仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 交通事故 > 交通事故重要判例 >    

自賠責後遺障害非該当について年14%労働能力喪失を認めた地裁判決紹介

   交通事故無料相談ご希望の方は、「交通事故相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 3年 7月 7日(水):初稿
○原告の運転する自動車(原告車両)と被告の運転する自動車(被告車両)が交差点において衝突した事故に関し、原告が、本件事故によって負傷し、後遺障害も残存したとして、被告に対し、民法709条に基づき、3331万円の損害賠償を求めました(自賠責非該当)。

○これに対し、原告は本件事故により右肩腱板損傷の傷害を負い、それが原因となって右肩痛、上肢の筋力低下及び肩関節可動域制限といった後遺症が残存しているところ、その可動域制限の程度(後遺障害診断書によれば、右肩の屈曲の自動値並びに外転の自動値及び他動値はいずれも健側(左肩)の2分の1以下に制限されている。)のほか、上記の後遺症が獣医師としての外科的治療に具体的に支障を生じさせていることや、原告の経営する動物病院の売上を見ても、本件事故後に一般診療に係る分が減少していること(平成26年:2109万7289円、平成27年:1518万4093円、平成28年:1254万5469円、平成29年:1181万3325円)を踏まえると、労働能力喪失率は14%を下らないと認められるとして、2680万円を原告の請求と認めた令和2年5月28日横浜地裁判決(自保ジャーナル2074号33頁)関連部分を紹介します。

○自賠責非該当事案について、被告保険会社が激しく争っているのに、後遺障害を認め14%の労働能力喪失率を認めるのは、極めて珍しい画期的判決です。

*******************************************

主   文
1 被告は,原告に対し,2680万1833円及びこれに対する平成26年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,3331万0838円及びこれに対する平成26年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告の運転する自動車(以下「原告車両」という。)と被告の運転する自動車(以下「被告車両」という。)が交差点において衝突した事故(以下「本件事故」という。)に関し,原告が,本件事故によって負傷し,後遺障害も残存したとして,被告に対し,民法709条に基づき,損害賠償金3331万0838円とこれに対する本件事故日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠から容易に認められる事実)


              (中略)


2 争点及び当事者の主張
 本件の争点は,受傷内容及び後遺障害の有無(争点①)と,損害額(争点②)であり,これらの争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。
(1) 争点①(受傷内容及び後遺障害の有無)について
(原告の主張)
 後遺障害診断書において傷病名とされた右外傷性肩腱板損傷と肩関節唇損傷は,MRI検査や造影剤を用いた検査によって裏付けられたものであるところ,以下の事情ないしは理由によれば,上記の傷害と,それを根拠とする右肩痛,右上肢の筋力低下,肩関節可動域制限といった後遺症は,本件事故によって生じたものということができる。
 ア 本件事故により,原告車両は前方が原型をとどめないほどに大破しており,原告が受けた物理的衝撃は極めて大きかった。


              (中略)


(被告の主張)
 以下の事情ないしは理由によれば,原告が本件事故によって右肩の腱板損傷,関節唇損傷の傷害を負ったとは認められず,右肩痛,右上肢の筋力低下,肩関節可動域制限の症状も本件事故との相当因果関係がない。

ア 本件事故については,車両損傷の程度は大きいが,原告車両は頑丈なポルシェのカイエンであるし,そもそも,原告は右肩を直接打っておらず,右肩の損傷についての受傷機転がない。

イ 原告は,本件事故当日,a病院において,レントゲン検査及びCT検査を受けているが,いずれの画像からも,右肩の腱板損傷,関節唇損傷をうかがわせる所見が認められていない(上腕骨頭が上に位置していると,腱板断裂を示唆する所見とされているが,そのような所見がない。)。そして,原告の右肩に同傷病の画像所見が初めて認められたのは,本件事故から約2年半が経過した後である。


第3 争点に対する判断
1 争点①(受傷内容及び後遺障害の有無)について
 (1) 認定事実



              (中略)


(1) 認定事実
ア 事故態様等

 本件事故は,前記前提事実(1)のとおり,交差点における右折車(原告車両)と対向直進車(被告車両)との衝突事故(いわゆる右直事故)である。本件事故により,原告車両は,前面が原型をとどめないほどに損傷し,その修理費用も946万2690円と見積もられているところ,原告車両はいわゆる左ハンドルであったため,原告(右手はハンドルを握っていた。)は運転席で衝突の衝撃(なお,エアバッグも作動している。)を受けることとなった。(甲3,4,原告本人尋問の結果・16頁)

イ a病院への搬送
 原告は,本件事故当日(平成26年11月16日),a病院に搬送された。同病院では,救急科が対応し,身体所見においては,四肢の各関節の伸展,屈曲に異常はなく,両上肢のしびれや筋力低下も認められず,神経検査である上肢バレー試験も陰性とされた。また,原告が右肩から右前腕にかけての疼痛を訴えたことから,同部位にかかるレントゲン検査とCT検査が実施されたが,明らかな骨傷は観察されなかった。そして,同病院の医師は,右肩関節挫傷,右前腕挫傷,右手関節部挫傷,左手関節部挫傷,頚部挫傷と診断した上で,原告に対し,疼痛が続く場合には近医整形外科を受診するよう説明した。(甲5の1,乙1)

ウ bクリニックへの通院


              (中略)



(3) 検討
ア 本件事故による右肩腱板損傷の受傷の有無について

ア) 原告は,本件事故から約2年が経過した後に実施されたMRI検査と造影検査の結果を踏まえて,c医療センターの医師から右肩腱板損傷との診断を受けているところ(上記(1)認定事実エ(ア)),これが本件事故によるものといえるかが争われている。

イ) そこで検討するに,上記(1)認定事実アのとおり,本件事故により,原告車両は前面が原型をとどめないほどに損傷しており,エアバッグも開いていることから,事故の衝撃は相当なものであったとうかがわれるところ,衝突の際の衝撃がハンドルを握っていた右手を通じて右肩に伝わり,あるいは,エアバックが開いた際の衝撃で右肩を座席シートにぶつけるなどして,右肩に大きな負荷がかかったことは容易に推認でき,本件事故による右肩腱板損傷の受傷機転を想定することができる。

 また,A医師は,上記(1)認定事実ウ(ア)のとおり,初診の際に,原告を裸にした上での視診と触診を行い,棘上筋付着部に強い圧痛を認めたことなどを踏まえて,右肩腱板損傷との診断をしているところ,同診断方法は,腱板損傷の基本的な診断手法に沿うものであり(上記(2)エ),MRIや造影撮影といった精度の高い所見の得られる検査が実施されていないことや,ドロップアームサインの確認をしていないことを踏まえても,その診断に十分な医学的根拠を認めることができる。

 さらに,原告は,上記(1)認定事実ウ(カ)のとおり,本件事故後,腱板損傷の症状(上記(2)ウ)である肩の自発痛や疼痛による動きの悪さをA医師に終始訴えているところ,その通院経過をみると,原告は,上記(1)認定事実ウ(イ)のとおり,平成27年6月9日までは継続的にbクリニックへの通院を続け,翌日から約5か月間の通院中断があるが,上記(1)認定事実ウ(ウ)のとおり,被告の任意保険会社が一括対応を停止した中でA医師から200パーセントの自己負担になるといわれたという事情が影響しているものであって合理的根拠があり,その後,上記(1)認定事実ウ(エ)のとおりbクリニックへの自費での通院を再開するとともに,上記(1)認定事実エ及びオのとおり,症状の改善を求めてc医療センターやd病院への通院も行っており,上記の症状の訴えに沿う通院を続けているといえる。

 以上の事情によれば,原告が本件事故によって右肩の腱板損傷の傷害を負ったものと十分に認め得るところである。

(ウ) これに対し,被告は,本件事故による右肩腱板損傷の受傷を否定する事情として,①本件事故当日のa病院でのレントゲン検査やCT検査の画像において腱板損傷をうかがわせる所見がないこと,②本件事故当日の同病院での所見において,各関節に異常がなく,ドロップアームサインやペインフルアークも確認されていないこと,③本件事故当日に同病院において肩関節を90度挙上する上肢バレー試験を行っていること,④bクリニックの医療記録には,初診日に可動域制限について何らの記載がないこと,⑤平成27年3月3日には右肩関節の可動域が正常まで回復していること,⑥右肩腱板損傷が経年性であることをうかがわせる画像所見があることを主張する。

 しかしながら,①の点は,そもそも腱板損傷の所見はレントゲン検査やCT検査によっては直接に得られないとされているから(上記(2)エ),腱板損傷の発症を否定し得る事情にならない(なお,被告は,腱板が断裂している場合には上腕骨頭が上に位置する所見が得られると主張するが,原告の腱板損傷は不全断裂と考えられるから,そのような所見が得られないからといって腱板損傷が否定されるわけでもない。)。

 次に,②の点については,原告が本件事故当日に搬送されたa病院では救急科が対応しており,応急的な処置や生死に関わるような身体的損傷の有無の確認が中心的に行われる中で,肩関節の具体的な傷病名の診断を目的とした検査や診察まではしていないものと考えられることからすると(証人Aの証言・5,8頁),整形外科的観点から肩関節の異常の有無を確認したかについては疑問があり,ドロップアームサインやペインフルアークについてはその有無の確認自体が行われていないものとうかがわれる。また,③の点についても,上肢バレー試験(上肢を挙上して軽度麻痺による病側上肢の落下を見る神経学的検査・乙5添付の文献)は,救急的観点から数々の検査を行う過程で補助をするなどして腕を挙上させて行った可能性が否定できない。

 さらに,④の点については,たしかに,bクリニックの医療記録には可動域制限に関する記載が乏しいが,そもそも所見をどこまで詳細に医療記録に残すかについては医師によって個性があるところであり,実際に,同クリニックの医療記録(手書き)の内容は極めて簡略なものであることからすると(乙2の1,2の2),本件の場合,可動域についての記載がないことをもって,可動域制限がなかったと推認することもできない。

 続いて,⑤の点については,一般に外傷性の腱板損傷は一度よくなった可動域が再度悪くなることは考えにくいとされていること(上記(2)オ)からすると,平成27年3月3日には右肩関節の可動域が正常まで回復しているという点(上記(1)認定事実ウ(イ))は,本件事故による右肩腱板損傷の発症を否定する強い事情になり得るものであるが,本件の場合,上記(1)認定事実ウ(ウ)のとおり,その後にbクリニックでの治療が約5か月中断したという事情があり,残存する痛みを我慢し続け,あるいは,痛みがある中で稼働を行ったために(なお,治療中断については原告に不合理な事情があったわけではない。),腱板損傷から生ずる疼痛を原因として拘縮肩(あるいは凍結肩)が発症し,再び可動域制限が悪化したものと考えることができる(甲35,証人Aの証言・11頁)。

 そのほか,⑥の点については,原告の右肩の腱板損傷が経年性であることを指摘しているのはそもそも被告側が検討を依頼した医師のみであり,説得力を有するものとはいい難い。

(エ) 以上によれば,本件事故による腱板損傷の発症を認め得る十分な事情がある一方で(上記(イ)),被告が主張する事情はこれを覆すに足りるものとはいえないから(上記(ウ)),原告には,本件事故により,右肩の腱板損傷の傷害が生じたものと認めることができる。

イ 関節唇損傷の発症の有無
 以上に対し,同じく後遺障害診断書にある関節唇損傷については,bクリニックにおいて診断されているわけではなく,A医師の証言においても特に言及がない上に,同傷病の知見に関する証拠も乏しいことから,本件事故による同傷害の受傷はこれを認めることができない。

ウ 後遺障害について
 上記アのとおり,原告は本件事故によって右肩腱板損傷の傷害を負ったと認められ,後遺障害診断書(前記前提事実(4),上記(1)認定事実エ(イ))にある右肩痛,上肢の筋力低下及び肩関節可動域制限といった後遺障害の残存も認めることができる。


              (中略)


オ 休業損害:118万7139円
(ア) 原告は,通院日も含めて本件事故後も動物病院を開院し続けており,通院に要した時間は2,3時間程度であったということ(原告本人尋問の結果・26頁)を踏まえると,通院日(合計67日)につき,50パーセントの休業割合を認めるのが相当である。

(イ) 基礎収入額は,本件事故前年の青色申告(甲17)を前提に,売上金額(4681万1127円)から売上原価(561万6286円)を控除するほか,さらに,本件事故後も動物病院を開院し続けていることから固定経費(合計2826万0168円)も控除することとし,年額1293万4673円(日額3万5437円)とするのが相当である(被告の主張を採用する。)。

(ウ) 計算式
 3万5437円×67日×50%=118万7139円

カ 後遺障害逸失利益:1844万7906円
(ア) 基礎収入
 証拠(甲17)及び弁論の全趣旨によれば,原告の基礎収入額は年額1057万3635円を下らないと認められる。

(イ) 労働能力喪失率
 上記1で検討したとおり,原告は本件事故により右肩腱板損傷の傷害を負い,それが原因となって右肩痛,上肢の筋力低下及び肩関節可動域制限といった後遺症が残存しているところ,その可動域制限の程度(後遺障害診断書によれば,右肩の屈曲の自動値並びに外転の自動値及び他動値はいずれも健側(左肩)の2分の1以下に制限されている。)のほか,上記の後遺症が獣医師としての外科的治療に具体的に支障を生じさせていることや(甲27,原告本人尋問の結果・7頁),原告の経営する動物病院の売上を見ても,本件事故後に一般診療に係る分が減少していること(平成26年:2109万7289円,平成27年:1518万4093円,平成28年:1254万5469円,平成29年:1181万3325円。甲21)を踏まえると,労働能力喪失率は14パーセントを下らないと認められる。

(ウ) 労働能力喪失期間
 症状固定時(47歳)から67歳までの20年間(ライプニッツ係数:12.4622)

(エ) 計算式
 1057万3635円×14%×12.4622=1844万7906円
以上:6,276文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
交通事故無料相談ご希望の方は、「交通事故相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 交通事故 > 交通事故重要判例 > 自賠責後遺障害非該当について年14%労働能力喪失を認めた地裁判決紹介