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追突事故自賠責14級認定を中心性脊髄損傷で9級認定判例紹介2

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令和 2年 7月 6日(月):初稿
○「追突事故自賠責14級認定を中心性脊髄損傷で9級認定判例紹介」の続きで、この平成30年4月18日名古屋地裁判決(自保ジャーナルNo2026号29頁)の関連部分を紹介します。


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主   文
1 被告は,原告に対し,2870万9338円及びうち2498万7706円に対する平成26年10月24日から,うち250万円に対する平成25年3月27日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告は,原告に対し,4246万2528円及びうち3665万4828円に対する平成26年10月24日から,うち366万5483円に対する平成25年3月27日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
(自動車損害賠償保障法は「自賠法」と,同法施行令別表第2に記載の後遺障害等級は単に「○級○号」などという。)
1 概要

 本件は,平成25年3月27日午後6時40分頃,原告運転の普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と被告運転の普通貨物自動車(以下「被告車」という。)が衝突した交通事故に関し,原告が被告に対し,民法709条(不法行為責任)に基づき,賠償金4246万2528円及びうち3665万4828円に対する平成26年10月24日(自賠責保険金支払日の翌日)から,うち366万5483円に対する平成25年3月27日(事故発生日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実
(当事者間に争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)交通事故
次のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
ア 発生日時 平成25年3月27日(水)午後6時40分頃

イ 発生場所 岐阜県多治見市<以下略>

ウ 関係車両
(ア)原告車 原告運転の普通乗用自動車
(イ)被告車 被告運転の普通貨物自動車

エ 事故態様 信号待ちの車列に従い停車中の原告車に被告車が追突し,その衝撃で原告車が先行車に追突した。

(2)責任
 被告は,被告車を運転する際には,前方の安全に十分注意する義務があるところ,この義務を怠り本件事故を発生させた。したがって,被告は,民法709条(不法行為責任)に基づき,本件事故により原告が被った損害を賠償すべき責任がある。

(3)受傷・治療
ア 本件事故後の原告の通院状況は,次のとおりであった。
(ア)q1病院
・平成25年3月27日及び同月28日(通院2日)
・傷病名 頸部捻挫

(イ)q2整形外科
・平成25年3月30日から平成26年5月1日(通院161日)
・傷病名 頸椎捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷中心性脊髄損傷(平成25年5月11日以降)

(ウ)q3病院(以下「q3病院」という。)
・平成26年4月16日及び同年5月1日(通院2日)
・傷病名 中心性脊髄損傷

イ 後遺障害診断書(q2整形外科・P3医師作成・平成26年5月30日発行)
(ア)症状固定日 平成26年5月1日
(イ)傷病名 頸椎捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷,中心性脊髄損傷
(ウ)自覚症状 頭痛,項部痛,背部痛,両手しびれ,右下肢しびれ,左下肢軽度しびれ,右手指伸展障害
(エ)他覚症状等 感覚低下なし,深部腱反射は正常
 右手関節背屈筋力低下MMT5-
 その他正常
 10秒テスト右16回,左30回
 頸椎MRI C6/7レベルで頸髄中心部にT1 iso T2 highの部位を認める。
 握力右20キログラム,左29.5キログラム
(オ)運動障害(頸椎部)
 前屈20度,後屈15度,右屈15度,左屈10度,右回旋40度,左回旋40度
(カ)脊髄症状判定用

         (中略)

第三 当裁判所の判断
1 争点(1)(原告の後遺障害の有無・程度)について
(1)事故態様

ア 事故態様は,前提事実(1)エのとおり,停車中の原告車に被告車が追突し,その衝撃で原告車が先行車に追突した。
イ 原告車は,本件事故により,〔1〕リアバンパーとバックドアパネル中央部押込みあり,リアフロアーパネル押込み損傷大,〔2〕押込みによりクーラコンデンサを介しラジエーターまで損傷した。
ウ このように原告は2度にわたり到底軽微とは言えない衝撃をその身体に受けたと認められる。

(2)治療経過等

         (中略)


(3)意見書
ア P4医師

・原告の頸椎(C6-7)につきMRI検査をした際の3つの画像(〔1〕平成25年5月11日,〔2〕同年8月3日,〔3〕同年10月12日)の椎体部髄内の輝度変化は,脊髄損傷を示しており,経時的にも縮小傾向(〔1〕→〔2〕までは瘢痕化へ移行している時期でもあり,縮小傾向を認めるが,〔2〕→〔3〕へはすでに瘢痕化が完成されており,大きな変化を認めていない。)を認めることから脊髄損傷後の変化として相違しない。この椎体部髄内の輝度変化(病変)は本件事故により生じたと考えられる。

・原告の訴える症状(〔1〕両こめかみから後頭部,頭部付け根にかけての頭痛,〔2〕頸部痛及び頸椎可動域制限,〔3〕背部痛,特に両肩部から肩甲骨付近の痛み,〔4〕両前腕から右手掌・拇指側を中心としたしびれ感,〔5〕右手指第1指から第3指を中心とした伸展制限,〔6〕両大腿部後面から脹脛,第1趾を中心としたしびれ感)は,いずれも脊髄損傷に由来するものとして相違はない。

・原告の訴える症状経過(すなわち,本件事故当日は頸・背部痛のみを自覚し,四肢のしびれ感や脱力感を自覚しておらず,q1病院では「神経的所見なし」とされたものの,同病院から帰宅後就寝時に(身体全体のこわばり感や四肢のしびれ感を自覚し始めたとの経過)は,本件事故により脊髄損傷を負ったと考えることと矛盾しない。

事故直後は,本人も興奮状態にある交感神経優位の体質となっているため,各損傷が起こっていたとしても自覚症状は感じないことが多く,同時に受傷直後は脊髄内は組織の一過性の虚血が起こるのみで,様々な症状を呈するまでに至らないことが多く,診察上「神経学的所見なし」と判断されるケースも散見される。就寝する頃合いにおいては受傷後数時間が経過しており,脊髄内では2次的変化が生じ始めており,脊髄内では灰白質を中心にマイクログリアの増殖が起こり炎症が惹起されているため,ようやく症状を呈して来る。そのため身体全体のこわばり感や四肢のしびれ感を自覚しはじめたものと考えられる。この変化は72時間後をピークとして,受傷後1週間たつと,マイクログリアも消失し,症状も定常化してくる。

・原告の頸椎(C6-7)につきMRI検査をした際の画像(平成25年5月11日)の輝度変化は,脊髄損傷後の変化である浮腫・瘢痕・壊死及び外傷性脊髄空洞症を示している。なお,非骨傷性の中心性脊髄損傷の特徴として脊髄の中央部が損傷を受けやすい特性がある。

・一般に脊髄空洞症は,Chiari奇形,頭蓋底陥入症,癒着性くも膜炎,脊髄腫瘍等を基礎疾患としてこれに伴う合併症であることが顕著とされているが,原告に上記基礎疾患は認められない。突発性の脊髄空洞症は,10万人中1.3人と極めて稀であり,その患者が本件のように症状を呈する割合はその中でも54%であって,それは100万人に7人という割合になる。他方,脊髄損傷後の外傷性脊髄空洞症は12~22%とされており,原告についても外傷後に脊髄空洞症を発症したと考えるのが妥当である。また,突発性空洞症が症状を有する場合は非常に緩徐であり,年単位での経過をたどるのが一般的であり,事故を契機にはっきりと症状が表在化している点からすれば,原告の場合,外傷性空洞症と診断するのが妥当である。

イ P5医師
・〔1〕q1病院の外来診療録には,本件事故当日の初診時,原告に四肢麻痺や呼吸停止など脊髄に重大な損傷を来したことを示唆するような症状が発現した旨の記載はなく,神経学的異常所見も記載されていない,〔2〕q2整形外科の診療録を検討しても,本件事故の3日後になっても,原告が本件事故により中心性脊髄損傷を受傷していると理解できる症状は何ら認められていない,〔3〕q2整形外科の担当医は,本件事故から1ヶ月以上が経過しても,原告を中心性脊髄損傷とは診断していないし,それを想起させる症状は何ら認められていない,〔4〕「診療経過に関する担当医の所見1」によれば,P3医師は,原告を中心性脊髄損傷と診断しながら,受傷から3日後頃より就労可能と判断しているが,これは同医師は,原告が本件事故により中心性脊髄損傷を受傷したという認識はなかったと理解せざるを得ないことなどからすれば,原告は,単に,頸部捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷といった外傷を負ったに過ぎない。

・原告の頸椎MRI所見は,本件事故とは何ら因果関係のない所見である。それは,〔1〕本件事故から1ヶ月以上が経過しても,q2整形外科の担当医師は原告を中心性脊髄損傷と診断しておらず,その発症を想起させる症状も認められていない,〔2〕本件事故によりC2~5レベルでT2高信号領域を脊髄内に認めたり,C6-7部に髄内高信号有りといった,頸髄の機能的・形態的変化が発生したものだとすれば,それは頸髄の物理的損傷に由来するものであるが,原告の初診時(q1病院)における上記状況からすれば,外傷医学的にも,単なる一般的な経験論からも甚だ理解に苦しむと言わざるを得ないからである。〔3〕原告の頸椎MRI所見は,症状発症前の脊髄空洞症(外傷性のものではない脊髄空洞症)の存在を示すものであり,原告の訴える症状は,この外傷性ではない脊髄空洞症の症状が平成25年6月頃から発現してきたものと考えるのが妥当である。

・原告については、〔1〕中心性脊髄損傷が発生したものではなく,単に頸部捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷といった外傷を負ったに過ぎず,何らかの後遺障害が残存することはあり得ない外傷である,〔2〕q2整形外科の診療録を検討すると,「両手のしびれ,右下肢しびれ,左下肢軽度のしびれ,右手指伸展障害」といった症状は,その発現時期が本件事故と時間的近接性に乏しく,本件事故とは因果関係のない症状を考えざるを得ず,本件事故により原告に発生・残存した自覚症状は「頭痛,項部痛,背部痛」と理解するのが妥当であり,神経学的所見に異常はなく,他覚的所見はない(握力や10秒テストは純粋な他覚的所見とは言えない。),〔3〕原告の場合,感覚低下はなく,深部腱反射は正常で,筋力は,ほぼ正常であり,筋萎縮も記載されておらず,7級4号(「脊髄症状のため,軽易な労務以外には服することができないもの」)に該当するような後遺障害が残存しているとは到底評価できない,〔4〕したがって,原告の自覚症状(頭痛,項部痛,背部痛)は,頸部捻挫や胸椎捻挫といった外傷の不定愁訴と理解するのが妥当であり,後遺障害等級としては14級9号が妥当である。 

ウ P6医師・P7医師
・本件は,玉突き事故であり,原告の頸部には一定の外力が加わったが,事故により受けた外力は脊髄の損傷を受けるほどではなかった。また,原告には追突事故により骨傷のない脊髄の損傷を受けるほどの変性や脊柱管の狭窄などはなかったことに加え,臨床経過や画像所見からも,脊髄の損傷を裏付けるものはない。したがって,原告は本件事故により頸椎捻挫を受け,種々の要因が重なり,その後は外傷頸部症候群となり,長期化し難治性になっていったと考えられる。したがって,原告の後遺障害は局部に痛みを残すが,医学的な証明は困難であり,自賠法による第14級に該当すると考えるのが妥当である。

・なお,MRI画像に見られる輝度変化については,〔1〕事故後の神経学的な他覚所見に,脊髄損傷を裏付ける所見がないこと,〔2〕受傷後早期にではなく,受傷後1ヶ月半経過してからMRIを撮ったこと,〔3〕輝度変化の部位と損傷レベル診断が一致しないこと,〔4〕経過中に画像の変化がないこと,〔5〕輝度変化は広範囲に及び,外傷性の脊髄空洞症としての画像ではないこと,〔6〕輝度変化は中心管やその周辺にあり,先天的な脊髄空洞症の所見として何ら矛盾しないこと,などからMRIに見られる脊髄内の輝度変化は,事故以前からあった先天的な脊髄空洞症と考えるのが当然といえる。

(5)検討
ア 上記(2)及び(4)で認定の事実と,証拠(略)によれば,次のとおり認められる。
(ア)原告は,本件事故当日,帰宅後に首や背中だけでなく右肩や右腕など他の箇所にも痛みがあることに気づいた,体全体がこわばってしまっているようで両手足が痺れたような感じがあった。事故翌日,q1病院で,首や背中以外にも痛みやこわばり感があり,体が動かしにくいということを伝えたが,今は事故で衝撃を受けた直後だから色々と体全体に違和感があると思うが時間と共に消えていくので心配ないとの説明を受け,そのように理解した。

(イ)原告は,平成25年3月30日,q2整形外科を受診し,首や背中以外にも痛みがあり,体がこわばっているようで動かしにくいこと,さらに両手足の痺れについても伝えた。診察中,握力測定(握力:右23キログラム・左40キログラム)や10秒テスト(右20・左24)を受け,この際に右手指について強く力を入れている間は指が伸びているものの,力を抜くと指が曲がってしまうことに気づき,尋ねたところ一過性のもので心配ないとの説明を受け,そのように理解した。

イ 以上からすれば,原告は,q2整形外科を受診した平成25年3月30日には,右手指の巧緻性にかかる症状を訴えていたものと,そして10秒テストの結果では右に異常のあったことを認めることができる。そして,原告の右手指の症状は,それ以降も続いており,平成28年3月頃に右母指用の装具が,同年6月頃に右中指用の装具が作成され,その使用は現在まで続いている(上記(4))。

 確かに,診療録には「手指の痺れ(-)」と記載され,MRI検査は平成25年5月11日になってから実施されているものの,右手指の症状に関する原告の説明は上記経緯に照らし信用できることに加え,q1病院からq2整形外科に宛てた診療情報提供書には「交通事故の患者さんで,右頸部とその周辺の痛みがあります。神経学的所見はなく,XP上もC5/6に加齢変化有るほかは優位な物はありません。」とあることを勘案すると,q2整形外科の担当医は,原告の訴える症状については,追突事故によるいわゆるむち打ち症による症状に包含されるものと理解していた可能性が高いというべきであり,それにもかかわらず原告の訴えが続いたため,MRI検査に至ったものと理解するのが相当であって,MRI検査までに1ヶ月半程度の時間が経過していることを重視することはできない。

 したがって,本件事故後の症状経過に関する原告の説明は,基本的にはこれを信用することができ,被告の主張するように,右手指の症状や四肢のしびれに関する症状が,平成25年6月頃から発現したものであって本件事故との時間的近接性に欠ける,などとは到底言えず,むしろ本件事故直後からその症状は発現していたものと認めることができる。これは,本件事故の態様,そこから窺われる衝撃の程度からも十分首肯できるところである。

ウ そして,原告の頸椎(C6-7)のMRI画像には輝度変化が認められることは各意見書ともこれを認めるところである(上記(3))。ここで認められる脊髄空洞症の原因についてであるが,P4医師が指摘するように,外傷性ではない脊髄空洞症の場合は,基礎疾患に伴う合併症として発症することが多いところ,原告にそのような基礎疾患は認められず,また,突発性の脊髄空洞症は極めて稀な症例とされている。そのうえP5医師やP6医師・P7医師の意見書において,原告の脊髄空洞症が突発性のものであるとする重要な根拠の1つは,原告の右手指の症状や四肢のしびれに関する症状が本件事故からある程度期間を置いてから発現した点にあるが,この前提を採用できないことは上記イのとおりである。したがって,原告の脊髄空洞症はP4医師が意見を述べるようべるように外傷性のものと認めるのが相当である。


エ 以上のとおり,原告は,本件事故により中心性脊髄損傷,頸部捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷等の傷害を負ったものと認められる。
 そして,上記傷害により症状固定日である平成26年5月1日当時,〔1〕両こめかみから後頭部,頭部付け根にかけての頭痛,〔2〕頸部痛及び頸椎可動域制限,〔3〕背部痛,特に両肩部から肩甲骨付近の痛み,〔4〕両前腕から右手掌・拇指側を中心としたしびれ感,〔5〕右手指伸展制限,〔6〕両大腿部後面から脹脛,第1趾を中心としたしびれ感といった後遺障害が残存したものと認められる。

オ また,原告の収入状況の推移,日常生活及び翻訳業において最も大きな影響を与えているのが右手指の伸展制限などであること,介護保険を利用するにしても原告の日常生活において両親の介護の占める比重は大きく,肉体的な負担も重いことなどを勘案すると,原告の後遺障害は,自賠責保険における後遺障害等級の9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)に相当するものと認められる。

2 争点(2)(原告の損害と損害額)について

         (中略)

以上:7,227文字

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