平成22年 7月 3日(土):初稿 |
○「小泉劇場大盛況最大功労者亀井静香氏」で、「もう一人重要な小泉劇場立役者には、参議院否決直前に小泉氏と差しで対談し、解散断行を思い留めさせようとした森氏がいます。『(郵政民営化)のためなら俺は殺されてもよい』と言う言葉を引き出し、マスコミに発表して大々的に報道させて解散前小泉劇場の最良のお膳立てをしてくれました。」と記載し、これを「小泉・森両氏の出来レース」とする説もあると紹介していました。 ○NHKスペシャル「証言ドキュメント永田町権力の興亡1993-2009」には、この時の状況について、森氏の肉声として次のように紹介されています。 森:あれ、私は公邸の中で、もう本当に小泉さんと激しくやり合ったんですよ。あそこで本当に「殺したけりゃ殺せ」とまで言われたんですから。「俺はお前に殺されてもやるからな」っていうことで、それくらいすごかった。私はそのメッセージをなんとかしないと、と。亀井(静香)さんたちは、「そんなもん解散なんかできるもんか、参議院でぶっつぶせばこれで終わりだ。もうこれで勝った」って言って、怪気炎あげて酒飲んでいましたよ。私が電話をかけて「ちょっと俺の話を聞け」って言っても、「もういい、もういい、もう終わった、終わった、これで小泉は終わりだ、ヤー」って大騒ぎして酒飲んでいる、その音まで聞こえましたけれど。結局それを、そんなことじゃないよと、総理は本気で解散やるぞということを周囲に見せようと思ってあれやっていたんですよ。○この森氏の肉声では、森氏は本気で小泉氏の解散断行を止めさせようとしていたことは判ります。森氏の主観では、小泉氏の解散断行を諦めさせようと本気で声を荒げて迫り、大声で怒鳴り合う程の遣り取りがあったのかも知れません。彼は、小泉氏の郵政改革にかける命をかけた執念を感じ、甘く考えている亀井氏に忠告をするつもりで、小泉氏の「(郵政民営化)のためなら俺は殺されてもよい」と言う言葉を引き出し、マスコミに発表して大々的に報道させました。 ○ひょっとして小泉氏に抵抗して叩いたつもりだったのでしょうが、結果として、彼の決断に駄目押しを与え、マスコミに大々的に発表されることで、小泉氏は更に意を強くして、郵政民営化解散を断行しました。ただまっしぐらに自己の信念を貫く政治家の意気込みに、圧倒され、感動した多くの国民は、郵政民営化の意味は良く判らないが、兎に角、小泉氏は凄いと、拍手喝采し、小泉旋風が巻き上がり、小泉自民党が圧勝しました。 ○結果として、森氏の解散断行直前の小泉氏への言動は、小泉氏を大いに力づけ、正にさすったのでした。「まあ、しかし、同じ仲間であるし」との森氏の言葉は、小泉氏をさすったことを認めているようにも思えます。肝心の小泉氏の肉声は、インタビューには応じないとのことで、この本には殆ど出て来ません。この辺が、非情の政治家と言われる所以かも知れません。 以上:1,299文字
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