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民法第1030条遺留分権利者に損害を加える認識とは

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平成20年 2月25日(月):初稿
「相続開始1年以上前の相続人への贈与は当然算入」で、民法第1030条で「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。」との規定について、相続人が受けた特別受益となる贈与については、民法第1044条で民法903条を準用して裁判実務では、「加害の認識」の有無に拘わらず当然に算入されるとして運用されていることを説明しました。

○今回は、相続人以外の第3者になされた生前贈与について考えます。先ず相続開始前1年間になされた贈与は当然に算入されます。相続開始前1年間になされたとは、贈与契約自体が1年間になされたということで、契約自体が1年前になされ、その履行が1年間になされても、ここには含まれません。また停止条件付贈与契約が1年前になされ、条件成就が1年以内に生じてもここには含まれません。

○次に「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って」の意味ですが、判例は当初「加害の意思」が必要としていましたが、その後「加害の認識」で足りるしています(大審院昭和16年6月17日)。「加害の認識」とは、遺留分権利者に損害を加えることの認識、すなわち遺留分権利者に損害を加えるべき事実を知っていることで足り、法律の知不知や、誰が遺留分権利者であるかについての認識も不要とされています。

○但し、「加害の認識」を認定するためには、贈与当時に遺留分を侵害することを知っていただけでは足りず、「将来においても自己の財産が増加しないことの予見」の元で贈与がなされたことを必要とするのが判例です(予見必要説。大審院昭和11年6月17日)。この立場について、将来の財産変動の予見まで必要とするのは厳格すぎて1年前の贈与を加算することが現実に不可能になるとの批判があります。

○この将来の財産変動予見必要説の立場では、贈与の時期が過去にさかのぼる程に、「財将来においても自己の財産が増加しないことの予見」がなかったと判断されます。従って相続開始の10年以上前にさかのぼる贈与は、「加害の認識」があったと認識されることは、例えば被相続人が重病を患い活動が出来ず収入が全くなかった等の特別の事情がないと先ず無理と思われます。

○この「加害の認識」についての主張・立証責任は、遺留分減殺請求権者が負いますが(大審院昭和10年11月29日)、贈与当時に遺留分を侵害することを知っていただけでは足りず、「将来においても自己の財産が増加しないことの予見」についての具体的主張も必要になり、贈与が過去に溯る程にその主張が結構大変と思われます。
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