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会社従業員死傷交通事故企業損害を一部認めた地裁判決紹介2

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令和 2年 8月21日(金):初稿
○「会社従業員死傷交通事故企業損害を一部認めた地裁判決紹介」の続きで、同様に、交通事故での企業損害を一部認めた昭和53年7月31日東京地裁判決(交通事故民事裁判例集12巻2号347頁)全文を紹介します。

○医薬品配置販売業者(いわゆる富山の薬売り)Xの従業員A(男、年齢不明)が自動二輪車で業務に従事中、加害車両(普通乗用自動車)に衝突され受傷した事故において、AはXの従業員として、Xの営む事業の性格及び規模、その業務遂行の形態、その他諸般の事情に照らし、代替性がなく、経済的にAとXとは一体をなす関係にあるものというべく、本件事故とAの受傷によるXの利益の逸失との間には相当因果関係があると認めました。

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主   文
一 被告は原告に対し、金37万3238円及びこれに対する昭和52年2月6日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告、その余を被告の各負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事   実
第一 申立

一 原告ー左記判決及び仮執行の宣言
(一) 被告は原告に対し、金57万円及びこれに対する昭和52年2月6日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
(二) 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告ー左記判決
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 原告の請求原因
一 本件事故

 Aは、左記交通事故により、治療約2年4ケ月を要する左股関節脱臼骨折、左下腿骨々折等の傷害を受けた。
(一) 日時
昭和49年2月15日午後2時項

(二) 場所
 兵庫県三原郡○町神代地頭方○番地の○先の国道上

(三) 加害車
被告の運転する普通乗用自動車(神戸5ま○○○○号)

(四) 被害車
Aの運転する単車(西淡町レ○○○○号)

(五) 事故の態様
 被告が、加害車を、三原郡三原農業協同組合機械センター広場より、これに直面する右(二)の国道上に発進させた際、右国道上を西進していた被害車に加害車を衝突させたものである。

二 責任原因
(一) 被告は加害車を所有し、自己のために運行の用に供していた(自賠法第3条)。

(二) また本件事故は、被告が国道上に加害車を発進させるに当り、左右の安全(即ち、国道上の運行車両の有無等)を確認しないで、漫然と発進した過失により、被害車の進行に気づかず、これに衝突したものである(民法第709条)。

三 原告の損害(企業損害)
 原告は、○○薬品商会の商号で、従業員数名を使用して、医薬品の配置販売(いわゆる富山の薬売り)を業とするものであるが、従業員のAをして兵庫県淡路島地区における右販売を担当させていたところ、右Aがこの業務に従事中、本件事故にあい、稼働できなくなつてしまつたので、原告は次のような損害を被つた。

 即ち、右Aは、毎年、冬と夏の2回にわたり(冬廻りは1月28日から3月20日までの約52日間で、夏廻りは7月4日から8月9日まで及び8月22日から9月13日までの合計約60日間である)、大量の薬袋をかついで、自己の担当区域内の各顧客を一軒一軒訪問して、前回訪問時よりの置薬の使用状況を調べ、使用ずみの薬の代金を集金し、同時に費消されて不足した置薬を補充し、また新薬を配置する等していたものであるが、本件事故により昭和49年度冬廻り期間中28日間、同年度夏廻り期間約60日、同50年度冬廻り及び夏廻り期間約112日、合計200日間右業務に従事することができず、その結果、原告は1日平均1万7655円、合計金353万1000円の得べかりし売上額、従つて金57万9084円の得べかりし純益(売薬の平均利益率は約16.4パーセント)を失つた。

 ところで、Aの右のような業務は、顧客との面識及び信頼関係等を不可欠の前提とするものであるから、当該担当員以外、第三者は勿論、雇主といえども、到底代替できない性質のものである。従つて、原告とAとは全く経済的に一体をなす関係にあるものというべく、本件事故によりAが稼働できなくなつた結果、原告が被つた右損害は、まさに本件事故と相当因果関係あるものといわなければならない。

四 よつて、原告は被告に対し、前記損害の内金57万円及びこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和52年2月6日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三 被告の答弁
一 請求原因第1、2項は認める。
二 同第三項は争う。

第四 証拠〔略〕

理   由
一 請求原因第1、2項は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告の損害について判断する。
 本件は、要するに、交通事故により被害者(従業員)が稼働できなくなつたため、その雇主(個人企業)が加害者に対し、これにより被つた企業損害(逸失利益)の賠償を請求する事実であるが、かかる場合、雇主が加害者に対し右損害の賠償を請求し得るためには、被害者に右企業の従業員としての代替性がなく、被害者と雇主(企業)とが経済的に一体をなす関係にあることを要するものと解するのが相当である(最判民集22巻12号2615頁参照)。

 そこで、これを本件についてみるに、成立に争いない甲第14ないし第19号証、証人Aの供述により成立を認める同第7ないし第9号証、原告本人の供述により成立を認める同第3ないし第5号証、同第10号証の1ないし21、同第12号証の1ないし63、同第13号証の1ないし28、同第20、第21号証、同第24号証の1ないし6、右A証人及び原告本人の各供述並びに弁論の全趣旨を綜合すれば次の事実を認めることができる。

 即ち「原告は、高山薬品商会の商号で、従業員数名を使用し、東京都及び淡路島一円において、医薬品の配置販売を業とするもの(いわゆる富山の薬売り)であるが、昭和25年創業以来、従業員のAを淡路島地区における配置員として右販売に従事させていたところ、右Aがこの業務に従事中、本件事故にあい、稼働できなくなつてしまつたため、以後少くとも昭和51年2月始めまで、Aの担当業務を中断するの余儀なきに至つたこと。

 原告の営む右医薬品の配置販売とは、原告又は原告の雇傭する配置員が、原則として年二回、即ち冬と夏の二回にわたり、薬箱を携帯して、自己の担当区域内の各顧客を戸別訪問し、原告主張のような置薬の調査、使用ずみの薬代の集金及び置薬の補充並びに新薬の配置等をするものであるが、右業務は、まず顧客との面識を前提とし、次いで長期間且つ継続的な顧客との信頼関係を基礎とするものであるので、配置員は常に顧客の家族構成及びその健康状態を諒知したうえ、単に顧客の健康相談のみならず、場合によつては結婚、就職等の家庭相談にも乗つてやることが必要であつて、根気と誠実と親切とが特に要求されるものである外、広範囲を戸別販売する関係上、営業の能率を上げるため、配置員は顧客の住所及び職業は勿論、その支払ないし家計の責任者の都合等も考えて、訪問の順序、道順及び日時等を適切に決定しなければならないので、長年ある区域の販売を担当し、顧客と強い信頼関係に結ばれ、且つ右のような合理的業務の遂行に熟達した配置員に事故ある場合は、第三者は勿論、雇主といえども、著しく代替困難であること。

 ところで、前示Aは、本件事故にあうまで、24年間継続して淡路島地区における配置員を担当し、その親切、誠実な人柄及び根気強さから顧客の強い信頼を受け、且つ前示のような業務の遂行にも熟達していたので、同地区においては、余人を以て代え難い、正に原告の片腕ともいうべき存在であつたこと。

 右Aは、本件事故以前、毎年、原告主張のような冬廻り期間及び夏廻り期間の二回にわたり、淡路島地区における約1200戸の顧客に対し前示配置販売をしていたが、本件事故にあうことなく例年どおり右業務に従事したとすれば、昭和49年度冬廻りはなお28日間、同年度の夏廻りは約60日間、昭和50年度は冬廻り及び夏廻りを通じて約112日、合計約200日間右業務を遂行することができたものであるところ、Aの本件事故当時における1日の平均売上額は金1万7655円であつたから、原告は本件事故により、少くとも合計金353万1000円の得べかりし売上額を失つたが、その後昭和51年2月5日から同年7月12日までの間、原告の従業員宮田博がAの担当区域内の各顧客を巡回して、本件事故以前Aが配置した薬品の使用ずみ分の代金の一部金125万5155円を集金したので、結局、原告の喪失した得べかりし売上額は金227万5845円となつたこと。また本件事故当時における原告の本件配置販売業による売薬の平均利益率は売上額の約16・4パーセントであつたこと。従つて、原告は本件事故により少くとも金37万3238円の得べかりし利益を失つたこと。」が認められ、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

 以上認定の事実によれば、本件事故の被害者Aは、医薬品の配置、販売業者である原告の従業員として、原告の営む事業の性格及び規模、その業務遂行の形態、その他諸般の事情に照らし、代替性がなく、経済的にAと原告とは一体をなす関係にあるものというべく、かかる事実関係のもとにおいては、本件事故(即ち、被告のAに対する加害行為)とAの受傷による原告の利益の逸失(即ち、前示金37万3238円の損害)との間には相当因果関係があるものと認めるのが相当である。

 してみれば、被告は原告に対し、右損害金37万3238円及びこれに対する本件訴状送達の翌日であること記録に徴し明らかな昭和52年2月6日から完済まで、民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務あるものといわなければならない。

三 よつて、原告の本訴請求は右の限度においてのみこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法第92条、仮執行の宣言につき同法第196条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 古川純一)
以上:4,125文字

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