平成19年 5月25日(金):初稿 |
○「遺産を売却して売却金を分配せよとの遺言執行は?」で「次の不動産は、これを売却して、売却代金から諸経費を差し引いた残金額を、Bに4分の3、Cに4分の1の割合で相続させる。この売却、売却代金の分配等の手続は遺言執行者Eが行う。」との遺言例(清算型処分)について、この遺言に従って遺言執行者EがFに売却処分してもその移転登記が出来ないと記載しました。 ○しかしこの見解は誤りでしたのでお詫び申し上げ訂正いたします。この点について知り合いの数名の司法書士に確認したところいずれも遺言執行者E単独での相続登記及び売買による移転登記は出来ないであろうとの回答でした。また複数の公証人に確認しても同様でした。 ○しかし遺言執行者に売却権限を与えても肝心の登記が出来ないのは、何のための遺言か判らず、本当に出来ないかどうか、登記先例・通達集等で確認して頂きたいと司法書士に依頼していたところ、今般、ある司法書士から登記研究417-63号63頁に以下の記載があることを発見して報告頂きましたので以下に紹介します。 ○<弁護士法第23条の2に基づく照会について> ドイツ連邦共和国人である被相続人の日本にある相続不動産を、遺言執行人が売却処分し、その売却金を受贈者に分配しようとする場合、右不動産についての登記手続について (昭和51年9月9日付け東照第1000号東京弁護士会長照会、昭和52年2月4日付け法務省民3第773号民事局第3課長回答) 【要旨】 ドイツ連邦共和国(西独)人である被相続人の日本にある相続不動産を、遺言執行人が売却処分しその売却金を受贈者に分配しようとする場合、右不動産についてその名義を買主名義にするためには、遺言執行人の単独申請により被相続人名義から相続人名義に相続登記をしたうえ、遺言執行人と買主との共同申請により相続人名義から買主名義に移転登記すべきである。なお、右各登記の申請書には、遺言執行人であること及び遺言執行人が売却処分をする権限を有することを証する書面を添付する必要がある。 ○この事案では遺言執行人が管理する遺産である不動産を売却し、その所有権移転登記について東京法務局港出張所に問い合わせしたところ、担当官は、遺言執行人が移転登記申請の当事者になることは認められないとの見解で、種々資料を提供して説明してもダメだとなって法務省に照会した結果の回答でした。 ○この遺言執行者による登記について明確な解説文献が見つからず、例えば第一東京弁護士会発行「遺言執行の法律と実務」旧版171頁以下には、清水勲・遺贈の登記をめぐる若干の問題点・不動産登記制度と実務上の諸問題下451頁との文献を記載して、可能としていたものが、新版162頁には根拠の記載がなくなり、登記が可能かどうかについては記載が曖昧になっていました。 ○私の長年の疑問が上記昭和52年2月4日付け法務省民3第773号民事局第3課長回答によって氷解しました。現在仙台法務局にこの回答が現在も維持されているかどうかの確認をしているところです。 ※と記載したまま、この確認を失念していましたが、平成24年3月現在もこの取扱は維持されていることを、仙台法務局関係者から確認出来ました。 以上:1,315文字
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