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平成20年 2月26日(火):初稿 |
○スウェーデン新婚姻法と日本民法親族法の比較を続けます。 婚姻して夫婦となった場合の夫婦間の基本的義務についてスウェーデン新婚姻法は、第1章婚姻(Aktenskap)の第2条で、「夫婦は、お互いに信頼と尊重(trohet och hansyn)を旨とし、協同して家と子供(hem och barn)を守り、話し合いによって(i samrad)、家族のために最善(familjens basta)を尽くさなければならない。」と定めます。 ○これに対し日本民法親族法では第752条(同居、協力及び扶助の義務)で、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定めています。日本民法親族法では、同居・協力・扶助と3つの義務を端的・抽象的に述べていますが、スウェーデン新婚姻法では、「信頼と尊重(trohet och hansyn)を旨とし、協同して家と子供(hem och barn)を守り、話し合いによって(i samrad)、家族のために最善(familjens basta)を尽く」すとより具体的に定められています。 ○日本民法親族法では第752条の同居義務と第770条(裁判上の離婚)「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。1.配偶者に不貞な行為があったとき。」と相俟って婚姻によって夫婦間に貞操義務が生じると解釈されています。婚姻は夫婦の精神的・肉体的・経済的結合であり、貞操義務も婚姻の本質的義務の一つとされ、逆に言えば夫婦の一方が正当事由なく性関係を拒むことも夫婦の本質的義務違反として離婚理由になると解されています。端的に言えば夫婦となったらお互いとしか性関係を持ってはならずまたお互いに性関係をもつ義務があると言うことです。 ○夫婦となっても性関係が生じなかったために離婚に至った事案で、妻が性交渉を拒否し続けたことについての夫の慰謝料請求として金150万円が認められた例(岡山地津山支部平成3年3月29日判時1410号100頁)、夫が性交渉を持たないことに納得の行く説明が出来なかったことで妻に対し慰謝料500万円を支払えと命じられた例(京都地判平成2年6月14日判時1372号123頁)があります。同じ性関係拒否による離婚で夫が拒否した場合の方が慰謝料が高いのが興味あるところです。 ○スウェーデン新婚姻法での離婚は第5章に規定されていますが、日本民法親族法の第770条のような離婚理由について「不貞行為」、「悪意の遺棄」等の具体例の記載は見あたりません。スウェーデン新婚姻法第5章第4条に「夫婦の別居期間が2年以上継続している場合、夫婦は、考慮期間を置かないで、直ちに離婚の権利を取得する」と規定されており、2年以上別居すれば自動的に離婚出来るようで、具体的な離婚理由の規定は必要なさそうです。 ○「不貞行為」による離婚の規定がないスウェーデン新婚姻法での貞操義務は如何に解釈されているか興味深いところですが、「家族のために最善(familjens basta)を尽く」す義務があり、ここに貞操義務が含まれるのかも知れません。 以上:1,281文字
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