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追突事故自賠責14級認定を中心性脊髄損傷で9級認定判例紹介3

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令和 2年 7月 7日(火):初稿
○「追突事故自賠責14級認定を中心性脊髄損傷で9級認定判例紹介2」の続きで、その内容説明です。本件は、信号待ち停止車両に後続車が追突し、当初、診断名が頚部捻挫だったもので、自賠責保険は、他覚所見無しの第14級神経症状との認定に対し、原告は、中心性頚髄損傷として後遺障害等級第7級4号「神経系統の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当すると主張し提訴したものです。

○当事務所ではこのような事案を相当数扱っており、現在も、同種事案で長く係争中の事件があります。自賠責保険第14級認定に対し、12級以上の後遺障害を主張する事案は、自賠責保険会社が激しく抵抗して、苛酷な争いになる例が殆どで、平成30年4月18日名古屋地裁判決の事案も、原告と保険会社側で激しく争われています。

○後遺障害14級を主張する保険会社側は、殆どの事案で、お抱え顧問医師の保険会社べったりの意見書を証拠として提出します。本件でも、被害者原告の主治医q3病院P3医師作成後遺障害診断書に沿ったP4医師の1名意見書に対し、保険会社は顧問医師3名のもっともらしい意見書を提出しています。その内容は以下の通りです。

先ず保険会社側P5医師意見書です。
・q1病院の外来診療録には,本件事故当日の初診時,原告に四肢麻痺や呼吸停止など脊髄に重大な損傷を来したことを示唆するような症状が発現した旨の記載はなく,神経学的異常所見も記載されていない
・q2整形外科の診療録を検討しても,本件事故の3日後になっても,原告が本件事故により中心性脊髄損傷を受傷していると理解できる症状は何ら認められていない
・q2整形外科の担当医は,本件事故から1ヶ月以上が経過しても,原告を中心性脊髄損傷とは診断していないし,それを想起させる症状は何ら認められていない
・「診療経過に関する担当医の所見1」によれば,P3医師は,原告を中心性脊髄損傷と診断しながら,受傷から3日後頃より就労可能と判断しているが,これは同医師は,原告が本件事故により中心性脊髄損傷を受傷したという認識はなかったと理解せざるを得ないことなどからすれば,原告は,単に,頸部捻挫,胸椎捻挫,右前腕挫傷といった外傷を負ったに過ぎない。
として、結論として
原告の自覚症状(頭痛,項部痛,背部痛)は,頸部捻挫や胸椎捻挫といった外傷の不定愁訴と理解するのが妥当であり,後遺障害等級としては14級9号が妥当である

としています。

次に保険会社側P6医師・P7医師意見書です。
本件は,玉突き事故であり,原告の頸部には一定の外力が加わったが,事故により受けた外力は脊髄の損傷を受けるほどではなかった。また,原告には追突事故により骨傷のない脊髄の損傷を受けるほどの変性や脊柱管の狭窄などはなかったことに加え,臨床経過や画像所見からも,脊髄の損傷を裏付けるものはない。したがって,原告は本件事故により頸椎捻挫を受け,種々の要因が重なり,その後は外傷頸部症候群となり,長期化し難治性になっていったと考えられる。したがって,原告の後遺障害は局部に痛みを残すが,医学的な証明は困難であり,自賠法による第14級に該当すると考えるのが妥当である
としています。

このように保険会社側顧問医師P5乃至7の3名の医師は、自賠責保険第14級認定を徹底して擁護します。

○これに対し、原告主治医P4医師の意見書は次の通りです。
・原告の頸椎(C6/7)につきMRI検査をした際の3つの画像(〔1〕平成25年5月11日,〔2〕同年8月3日,〔3〕同年10月12日)の椎体部髄内の輝度変化は,脊髄損傷を示している
・経時的にも縮小傾向(〔1〕→〔2〕までは瘢痕化へ移行している時期でもあり,縮小傾向を認めるが,〔2〕→〔3〕へはすでに瘢痕化が完成されており,大きな変化を認めていない。)を認めることから脊髄損傷後の変化として相違しない
・この椎体部髄内の輝度変化(病変)は本件事故により生じたと考えられる
・原告の訴える症状(〔1〕両こめかみから後頭部,頭部付け根にかけての頭痛,〔2〕頸部痛及び頸椎可動域制限,〔3〕背部痛,特に両肩部から肩甲骨付近の痛み,〔4〕両前腕から右手掌・拇指側を中心としたしびれ感,〔5〕右手指第1指から第3指を中心とした伸展制限,〔6〕両大腿部後面から脹脛,第1趾を中心としたしびれ感)は,いずれも脊髄損傷に由来するものとして相違はない
・原告の訴える症状経過(すなわち,本件事故当日は頸・背部痛のみを自覚し,四肢のしびれ感や脱力感を自覚しておらず,q1病院では「神経的所見なし」とされたものの,同病院から帰宅後就寝時に(身体全体のこわばり感や四肢のしびれ感を自覚し始めたとの経過)は,本件事故により脊髄損傷を負ったと考えることと矛盾しない。
・事故直後は,本人も興奮状態にある交感神経優位の体質となっているため,各損傷が起こっていたとしても自覚症状は感じないことが多く,同時に受傷直後は脊髄内は組織の一過性の虚血が起こるのみで,様々な症状を呈するまでに至らないことが多く,診察上「神経学的所見なし」と判断されるケースも散見される

としています。

○保険会社側P5乃至7の3医師の意見書と原告主治医P4医師の意見書を比較すると、一見、孤軍奮闘するP4医師の意見書は劣勢にも感じます。保険会社側意見書に与する裁判官も多いと思われます。しかし、裁判所は、
・確かに,診療録には「手指の痺れ(-)」と記載され,MRI検査は平成25年5月11日になってから実施されているものの,右手指の症状に関する原告の説明は上記経緯に照らし信用できること
・q1病院からq2整形外科に宛てた診療情報提供書には「交通事故の患者さんで,右頸部とその周辺の痛みがあります。神経学的所見はなく,XP上もC5/6に加齢変化有るほかは優位な物はありません。」とあることを勘案すると,q2整形外科の担当医は,原告の訴える症状については,追突事故によるいわゆるむち打ち症による症状に包含されるものと理解していた可能性が高いというべき
・それにもかかわらず原告の訴えが続いたため,MRI検査に至ったものと理解するのが相当であって,MRI検査までに1ヶ月半程度の時間が経過していることを重視することはできない
とし、
・したがって,本件事故後の症状経過に関する原告の説明は,基本的にはこれを信用することができ,被告の主張するように,右手指の症状や四肢のしびれに関する症状が,平成25年6月頃から発現したものであって本件事故との時間的近接性に欠けるなどとは到底言えず,むしろ本件事故直後からその症状は発現していたものと認めることができ、これは,本件事故の態様,そこから窺われる衝撃の程度からも十分首肯でき

として最終的に原告側医師意見書に軍配を上げました。

被害者原告側を常に担当する私としては、極めて妥当な判断と確信しています。
以上:2,826文字

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