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平成 6年 9月22日(木):初稿 平成17年 1月 8日(土):更新 |
2.収 入 関 係 ⅰ) 算定基礎収入の原則は? 休業損害・逸失利益算定の基礎収入は、原則として事故直前の現実の収入が基準となります。 給与所得者は事故直前の給与額、事業所得者は原則として申告所得額です。 事業所得者の休業損害については、申告所得に加えて家賃、従業員給料など事業維持に必要な固定費に限り損害と認められます。 ⅱ) 逸失利益とは? 逸失利益とは後遺障害による労働能力の低下や、死亡の場合に労働能力の低下や死亡しなかった場合に将来得るはずだった収入のことを言います。将来の分を先取りするので年5%の割合で中間利息を控除します。計算式は新ホフマン方式とライプニッツ方式とがあります。 就労期間は原則として67歳までとされております。高齢者については平成2年簡易生命表の余命年数の2分の1とされています。 自賠責保険の基準による各年齡別の労働能力喪失期間とそれに対応する新ホフマン係数とライプニッツ係数は次表のとおりです。 ⅲ) 事業所得者で申告所得額が実収入より少ないときは? 専業主婦の場合は全女性の平均賃金、又兼業主婦の場合は平均賃金と業務賃金のいずれか高い方が認められます。 ⅳ) 無職者の場合は? 無職者は原則として休業損害は認められません。しかし、後遺障害や死亡の逸失利益については、失業者は原則として失業前の賃金、無職の老人は就労の可能性が高いときは年齡別平均賃金、年金収入は肯否両説があります。 ⅴ) 学生や若年労働者の場合は? 学生(給料の安い若年労働者も含む)の逸失利益については、基礎収入を賃金センサスの全年齢の平均賃金(比較的高い)としライプニッツ係数(比較的小さい)を用いる方式(東京方式)と、被害者の年齢の平均賃金(比較的低い)を基礎収入とし新ホフマン係数(比較的大きい)を用いる方式(大阪方式)があり、判例ではいずれの方式を採用してもよいとされています。 被害者たる学生にとって最も有利な方式は、基礎収入を全年齢の平均賃金として新ホフマン係数を用いるもので、最高裁判所もこの算定方法を不合理とは言えないと認めています(最高裁判所平成2年3月22日判決、同平成2年6月5日判決)。 ⅵ) 社員の休業で会社が受けた損害は? この場合の損害は従業員の直接の損害ではないので間接損害と呼ばれています。間接損害は、原則として損害とは認められません。会社が個人会社で被害者が代表者などの会社と経済的に一体と認められる場合は間接損害も損害と認められる場合もあります。 ⅶ) 後遺障害による逸失利益の算定例 原則として後遺障害等級別の労働能力喪失率に応じた就労可能期間中の逸失利益の請求ができます。但し、後遺障害の内容によっては期間が短縮されることもあります。 例えば、年収500万円の給与所得者A氏が37歳当時(就労可能年数30年、新ホフマン係数18.029)に後遺障害第11級(労働可能喪失率20%)になった場合の逸失利益は、次のとおり約1,800万円となります。 500万円 × 18.029 × 0.2 = 1,802万9000円 (年収) (新ホフマン係数) (喪失率) しかし、その収入が実際には低下しない可能性が強い場合(ex.公務員、NTT社員)は、事故前と後の収入差額をもって損害と考える差額説の立場では逸失利益は認められません。身体に対する侵害すなわち後遺障害自体を損害と考える労働能力喪失説の立場では、この場合でも逸失利益は認められることになりますが、実際、その金額は後遺障害の内容程度、職務内容等を総合考慮して決められ、一概には金額を言えません。 ⅷ) 死亡による逸失利益の算定例 死亡した場合の逸失利益から本人の生活費を控除しなければなりません。その割合は大旨次の通りです。 イ)一家の支柱で被扶養者が1名のとき40%、2名以上のときは30% ロ)女子(女児、主婦を含む)30% ハ)男子単身者(男児を含む)50% ①前述のA氏が37歳で妻と子供2人を残して死亡した場合の逸失利益は次の通り約6,300万円になります。 500万円 × (1-0.3) × 18.029 = 6,310万円 (年収) (生活費控除) (新ホフマン係数) 昇給分や退職金については、そのための規定が明確に整備されている場合は、認められることもあります。 ②18歳の高校生A君が死亡した場合(就労可能年数は49年)の逸失利益は前5の2方式で算定すると次のと通りです。 〈東京方式〉 436万円 × (1-0.5) × 18.169 = 3960万円 (全年齢平均収入) (生活費控除) (ライプニッツ係数) 〈大阪方式〉 217万円 × (1-0.5) × 24.416 = 2,650万円 (18歳平均年収) (生活費控除) (新ホフマン係数) 以上:2,017文字
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