平成23年 7月19日(火):初稿 |
○「扶養義務の基礎の基礎-未成熟子扶養の程度特に終期」に「民法730条では『直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。』と規定されていますが、これは道徳的義務を課したもので法的には無意味という考えが一般的です。」と記載していましたが、この記述について以下の感想・意見メールを頂き、一瞬、焦りました(^^;)。冒頭の第2文○当HP、平成23年7月18日時点で、全2989頁にも及びまもなく3000頁になろうとしており、後で読み返してみて、あれ、オレはこんな文章を書いていたのかと、自分が書いた文章の内容をスッカリ忘れているものも多々あります。このお叱りの文面を見ても、こんな文章、何を根拠に書いたのかと我ながら疑問に思ってしまいました(^^;)。 ○上記厳しいご意見メールを送られた方は、民法第730条での直系血族・同居の親族の扶助義務・扶養義務を強調され、「法的には無意味」なんて解釈は、「思いやりの精神を欠落してしまっている人」であると厳しく叱責されており、私も,一瞬、ご意見ごもっともと感じ、なんでオレはこんな文章を書いたのかと,一瞬、焦ったわけです(^^;)。 ○そこで改めて文献を調べてみると、以下の民法第877条との関係が問題でした。 第877条(扶養義務者) 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。 戦後貴族院議員として憲法改正に伴なう家族法大改正の立案担当者の一人であった我妻栄大先生が編集した戦後における民法改正の経過126頁以下には、民法730条と877条の関係について、民法第730条の制定経緯は、戦後、旧法上の「家」制度の存置論者である守旧派に対して、改革派が「家」制度の廃止と引換に妥協する形で設けることを余儀なくされたと解説されています。 ○そこで、制定当初から民法第730条に実質的意味を持たせることは、封建的家族制度に逆戻りすることになりかねないとの強い懸念から「無用、不当の規定という他はない」として条文としての存在意義を認めない見解(中川善之助監修・註解親族法35頁以下)、立法論では削除を主張する見解が圧倒的多数を占め(青山・家族Ⅰ240頁以下)、そのため民法第730条は道徳的な義務を課したものに過ぎないとの見解が一般的であったと解説されています。 ○このように制定経緯から、民法第730条は、道徳的義務を定めたに過ぎないとの見解が「一般的であった」のですが、その後、様子が変わってきたようです。 以上:1,516文字
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