平成19年 3月 5日(月):初稿 |
○「建物収去土地明渡義務と建物買取請求権」で以下の借主の原状回復義務条項 「1.本契約が終了したときは、借主は自己の費用で本件土地を原状に復し、これを貸主に返還する。 2.土地の返還が遅延した場合、借主は貸主に対し賃料の○倍相当額の遅延損害金を支払う。」 は、建物買取請求権行使によって殆ど効力がなくなると説明しました。 ○不動産仲介業者等が作成した土地賃貸借契約には、 「本契約が終了したとき借主は貸主に対し、建物及び造作の買取、立退料その他名目の如何に拘わらず何らの金銭請求が出来ない」 との条項が記載される例があります。 ○この賃貸借終了時一切の金銭請求の禁止条項も殆ど効力のない規定です。 先ず建物買取請求権放棄の規定とすれば、これは借地借家法第16条(強行規定)「第10条、第13条及び第14条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。」の規定に違反し、無効です。 ○また借地借家契約において契約終了時に貸主が借主に支払うべき金銭は、敷金・保証金等の授受がある場合、これを精算して返還する義務があります。立退料とは、一般に「貸主自身に居住する必要が生じたとか、建物が老朽化したなど、貸主側の都合で賃貸借契約の解約や、更新の拒絶による明渡請求をする場合、借主に対して払われることのあるお金。」等と説明されています。しかし貸主が借主に対し、立退料を支払うべき法律的な根拠はありません。 ○貸主が更新を拒絶して賃貸借契約の終了を主張する場合、更新拒絶の正当事由が必要であり、この正当理由を補完する事情として立退料の支払呈示があります。しかし立退料支払呈示なければ正当事由が成立しないとは限りません。 ○更新拒絶或いは債務不履行理由での契約解除による契約終了を主張して明渡を求めても、相手が更新拒絶正当事由がない或いは契約解除事由がない等と終了を争った場合、最終的には訴えを出して明渡を命ずる判決を取らざるを得ません。 ○訴えを出す余裕がなく、また訴えを出しても判決が出るまでの時間的余裕がない等、貸主が早期明渡実現を迫られている場合は、貸主の立場は弱くなります。そこで早期明渡を実現するためには、立退料という和解金を支払わざるを得なくなります。 ○このように立退料とは、早く賃貸借を終了させて明渡を実現させるための一種の和解金であり、その金額は明渡を求めるときの貸主と借主の力関係によって決まるものです。ですから、いくら事前に立退料は一切支払わないとの条項を契約書に記載していたとしても、殆ど効力がありません。 以上:1,049文字
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