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修正通院期間2ヶ月未満で6ヶ月半通院慰謝料を認めた地裁判決紹介

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令和 3年10月25日(月):初稿
○交通事故での通院慰謝料は、通常は、事故日から症状固定日までの通院期間で機械的に決められます。むち打ち症・打撲傷等他覚所見がない場合、赤本別表Ⅱの基準が使用され、通院1ヶ月で19万円から始まり、通院6ヶ月で89万円とされています。ここでの通院期間は、通院日数頻度が週2回が原則です。通院頻度が、週2回に至らない場合、例えば通院日数の場合、実通院日数×3.5÷30日の計算式で、修正通院期間を算出し、この期間での慰謝料を請求するのが普通です。

○通院期間が、平成29年12月14日から平成30年6月28日までの6ヶ月半でも、その間の実通院日数15日しかない場合は、15日×3.5÷30日=1.75で、通院期間は1.75ヶ月で計算され、1.75ヶ月通院の赤本別表Ⅱ通院慰謝料基準では、25万円程度です。ところが、この事案で、原告が主張した赤本Ⅱでは、通院期間5ヶ月半の基準である83万円の慰謝料請求をそのまま認めた令和2年9月24日大阪地裁判決(自保ジャーナル2083号113頁)関連部分を紹介します。

○原告は,本件事故により頸椎捻挫,右肩打撲傷及び右肩峰骨挫傷の傷害を負い,平成29年12月14日から平成30年6月28日まで(実通院日数15日),c病院にて通院治療を受けたとの事実は争いがありませんが、被告は、本件事故による原告の症状は極めて軽微なものであり,治療に必要な期間はせいぜい平成30年3月末日まで(本件事故日より3ヶ月半)であると主張しています。

○むち打ち症の場合、保険会社は原則3ヶ月で、通院打ち切りを指示し、その後治療費支払を停止する例が、大変、多く、治療を継続したいとの被害者の相談があると、その後は自費治療を継続し、主治医から症状固定の診断が出た後に自費治療分を請求するしかありませんと説明することが頻繁にあります。

○判決は、「原告の傷害の内容及び程度,通院期間,その他本件に顕れた一切の事情に鑑み,標記の金額を相当と認める。」としか説明していないのが残念なところです。しかし、これまで通院実日数が、週2回に及んでいない場合、修正期間を算出して修正期間での基準慰謝料を請求してきましたが、この判決を見て、これからは修正しない実際の通院期間で請求しようかと思っています(^^)。

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主   文
1 被告P2は,原告に対し,234万3900円及びこれに対する平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告は,被告保険会社に対し,40万1760円を支払え。
3 原告及び被告保険会社のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,AB事件ともに,これを20分し,その8を原告の負担,その7を被告P2の負担とし,その余を被告保険会社の負担とする。
5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

1 A事件
 被告P2は,原告に対し,330万2072円及びこれに対する平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 B事件
(1)主位的請求
 原告は,被告保険会社に対し,86万9560円及びこれに対する平成31年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)第1次予備的請求
 原告は,被告保険会社に対し,79万0560円及びこれに対する平成31年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)第2次予備的請求
 原告は,被告保険会社に対し,79万0560円及びこれに対する令和元年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
1 事案の要

(1)A事件
 原告が,同人の運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と被告P2の運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が出合い頭衝突した事故(以下「本件事故」という。)により人的損害及び物的損害を被ったとして,被告P2に対し,民法709条に基づき,330万2,072円及びこれに対する不法行為の日である平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

         (中略)

2 前提事実(争いのない事実又は後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)本件事故の概要
 平成29年12月14日午前2時10分頃,大阪府東大阪市<以下略>先道路上の信号機による交通整理がされている交差点において,青信号により同交差点に進入した原告車と,同車の右方から赤信号を無視して同交差点に進入した被告車が出合い頭衝突した。

(2)責任原因
 被告P2は,信号機による交通整理に従って自動車を運転する義務を怠って本件事故を生じさせたから,同事故により原告に生じた損害を賠償する責任を負う。

(3)通院経過
 原告は,本件事故により頸椎捻挫,右肩打撲傷及び右肩峰骨挫傷の傷害を負い,平成29年12月14日から平成30年6月28日まで(実通院日数15日),c病院にて通院治療を受けた。


         (中略)


第三 争点及び当事者の主張
1 原告の損害額(A事件)

【原告の主張】
(1)人的損害
〔1〕治療費 19万0851円
〔2〕薬剤費(文書料を含む。) 9万2928円
〔3〕通院交通費 900円
〔4〕通院慰謝料 83万円

         (中略)


【被告P2の主張】
(1)人的損害について
 本件事故による原告の症状は極めて軽微なものであり,治療に必要な期間はせいぜい平成30年3月末日まで(本件事故日より3ヶ月半)である。

         (中略)


第四 当裁判所の判断
1 原告の損害額について(A事件)

(1)人的損害の額について
ア 認定事実
 前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の通院経過について,以下のとおりの事実が認められる。
(ア)平成29年12月14日,本件事故直後頃に事故現場に救急車が到着したが,原告は大丈夫であると考えてこれに乗らなかった。

(イ)原告は,その後自宅で安静にしていたが,同日午後5時20分頃,頸部痛,右肩痛が持続するとして,c病院を受診した。同院医師は,受傷より約2週間の通院加療を要する見込みの頸椎捻挫,右肩打撲傷(ただし後遺症,合併症が発生した場合はこの限りでない。)と診断し,痛み止め等を処方した。なお,同日施行されたレントゲン検査において,明らかな骨折は見当たらなかった。

(ウ)同月20日に原告に対して実施された頸椎のMRI検査では,明らかな脊柱化狭窄や脊髄損傷は認められなかった。

(エ)同月29日に原告に対して実施された右肩のMRI検査では,腱板断裂や腱板損傷は認められなかったが,右肩峰に輝度変化が見られ,右肩峰骨挫傷との診断が追加された。

(オ)その後,原告が訴える疼痛に対して痛み止め等の投薬治療がされた後,平成30年4月19日に疼痛の範囲内でのリハビリが指示され,同年5月17日にリハビリ治療が実施された。

(カ)被告保険会社は,同月29日,c病院に対し,原告に関する一括対応を同年6月30日で打ち切る旨通知した。これを受けて,同院医師は,原告に対し,一括対応の終期が変更できなかったのであれば,後遺症診断に向けた手続を進めるよう指示するとともに,引き続き投薬治療を実施した。

(キ)同月28日(終診日),同院医師は,明らかな筋萎縮は見られないが,右肩関節の疼痛と可動域制限が残存しているとして,傷病名を「頸椎捻挫,右肩打撲傷,右肩峰骨挫傷」とする後遺障害診断書を作成した。

(ク)原告は,上記の通院期間中,一貫して右肩の痛みを訴えていた。

イ 治療費 19万0851円
 上記アの診療経過に照らすと,原告は,本件事故の約15時間後には右肩等の痛みを訴えて病院を受診し,平成29年12月29日に右肩峰骨挫傷との診断された後,医師の指示の下に,終診まで投薬治療及びリハビリ治療を受けているのであるから,上記(1)アの通院期間における治療はいずれも本件事故と相当因果関係あるものと認めるのが相当である。

 これに対し,被告は,初診時に加療約2週間との診断がされたことや客観的所見が認められないこと等から,原告の症状は極めて軽微であり,相当な治療期間はせいぜい平成30年3月末までであると主張するが,平成29年12月29日に右肩関節のMRI検査で右肩峰の輝度変化が見られ,初診時にはなかった右肩峰骨挫傷の診断が追加されたことを踏まえない主張であって,採用できない。
 そうすると,本件事故と因果関係のある治療費は,c病院における平成29年12月14日から平成30年6月28日分までの治療に係る19万0,851円と認められる。

ウ 薬剤費 9万2928円
 上記イ同様,平成29年12月14日から平成30年6月28日までの治療に係る薬剤費をもって,本件事故と因果関係のある損害と認める。

エ 通院交通費 900円
 原告の自宅とc病院の往復距離は約4キロメートルであり,実通院日数は15日間であるから,ガソリン代を1キロメートル当たり15円として,標記の金額を相当と認める(4キロメートル×15日×15円)。

オ 通院慰謝料 83万円
 原告の傷害の内容及び程度,通院期間,その他本件に顕れた一切の事情に鑑み,標記の金額を相当と認める。


以上:3,835文字

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