令和 6年10月24日(木):初稿 |
○「森永卓郎氏著”書いてはいけない”ザイム真理教統一教会との比較紹介」の末尾に「上記記述について財務省の反論を聞いてみたいモノですが、おそらくとんでもない陰謀論で相手にする価値もないというところでしょうか。」と記載していましたが、ネット検索していると東京財団政策研究所研究主幹森信茂樹氏の「ザイム真理教とイソップ物語」と言う論文が見つかりましたので紹介します。 ○「このような意図的で悪意ある風説に、財務省は政府という立場上、正面切った反論ができない。」とのことですが、立憲民主党の米山隆市氏は「「ザイム真理教」などと言う陰謀論は、非論理的でエビデンスもなければ文献もない、実務担当者の誰も信じていない、それこそ少々どうかと思う主張です。」と切って捨てています。 ******************************************* 「ザイム真理教とイソップ物語」 東京財団政策研究所 研究主幹 森信茂樹 SNSでは、財務省悪玉論や陰謀論が飛び交っている。「財政再建だけしか考えないので、経済はいつまでたってもデフレから脱却できない」「意にそわない政権には従わず、倒閣運動までする」などなど。 これに輪をかけたのが安倍回顧録だ。消費増税を巡るやり取りで、「財務官僚は、安倍政権批判を展開し私を引きずり下ろそうと画策した」「彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない」「国が滅びても、財政規律が保たれていれば満足なのです」と記されている。 最近では、「ザイム真理教」(森永卓郎著)なる本が書店に山積みになっている。「財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している。財政緊縮の教義を守る限り、日本経済は転落を続け国民生活は貧困化し、日本だけ経済成長できない」と説く。 このような意図的で悪意ある風説に、財務省は政府という立場上、正面切った反論ができない。そこで筆者なりの見解を述べてみたい。 まず、「財務省は一国の経済運営より財政再建を重要視する」という批判について。「経済がこけたら財政再建もこけてしまう」というのは誰でもわかる自明の理で、入省後研修で大学院レベルの経済学を履修する財務官僚でこれを信じる者は見たことがない。「経済がこける」といっては需給ギャップを埋める規模の追加経済対策を引きだしてきた政治家や民間エコノミストの方が問題だろう。常にカンフル剤を期待する依存症の経済体質が、わが国の潜在成長力の低下につながった。 問題は、なぜこのような批判が出るのだろうかということである。筆者は、社会保障・税一体改革、消費増税のスキームに問題があったと考えている。2012年2月17日に閣議決定された社会保障・税一体改革大綱は、「社会保障の機能強化・機能維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す」として、消費税10%への引き上げを決めた。増税分5%の使途は、社会保障の安定化(後代への負担の付け回しの軽減、年金国庫負担2分の1引上げ財源、税率引上げに伴う社会保障支出等の増)に4%、社会保障の充実に1%となった。 国民側から見ると、5%も消費増税しておいて、社会保障の充実に使われる分はわずか1%ということになる。残りは赤字国債でファイナンスしている社会保障費を税財源に置き換える財政再建のためということになる。財務省の中にも、このスキームはやりすぎという批判があった。安倍元首相は直感的にこのことに気が付き、10%への引き上げ時に使途を変更して、少子化対策にも活用できるようにした。 筆者は、消費増税を行っても、増収分をすべて少子化対策やほころびの生じている社会保障の充実に使うなら、経済効果はニュートラル、いや消費性向の高い者への再分配なので、プラスだと考えている。まずは国民の将来不安を軽減させるための負担増、不安が減少し経済が好転する中で財政再建という道筋を、財務省が国民や政治家に明確に提示できていないことが今日の誤解を生んだといえよう。 今年は、金融正常化の年だ。金利上昇により政府の国債利払い費は毎年増えていく。1%上昇すれば2年後に2兆円の国債費の増につながり、それを賄うためにさらなる新規国債発行という悪循環に陥る。金融正常化をスムーズに進めていくには、財政健全化の道筋に政権が強くコミットすることが必須となる。財務省は、国民への十分な説明をしつつ、市場の信頼を損なうことのない財政政策を進めていってほしい。 筆者は30年近く、放漫財政は金利の急騰を招きインフレに火が付く、と言ってきたがそんな事態は生じないので「オオカミ少年(中年)」と揶揄されてきた。改めてイソップ童話を読み返すと、最後にオオカミは来た!のである。 ******************************************* 米山 隆一@RyuichiYoneyama 「ザイム真理教」などと言う陰謀論は、非論理的でエビデンスもなければ文献もない、実務担当者の誰も信じていない、それこそ少々どうかと思う主張です。日本は30年と言うか殆ど50年放漫財政で、緊縮財政だった事はありません。学会の方々がこういう主張をしている限り、現状が変わる事はありません。 以上:2,135文字
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