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胸椎圧迫骨折後のRSD発症を否認し脊柱変形のみ認めた地裁判決紹介

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令和 2年10月13日(火):初稿
○自賠責では後遺障害非該当ですが、事故により胸椎圧迫骨折が生じてRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)に罹患したと主張する大変難しい事案を取り扱っています。RSDについては、「RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)の基礎」等相当記述していますが、RSDを認定した裁判例は余りありません。

○RSDの要件である(1)関節拘縮、(2)骨の萎縮、(3)皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)の立証が大変困難なためです。胸椎圧迫骨折について、RSDを否定し、脊柱変形11級後遺障害で労働能力喪失を20%として67歳まで33年間を認定した。平成25年1月28日神戸地裁判決(自保ジャーナル・第1895号)のRSD関連部分を紹介します。

○判決は、障害認定基準では、RSDについて、疼痛のほか、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り、7級、9級、12級に認定するとして、その要件に該当しないとして、RSDを否認しています。

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主   文
1 被告乙山次郎は、原告に対し、3611万2525円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Y共済は、第1項の判決が確定したときは、原告に対し、3611万2525円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

1 被告乙山次郎は、原告に対し、8983万0835円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Y共済は、第1項の判決が確定したときは、原告に対し、8983万0835円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要

         (中略)


第三 争点に対する判断
1 争点(1)(原告の後遺障害の内容、程度等)について

(1) 前提事実に加え、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

         (中略)

(2) では、症状固定時に原告に残存する背部痛は、RSDに由来する後遺障害といえるか。
 RSDは、通常の疼痛とは区別される特殊な性状の疼痛であるが、痛みの程度を客観的にはかるのは困難である。そのため、障害認定基準では、RSDについて、疼痛のほか、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に限り、7級、9級、12級に認定するとされており、自賠責保険における後遺障害等級認定でも、同様の基準により認定がなされている。そこで、原告の背部痛がRSDに由来する後遺障害かどうかを検討するに当たっては、客観的な証拠に基づいて認定することが可能な①ないし③の症状を重視して判断することとする。

 上記認定事実によれば、症状固定時である平成21年9月29日の時点において、原告の胸腰部に可動域制限が認められるから、①関節拘縮があることは窺われる。しかしながら、②骨の萎縮については、平成22年3月16日に丁山医師が作成した「RSD症状についての所見」と題する書面において、軽度の骨萎縮がある旨記載されているものの、戊田医師がいかなる画像に基づき骨萎縮の有無及び程度を判断したのかが明らかではない。

その上、平成20年4月8日から平成22年3月16日までの間、C病院の診療録等に骨萎縮に関する記載は見当たらない。そうすると、同書面の記載のみをもって、原告に骨の萎縮があると認めることはできない。また、③皮膚の変化について、同書面によれば、発赤、蒼白、チアノーゼはないが、皮膚温上昇が認められる旨記載されているものの、サーモグラフィーなどの検査は行われていない。

加えて、RSDの慢性期には、皮膚が蒼白になり、乾燥して皮膚温が低下してくるところ、同書面によっても、原告の皮膚が蒼白であり皮膚温が低下しているとはいえない。そうすると、原告に皮膚の変化を認めることはできない。

以上によれば、原告には、②骨の萎縮、③皮膚の変化が認められない以上、原告の背部痛がRSDに由来する後遺障害であると認めることはできない。

 これに対し、原告は、C病院、D病院、B病院の医師らが原告をRSDと診断していることを理由に、原告の背部痛がRSDに由来するものである旨主張する。しかしながら、C病院の丁山医師は、平成20年4月8日から原告を診察しており、平成21年9月29日には、傷病名を第11胸椎圧迫骨折として、症状固定の診断をしているにもかかわらず、初診から約1年10ヶ月後の平成22年2月18日に「腰痛が強くRSD様病態を呈している」と記載した診断書を初めて作成している。

加えて、前述のとおり、同年3月16日に「RSD症状についての所見」と題する書面を作成するに当たり、サーモグラフィー、発汗テスト、筋電図検査は行われておらず、また、いかなる画像に基づき骨萎縮の有無及び程度を判断したのかも明らかではない。そうすると、丁山医師は、原告の背部痛の訴えが強いことに基づき「RSD様病態を呈している」と診断したものと考えられ、上記①ないし③の症状を考慮した上で、原告の背部痛がRSDに由来すると診断したものとは推認されない。

したがって、丁山医師の診断に基づいて、原告の背部痛がRSDに由来する後遺障害であると認めることはできない。

この点、原告は、RSDが、通常であれば軽快に向かう時期に強烈な疼痛が常時あり、それが治まるどころか時の経過と共に増強していくという経過を辿るので、受傷から相当期間経過後に初めてRSDという診断がなされていても何ら不自然ではない旨主張するが、原告の供述によれば、遅くともD病院を受診した平成21年5月18日の時点で、灼けたもので内臓をえぐられるような痛みを感じていたというのであるから、原告の主張は採用できない。

つぎに、D病院の己川医師は、体幹筋の萎縮、胸~腰椎部の圧迫痛から原告をRSDと診断しているが、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)については何ら言及しておらず、1回の診察で原告をRSDと診断した同医師の診断をもって、原告の背部痛がRSDに由来する後遺障害であると認めることはできない。

さらに、B病院の医師により慢性複雑難治性疼痛との診断がなされているが、同病院には投薬内容の見直しやリハビリを行うことを主目的として入通院していることに加え、診療録には、①関節拘縮、②骨の萎締、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)に関する記載は見当たらず、「CRPS?」と記載されていたり、「CRPSⅡ」との記載が抹消されていることを考慮すると、同病院における慢性複雑難治性疼痛との診断が、RSDと診断したものであるとは考えられず、同医師の診断をもって、原告の背部痛がRSDに由来する後遺障害であると認めることはできない。以上によれば、原告の主張は採用できない。


(3) では、原告の胸腰部の可動域制限について、8級2号(脊柱に運動障害を残すもの)に該当するといえるか。
 障害認定基準によれば、原告の第11胸椎圧迫骨折はエックス線写真により確認できるものであるから、8級2号に該当するには「胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの」の要件を満たす必要がある。胸腰部の参考可動域角度は、前屈45度、後屈30度、右回旋40度、左回旋40度、右側屈50度、左側屈50度であり、同一面にある運動については、両者の可動域角度を合計した値をもって関節可動域の制限の程度を評価する。

また、関節の機能障害は、原則として主要運動の可動域の制限の程度によって評価するところ、胸腰部の主要運動は前屈と後屈であるが、主要運動の可動域制限が参考可動域角度の1/2をわずかに(5度)上回る場合で胸腰部の参考運動が1/2以下に制限されているときは、胸腰部の運動障害があるものと認定される。

そうすると、胸腰部の主要運動である前屈と後屈の合計が37.5度以下に制限されている場合、又は、前屈と後屈の合計が42.5度以下であり、かつ、参考運動である左右回旋の合計が40度以下若しくは左右側屈の合計が50度以下に制限されている場合には、8級2号に該当するものと認められる。

 本件において、症状固定時における原告の胸腰部の可動域は、前屈30度、後屈15度、右側屈30度、左側屈30度、右回旋30度、左回旋30度であり、主要運動である前屈と後屈の合計は45度である。この値は、主要運動である前屈と後屈の参考可動域角度の1/2である37.5度を上回っており、参考可動域角度の1/2をわずかに上回る場合の42.5度をも上回っている。

したがって、原告の胸腰部の可動域制限は、「胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの」に該当せず、8級2号には当たらない。

 これに対し、原告は、C病院の庚山医師による平成23年3月1日付け診断書に、原告の胸腰部の可動域について、前屈30度、後屈10度、右側屈20度、左側屈10度とされていることをもって、「胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの」の要件を満たす旨主張するが、後遺障害の認定に当たっては、症状固定時における可動域の測定値により判断すべきであるから、原告の主張は採用できない。

(4) 脊柱の変形障害については、前提事実及び上記認定事実によれば「原告が本件事故により第11胸椎圧迫骨折の傷害を負い、症状固定時において、第11胸椎が楔状に変形していることが認められるから、11級7号(脊柱に変形を残すもの)に該当する。この点、原告は、11級7号に加え、背部痛について12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するから、11級が1級繰り上がり10級と認定すべき旨主張する。

しかしながら、前述のとおり、原告の背部痛はRSDに由来するものとは認められず、また、原告の受傷部位が第11胸椎で背部であることからすると、原告の背部痛は、第11胸椎骨折に伴う疼痛であると推認される。したがって、原告の背部痛は脊柱の変形と派生関係にあり、11級の評価に含まれると解されるので、原告の主張は採用できない。

(5) よって、原告の後遺障害は、背部痛を含め、11級7号(脊柱に変形を残すもの)に該当する。


2 争点(2)(損害額)について
(1) 症状固定前の治療関係費 263万8720円

         (中略)

(4) 逸失利益 2176万9874円
 上記(3)アの認定事実によれば、本件事故後、原告に減収が生じていることが認められる。そして、復職後も、書類作成やコピー取りといった軽易な内勤業務のみに従事しており、2、3日に1度くらいは、午後から職場の道場等で横になって休んでいるというのであるから、昇級の遅れなどの不利益が将来発生する可能性も窺われる。

そこで、原告に11級に該当する後遺障害が残存したことに鑑み、労働能力喪失率を20%とし、本件事故の前年である平成19年の年収680万2023円を基礎収入とし、症状固定時に34歳であったことから、労働能力喪失期間を67歳までの33年間(ライプニッツ係数16.0025)とする。以上によれば、原告の逸失利益は、2176万9874円(680万2023円×0.2×16.0025)となる。

(5) 傷害慰謝料 242万円
 原告の治療経過、傷害の内容等に鑑み、入通院慰謝料として242万円と認めるのが相当である。

(6) 後遺障害慰謝料 500万円
 原告に後遺障害等級11級に該当する後遺障害が残存したことに加え、原告が症状固定後も背部痛の軽減を目的として通院を続けていること、その他一切の事情を考慮し、上記金額と認めるのが相当である。
以上:5,026文字

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