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令和 3年10月26日(火):初稿 |
○「修正通院期間2ヶ月未満で6ヶ月半通院慰謝料を認めた地裁判決紹介」の続きで、同じ令和2年9月24日大阪地裁判決(自保ジャーナル2083号113頁)のうち、原告車が本件事故当時初度登録から約6ヶ月の国産高級車であり、損傷が内部骨格を含む相当部分に及んでいることに照らせば、原告車には基本骨格に係る評価損が発生したものと認め、修理費の約30%である130万円と認めるのが相当とした自動車物損の評価損部分を紹介します。 ○自動車は、交通事故に遭うと事故車として中古車としての格落ち損-評価損が生じ、交通事故被害者はこの評価損の主張をします。しかし、保険会社は、新車に近い高級車でないと、原則として評価損は認めません。大阪地裁判決は、初年度登録から6ヶ月で事故当時時価約567万円の国産高級車で、損傷が内部骨格を含む相当部分に及んでいることを理由に修理費の30%相当額を評価損として認めました。 ******************************************** 主 文 1 被告P2は,原告に対し,234万3900円及びこれに対する平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告は,被告保険会社に対し,40万1760円を支払え。 3 原告及び被告保険会社のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,AB事件ともに,これを20分し,その8を原告の負担,その7を被告P2の負担とし,その余を被告保険会社の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 1 A事件 被告P2は,原告に対し,330万2072円及びこれに対する平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 B事件 (1)主位的請求 原告は,被告保険会社に対し,86万9560円及びこれに対する平成31年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)第1次予備的請求 原告は,被告保険会社に対し,79万0560円及びこれに対する平成31年3月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)第2次予備的請求 原告は,被告保険会社に対し,79万0560円及びこれに対する令和元年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 1 事案の要旨 (1)A事件 原告が,同人の運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と被告P2の運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が出合い頭衝突した事故(以下「本件事故」という。)により人的損害及び物的損害を被ったとして,被告P2に対し,民法709条に基づき,330万2072円及びこれに対する不法行為の日である平成29年12月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (中略) 2 前提事実(争いのない事実又は後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) (1)本件事故の概要 平成29年12月14日午前2時10分頃,大阪府東大阪市<以下略>先道路上の信号機による交通整理がされている交差点において,青信号により同交差点に進入した原告車と,同車の右方から赤信号を無視して同交差点に進入した被告車が出合い頭衝突した。 (2)責任原因 被告P2は,信号機による交通整理に従って自動車を運転する義務を怠って本件事故を生じさせたから,同事故により原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 (中略) 第三 争点及び当事者の主張 1 原告の損害額(A事件) 【原告の主張】 (中略) (2)物的損害 〔1〕評価損 217万1172円 原告車は本件事故時点で登録後約6ヶ月の,e会社の<車名略>(事故当時の時価567万3640円)である。原告車は,本件事故により,バッテリ部分(バッテリトレイ,バッテリランプ等)を含むフロント部分を大破し,内部骨格(左右のフロントサイドメンバ等)やルーフを損傷し,少なくとも434万2345円の修理費用(上記時価額の約8割)を要した。以上によれば,原告車に生じた評価損は上記修理費用の50%である217万1172円を下らない。 被告保険会社は原告は評価損を請求できない旨主張するが,被告保険会社は,本件提起前の交渉段階から令和2年6月29日までの間,この点を一切争わず,むしろ原告に評価損が発生することを前提とした訴訟活動をしてきたのであるから,評価損の帰属者については自白が成立しているし,仮にそうでなくとも,上記主張は訴訟法上の信義則に反する。 なお,原告車の所有権は訴外f会社(以下「f会社」という。)に留保されているが,同社と原告の契約上,原告は原告車の使用保管に関し善管注意義務を負っており,毀損等原状に変更が生じたときは当然に期限の利益を失うとされているほか,f会社が原告車を引き取ったときは訴外一般財団法人日本自動車査定協会による査定(評価損が減額要素となる。)で時価を算出し,時価が残存債務額等を下回るときの差額は原告が支払うこととなるから,結局,原告車に発生した評価損は原告が負担することになる。したがって,原告車に係る評価損の請求権者は原告である。 (中略) 第四 当裁判所の判断 1 原告の損害額について(A事件) (中略) (2)物的損害の額について ア 認定事実(前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (ア)原告は,平成29年5月頃,f会社から原告車(新車)を購入したが,同車の所有権は売買代金の完済までf会社に留保された。 原告車に係る売買契約書には,〔1〕原告はf会社に対し自動車代金等の支払義務を負うこと(売買契約条項2条),〔2〕原告車の所有権は原告が自動車代金等を完済したときに原告に移転すること(同条項4条1項),〔3〕所有権留保期間中,原告は善良な管理者の注意をもって原告車を使用保管し,f会社の承諾がなければ原告車の改造,毀損等原状を変更してはならないこと(同条項5条1項),〔4〕原告は,自動車代金等の支払を怠ったとき又は原告車の改造,毀損等原状の変更をしたとき等は,当然に期限の利益を失い,f会社に対し残存債務及び遅延損害金を直ちに支払うこと(同条項8条1号,3号),〔5〕〔4〕等の事由があるときは,原告はf会社に対し直ちに原告車を引き渡さなければならず,一般財団法人日本自動車査定協会による査定評価額等を残存債務等に充当し,原告は充当後の不足額を支払うこと(充当後に余剰金があるときはf会社が原告に対しこれを返還すること)(同条項10条),〔6〕〔4〕等の事由により契約が解除されたときは,原告はf会社に対し損害賠償金等を支払うが,原告車が返還された場合,上記査定評価額等は上記損害賠償金等に充当すること(同条項12条)等が定められている。なお,一般財団法人日本自動車査定協会の査定では,基本骨格(フレーム)部位に修理歴のある車両には減価が発生することとされている。 (イ)原告車は、初度登録平成29年5月のe会社の<車名略>であり,本件事故当時の走行距離は4040キロメートル,時価は567万3640円であった。 また,原告車は,本件事故によりバッテリ部分(バッテリトレイ,バッテリランプ等)を含むフロント部分が大破し,前部内板骨格部(左右のフロントサイドメンバー,左右のフロントフェンダーエプロン等)まで損傷し,434万2345円の修理費用を要した。 イ 評価損 130万円 上記ア(ア)によれば,原告車の所有権は本件事故時点においてf会社に留保されていたものの,原告とf会社の売買契約上,原告車に基本骨格に係る評価損が生じた場合の同損害は,原告がその後に残債務を完済するか否かを問わず,原告が負担することになると認められる。そうすると,原告とf会社の間では,原告車に生じた評価損を原告に帰属させる黙示の合意があったものと認められるから,本件で原告車に基本骨格に係る評価損が発生した場合,その帰属主体は原告であると認められる。 また,上記ア(イ)のとおり,原告車が本件事故当時初度登録から約6ヶ月の国産高級車であり,損傷が内部骨格を含む相当部分に及んでいることに照らせば,原告車には基本骨格に係る評価損が発生したものと認められる。そして,その損は,上記修理費の約30%である130万円と認めるのが相当である。 以上:3,489文字
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