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NHKスペシャル”忘れられた戦後補償”を観て-戦争民間被害者の補償は?

令和 2年 8月20日(木):初稿
○「猪瀬直樹氏著”昭和16年夏の敗戦-新版”紹介」に関連して戦争の話題を続けます。
令和2年8月15日(土)午後9時から放送されたNHKスペシャル「忘れられた戦後補償」を見て、それまで考えたことがないことを考えさせられました。民間戦争被害者の補償問題です。同放送では「国家総動員体制で遂行された日本の戦争。310万の日本人が命を落としたが、そのうち80万は様々な形で戦争への協力を求められた民間人だった。しかし、これまで国は民間被害者への補償を避け続けてきた。一方、戦前、軍事同盟を結んでいたドイツやイタリアは、軍人と民間人を区別することなく補償の対象とする政策を選択してきた。国家が遂行した戦争の責任とは何なのか。膨大な資料と当事者の証言から検証する。」と解説されています。

○私が弁護士になって10年にもなっていない時期ですので、30年以上前になりますが、複数の兄弟姉妹の内、末の2名の弟・妹が、長男の兄に7000万円程の不当利得返還請求をした事件で、長男の代理人になったことがあります。兄弟の内二男・三男と父が戦死し、母が3人の軍人の遺族として、遺族年金を受給していましたが、その管理を長男が行っており、母死後に、その遺族年金の管理を巡って争いになった事件です。

○昭和50年代の事件で内容はうろ覚えですが、その事件を扱って驚いたのは、母に支給された遺族年金の金額でした。母は、戦後、遺族年金を30年以上受給し、その総額は軽く1億円を超えていました。母死後の相続人は子供3人で、3分の2の法定相続分を有する弟・妹が長男に、母が受給した遺族年金の3分の2の金額を請求しました。軍人恩給は大きな金額になることに驚きました。

○「猪瀬直樹氏著”昭和16年夏の敗戦-新版”紹介」に記載した日本必敗の報告を「”日露”がそうだったように、戦争はやってみないと分からない」として、葬り去り、日本を戦争に突き進ませた東條英機元首相の遺族には年額1000万円の軍人恩給が支給されたとのことです。

NHKスペシャル「忘れられた戦後補償」によると、軍人には手厚い軍人恩給が支給されたにも拘わらず、民間被害者には何の補償もないままとのことで、その理不尽さに驚きました。民間被害者は、被害の態様も様々で且つ広範に渡っており、被害の線引きが極めて困難であることは分かりますが、だからといって一律無補償はないだろうと思います。また、何らかの補償がなされていたのではと思っていたのですが、全く補償がないままだとは、不勉強に恥じ入りました。

○令和2年8月20日朝のニュースで、北海道から本州に石炭を運ぶ青函連絡船が、アメリカに爆撃を受けるとの情報が入り、青函連絡船船長がしばらく船を避難させて運行を休むことを提案したところ、軍部が戦争回避の許されない考えだと一蹴し、その結果、運行した青函連絡船がアメリカの爆撃を受け沈没させられ、船も乗組員も、ずっと行方不明でしたが、最近になってようやく沈没箇所が判明したとの事案が紹介されました。このような事例の被害者は、果たして補償があったのかどうか、考えさせられました。ないとすれば全く理不尽です。
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