平成18年 3月25日(土):初稿 |
○民法877条1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」として、夫婦間以外の当然の扶養義務者の範囲を「直系血族及び兄弟姉妹」と規定しています。民法730条では「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」と規定されていますが、これは道徳的義務を課したもので法的には無意味という考えが一般的でした。この見解については、「民法730条直系血族・同居の親族の間の扶け合いの意義?」以下に説明を加えておりますのでご参照下さい。 ○扶養は先ず未成熟子扶養があります。未成熟子扶養は、民法877条によって自ら権利者として扶養義務者である父母に扶養請求が出来ますが、普通は民法766条によって監護者たる父母が(普通は母)が権利者(申立人)として非監護者たる父母(普通は父)に請求します。しかしいずれにしても権利が帰属するのは未成熟子であり、親同士が養育費を請求しないと合意しても子は後になって自ら扶養請求が出来ます。 ○未成熟子扶養義務の内容は、生活保持義務として「自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務」であり、「自分の生活を犠牲にしない限度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務」である「生活扶助義務」よりずっとレベルが高いものです。 ○扶養義務は扶養権利者である未成熟子が扶養必要状態になり且つ扶養義務者である父母が扶養可能状態であれば当然に発生しますので、未成熟子は出生と同時に扶養必要状態ですから、父母が扶養可能状態である限り発生します。扶養義務の終期は、未成熟子が自ら生活能力(収入)を獲得し扶養必要状態を脱出したときで、学校を卒業して就職し自らの生活が可能な収入を得ることが出来るようになったときです。 ○成年に達しても大学卒業まで扶養義務があるかどうかは考え方が分かれるところですが、私自身は認めて然るべきではと思っており、「4年制大学に進学し、成人に達した子に対する親からの学費等の扶養の要否は、当該子の学業継続に関する諸般の事情を考慮した上で判断するべきであって、当該子が成人に達しかつ健康であることをもって直ちに当該子が要扶養状態にないと判断することは相当でない」とした判例(H12.12.5東京高裁決定判タ臨増1096号94頁)もあります。 ○また「抗告人は、親が財産がないのに、子が大学に入学して、親に扶養料を払えというのは不当であると主張するが、子が大学に入学することの可否は、子を本位とし、その才能や福祉を中心として定めるべく、また、その場合、子の教育費を親が支払うべきか否かは、親の扶養能力の有無によつて決すべきことであつて、親の扶養の能否によつて子の進学の可否を決すべきものではない。」との判例(S35.9.15東京高裁決定家月13巻9号53頁)もあり、私も全く同感です。この判例の「親の扶養の能否」と言う用例は誤りのような気もしますが。 以上:1,200文字
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