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平成31年 1月 5日(土):初稿 |
○追突後の重篤な神経症状について身体障害福祉法に基づく身体障害等級は2級と認定されるも、自賠責では後遺障害等級14級と認定された方について、中心性脊髄損傷で少なくとも後遺障害等級は第5級に相当するとして訴えを提起し、保険会社側と激しい医学論争を展開している事案を扱っています。 ○この事案に参考になる判例として、追突され自賠責14級9号の49歳男子の中心性脊髄損傷を認め9級10号後遺障害を認定した平成30年4月18日名古屋地裁判決(自保ジャーナルNo2026号29頁)を紹介します。 ○名古屋地裁の事案は、両親を介護する49歳男子翻訳業の原告が平成25年3月27日、自動車を運転し信号待ち停車中に被告運転貨物自動車に追突され、先行車に玉突き追突して、頚椎捻挫・胸椎捻挫等の傷害を受け、約1年1ヶ月間通院し、項部・頭・背部痛等から自賠責14級9号後遺障害認定を受けるも、中心性脊髄損傷による四肢の神経症状から7級4号の後遺障害を残したとして約4246万円の支払を求めて訴えを提起したものです。 ○平成30年4月18日名古屋地裁判決要旨は以下の通りです。 ・原告は、C整形外科を受診した平成25年3月30日には、右手指の巧緻性にかかる症状を訴え、10秒テストの結果異常があったことが認められ、その症状は、それ以降も続いており、平成28年3月頃に右手指用の装具が、同年6月頃に右手中指の装具が作成され、その使用が現在まで続いている ・本件事故後の症状経過に関する原告の説明は、基本的に信用することができ、被告の主張するように、右手指の症状や四肢のしびれに関する症状が、事故後の平成25年6月頃から発現したものであって本件事故との時間的近接性に欠けるとは到底言えず、本件事故後からその症状は発現していたと認められ、これは本件事故の態様、そこから窺われる衝撃の程度からも十分首肯できる ・原告の頚椎MRI画像には輝度変化が認められ、ここで認められる脊髄空洞症の原因については、外傷性でない場合は基礎疾患に伴う合併症として発病することが多いところ、原告にそのような基礎疾患は認められず、外傷性のものと認められるもので、原告は本件事故により中心性脊髄損傷、頚部捻挫、胸椎捻挫、右前腕挫傷等の傷害と負った ・症状固定日平成26年5月1日当時の頭痛・頚部痛・頚椎可動域制限・背部痛・肩部肩甲骨付近痛、両前腕から右手掌・拇指側しびれ感、右手指伸展制限等の後遺障害は、収入状況推移・日常生活翻訳業への影響・両親の介護への負担等を考慮して自賠責等級は第9級に相当する ・労働能力喪失率は35%として逸失利益・慰謝料等合計して約2499万円を損害として認める ○判決全文のネット公開は、私が登録している判例データベースには、まだありませんが、自保ジャーナルNo2026号31頁以下に掲載された判決全文を見ると、原告の主張に対し保険会社側は顧問医の意見書を相当証拠提出して、激しく争ったようです。原告側でも医師意見書を証拠提出し、激しい医学論争が展開されています。裁判官も認定に苦労したことと思われますが、当事務所取扱事案の参考になります。 ○「中心性脊髄損傷」に関しては、「中心性頚髄損傷覚書-脊椎脊髄ジャーナル最新の知見から」に脊椎脊髄ジャーナルMay 2008 vol1.21 no.5「特集『中心性』頚髄損傷・再考-最新の知見から」の記述を終身に説明しています。 以上:1,406文字
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