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男子外貌醜状・脊柱変形等後遺障害に逸失利益を認めた地裁判決紹介

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令和 3年 7月 6日(火):初稿
○自賠責9級外貌醜状同11級脊柱変形等の併合8級後遺障害を残す事故後減収のない59歳男子会社員の後遺障害逸失利益を12年間20%の労働力喪失で認めた平成30年2月23日仙台地裁判決(自保ジャーナル・第2023号)関連部分を紹介します。

○男子の外貌醜状及び脊柱変形との後遺障害は、保険会社は逸失利益を強力に否認します。本件はさらに事故後減収がないので、一層強く逸失利益を否認したと思われます。59歳で労働能力喪失期間を12年間71歳まで認めたもので被害者側には貴重な判例です.

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主   文
1 被告らは、原告に対し、連帯して、1119万8078円及びこれに対する平成27年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加費用を含む。)は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告ら及び補助参加人の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告らは、原告に対し、連帯して、2588万3159円及びこれに対する平成27年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)によって頸椎脱臼骨折等の傷害を負った原告が、被告らに対し、本件事故によって前記傷害等の損害を被ったとして、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条に基づき、損害賠償金及び本件事故日からの遅延損害金の支払を求めた事案である。

         (中略)

(2) 損害及びその額
(原告の主張)


         (中略)


オ 逸失利益 2335万5777円
 原告は、本件事故により、現在も頸椎部に運動障害があり、首を左右に振ったり、振り向いたりする動作に制限があり、首だけでは振り向けないため、身体全体で振り向かざるを得ない。また、両示指のしびれが残存しており、キーボード操作を長く続けることもできない。また、両示指を用いて紙の枚数を判別することも、紙幣を数えることもできない等、事務処理の効率が悪化した。

さらに、額に傷が生じたために、顧客への対応に当たっても傷痕を隠すなどの配慮を要しており、この点でも仕事の能率が低下している。現在までのところ、事故後の減収はないものの、原告の特別の努力及び勤務先の配慮によるものであり、事故の前後で就労状況には違いがあり、歴然とした後遺症による労働能力低下が生じている。原告は、平成29年10月、勤務先から現在の雇用条件での勤務は今後1年限りとする旨の通告を受けたものであって、今後、収入が減少することは確実である。原告は、本件事故により、後遺障害等級併合8級の後遺障害を抱えることになり、その労働能力は45%喪失した。

 原告の後遺障害は、改善傾向にあるとはいい難く、上記労働能力喪失割合について、本件事故の前年である平成26年の年収と同額である585万6000円を基礎収入とし、平均余命までの2分の1の期間である12年間の労働能力喪失が認められるべきであるところ、同期間に対応するライプニッツ係数8.863を乗ずると上記金額となる。

         (中略)


(被告らの認否、主張)
ア 上記原告の主張アないしエは認める。
イ 同オについては両示指のしびれについて5%、喪失期間5年の限度で労働能力が喪失したことは認め、その余は否認する。
 原告の後遺障害は、左前額部の線上痕について9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)、脊柱の障害について11級7号(脊柱に変形を残すもの)に該当し、両示指のシビレ等について14級9号に該当するとされているが、原告は男性であり、外貌醜状による具体的な労働能力の喪失は認められない。また、脊柱変形についても脊椎の運動制限が生じているものではなく、労働能力喪失は否定されるべきである。

第三 争点についての判断

         (中略)

オ 逸失利益 1038万0696円
(ア) 基礎収入

 原告は、症状固定時60歳であり、前記前提事実記載のとおり、本件事故の前年である平成26年の収入は585万6,000円であったから、同金額を基礎収入とみることが相当である。

(イ) 労働能力喪失率及び喪失期間
 前記前提事実記載の原告の後遺障害の内容からすれば、原告は、本件事故により併合8級に相当する後遺障害を負ったと認められる。そして、前記前提事実のとおり、原告には、現在のところ、本件事故後の減収はないものの、原告が保険代理店及び事故査定を業としていることからは、原告の後遺障害は、脊柱変形の症状、神経症状について労働能力に与える影響は否めず、外貌の傷痕等についても接客業務等に負担を生ずることを否定できないから、現時点において減収は生じていないことについて原告の努力による部分も大きいと認められるほか、将来的にも不利益を被るおそれは否定できないものであること及び原告の症状固定時の年齢等に鑑みれば、本件による原告の逸失利益は、労働能力喪失率20%、喪失期間12年(平成27年の60歳〔原告の症状固定時の年齢〕男性の平均余命23.55年の半分)として後遺障害逸失利益を認めるのが相当である。
(計算式)
 585万6000円×0.2×8.8633(12年に相当するライプニッツ係数)=1038万0696円
以上:2,249文字

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