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駐車場内軽微接触事故と傷害について因果関係否認地裁判決紹介

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令和 7年 1月24日(金):初稿
○事故態様が軽微なため事故とその後に生じた傷害について因果関係がないとして自賠責保険の適用が認められない事案でも損害賠償請求をしたいとの相談が良くあります。このような場合、訴訟を提起しても事故との因果関係が認められるのは至難の業で、認められる裁判例は余りありません。このHPでも最近の例としては「事故態様と外傷性他覚所見から傷害と事故の因果関係を否認した地裁判決紹介」で令和4年4月26日大阪地裁判決(自保ジャーナル2139号64頁)を紹介していました。

○同様の事案で、駐車場内に駐車していた50歳代原告乗車中の普通乗用自動車に、同駐車場に駐車しようとした被告運転の普通乗用自動車が接触した事故に関し、原告が、上記事故により負傷して損害を被ったと主張し、被告に対し、民法709条に基づき損害賠償などを求めた令和5年12月13日東京地裁判決(自保ジャーナル2168号135頁)判断部分を紹介します。

○判決は、認定された事実によれば、本件の事故により原告が受けた衝撃は、比較的軽微なものといえるところ、本件の事故により大きな衝撃を受け、事故の翌日から症状が出ていた旨の原告の供述はにわかに信用し難いうえ、外傷性の他覚所見等も見られず、C医師も事故前に同様の症状がなかったとの申告があったことを理由に、原告が本件の事故により受傷したとの判断をしたに過ぎないと考えられることも考慮すると、原告が、本件の事故により受傷したと認めるには足りないとして、請求を棄却しました。事案からはやむを得ない判断です。


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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、169万5746円及びこれに対する令和3年4月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、駐車場内に駐車していた原告乗車中の普通乗用自動車(以下「原告車」という。)に、同駐車場に駐車しようとした被告運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が接触し、原告が負傷して損害を被ったとして、原告が、被告に対し、民法709条に基づき、169万5746円及びこれに対する不法行為の日(本件事故発生日)である令和3年4月5日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠等により認められる事実)

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件事故による原告の受傷の有無)について

 原告は、本件事故により頚椎捻挫の傷害を負った旨主張し、原告もこれに沿う陳述・供述をする。しかしながら、原告の陳述等は信用するに足りず、その主張は採用できない。その理由は、以下のとおりである。

(1)証拠によれば、本件事故は、本件駐車場の駐車区画に駐車していた原告車の左前部バンパーや左前輪に、同駐車場に駐車しようとしていた被告車の左前部バンパーが2回接触した事故であるが(甲2・7、16、17、20頁~、甲3)、事故による損傷としては、原告車及び被告車に左前部バンパーに擦過痕がみられる程度で、原告車の修理代は3万7301円であること(甲2・7、16、17頁、乙8)、衝突の際の被告車の速度は、速くとも時速10km程度であったこと(甲3)、本件事故時、原告は運転席でシートベルトを装着してハンドルを持っていたところ、被告車が最初の衝突をするまでの間、被告車を見ており、衝突時には腕に力を入れたというから、最初の衝突は原告にとって全く不意というわけではないこと(甲23、原告・10、17頁)がそれぞれ認められる。
 これらの事実によれば、本件事故により原告が受けた衝撃は比較的軽微なものと推認され、少なくとも、本件事故により原告が受傷したと考えることが自然であるといえるようなものではなかったといえる。

(2)原告は、事故の当日に痛みを感じることはなかったものの、翌日には左手と背中に痺れを感じたが、事故前から持病で通院していたaクリニックにもともと令和3年4月14日に受診する予定であったことなどから、それまで様子を見ることとした旨述べる(原告・4頁、甲23等)。しかしながら、
〔1〕原告は、同日に同クリニックに受診した際には、手指のこわばりを訴えていることは確認できるものの、他の症状は訴えていない上、本件事故のことも述べておらず(原告・11頁、乙1の1)、同月20日頃に急に胸が痛くなるという症状が出た後にも本件事故のことには言及していない。また、

〔2〕原告は、同クリニックで整形外科の受診を勧められて同月22日に受診したb整形外科では、初診時に本件事故のことに言及していないばかりか、むしろ、同月21日から特に誘因なく症状が出た旨述べている(原告・11頁、乙2の1・1頁)上、その後通院を継続しながらも、同年5月22日になるまで本件事故については言及していないことが認められる(乙2の1・6頁)。さらに、

〔3〕原告は、同年4月23日にf接骨院で施術を受けた際、予診票に、痛みを感じるようになったのが3日前であること、その原因について「10kgくらいのハイチェアを持ち上げて」痛めたなどと記載している(乙6・4頁)。以上のような原告の受診時の言動は、事故により大きな衝撃を受け、事故翌日から症状が出ていたとする者の言動として不自然というほかなく、このことは、原告には過去に交通事故で頚椎捻挫等の傷害を負った経験があること(原告・7、15頁)にも照らすと、なおさらといえる。

 原告は、上記〔1〕〔2〕について、いずれも痛みをどうにかしてほしいということしか考えられなかったと述べるが(原告・12頁)、前記のとおり、原告は、b整形外科で症状の原因に言及している際に本件事故について述べていない。また、〔3〕について、原告は、症状の原因が不明である場合、施術の費用が実費負担になる旨が予診票に記載されていたことから、健康保険が適用されるようにするために思い付きで記載した旨述べる(原告・7、8頁)。

しかし、原告の供述を前提としても、症状の原因として原告が本件事故のことを記載しなかったことには変わりがないところ、事故の際に大きな衝撃を受け、その翌日から症状が生じた旨の原告の供述からすれば、そのことは不自然といえる(なお、同予診票には、原告が指摘する記載の下方に「交通事故等第三者行為による傷害は受付にお申し出ください。」との記載がある。)。

(3)上記のとおり、本件事故により原告が受けた衝撃は、比較的軽微なものといえるところ、本件事故により大きな衝撃を受け、本件事故の翌日から症状が出ていた旨の原告の供述はにわかに信用し難い。そして、外傷性の他覚所見等も見られず、C医師も事故前に同様の症状がなかったとの申告があったことを理由に、原告が本件事故により受傷したとの判断をしたにすぎないと考えられること(甲2・31頁)も考慮すると、原告が、本件事故により受傷したと認めるには足りない。

2 結論
 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第27部
裁判官 佐藤康行
以上:3,048文字

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