は、すべて消滅する。
 ただし、更生手続開始後会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人であつた者で、更生計画認可の決定後も引き続き会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人として在職しているものの退職手当の請求権並びに第121条第1項第5号及び第6号に掲げる請求権については、この限りでない。

(劣後的更生債権)第121条
 左に掲げる請求権は、更生債権とする。
1.更生手続開始後の利息
2.更生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金
3.更生手続参加の費用
4.前号に掲げるものの外、更生手続開始後の原因に基いて生じた財産上の請求権で共益債権でないもの
5.更生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料
6.更生手続開始前の租税のうち、これを免かれ、若しくは免かれようとし、不正の行為によりその還付を受け、又は徴収して納付若しくは納入すべきものを納付若しくは納入しなかつたことにより、更生手続開始後懲役若しくは罰金に処せられ、又は国税犯則取締法(明治33年法律第67号)第14条第1項(地方税法(昭和25年法律第226号)において準用する場合を含む。)(通告処分)の規定による通告の旨を履行した場合における、免かれ、免かれようとし、還付を受け、又は納付若しくは納入しなかつた額の租税で届出のないもの
2 前項の請求権は、他の更生債権に後れる。但し、国税徴収法又は国税徴収の例によつて徴収することのできる請求権で、同項第6号に掲げるもの以外のものは、この限りでない。
3 第1項第5号の請求権については、更生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定をすることができない。


○最高裁平成17年6月9日判決でも会社更生中の貸金業者に対する非債権届出者からの過払金返還請求を否定たとの情報もあり(但し、私の利用する判例データ検索では見つからず)、さてどうしたものかと思案していたところ次の記事を発見しました。
日本経済新聞夕刊 2006年7月31日
 過払い利息 返還求めライフ提訴 12都府県35人 京都地裁に
 消費者金融大手アイフル傘下の信販会社ライフ(本社横浜市)が、利息制限法を超える金利で貸し付けを行っていたとして、東京や大阪など12都府県の原告35人が31日、計約3400万円の過払い金の返還を求める訴訟を京都地裁に起こした。
 ライフは2000年5月、東京地裁に会社更生手続きの開始を申請し、同10月にアイフルがライフを経営支援するスポンサー契約を締結。翌年3月に完全子会社化した。 訴訟では、ライフの会社更生手続きが決定した00年6月以前の過払い金が支払われるかが争点となる。アイフル被害対策全国会議の河野聡弁護士によると、同様の訴訟の判決で、同月以前の過払い金返還を認めたケースはないという。


○その結果に注目していたところ、上記京都地裁の事件ではありませんが、同種事案について平成20年2月13日神戸地裁判決があったようで、その紹介記事は以下の通りです。
過払い利息の返還命じる ライフ、更生手続き前は初
 兵庫県三田市の50代の女性が、消費者金融大手アイフルの子会社になった信販会社ライフ(横浜市)に、会社更生手続き前の過払い利息の返還などを求めた訴訟の判決で、神戸地裁(橋詰均裁判長)は13日、請求通り計約93万円の支払いを命じた。
 アイフル被害対策全国会議事務局長の辰巳裕規弁護士によると、ライフのカード会員は約700万人いたといい、「更生手続き開始前の過払い分の返還を認めた判決は初めて」としている。
 ライフの会社更生は、2000年6月に手続きが開始され、翌年1月に認可された。
 ライフは「カードはこれまで通り使える」と宣伝したが、手続き前の過払い利息は認可決定で免責されるとして、返還を拒否してきた。
 判決にライフは「コメントできない」としている。


○控訴されることは確実と思われますが、当事務所でも提訴しようかと思っております。
以上:2,321文字

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