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後遺障害等級第11級7号脊柱変形労働能力喪失率20%認定地裁判決紹介4

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令和 5年 4月13日(木):初稿
○「後遺障害等級第11級脊柱変形労働能力喪失率20%を認めた地裁判例紹介」に続いて、自賠責保険で後遺障害等級第11級7号「脊柱に変形を残すもの」との認定を受けた交通事故被害者の労働能力喪失率について判断した裁判例を探しています。「主治医の判断から尊重される」とし、11級脊柱変形が642日後に固定したとし、その間100%休業、固定後67歳まで20%労働能力喪失を認めた平成14年11月27日大阪地裁判決(自動車保険ジャーナル・第1493号)が見つかりましたので、関連部分を紹介します。

○保険会社は、自賠責保険で後遺障害等級第11級7号「脊柱に変形を残すもの」については、労働能力の喪失はないと主張するのが一般で、実際そのような認定の裁判例も散見されますが、本件では、そもそも原告の脊柱変形と本件事故との間には、因果関係がないと主張していました。

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主   文
1 被告らは、連帯して、原告に対し、金2576万3362円及びこれに対する平成10年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告らは、連帯して、原告に対し、金5375万1730円及びこれに対する平成10年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、被告乙山次郎(以下「被告乙山」という。)運転の普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)が原告運転の普通乗用自動車(以下「原告車両」という。)に追突した交通事故(以下「本件事故」という。)につき、原告が、被告乙山に対しては、民法709条に基づき、被告乙山の使用者である被告Y会社(以下「被告会社」という。)に対しては、民法715条に基づき、損害賠償金及びこれに対する不法行為の日からの遅延損害金の支払を求めている事案である。

1 争いのない事実

         (中略)

2 争点
(1) 本件事故と因果関係を有する後遺障害の範囲及びその程度
【原告の主張】
 原告は、本件事故により、上記1の(4)記載の後遺障害を負った。
 そして、同障害は、後遺障害等級7級4号に該当する。仮に、7級4号に該当しないとしても、少なくとも、11級7号に該当する。

【被告らの反論】
ア 原告は、脊柱に変形を残すものとして、後遺障害等級11級7号の認定を受けているが、上記脊柱変形は、直接的には、本件手術(平成11年4月20日実施の第6/第7頸椎の前方固定術)によって生じたものであるところ、本件手術は、本件事故の治療ということはできないものであることから、原告の脊柱変形と本件事故との間には、因果関係がない。

         (中略)

オ 後遺障害逸失利益 3783万7779円
(ア) 原告は、昭和26年8月生まれであるから、症状固定(平成12年10月15日)には49歳であり、就労可能年数は18年(対応するライプニッツ係数は11.69)であって、後遺障害による労働能力喪失率は7級、56%である。
 577万9937円×0.56×11.69=3783万7779円
(イ) 仮に、原告の後遺障害等級が11級であるとしても、その後遺障害逸失利益は1351万3492円となる。
 577万9937円×0.2×11.69=1351万3492円

         (中略)

第三 当裁判所の判断
1 事実経過


         (中略)

2 争点(1)(本件事故と因果関係を有する後遺障害の範囲及びその程度)について
(1) 上記1に認定の事実によれば、
①原告は、本件事故によって、第5/第6頸椎、第6/第7頸椎、第7頸椎/第1胸椎の椎間板ヘルニアを発症し、このうち、第6/第7頸椎間については、突出した椎間板を除去し、チタン金属製固定子によって、前方から、第6/第7椎体間を固定する本件手術が必要と判断され、本件手術が実施されたこと、
②原告の頸部の運動制限は、前屈が35度、後屈が40度であり、側屈が左30度、右25度、回旋が左50度、右40度であることから、前後屈の参考可動域角度110度に対して75度、側屈の参考可動域角度100度に対して55度、回旋の参考可動域角度120度に対して90度と、いずれも、参考可動域角度の1/2程度に達しないこと
がそれぞれ認められ、これらの事実によれば、原告の後遺障害は、「頸椎固定手術後の関節可動域の制限が参考正常角度の1/2程度に達しないもの」として、後遺障害等級第11級7号の「脊柱に奇形を残すもの」に該当すると認められる。また、上記1の認定の事実によれば、原告には、本件手術ないしは第5/第6頸椎、第7頸椎/第1胸椎の椎間板ヘルニアによる頸部痛、痺れ感等が認められるが、これらは、その程度から、自動車保険料率算定会の認定と同様、上記第11級7号に含めて評価するのが相当である。

         (中略)

5 争点(4)(損害額)について

         (中略)

エ 休業損害 1048万2770円
(ア) 基礎収入額
 原告の本件事故前年の収入金額は577万9937円であることは、上記第二の1(5)のとおり、各当事者間に争いがない。

(イ) 休業期間
 上記1(2)に認定の事実と証拠(略)によれば、原告は、本件事故までに約25年にわたって内装業に従事しており、本件事故前は、D会社に所属して、内装工事を行っていたが、本件事故後、67日間に及ぶ入院と、週3回の通院に専念するとともに、頸椎部の可動域の制限や握力の低下、後頭部、頸部から背筋にかけての鈍痛ないしは筋緊張、不定期に出現する手の痺れなどによって、内装業を続けることができなくなり、本件事故の翌日である平成10年12月22日から症状固定時である平成12年10月13日までの間(642日間)、全く仕事に従事することができなかったことが認められ、これに反する証拠はない。

 これらの事実によれば、平成10年12月22日から平成12年10月13日までの全期間(642日間)について、休業損害を認めるのが相当である。
 この点被告らは、原告の症状固定時期は平成11年7月20日ころと解されることから、原告の休業相当期間は本件事故日から平成11年7月20日ころまでの7か月間と解するのが相当であると主張するが、原告の症状固定日を平成12年10月13日と解すべきであることは、上記3に判示のとおりであり、かつ、原告の上記症状によれば、内装業に従事することは困難であり、この間(症状固定時まで)においても、原告が他の職を得て収入を得るべきであったとまでは言えないことからすると、上記のとおり、原告の実際の休業期間の全般にわたって休業損害を認めるのが相当である。

(ウ) 算定
 上記ア及びイによれば、原告の得べかりし収入は日額1万5835円(577万9,937円÷365日)と認められることから、平成10年12月22日から平成12年10月13日までの662日間の原告の休業損害額は、次のとおり、1048万2770円と認められる。
 1万5835円×662日=1048万2770円

オ 後遺障害逸失利益 1351万3492円
 上記エ(イ)に認定の原告の職業、後遺障害の部位、程度に加えて、原告本人尋問の結果によれば、症状固定後も、後遺障害のため、原告は週2回程度通院を続け、熟練した内装業の仕事には従事できず、職業安定所で求職活動をするなどしても、パソコン等の技能もないため、すぐには就職できない状況にあることが認められることを勘案すると、上記第二の1(5)に争いのない原告の本件事故前年の収入577万9937円を基礎収入額とし、症状固定日(原告は49歳・(証拠略))からの就労可能年数18年(対応するライプニッツ係数は11.69)にわって、20%の労働能力を喪失したものとして、後遺症逸失利益を認めるのが相当である。
 よって、原告の後遺障害逸失利益は、次のとおり、1351万3492円となる。
 577万9937円×0.2×11.69=1351万3492円
以上:3,407文字

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