平成19年 4月 5日(木):初稿 |
○Aさんは競売記録の現況調査報告書にも評価書にも自殺物件であるとの記述は全くなかったため自殺物件とは全く気付かず代金1200万円で自殺物件中古マンションを競落し、予定の転売が出来ず、750万円位の価値しかないと判明したため代金1200万円との差額450万円に取得費用・リフォーム費用等150万円と合わせて600万円も損害を被りました。 ○中古マンション等不動産が競売になると競売対象物件について先ず執行官が現況調査をして現況調査報告書を作成し、次に不動産鑑定士である評価人が評価書を作成し更に書記官が物件明細書を作成しこれらは競売3点セットと言われて入札検討者が自由に閲覧できます。 ○Aさんが購入した中古マンションについての競売3点セットにはどこにも自殺物件であることは記載されていなかったためAさんは自殺物件とは思いもよらず入札しました。そこでAさんは、執行官と評価人が必要な調査を尽くさず現況調査報告書と評価書に自殺物件であることを記載しなかったため自殺物件を買わされて損害を被ったとして執行官については国賠法、評価人については民法の不法行為として、国と評価人の不動産鑑定士個人に対し上記600万円の損害賠償の訴えを提起しました。 ○しかし残念ながら判決は、執行官、評価人いずれもこの中古マンション調査の過程で所有者が自殺したことを窺わせる情報や風評がなかったのでこの中古マンションが自殺物件かどうかについてまで管理人あるいは近隣住民から事情を聴取すべき義務はなかったとして、Aさんの主張は認められませんでした。 ○これは福岡地裁平成17年9月13日の実際の判決(判時1953号150頁)で控訴・上告されましたが何れも棄却されており、この実際の判決事例を参考に数字を判り易く変えAさんの設例を作りました。 ○現況調査での執行官の注意義務については、「執行官の調査、判断の過程が合理性を欠き、その結果、現況調査報告書の記載と対象不動産の現況との間に看過し難い相違を生じたときには、執行官の注意義務違反が認められる」(平成9年7月15日最高裁、判時1617号86頁)とされてます。 ○Aさんの場合も「現況調査報告書の記載と対象不動産の現況との間に看過し難い相違」があったことは間違いありません。問題は「執行官の調査、判断の過程が合理性を欠」いたとは評価出来ないとされた点です。私自身は、中古マンションの所有者がC相続財産となっており死亡していたことは明白なので、管理人等に一言死亡原因を聞けば簡単に自殺であることが判明したはずで、執行官の調査不足ではと思います。 ○この判決では、入札するAさんにおいてにC相続財産の記載からCさんの死亡原因を調査して買う必要が生じ、やはり、競売物件は怖いとなり、一般人が容易に競売物件には手を出せなくなるのではと危惧しています。 以上:1,167文字
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