令和 2年10月 8日(木):初稿 |
○「米大統領選オクトーバー・サプライズ-トランプ大統領感染」を続けます。 令和2年10月8日早朝の時点での、トランプ大統領に関する報道では、ニューズウィーク日本版「トランプの病状は数日内に急変する可能性がある」があり、「入院3日でホワイトハウスに戻り、元気な姿をアピールするトランプだが、新型コロナが重症化するのはこれからだ」と始まっています。 ○世界中が注目するトランプ大統領の動向ですが、「『インフルより致死率低い』コロナでトランプ氏投稿…リスク軽視でツイッター警告、FBは削除」によると、トランプ氏の新型コロナを巡る経済活動の制限などに異議を唱えた記事について、米ツイッター社は6日、「不正確かつ危険を招きかねない情報だ」として投稿に警告を付ける措置を取ったとのことです。 ○しかし、以下の「『トランプコロナ感染』は想定内、これから起きる大混乱のシナリオとは」の末尾、「選挙戦終盤で劣勢に追い込まれたトランプが感染を装って国民の同情を得るとともにコロナに勝った英雄のイメージを支持者に植え付けて、土壇場の一発逆転を狙う作戦」に最も興味を感じました(^^;)。 ******************************************* 「トランプコロナ感染」は想定内、これから起きる大混乱のシナリオとは 2020.10.7 4:45蟹瀬誠一:国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 大統領のコロナ感染というオクトーバーサプライズ アメリカ大統領選には「オクトーバー(10月)サプライズ」がつきものだが、今年は半ば予想できた“サプライズ”が起きた。トランプ大統領の新型コロナ感染である。 11月3日の投票日を目前に新型コロナ感染が判明したトランプは10月2日、首都ワシントン郊外の陸軍病院に入院した。一晩で高熱が出るなど症状が悪化したため自主隔離していたホワイトハウスから緊急入院したとのことだ。 重症化しやすい74歳という高齢で不健康なファストフードの食生活であの肥満体形。そのうえ虚勢を張ってマスクもせずに集会で大声を張り上げていたのだから感染して当たり前といえば当たり前なのだが、なにしろ事は世界最強のアメリカ大統領のことである。しかもホワイトハウス内で集団感染が発生している。そのショックは大きい。 週明けのニューヨーク株式市場は急落。フロリダ州で予定されていた選挙集会や支持者集会は中止か延期。今月15日に予定されている2回目の大統領候補討論会に出席できるかどうかも容体次第だ。 だが、歴代最高齢で大統領就任した初日から虚言、暴言、妄言を連発し裁判所から命令されても納税記録を開示しない大統領だけに、医師団が発表する病状が本当かどうかは疑わしい。 大統領の脅しを恐れた専属医が回復に楽観的な発表をした直後、側近が「過去24時間の大統領の病状は気がかりな状況で、次の48時間がクリティカル(極めて重要)になる」と記者に漏らした。これにトランプは激怒したという。 よほど焦ったのだろう。すぐさま、入院中にもかかわらず「ビースト(野獣)」と呼ばれる大統領専用車に乗り込んで短時間ながら後部座席から支持者の前で手を振って見せた。直前にツイッターで「サプライズ」を予告してちゃっかり人集め、テレビメディアをわしづかみにしている。このあたりがトランプのダークサイドスキルである。 大統領命令とはいえ、密閉された車内に同乗させられたシークレットサービス(大統領警護官)は災難としか言いようがない。一応医療用ガウンやマスク、フェイスシールドは身に着けていたが。医学専門家はトランプの行動を「驚くほど無責任」とテレビ番組で非難した。 副大統領も職務執行不能なら与野党間で法廷闘争の可能性 「俺はとっても気分がいい。間もなく選挙キャンペーンに戻る!」「コロナなんか怖がるな!」 そうツイートして入院から3日後の5日夕刻、マスク姿でトランプは病院から歩いて現れ大統領専用ヘリコプターに乗り込んだ。ホワイトハウスに戻るとバルコニーでマスクを取り、敬礼するマスコミに取材させた。 「まるでリアリティショーを見ているようだ」とCNNは伝えている。コロナに打ち勝った強い男のイメージを演出したかったのだろうが、ウイルスをまき散らしているのだから周囲の人々にとっては危険極まりない。 専属医によれば大統領は回復しているが、まだ危機を脱していないという。米テレビメデイアはステロイド等の投薬によって一時的に躁の状態になっているのではないかと指摘し、国民を危機にさらしていると非難した。ホワイトハウス内ではさらに感染が拡大するのではないか。 それでは、もしトランプの病状が悪化して執務ができなくなったらどうするのか。 その場合は、合衆国憲法修正第25条第3項の定めにより、ペンス副大統領が一時的に大統領代行となり、トランプは回復した後に大統領に戻ることができる。 ただし第4項2号では副大統領と閣僚の過半数が何らかの理由で大統領を不適格と判断した場合は、上下両院の3分の2の同意を得て、副大統領が大統領代行を続けられるとしている。あまりにもおバカで手のつけられない大統領が登場したときにお払い箱にするための先人の知恵だ。 別の言い方をすれば、副大統領による「合法的クーデター」である。2017年には常軌を逸した言動のトランプに対して、弾劾よりも手っ取り早いこの手段を発動すべきだとの声が上がったが実現しなかった。ペンス副大統領がトランプと同じ価値観の持ち主だったからだ。 万が一、そのペンス副大統領も職務執行できなくなった場合には、大統領継承法に基づき、下院議場が大統領代行となるが、現在は野党民主党のペロシ下院議長となるだけに与野党間で法廷闘争勃発の可能性がある。 米大統領選の歴史で まれに見る大混乱の恐れ そんな中、驚愕のオクトーバーサプライズがあるとドキュメンタリー映画監督で辛辣な大統領批判を続けるマイケル・ムーアが主張している。なんとトランプの新型コロナウイルス感染そのものがフェイク(でっち上げ)だというのだ。 選挙戦終盤で劣勢に追い込まれたトランプが感染を装って国民の同情を得るとともにコロナに勝った英雄のイメージを支持者に植え付けて、土壇場の一発逆転を狙う作戦に出たというのである。 「トランプについてはひとつの絶対的真実がある。あいつは一貫して、絶対的に、容赦のない、恐れを知らない、プロの嘘つきだということだ。連続嘘つき魔だ」とムーア監督はいう。 にわかには信じがたい陰謀論のレベルだが、そんなこともやりかねないと疑ってしまうほどトランプのダークサイドスキルは悪辣なのだ。 今年の大統領選挙はアメリカ史上まれに見る大混乱になることはまず間違いない。11月3日に次の大統領はすんなりと決まらないだろう。 以上:2,774文字
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