平成18年11月25日(土):初稿 |
○交通事故外傷の後遺障害としてRSD(反射性交感神経性ジストロフィー、RSDと言います)がありますが、担当医からRSDと診断を受けても自賠責保険会社からは後遺障害等級を認定されない事案も多く、当事務所でも取り扱っていることから、今回はRSDについての備忘録です。 ○労災保険情報センター(RIC)のHPでは、RSDについて以下のように記載し、労災保険における後遺障害としては、その症状の程度に応じてRSDを7,9、12級を認定することを明らかにしています。 RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)(注2) RSDの取扱いは、従来認定基準上明確ではなかったが、外傷後に残る特殊な型の痛みとして慢性期における一定の要件((1)関節拘縮、(2)骨の萎縮、(3)皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮))を満たすものについて、症状の程度に応じて障害等級(7、9、12級)を認定することとしたこと (注2)RSDとは、外傷後に生じる慢性疼痛であり、激しい痛みを生じることがある。 ○交通事故外傷後遺障害認定を行う損害保険料率算出機構調査事務所においてはRSDについての後遺障害認定基準を公表しておりませんが、概ね上記労災保険での認定基準を踏襲しているものと思われます。 ○RSDとは、Reflex Sympathetic Dystrophyの略語で、日本語では反射性交感神経性ジストロフィー或いは反射性交感神経萎縮症と呼ばれ、神経因性疼痛の代表的なものとされています。ジストロフィーとは、栄養異常・形成異常などの病状をいう語とされ、交感神経とは、高等脊椎動物の自律神経系を構成する神経で、脊柱の両側を走る幹から出て内臓や血管・消化器・汗腺などに分布し、心臓の働きの促進、血管の収縮、胃腸の働きの抑制、瞳孔の散大などの作用があります。 ○RSDについては、柔道整復師クラブの反射性交感神経性ジストロフィーに詳しく説明されており、それによると、RSDの「発症機序については、多くの研究者・臨床家が考察をしているが、いまだ仮説の域を脱していない。」とのことですが、内西兼一郎氏らの簡潔な判りやすい説明が以下の通り、記載されています。 (異常な交感神経反射による悪循環形成について) 2) 正常では、身体の一部に外傷を受けると、正常な交感神経反射によって四肢の血管が収縮する。この反射は出血を止め、余分な腫脹を防ぐための必要な正常反応であり、外傷の治癒とともにこの反射は消退する。外傷による trigger 刺激が消失してもなお、RSD の患者ではこの反射が消退せず、継続して働き続けるため、交感神経亢進状態となる。そのために末梢組織に局所的虚血(低酸素状態)が生じ、さらにそれが、より強い持続的な疼痛刺激として異常な交感神経反射が作動することになり、悪循環(vicious cycle)が形成され、 RSD の発症に至ると考えられる。(初期は筋の血流が低下し、代償的に皮膚・骨の血流は増大する。末期は全血流低下をもたらす。) ○南山堂医学大辞典第18版による説明は以下の通りです。 反射性交感神経性ジストロフィー[ハンシャセイコウカンシンケイセイジストロフィー] 【英】reflex sympathetic dystrophy(RSD) 反射性交感神経性ジストロフィーは外傷などの不完全の末梢感覚神経の損傷の後に障害神経の支配部位を越えて灼熱痛burning pain(カウザルギー*)を特徴とした慢性の疼痛が生じ,皮膚温低下,浮腫などの血管運動障害や,それに引き続いて筋萎縮*,皮膚,爪の退行性変化や骨粗鬆症*などの栄養障害をきたす病態である.機序は末梢神経が傷害により絶えず刺激され,体性感覚神経線維(主にC線維)を介して求心性インパルス*が脊髄介在ニューロン群に入り,その閉鎖回路内で自己を強化する形で反射性異常を生じ,このインパルスが脊髄側索の神経細胞を刺激し,交感神経遠心線維を持続的に興奮させる病態が考えられている.加えて運動麻痺*,不随意運動など運動系の障害を伴うこともある.交感神経節ブロック,reserpineの静脈潅流などの交感神経遮断が著効し,またその診断の根拠ともなる.しかし,長期的予後は必ずしも良好ではなく,重症例では筋は進行性に萎縮し,皮膚,骨は退行性に変性する.患者は患肢を使おうとせず同じ肢位でじっとした姿勢を保ち,進行すると,ついには廃用に至ることがある. 以上:1,824文字
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