平成19年 4月 4日(水):初稿 |
○Aさんが中古マンションを1200万円で競落後、自殺物件であることが判明し、Bさんへの1800万円での転売が出来なくなった場合、Aさんにどのような損害が発生するでしょうか。 ○先ずその中古マンションが自殺物件であることを前提とした時価と取得価額との差が損害となります。問題は自殺物件であることを前提とした時価ですが、その判定は極めて困難です。仮に自殺物件ではない普通の状態では1500万円で売却できるところ、自殺物件とすると半分の750万円でしか売れないとなった場合、取得価額1200万円と750万円の差額450万円が損害となります。 ○更にこの中古マンションを取得するための登録免許税・取得税等の諸費用、リフォーム等した上で750万円でしか売れないとすればリフォーム費用も損害となります。仮に取得費用が50万円リフォーム費用が100万かかったとすれば合計150万円が損害に追加されて損害は600万円となり、実際、自殺物件を知らずに買わされて損害を被った人が売主に対しこのような損害賠償請求をして認められた例があります(平成9年8月19日浦和地裁川越支部判決、判タ960号189頁)。 ○しかし本件のAさんは競売で取得したものであるため売主に対する代金減額・損害賠償等の請求は出来ません。競売代金納付前であれば、Aさんは、自殺物件との事実が、民事執行法第75条(不動産が損傷した場合の売却の不許可の申出等)「最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。」の「損傷」に該当するとして、売却不許可の申出あるいは売却許可決定取消の申立をして買わずに済ませることも出来ます。 ○Aさんが代金納付前に自殺物件であることに気付けば売却不許可の申出あるいは売却許可決定取消の申立によって買わずに済ませることも出来ますが、自殺物件に気付かないまま競売代金を納付してしまうと競売手続の中で自殺物件購入による損害を回復する手段はなくなります。 ○しかしAさんは競売記録の現況調査報告書にも評価書にも自殺物件であるとの記述は全くなく、自殺物件とは全く知らずに1200万円も支払って競落したマンションが自殺物件であり、せいぜい750万円位の価値しかなく、どうしても納得できません。Aさんに何か救済方法がないものでしょうか。 以上:1,058文字
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