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人身傷害保険金充当に関する最高裁判決説明補充

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令和 4年 4月 5日(火):初稿
○「人身傷害保険金一部を被害者過失割合部分充当としない地裁裁判決紹介」に人身傷害保険金の充当方法について、「自己の過失部分を補填する保険金としての人傷保険の意味が無くなります」と記載していた判例として、令和元年8月7日福岡地裁判決(判時2468・2469号合併号113頁)とその控訴審令和2年3月19日福岡高裁判決(判タ1478号52頁)を挙げていました。

○この事案について整理します。
先ず原告の請求です。
原告が平成29年4月25日交通事故によって被った全損害額は418万円(千円以下は切り捨て等で記述しない、以下、同様に金額調整)
既受領額合計198万円(被告側任意保険会社24万円・人身傷害保険会社111万円(※うち83万円自賠責から回収)・自賠責保険会社75万円)
差引後残額は、418万円-198万円=220万円
弁護士費用22万円と確定遅延損害金6万円を加えた248万円の請求


一審令和元年8月7日福岡地裁判決認定
原告全損害額は原告主張418万円ではなく341万円と認定し、さらに30%の過失割合差引341万円×70%=238万円と認定
既受領額は、合計182万円(被告側任意保険会社24万円・人身傷害保険会社83万円・自賠責保険会社75万円)
損益相殺後残金238万円-182万円=56万円
弁護士費用6万円と確定損害金4万円合計10万円を加えた66万円を損害と認定


控訴審令和2年3月19日福岡高裁判決
一審判決を維持して控訴棄却

上告審令和4年3月24日最高裁判決(裁判所ウェブサイト)
最終的に原告全損害額を156万円と認定、うち140万円に対する平成30年5月31日から、うち14万円に対する平成29年4月25日から各支払済みまで年5分の割合による損害金
最高裁判決では、この最終的156万円認定計算過程が示されていませんが、私の推測では
過失相殺前の原告全損害額341万円から既受領額合計182万円を差し引いた159万円
を基本としたと思われます。

最高裁判決は、人傷保険会社が、交通事故被害者に対して自賠責保険による損害賠償額の支払分を含めて一括して支払う旨の合意(「人傷一括払合意」)をした場合でも、人傷保険会社が人身傷害保険金として給付義務を負うとされている金額(111万円)と同額を支払ったにすぎないときには,被害者としては人身傷害保険金のみが支払われたものと理解するのが通常で,そこに自賠責保険による損害賠償額の支払分(83万円)が含まれているとみるのは不自然,不合理で、被害者が人傷保険会社に対して自賠責保険による損害賠償額の支払の受領権限を委任したと解することはできないとしました。

その結果、人傷保険会社が被害者に対して人傷保険金を支払ったことにより自賠責保険による損害賠償額(83万円)の支払がされたことになると解することもできず、加害者への損害賠償請求額から、人傷保険会社の保険金支払により保険代位出来る範囲を超えての自賠責保険金額を控除することはできないとしました。

そこで原告の過失割合30%部分損害額は102万円ですが、人傷保険会社が受領した自賠責保険支払分83万円はこの原告過失部分に対する支払となり、加害者損害賠償金238万円から控除されないことになります。
この人傷保険会社が自賠責から回収した83万円は、その帰属をめぐって加害者側保険会社と争いになる可能性があります。
以上:1,392文字

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